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++++第一章
フロントマン
しおりを挟む「柊井樹」
僕が柊井樹を知ってのは小学生の頃だった。
フィクションなのかノンフィクションなのかわからない推理小説「探偵は何処に」を読んだのがファンになるきっかけの糸だった。
そのあとすぐに、彼のが原作の連続ドラマが放映された。男女の恋愛を描いた恋愛ドラマだ。
元の原作にあたる小説は短編小説であったがドラマの後に長編とし書き直され発売される。
もちろん、とんでもなく売れた。ドラマにはないその後のシーンなども描かれ、もう続きは出ないのかとわくわくしたほどだ。
当時、まだ幼かったが小さいながらに人の心情を描くのがうまい人だと思った。
切ない恋心に嫉妬や憎悪。幸せな描写。そして、出演者たちの未来を読者へ想像させる表現。
僕は柊井樹の才能に魅了された。そして、今日彼との会話から新たな視点を得る。
「お客様だぞ…」
僕は完全に舞い上がっていた。20年。約20年
「本当に、魅力的な人だった…」
柊井樹は、思っていた人物とは確かに異なっていた。
とても、いい意味で。
品があって、物静かでしとやかで。
でも、艶があって妖艶で影があった。大人の、色気…?
『さあ、お部屋にご案内いたします。旅館の温かさと自然の癒しを感じていただけると嬉しいです』
『お名前を、お伺いしても?』
『申し遅れました、樹木蓮と申します。何かございましたら難ありとお呼び出しください』
『あぁ、では早速なのですが、蓮さん…』
―――うわ!思い出した!!
先生の、甘えるようなかわいい顔
「あの人はただ夕飯が出るのか気にしていただけなのに…!」
何故、こんな気持ちになるのかわからなかった。
下界(※温泉街は山の上のため、ビル街のことを下界と呼んでいる)で噂の”推し活”ってこうゆうこと?
「ファンの気持ち複雑…」
自分よりも、10ははなれた男性に、かわいいと感じた。
「僕…」
「なに?」
「うわ!優斗!」
幼馴染であり、同じく白鳳荘で働く優斗。
「僕の部屋に入るなって何回言ったらわかるんだよ!」
「いーだろ~小さいころからこうなんだからー」
年甲斐もなく、頬を膨らませる優斗にあきれ顔でため息をつく。
奥の指に指を絡めて、優斗は僕を扉へいざなう。
フロントマンの時間―――。
さぁ、仕事だ。
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