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第2話

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 「……女性を待たせるなんて余程自分に自信があるのね水原君。」

 放課後、玄関前に行くと不機嫌そうなお嬢様が俺を睨み付けていた。
 いや違うんだ、俺は別にコン部のパソコンを勝手に使ってギャルゲーしていただけなんだ。
 決して朝に『……また放課後…。』とか言ってたの忘れてたとかそんなんじゃな…ごめんなさい怖いっす。後神ゲーでした泣いてました。
 だが、そんなことを素直に言ってしまえば神楽崎の事だボロクソに文句言われるに決まっている。
 少し良心が痛まないでもないが、旨いこと誤魔化させてもらおう。
 
 「悪い悪い、ちょっと臨時で委員会に呼ば
れてよ。」

 「保険委員会の仕事は朝で終わっていた筈よ。この時間で活動しているのは図書委員と生徒会だけ。」

 「ちょっと待て、俺お前に保険委員だって言ったことあったか。なんで知ってんだよ怖いわ。」

 「企業秘密よ。」

 そう言いながら早急に立ち去ろうとする。………誤魔化すの下手くそなの治って無かったんだな。
 昔は面白がってコイツを良くからかってたんだが、今やれば俺は首から下とお別れをしないといけない。
 後ホントに何で知ってんすかマジで怖いっす。ちょっと引いた。

 「……なあ、前から聞きたかっただけど俺に詳しすぎじゃない?ソース何処だよ
怖いんだよ。」

 コイツが転校してきて直ぐに俺のクラスに来たり、休み時間教室意外の場所に行くと何時も至り、玄関前にいないやった!と思って家に帰ったら母ちゃんとおやつ食ってるし。
 とにかく、この女はホントに昔から変わりすぎ。
 何をミスったらこんなホラー映画に出て来る殺人鬼見たいなのに育つのか1度おじさん達に話を聞きに行きたい。
 
 「企業秘密よ。」

 「オーケーオーケー、答える気が無いのは解った。答えなくていいから以後気をつけてくれマジで……。」

 「そんなことより千香さんの所に行かなくていいの?今日は貴方が迎えに行く日でしょ。」

 俺のプライバシーはそんなことらしいです。

 「ってああ!!……そうだよ朝母ちゃんに言われたんだった…。悪い神楽崎ダッシュで行って…………お前何で知ってんの?」

 「企業秘密よ。」

 「ああそうですね、こんちくしょー!!」

 コイツは相手したら負けだと思いながら全力で愛する妹の元に向かった。





☆☆☆☆

 「千香!迎えにきたぞ。」

 「おお!!お兄ちゃんベリーベリージーニアスだね!!」
 
 「うん愛する妹よ。憶えたての英語を使いたい気持ちは死ぬほど解る。けどそれだと俺が超超天才になっちまう、一周回って馬鹿的な意味にしか聞こえねぇぞ。」

 「じゃあお兄ちゃんにはピッタリジャストだね!」

 「誰ですか?コイツに変なこと教えたの、ひん剥いてやるからでてこい。」

 誰も俺と目を負わせたがらねぇ……。何全員グルか?幼稚園代えようかな……。

 「お兄ちゃんお兄ちゃん、ヤンキーの物真似ははいいから早く行こうよ。千香お腹すいた~。」

 「解った解った、だから制服引っ張るな伸びるから。後これはヤンキーじゃねぇ愛する物を守るヒーローの顔だろ?」

 「うんうん!お兄ちゃんはチンピラピラ~!!」

 5歳の妹に舐め腐られてる俺っていったい……。
 この年頃の子供はスポンジ見てぇに何でも吸い込むとは聞いたが汚水を吸いすぎでは無いだろうか。
 このまま行くと将来的に神楽崎2号が誕生する未来しか見えない。
 
 ちょっとナイーブになりつつも千香の手を握り、先生方に軽い挨拶だけ済ませ帰路をたどった。

 「なあ千香ちゃんよぉ、君はさ俺のこと好きなの?ぞんざいに扱われすぎてお兄ちゃんそろそろヤバいんだけど。」

 「お兄ちゃんの事は大好きだよ!お兄ちゃんと結婚する~。」

 「そうか良かった……。でも俺と結婚したいならもうちょっとでいいから優しく出来ないの?愛を感じないんだけど。」

 そう俺が聞くと千香は良い笑顔でこう言った。

 「だってお兄ちゃん一生結婚出来なそうだし千香と結婚するしかルートないじゃん。」

 この子はいずれ大物になる俺はそう確信した……。
 
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