3 / 24
始まりの扉
俺vsゴブリン
しおりを挟む「―――け、獣以上の出た!!!!!!!!!!!!!!!」
おもわず叫び声が出る。
ーーーーゴ…ゴブリン?!
出した大声とともに、驚きで大量の冷や汗が出た。
初めてゴブリンを見た感動と恐怖で、口を開けたまま遠い物体に目を凝らしてしまう。
ーーーー本物初めて見たー!つーか、ゴブリンっているんだっけ?!実在する生き物だっけ?!
夢か現実化は二の次として、まじまじと緑色の人型に目を見張る。
人形ではあるが、腕や脚、二の腕や太ももが異常に発達している。盛り上がった筋肉がゴツゴツと岩のように固そうだ。
「あ…、早…」
思わず上げてしまった大きな声で、居場所を察知したのか、ゴブリンは疾風怒濤のスピードでこちらぬ向かってくる。
「やばい?」
呆けている俺とは対象的に、へぐんぐんとゴブリンは距離を詰めてくる。
――――と、とにかく、逃げろ!!!
趣味の悪いエナメルのブーツ。
慣れない脚に履かされたヒールに慣れない脚は、一瞬もつれそうになる。
とにかく必死で脚を上げて走った。
本能が叫ぶ。
―――捕まったら、
脚が絡んでコケる想像をしてしまう。
履いたこともないヒールで、全速力に走る。
不安で自身が無い。
それでも必死で走る。岩は濡れているため、つるつると滑り、足場が悪い。
カツカツと岩に当たる靴底。
かかとを上げて、つま先だけでひたすら走る。
俺の思考など、お構いなしにどんどんゴブリンは距離を縮める。
必死で走っても、ハンデと筋力の差か、シタッシタッという足音は近づいてくる。
ーーーやばい、食われる!殺される!!!
時折、生乾きや腐卵臭の香りが鼻を掠めた。
ゴブリンを背にし、今まで仕事でも出したことのない力強さで足を踏ん張り走った。
それでも、ゴブリンの脚力は強く、早い。
―――追いつかれる
『おい!お前!そんなこともできないのかよ、またミスして』
ゴブリンの荒い息遣いを耳にしながら前だけを見て必死で走った。頭の中で、職場の上司の声が流れる。
「やべぇ…走馬灯が流れてくるぅ~!!仕事~ゴブリン~?!なんなんだこれぇええええ」
叫びながら最後の力を振り絞りゴブリンからひたすらに逃げる。
薄暗くただただ直線の洞穴の中。
どこか角になっている場所や死角を探しながら走るも直線しかない。
―――あぁ。俺、こんな死ぬかもしれない間際でも会社での苦しかった記憶思い出しちゃうんだ…。
どうせなら、もう一度恋人の手料理食べたいとか、膝枕して欲しいなとか、そうゆうあま~い幸せなこと思い出したかった…。
「うっ…!思いつかねぇええ!童貞だから恋人とのエロい思い出もねぇえええ」
やけくそに叫びながらただただ、まっすぐに直線を走り、ただただゴブリンに追われる。
叫んだおかげか恐怖が緩和される。
叫んで確かに足取りは重くなっているが、不思議と息が上がらない。
ーーーいけるかも。
と思ったのもつかの間。
ゴブリンが俺の真後ろに。
ーーーまずい。腕を伸ばされたら…
青ざめたところでピタリとゴブリンは立ち止まった。
「わ…よ、よかっ」
―――よかった。
しかし、横目で見ていたゴブリンの影が消えた。
こともあろうか、ゴブリンは俺の目の前に現れたではないか!
そう、ゴブリンは俺の後ろで俺を跨ぐように飛び跳ね、俺の頭上を通過したのだ。
頭上を通って俺の目の前にゴブリンは立ち塞がった。
ーーーーぜ、絶対絶命…!
緑色の皮膚の隙間から見える茶色の目と目が合う。にじり寄るゴブリンが手を伸ばせば届きそうな場所で立ち止まる。
「ーッハァッハァ…ッフーッハー…ッ」
―――な、なんだ、このゴブリン息が荒…
ゴブリンから青い草の香りがする。
雨と草の香り。そして、混じるように土の香り。
よく、雨の昼休憩に傘を指してコンビニに向かう時に嗅いだ懐かしいような、泥臭い香り。
ゴブリンの手が伸びてくる。
ーーー死ぬ前に、…SEX…してみたかったぜ…
腰がすくんで動けず冷たい岩の冷たさを感じ、ゴブリンの爪が自分の目の前に向けられるのを覚悟した瞬間だった。
5
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる