8 / 14
エレファントの瞳
石像
しおりを挟む
***
学年が上がる報告を受けたのは夏の終わる前だった。
いや、まだ雪が残っていたかもしれない。
春の訪れを待つ前だったのは記憶している。
それも本当は定かではない。だって僕の目は彼しか感じていなかったのだ。
エマニュエルの寝息を聞かない日々に僕が慣れ始めた時の出来事だったのは確かだ。
「レオ!やばいって!エマニュエルが殴られてる!」
血相を変えて寮室に何名かが飛び込んできた。
優秀な僕の希望どおり、新しい年ではエマニュエルと同室となった。
彼も手放しで同じ部屋になったことを喜んだけれど、部屋に戻らない日もあったし、部屋にいない日もあった。
おかげで僕の成績はめきめきと伸びた。
差し詰め、僕も暇ではなかった。
後輩に絵画の筆の持ち方を伝授したり、先輩に石消しの使い方を教えたり、特体制として留学しないかと度々教授の部屋でお茶をもてなされていた。
酸味の無い珈琲が下の上で踊った。
チョコチップの入った乾燥しきったスコーンがとてもおいしく感じた。
ーーーそうだ、エマニュエルに珈琲は飲むのか質問しようと考えていたんだった。
慌てすぎた僕は窓から寮を出て、憶測で言われた場所へと走った。
僕がついてもエマニュエルは上級生に殴られていて、だらんと垂れた綺麗な顔からは血が流れていた。
頭に血が流れる感覚と目の前が真っ白になって、自分よりも一回り大きい男へ飛びついて馬乗りになった。
4人ほどの女子がキャアキャアと騒いでいる。
騒いだ声によってどよどよとギャラリーが増えていくではないか。
僕が馬乗りになろうがお構いなしに伸びているエマニュエルをまだ殴ろうとする上級生。
上級生が僕を振り払おうとエマニュエルの襟首を再度強くつかみなおしたところで後頭部に拳を一つ入れた。
上級生はよろめいたが振り返って僕の顔面へ一発かまそうと拳をあげたが、僕の寮室へ飛び込んできた三人が上級生と咄嗟に上がった僕の拳を押さえて乱闘は一時中断となった。
黄金色の土の上で砂埃まみれになったエマニュエルの横顔は、破壊された石像のように美しかった。
白いスカートの制服を着た女子の一人が、彼の口元から垂れる血液を白いレースのハンカチで拭っている。
学年が上がる報告を受けたのは夏の終わる前だった。
いや、まだ雪が残っていたかもしれない。
春の訪れを待つ前だったのは記憶している。
それも本当は定かではない。だって僕の目は彼しか感じていなかったのだ。
エマニュエルの寝息を聞かない日々に僕が慣れ始めた時の出来事だったのは確かだ。
「レオ!やばいって!エマニュエルが殴られてる!」
血相を変えて寮室に何名かが飛び込んできた。
優秀な僕の希望どおり、新しい年ではエマニュエルと同室となった。
彼も手放しで同じ部屋になったことを喜んだけれど、部屋に戻らない日もあったし、部屋にいない日もあった。
おかげで僕の成績はめきめきと伸びた。
差し詰め、僕も暇ではなかった。
後輩に絵画の筆の持ち方を伝授したり、先輩に石消しの使い方を教えたり、特体制として留学しないかと度々教授の部屋でお茶をもてなされていた。
酸味の無い珈琲が下の上で踊った。
チョコチップの入った乾燥しきったスコーンがとてもおいしく感じた。
ーーーそうだ、エマニュエルに珈琲は飲むのか質問しようと考えていたんだった。
慌てすぎた僕は窓から寮を出て、憶測で言われた場所へと走った。
僕がついてもエマニュエルは上級生に殴られていて、だらんと垂れた綺麗な顔からは血が流れていた。
頭に血が流れる感覚と目の前が真っ白になって、自分よりも一回り大きい男へ飛びついて馬乗りになった。
4人ほどの女子がキャアキャアと騒いでいる。
騒いだ声によってどよどよとギャラリーが増えていくではないか。
僕が馬乗りになろうがお構いなしに伸びているエマニュエルをまだ殴ろうとする上級生。
上級生が僕を振り払おうとエマニュエルの襟首を再度強くつかみなおしたところで後頭部に拳を一つ入れた。
上級生はよろめいたが振り返って僕の顔面へ一発かまそうと拳をあげたが、僕の寮室へ飛び込んできた三人が上級生と咄嗟に上がった僕の拳を押さえて乱闘は一時中断となった。
黄金色の土の上で砂埃まみれになったエマニュエルの横顔は、破壊された石像のように美しかった。
白いスカートの制服を着た女子の一人が、彼の口元から垂れる血液を白いレースのハンカチで拭っている。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説


BL短編まとめ(甘い話多め)
白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。
主に10000文字前後のお話が多いです。
性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。
性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。
(※性的描写のないものは各話上部に書いています)
もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。
その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。
【不定期更新】
※性的描写を含む話には「※」がついています。
※投稿日時が前後する場合もあります。
※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。
■追記
R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます)
誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる