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始まりの扉

俺vsステータス

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「あ、あれ?助かってる…」

――――なんで?なんだ?


あたりをきょろきょろ見回すも、スライムも人影もゴブリンもいない。

「夢…?」

悪い夢であったのだろうか、やけに体がだるい。
いや、夢ではないようだ。ピンク色の破片が体についている。
それでは一体、誰が自分を助けてくれたのだろうか。
それにしても、あのスライムは俺に何をしようとしていたのか…。







テッテレ~♪

――――ん?

「れ、れべるあっぷ?!」

目の前に3Dビット文字で『レベルアップ』と表記されているではないか。
浮き出た文字に触ってみるが、透けていて掴めるようなものではないようだ。
プロジェクターか何かが岩陰に仕込まれているのか?
後ろを見るがレンズや光はない。

頭を凝らしてみるが、状況がまだ飲み込めない。

「ってか、さっきのゲームとかでよく見るモンスターだよな?」

ゴブリンにスライム。
現実世界には存在しない生き物に襲われた。
あれは、ゲームやアニメでよく見る『モンスター』というものだ。



「―――――――もしかして、異世界転生とかってやつ?」


最近の流行では、『異世界転生』「異世界転移』というものがあると聞く。
夢物語で現実には絶対にならないと理解はしているが…モンスターが現れた今、
可能性はあるのかもしれない。


「え?異世界ってことは、俺もしかして勇者?」

会社にいかなくてはいいと思う脱力感と喜び。
ブラック企業の社畜人生が終わり、勇者になったのかもしれない。


「や、っばーーーーちょうかっこいいじゃん!!第二の人生?!」

勇者かもしれないという期待に興奮が隠せない。
レベルアップの文字が出たからには、段階を積めば目に見えて確実に強くなる。
勇者であれば、モンスターを討伐するというわかりやすい目標もあるし、
魔王を倒して人を助けるという悪と正義の行いがわかりやすい。
さらに敵を倒すというわかりやすい仕事を実行して功績をあげれば確実な報酬が王様からもらえるはずだ。

「社畜時代に上司なのかお局なのかそれとも同僚なのか後輩なのか誰が裏切り者なのかわからん人間関係や空気読んでやった仕事が実はやらなくてよかっとか、その仕事やるなら別の仕事やれよ簡単なのやるなとか、空気読んで難しい仕事持ってくってかコレ俺の仕事なの?とか、重い仕事こなして会社の業績あげても自分の報酬には一切響かないとか残業してもサービス残業で給料に反映されないとか…」

「そうゆうの一切考えなくていいなんて最高じゃああああああああああん異世界バンザーーーーイ!!」


両手を上げて、喜んだ。
文字通り、“手放しで喜ぶ”だ。

俺の人生は変わった!
社畜という人生は終わりを遂げ、勇者という憧れの存在だ。
そうとなれば、街へ行って早速、剣やらを買ってモンスター討伐だ!

「あ、仲間とかもできるかもしれないのか…」

仲間という響きも嬉しい。
一緒に同じ目標に向かって旅をするというのはわくわくがあるかもしれない。
コミュ障ではあるが、この異世界では俺という勇者キャラを演じて見せる。
そう、心に決めた。


『レベルアップ』の文字が変わり、メニュー画面が現れた。
どうやら、文字を押すと各メニューを選択することができ、詳細を確認できるようだ。
俺は所持金や現在位置などポチポチと一つ一つ丁寧に確認していった。




―――ん?ステータス?みれるぞ!







え…?
え…。
え。




「い、いんきゅばす」




淫乱の淫に吸引の吸。


淫を吸うインキュバス…。

「ってことは、俺はモンスターってこと?!」



さっきまで、勇者であると信じて疑わなかった自分が滑稽に思えた。
思えばこの、服装。
そして、さきほどの巨大ピンクスライムからの淫質なイタズラ。



「俺、インキュバスだ…。」


しかも、Lvl3。






自分のステータスに絶望をしていると、
ガラガラと岩が崩れる音がした。





見たことのある、緑色の人影。




「え…?」



人影がこちらを伺っている。

「やば…。さっきの…さっきの、
ごぶりんじゃんんんん!!?!」
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