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第9話 「夢の続き」
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男は連続して奇妙な夢を見るようになった。
あの奇妙な夢の後、幾度もセーラー服を着た少女の姿を見るようになったのだ。眠りにつくたびに、少女が男の夢の中に現れ、不思議な出来事や目を伏せたくなるような光景を共有するのだ。
「やめて!離して!」
「誰に向かって言ってる!」
二度目の夢では、セーラー服を着た少女が自分の父親らしき人物に殴られる様子が男の目の前で繰り広げられていた。
逃げる彼女が目の前を走り、壁際へ追いやられている姿が鮮明に目に焼き付く。
少女は頬を殴られ、美しい唇の端が切れ、赤く濡れた。
思わず目をそらしたくなる光景から、男は彼女を助けようと腕を伸ばすが、何故か足は動かない。金縛りのように声をあげることもできず、ただただ見つめるしかできない。目の前で繰り広げられる一方的な行為の光景に、男は何もできず、己の状態に苦しむだけであった。
この夢は男に深い無力感と苦悩を与えた。
夢の中にいる男は夢だとは思えず、少女を友人、そして家族、元々知っていた人物に感じていたのだ。
その親近感からも男は何故、自分の力が及ばないのか、足が動かないのか、どうして少女を救えないのかと動かぬ体に自問自答した。
覚めると不思議な夢だと男は思ったが、ただただ悲しくて悲しくて悔しくて、泣くしかない自分の感情も不思議に思った。
そうして、少女が出る三度目の夢では、男自身が少女になって変わっていた。
男は自分が少女の身体を持つことに驚きつつも、三度目の夢は二度目の夢よりも酷に暴力を受ける様子を現実身に感じた。
男は、少女(自分)を殴るこの男は、やはり少女と何らかの血縁のある人物だと確信した。
殴られ、逃げて追いかけられるも逃げ切ることはできなかった。ウサギを追う狼のように、いとも簡単に少女に成り代わった男は、風になびく襟を掴まれ後ろへ引っ張られた。
夢で少女に成り代わった男は、絶望した。
華奢な腕では到底自分よりも2,3倍の腕力にはかなわず、抵抗するものなら声を荒げて先ほどより強い力で腕を掴まれ、顎が飛んでいきそうになるほどの平手打ちが飛んでくる。髪を掴まれ、壁に顔を打ち付けられる。
男は触れる屈辱を肌で痛み感じ、少女と心と体が一体化するような感覚を味わった。泣いても泣いても、苦しい嵐はやむことなく、それは男にとって、ただ夢の中で起こっているだけではなく、内なる闘いや苦しみの現れとして感じられたのだ。
―――いったいいつ終わるのか、このまま夢から覚めないのか…。
男は心の中で叫ぶが、声は出ることなく、ただ苦痛を味わうだけであった。
抵抗をやめると目の前の男の手は服を脱がそうと身体をまさぐる。すると突如、少女である自分の口から悲鳴が上がった。少女は覆いかぶさる男の首に噛みついた。絶叫でのけぞる目の前の男が少女を見下ろした。
片手で首を抑え、もう片方の拳が少女に降りかかる。
***
恐る恐る目開けると、男は見覚えのある坂に立っていた。
少女が男子学生の服を脱いで燃え盛る火の海となった山を見ながら大笑いしている。
「危ないよ!」男が叫ぼうとしたが、少女は男に向かって優しく微笑んだ。
男はドキリとした。
すると男はまた少女に乗り移っていた。
男になった少女は、燃え盛る火の海と化した山を目の前にして笑いを止めることができなかった。
そうしてこう思った『すべて上手くいった…!いい気味だ!』と。
男は自分の身体が少女のものに変わり、再び彼女の感情や思考を共有するような感覚になっていた。
火の海が広がり、山々が燃え盛る中、男は少女と一体化したことで、彼女の興奮や奇妙な喜びを感じていた。駆け寄って来た隣で震えている男を愛しく感じた。
「燃える!火の坂が燃える!これで本当に火の坂になった!」
少女は叫んだ。全てから解放された感覚が絶望的に気持ちがよかった。
あの奇妙な夢の後、幾度もセーラー服を着た少女の姿を見るようになったのだ。眠りにつくたびに、少女が男の夢の中に現れ、不思議な出来事や目を伏せたくなるような光景を共有するのだ。
「やめて!離して!」
「誰に向かって言ってる!」
二度目の夢では、セーラー服を着た少女が自分の父親らしき人物に殴られる様子が男の目の前で繰り広げられていた。
逃げる彼女が目の前を走り、壁際へ追いやられている姿が鮮明に目に焼き付く。
少女は頬を殴られ、美しい唇の端が切れ、赤く濡れた。
思わず目をそらしたくなる光景から、男は彼女を助けようと腕を伸ばすが、何故か足は動かない。金縛りのように声をあげることもできず、ただただ見つめるしかできない。目の前で繰り広げられる一方的な行為の光景に、男は何もできず、己の状態に苦しむだけであった。
この夢は男に深い無力感と苦悩を与えた。
夢の中にいる男は夢だとは思えず、少女を友人、そして家族、元々知っていた人物に感じていたのだ。
その親近感からも男は何故、自分の力が及ばないのか、足が動かないのか、どうして少女を救えないのかと動かぬ体に自問自答した。
覚めると不思議な夢だと男は思ったが、ただただ悲しくて悲しくて悔しくて、泣くしかない自分の感情も不思議に思った。
そうして、少女が出る三度目の夢では、男自身が少女になって変わっていた。
男は自分が少女の身体を持つことに驚きつつも、三度目の夢は二度目の夢よりも酷に暴力を受ける様子を現実身に感じた。
男は、少女(自分)を殴るこの男は、やはり少女と何らかの血縁のある人物だと確信した。
殴られ、逃げて追いかけられるも逃げ切ることはできなかった。ウサギを追う狼のように、いとも簡単に少女に成り代わった男は、風になびく襟を掴まれ後ろへ引っ張られた。
夢で少女に成り代わった男は、絶望した。
華奢な腕では到底自分よりも2,3倍の腕力にはかなわず、抵抗するものなら声を荒げて先ほどより強い力で腕を掴まれ、顎が飛んでいきそうになるほどの平手打ちが飛んでくる。髪を掴まれ、壁に顔を打ち付けられる。
男は触れる屈辱を肌で痛み感じ、少女と心と体が一体化するような感覚を味わった。泣いても泣いても、苦しい嵐はやむことなく、それは男にとって、ただ夢の中で起こっているだけではなく、内なる闘いや苦しみの現れとして感じられたのだ。
―――いったいいつ終わるのか、このまま夢から覚めないのか…。
男は心の中で叫ぶが、声は出ることなく、ただ苦痛を味わうだけであった。
抵抗をやめると目の前の男の手は服を脱がそうと身体をまさぐる。すると突如、少女である自分の口から悲鳴が上がった。少女は覆いかぶさる男の首に噛みついた。絶叫でのけぞる目の前の男が少女を見下ろした。
片手で首を抑え、もう片方の拳が少女に降りかかる。
***
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