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第九話 米太平洋艦隊撃滅作戦 弐
しおりを挟む2016. 6. 26
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学園の東。そこには学園が所有する広い闘技場がある。
「ティア様ぁっ。そろそろお時間ですよぉぉっ」
そう声を張り上げて叫ぶシルは、観覧席にいた。
闘技場では十数人の黒装束を纏った十代後半から二十代前半の男女が荒い息をしながらティアを囲んでいる。
十二歳を目前に控え、大人へと成長を始めたすらりと伸びた手足。今は動きやすいように制服の上衣を脱いでシンプルな上衣一枚になっているティア。
学園では下ろしている長い少々癖のある髪は一つに束ねられ、好戦的な瞳と、不敵に笑う口元が魅力的だった。
シルの言葉を受けて、ティアは戦闘態勢を取り、前屈みになっていた体を起こす。
「もう一時間も経ったの? あと三十分追加しようかな」
この後、一時間後に高学部の卒業式がある。小学部の代表メンバーであるティアはこれに出席し、更に小学部の代表として祝辞を述べなくてはならないのだ。
「ダメですよ。ギリギリになってしまいますからっ」
「どうにかしてよ」
「どうにかって……どっちをどうする意味で言っていますかっ⁉︎」
午前中と、一時間前にあった中学部の卒業式でも壇上に上がったティアは、いいかげんストレスが溜まっていた。
ヒュースリー伯爵令嬢のティアラールとして振る舞うのは、やはりティアにとっては窮屈なのだ。
「当然、式をどうにかするんだよ」
その時、キルシュとアデルの気配を感じた。
「ティアっ! 打ち合わせの時間だぞっ」
「シルさんに無茶言っちゃダメだよ~」
観覧席から顔を覗かせたキルシュとアデルがそんな注意をする。
これにティアは顔を歪ませ、肩を落とす。
「ちぇっ、お迎えまで来ちゃったか……仕方ない。今日はこれで解散」
「「「はっ。ご指導、ありがとうございましたっ!」」」
一斉にティアを取り囲んでいた黒装束の者達が深く頭を下げた。
ティアは一つ頷いてキルシュ達のいる観覧席の方へと歩み寄っていく。そして、飛び上がると同時に風を纏うと、二メール程ある観覧席と闘技場を隔てる壁を飛び越えた。
「この忙しい時に、何をしてるんだ」
「あの人達って、クィーグの?」
「うん。修練生の人達。卒業式で人もいないから、今日はここで訓練らしくて。非常時に直ぐに呼べるしって事みたい」
クィーグの学園担当は今日の卒業式の為に特別な警備体制を取っている。
貴族の子息が殆どという事で、当然、卒業生達の保護者は貴族だ。
そんな貴族達が多く出入りする今日は、学園の警備を任せられているクィーグの一族としては力が入る。
保護者達が連れている護衛達に仕事をさせる機会など作るものかと万全の体制を敷いていた。
そして、万が一人手が必要となれば、いつでも呼び出せる場所として、闘技場で修練生達を待機させているのだ。
「だからって、なんでティアが訓練つけてんの?」
「そうだ。こんな時になに本気出しているんだ」
「ええ~っと……」
二人に責められ、ティアは目をそらす。その視線の先にシルが駆けてきていた。
「ティア様。お召し物を」
「ありがと」
シルはティアが脱いだ制服を持って来たのだ。
「ちょっとティアっ、ここで脱いだの?」
「うん? そうだけど?」
ティアはシルやキルシュを気にする事なくズボンも変えようとしている。恥じらいもなにもあったものではない。
しかし、そこは抜かりないようだ。
「ご心配は無用です」
そう言ってシルは、どこから取り出したのか大きな薄い布をティアの頭から被せる。
その布は広がって、ティアの体に触れる前にふわりと浮き上がり、まるで四角く長い箱でもそこにあるように形どる。これによってティアの着替えは人目に晒される事はない。
「どうやってるの?」
あまりにも不思議な光景に、アデルが問いかける。
「これも魔術なのですが……我ら一族の秘術ですのでお教えできません」
「へぇ……便利だね」
「秘術……こういうことを想定してのか?」
「どのような主の要望にも応えられるよう精進しておりますので」
「もう、ティアの思うがままだな……」
「……お疲れ様です……」
有能な一族のお陰で、ティアの自由度が増しているという事実には目を瞑る事にするアデルとキルシュだ。
************************************************
舞台裏のお話。
ウル「見つかりましたか?」
サクヤ「ううん……アデルちゃんとキルシュくんに任せて来たわ……」
ウル「間に合わせるんでしょうけど、心配ですからね」
サクヤ「そうなのよね……イマイチ信用できないっていうのか……」
ウル「授業もサボりませんけどね」
サクヤ「あれでまだ模範生だもの……」
ウル「要領が良いんでしょう」
サクヤ「それはあるわね。それに、あの子は最後の締め方を知ってるわ」
ウル「さすがは、元王女です……」
サクヤ「あら。ようやく認めたの?」
ウル「はぁ……ただ、女神である事は認めたくありません」
サクヤ「うん……それは分かる」
ウル「この世に救いなどないのでしょうか……」
サクヤ「……ウルって、断罪の女神の話、小ちゃい時から好きだったものね……」
ウル「はいっ。ですから、例え天使が認めても、私は認めませんっ」
サクヤ「まぁ、がんばってイメージを守ってやってよ……」
ウル「清く、正しく、そして慈悲深い。それが女神サティア様ですっ」
サクヤ「あぁ~……それはティアとは違うわね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
憧れは大切に。
大きくなったティアちゃん。
奔放に育っています。
周りがティアちゃんの要望に応えてしまうのは良くない傾向かもしれません。
ストッパー役は常につけておく必要があるでしょう。
アデルとキルシュに期待です。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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学園の東。そこには学園が所有する広い闘技場がある。
「ティア様ぁっ。そろそろお時間ですよぉぉっ」
そう声を張り上げて叫ぶシルは、観覧席にいた。
闘技場では十数人の黒装束を纏った十代後半から二十代前半の男女が荒い息をしながらティアを囲んでいる。
十二歳を目前に控え、大人へと成長を始めたすらりと伸びた手足。今は動きやすいように制服の上衣を脱いでシンプルな上衣一枚になっているティア。
学園では下ろしている長い少々癖のある髪は一つに束ねられ、好戦的な瞳と、不敵に笑う口元が魅力的だった。
シルの言葉を受けて、ティアは戦闘態勢を取り、前屈みになっていた体を起こす。
「もう一時間も経ったの? あと三十分追加しようかな」
この後、一時間後に高学部の卒業式がある。小学部の代表メンバーであるティアはこれに出席し、更に小学部の代表として祝辞を述べなくてはならないのだ。
「ダメですよ。ギリギリになってしまいますからっ」
「どうにかしてよ」
「どうにかって……どっちをどうする意味で言っていますかっ⁉︎」
午前中と、一時間前にあった中学部の卒業式でも壇上に上がったティアは、いいかげんストレスが溜まっていた。
ヒュースリー伯爵令嬢のティアラールとして振る舞うのは、やはりティアにとっては窮屈なのだ。
「当然、式をどうにかするんだよ」
その時、キルシュとアデルの気配を感じた。
「ティアっ! 打ち合わせの時間だぞっ」
「シルさんに無茶言っちゃダメだよ~」
観覧席から顔を覗かせたキルシュとアデルがそんな注意をする。
これにティアは顔を歪ませ、肩を落とす。
「ちぇっ、お迎えまで来ちゃったか……仕方ない。今日はこれで解散」
「「「はっ。ご指導、ありがとうございましたっ!」」」
一斉にティアを取り囲んでいた黒装束の者達が深く頭を下げた。
ティアは一つ頷いてキルシュ達のいる観覧席の方へと歩み寄っていく。そして、飛び上がると同時に風を纏うと、二メール程ある観覧席と闘技場を隔てる壁を飛び越えた。
「この忙しい時に、何をしてるんだ」
「あの人達って、クィーグの?」
「うん。修練生の人達。卒業式で人もいないから、今日はここで訓練らしくて。非常時に直ぐに呼べるしって事みたい」
クィーグの学園担当は今日の卒業式の為に特別な警備体制を取っている。
貴族の子息が殆どという事で、当然、卒業生達の保護者は貴族だ。
そんな貴族達が多く出入りする今日は、学園の警備を任せられているクィーグの一族としては力が入る。
保護者達が連れている護衛達に仕事をさせる機会など作るものかと万全の体制を敷いていた。
そして、万が一人手が必要となれば、いつでも呼び出せる場所として、闘技場で修練生達を待機させているのだ。
「だからって、なんでティアが訓練つけてんの?」
「そうだ。こんな時になに本気出しているんだ」
「ええ~っと……」
二人に責められ、ティアは目をそらす。その視線の先にシルが駆けてきていた。
「ティア様。お召し物を」
「ありがと」
シルはティアが脱いだ制服を持って来たのだ。
「ちょっとティアっ、ここで脱いだの?」
「うん? そうだけど?」
ティアはシルやキルシュを気にする事なくズボンも変えようとしている。恥じらいもなにもあったものではない。
しかし、そこは抜かりないようだ。
「ご心配は無用です」
そう言ってシルは、どこから取り出したのか大きな薄い布をティアの頭から被せる。
その布は広がって、ティアの体に触れる前にふわりと浮き上がり、まるで四角く長い箱でもそこにあるように形どる。これによってティアの着替えは人目に晒される事はない。
「どうやってるの?」
あまりにも不思議な光景に、アデルが問いかける。
「これも魔術なのですが……我ら一族の秘術ですのでお教えできません」
「へぇ……便利だね」
「秘術……こういうことを想定してのか?」
「どのような主の要望にも応えられるよう精進しておりますので」
「もう、ティアの思うがままだな……」
「……お疲れ様です……」
有能な一族のお陰で、ティアの自由度が増しているという事実には目を瞑る事にするアデルとキルシュだ。
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舞台裏のお話。
ウル「見つかりましたか?」
サクヤ「ううん……アデルちゃんとキルシュくんに任せて来たわ……」
ウル「間に合わせるんでしょうけど、心配ですからね」
サクヤ「そうなのよね……イマイチ信用できないっていうのか……」
ウル「授業もサボりませんけどね」
サクヤ「あれでまだ模範生だもの……」
ウル「要領が良いんでしょう」
サクヤ「それはあるわね。それに、あの子は最後の締め方を知ってるわ」
ウル「さすがは、元王女です……」
サクヤ「あら。ようやく認めたの?」
ウル「はぁ……ただ、女神である事は認めたくありません」
サクヤ「うん……それは分かる」
ウル「この世に救いなどないのでしょうか……」
サクヤ「……ウルって、断罪の女神の話、小ちゃい時から好きだったものね……」
ウル「はいっ。ですから、例え天使が認めても、私は認めませんっ」
サクヤ「まぁ、がんばってイメージを守ってやってよ……」
ウル「清く、正しく、そして慈悲深い。それが女神サティア様ですっ」
サクヤ「あぁ~……それはティアとは違うわね……」
つづく?
なんて事が起こってましたとさ☆
読んでくださりありがとうございます◎
憧れは大切に。
大きくなったティアちゃん。
奔放に育っています。
周りがティアちゃんの要望に応えてしまうのは良くない傾向かもしれません。
ストッパー役は常につけておく必要があるでしょう。
アデルとキルシュに期待です。
では次回、また明日です。
よろしくお願いします◎
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著者のkotoと申します。
応援や感想、更にはアドバイスなど頂けると幸いです。
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多々間違える部分があると思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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