74 / 78
狭間
しおりを挟む
「ん、、ま、、眩しい、、」
あまりの眩しさで私は目を覚ました。
頭がぼんやりとして自分に何が起こったのか直ぐには思い出せなかった。
身体を起こしながら辺りを見渡し息を飲む。
「ここは?」
目の前に広がるのは一面の花畑だった。
黄色や白の可愛らしい小花が咲き乱れているのだが、それは見た事も無い花で、キラキラとまるで星の様に輝きながら咲いているのだ。
「綺麗、、。」
上を見れば、空は青色では無く薄紫色の空が広がり、銀色の星が瞬いている。
この世のものとは思えない不思議な、そして美しい光景だった。
「ここは一体、、?」
何か思い出しかけてズキリと頭が痛んだ。針で刺されたような鋭い痛みに身体がギュッと固くなる。
しばらくして痛みが治っても、また思い出そうとすれば同じ痛みが頭を襲うので私は思い出す事を諦める事にした。
仕方無く花畑を歩けば、突然子供達の笑い声が聞こえてきた。
「人が、、いるの?」
この場所にいるのはどうやら私1人では無かったらしい。
その声に引き寄せられるように足がそちらに向けば、段々と気持ちは焦り、遠くに小さな人影が見え始ればいてもたってもいられずに必死で足を動かした。
しかし、不思議な事にどんなに走っても息が上がる事も無く、心臓だってドキドキ煩く打つ事もなかった。
私が走ればキラキラ輝く小花が瞬きながらフワリと跳ね上がる。
その幻想的な世界を不思議に思う気持ちも少しずつ薄れていく。
もしかしたら自分はもう死んでしまったのかもしれない。そんな思いが湧いてきた。
その時、遠くに見えていた人影が突如目の前に現れた。
「えっ!?」
そしてその子供達の顔を見て驚き絶句した。
「コロン?ステファニー?」
知らない子供達に混ざって領地に住んでいた子供が2人混ざっていたのだ。
コロンは漁師の息子で、赤い癖毛の髪が羊を連想させる可愛らしい顔の10歳になる男の子。ステファニーは子爵家の子供で金の髪に空色の瞳、肌の色が透き通るほど白く利発的な顔の8歳の女の子。
「「ナタリー様!?」」
私に気付くと2人は驚いた顔をしたが、嬉しそうに駆け寄って来る。
2人を抱きとめると背をかがめてギューッと抱きしめた。
「コロン、、ステファニー、、」
涙で視界が霞んでいく。
それもそのはずだ。彼らは流行病で去年死んでしまったのだ。
自分にまとわりついて遊んでいた2人を思い出し、恐怖よりも先に温かい気持ちに包まれた。
2人にもそれが伝わったのか、嬉しそうに微笑んでいる。
「ナタリー様、、ナタリー様も死んでしまったの?」
しばらくして口を開いたのはコロンだった。ステファニーも心配そうな顔で私を見つめている。
「分からないの。私、、なぜここにいるのかしら?」
もう一度辺りを見渡してみる。コロンがナタリー様も死んだのかと聞いているのだから、ここは死んだ人の来る場所なのだろう。
「私、、大事な事を忘れている気がするわ、、。」
そんな私のおぼろげな記憶を思い出させたのは、遠くから叫ぶ男の声だった。
「、、ナタリー様!!ナタリー様!!」
遠くから私の名前を誰かが必死に呼んでいる。
「、、誰かしら?」
あまりにも必死に私の名前を呼ぶので、身体が強張り自然と眉間にシワが寄って行く。
子供達を背中に隠し身構えたが、近付いて来る人を見ればそれは見知った人だった。
「ピエール様!?」
私の名前を呼んでいたのは、バゼルハイド王の側近ピエール様だったのだ。
彼はやはり死んでいたのかと、、そう思った時に忘れていたら記憶が次々と蘇って来た。
「私、、死んだの、、」
最後の記憶、それはマリアさんがわたしを嘲笑う顔、そしてそんな私を心配そうに覗き込んだカイエンの顔だった。
「死んでいる場合では無いのに。」
痛いほど握りしめた拳をピエール様が包み込んだ。
「ナタリー様、あなたは死んでいません。」
「死んでいない?」
神経質に感じていたピエール様の顔が柔らかに微笑まれる。
「あなたに会わせたい人がいます。」
「会わせたい人?」
ピエール様の言葉を繰り返すばかりの私に優しく頷いた彼は、私の手を握るとこちらですとどこかへ連れて行こうとする。
「「ナタリー様バイバイ!!」」
その声に振り返ればコロンとステファニーが笑顔で手を振っていた。
彼らともう会えないのだと本能で感じた。
自然と溢れ落ちる涙を彼らに見せないように慌てて拭うと精一杯の笑顔で手を振った。
「コロン!!ステファニー!!あなた達の顔が見れて嬉しかった!!!」
その声に嬉しそうにニコッと笑うと、2人はキャーキャーとまた子供達と走り始めていた。
「、、ナタリー様、急がねば。」
「、、えぇ。」
いつまでも彼らを見つめる私の手をピエール様が引っ張る。
「分かっています。」
そう言った私の瞳はもう彼らを映してはいなかった。
今出来る事をしなければ、彼らのようにまた大切な人を私は失う事になる。
「行きましょう!!」
後悔をしない為に私は進む。
あまりの眩しさで私は目を覚ました。
頭がぼんやりとして自分に何が起こったのか直ぐには思い出せなかった。
身体を起こしながら辺りを見渡し息を飲む。
「ここは?」
目の前に広がるのは一面の花畑だった。
黄色や白の可愛らしい小花が咲き乱れているのだが、それは見た事も無い花で、キラキラとまるで星の様に輝きながら咲いているのだ。
「綺麗、、。」
上を見れば、空は青色では無く薄紫色の空が広がり、銀色の星が瞬いている。
この世のものとは思えない不思議な、そして美しい光景だった。
「ここは一体、、?」
何か思い出しかけてズキリと頭が痛んだ。針で刺されたような鋭い痛みに身体がギュッと固くなる。
しばらくして痛みが治っても、また思い出そうとすれば同じ痛みが頭を襲うので私は思い出す事を諦める事にした。
仕方無く花畑を歩けば、突然子供達の笑い声が聞こえてきた。
「人が、、いるの?」
この場所にいるのはどうやら私1人では無かったらしい。
その声に引き寄せられるように足がそちらに向けば、段々と気持ちは焦り、遠くに小さな人影が見え始ればいてもたってもいられずに必死で足を動かした。
しかし、不思議な事にどんなに走っても息が上がる事も無く、心臓だってドキドキ煩く打つ事もなかった。
私が走ればキラキラ輝く小花が瞬きながらフワリと跳ね上がる。
その幻想的な世界を不思議に思う気持ちも少しずつ薄れていく。
もしかしたら自分はもう死んでしまったのかもしれない。そんな思いが湧いてきた。
その時、遠くに見えていた人影が突如目の前に現れた。
「えっ!?」
そしてその子供達の顔を見て驚き絶句した。
「コロン?ステファニー?」
知らない子供達に混ざって領地に住んでいた子供が2人混ざっていたのだ。
コロンは漁師の息子で、赤い癖毛の髪が羊を連想させる可愛らしい顔の10歳になる男の子。ステファニーは子爵家の子供で金の髪に空色の瞳、肌の色が透き通るほど白く利発的な顔の8歳の女の子。
「「ナタリー様!?」」
私に気付くと2人は驚いた顔をしたが、嬉しそうに駆け寄って来る。
2人を抱きとめると背をかがめてギューッと抱きしめた。
「コロン、、ステファニー、、」
涙で視界が霞んでいく。
それもそのはずだ。彼らは流行病で去年死んでしまったのだ。
自分にまとわりついて遊んでいた2人を思い出し、恐怖よりも先に温かい気持ちに包まれた。
2人にもそれが伝わったのか、嬉しそうに微笑んでいる。
「ナタリー様、、ナタリー様も死んでしまったの?」
しばらくして口を開いたのはコロンだった。ステファニーも心配そうな顔で私を見つめている。
「分からないの。私、、なぜここにいるのかしら?」
もう一度辺りを見渡してみる。コロンがナタリー様も死んだのかと聞いているのだから、ここは死んだ人の来る場所なのだろう。
「私、、大事な事を忘れている気がするわ、、。」
そんな私のおぼろげな記憶を思い出させたのは、遠くから叫ぶ男の声だった。
「、、ナタリー様!!ナタリー様!!」
遠くから私の名前を誰かが必死に呼んでいる。
「、、誰かしら?」
あまりにも必死に私の名前を呼ぶので、身体が強張り自然と眉間にシワが寄って行く。
子供達を背中に隠し身構えたが、近付いて来る人を見ればそれは見知った人だった。
「ピエール様!?」
私の名前を呼んでいたのは、バゼルハイド王の側近ピエール様だったのだ。
彼はやはり死んでいたのかと、、そう思った時に忘れていたら記憶が次々と蘇って来た。
「私、、死んだの、、」
最後の記憶、それはマリアさんがわたしを嘲笑う顔、そしてそんな私を心配そうに覗き込んだカイエンの顔だった。
「死んでいる場合では無いのに。」
痛いほど握りしめた拳をピエール様が包み込んだ。
「ナタリー様、あなたは死んでいません。」
「死んでいない?」
神経質に感じていたピエール様の顔が柔らかに微笑まれる。
「あなたに会わせたい人がいます。」
「会わせたい人?」
ピエール様の言葉を繰り返すばかりの私に優しく頷いた彼は、私の手を握るとこちらですとどこかへ連れて行こうとする。
「「ナタリー様バイバイ!!」」
その声に振り返ればコロンとステファニーが笑顔で手を振っていた。
彼らともう会えないのだと本能で感じた。
自然と溢れ落ちる涙を彼らに見せないように慌てて拭うと精一杯の笑顔で手を振った。
「コロン!!ステファニー!!あなた達の顔が見れて嬉しかった!!!」
その声に嬉しそうにニコッと笑うと、2人はキャーキャーとまた子供達と走り始めていた。
「、、ナタリー様、急がねば。」
「、、えぇ。」
いつまでも彼らを見つめる私の手をピエール様が引っ張る。
「分かっています。」
そう言った私の瞳はもう彼らを映してはいなかった。
今出来る事をしなければ、彼らのようにまた大切な人を私は失う事になる。
「行きましょう!!」
後悔をしない為に私は進む。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
【完結】冷酷な悪役令嬢の婚約破棄は終わらない
アイアイ
恋愛
華やかな舞踏会の喧騒が響く宮殿の大広間。その一角で、美しいドレスに身を包んだ少女が、冷ややかな笑みを浮かべていた。名はアリシア・ルミエール。彼女はこの国の公爵家の令嬢であり、社交界でも一際目立つ存在だった。
「また貴方ですか、アリシア様」
彼女の前に現れたのは、今宵の主役である王子、レオンハルト・アルベール。彼の瞳には、警戒の色が浮かんでいた。
「何かご用でしょうか?」
アリシアは優雅に頭を下げながらも、心の中で嘲笑っていた。自分が悪役令嬢としてこの場にいる理由は、まさにここから始まるのだ。
「レオンハルト王子、今夜は私とのダンスをお断りになるつもりですか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる