元童貞社畜が異世界（転生？転移？）したらインキュバスになっただと？！

始まりの扉

～プロローグ～

ぴちゃん―――――――――――――――――――――――――



「――――ッ！！！！」

俺は自分の首筋に冷えた水の感触で声も出ないくらいに驚き、飛び起きた。

「え…？」

体が身震いをした。首筋に落ちた水滴が胸元に垂れる。
あたりを見ると、薄暗く、冷たい風がごうごうと唸っている。

――――洞穴？

下を見ると、硬いごつごつとした岩。
どうやら、岩の上で眠っていたらしい。

もう一度、周りを見回すと大きな岩に囲まれていた。
天井を見上げれば、岩を伝い、冷たい水滴が俺をめがけて落ちてくる。

「こ、ここは…」


開いた口が塞がらない。
寒く、硬い岩肌に囲まれた暗闇の中で、孤独な不安を感じる。

―――俺はいったいどこにいるんだ？洞穴というよりは、洞窟か？

とにかく、暗い。完全に暗いわけではないのが救いだ。視界がなんとなくぼんやりと見える。
冷静になろうと、順を追って考える。



―――確か、今日も残業で仕事が終わらなくて、午前中に部長に苦い顔をされたばかりなのに、
先月のミスも発覚して、また今日も定時では絶対帰れないって泣きながらキーボード叩いて、
その後…

「…どうしたっけ」

え？俺、死んだ？もしかして死んだ？
これ？死後の世界？地獄？だから真っ暗？
直近の生前記憶ここまで？社畜終了？まさかすぎん？
え？どうする？
え、どうしよ…でも、とりあえず、仕事、残ってる。会社に…会社に戻らなきゃ。

「えっと、出口はどこ…」


立ち上がろうと足にぐっと力を入れようとした時だった。
手に違和感を感じる。

手を見ると、見覚えのないエナメルの手袋。
特注のように、自分のサイズにフィットしている。


ん？なんだ、この格好―――。