人質となった悪役令嬢は魔王の元で幸せになれるのか?

たま

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「ん、、ま、、眩しい、、」

あまりの眩しさで私は目を覚ました。
頭がぼんやりとして自分に何が起こったのか直ぐには思い出せなかった。
身体を起こしながら辺りを見渡し息を飲む。

「ここは?」

目の前に広がるのは一面の花畑だった。
黄色や白の可愛らしい小花が咲き乱れているのだが、それは見た事も無い花で、キラキラとまるで星の様に輝きながら咲いているのだ。

「綺麗、、。」

上を見れば、空は青色では無く薄紫色の空が広がり、銀色の星が瞬いている。
この世のものとは思えない不思議な、そして美しい光景だった。

「ここは一体、、?」

何か思い出しかけてズキリと頭が痛んだ。針で刺されたような鋭い痛みに身体がギュッと固くなる。
しばらくして痛みが治っても、また思い出そうとすれば同じ痛みが頭を襲うので私は思い出す事を諦める事にした。

仕方無く花畑を歩けば、突然子供達の笑い声が聞こえてきた。

「人が、、いるの?」

この場所にいるのはどうやら私1人では無かったらしい。
その声に引き寄せられるように足がそちらに向けば、段々と気持ちは焦り、遠くに小さな人影が見え始ればいてもたってもいられずに必死で足を動かした。
しかし、不思議な事にどんなに走っても息が上がる事も無く、心臓だってドキドキ煩く打つ事もなかった。

私が走ればキラキラ輝く小花が瞬きながらフワリと跳ね上がる。
その幻想的な世界を不思議に思う気持ちも少しずつ薄れていく。
もしかしたら自分はもう死んでしまったのかもしれない。そんな思いが湧いてきた。
その時、遠くに見えていた人影が突如目の前に現れた。

「えっ!?」

そしてその子供達の顔を見て驚き絶句した。

「コロン?ステファニー?」

知らない子供達に混ざって領地に住んでいた子供が2人混ざっていたのだ。
コロンは漁師の息子で、赤い癖毛の髪が羊を連想させる可愛らしい顔の10歳になる男の子。ステファニーは子爵家の子供で金の髪に空色の瞳、肌の色が透き通るほど白く利発的な顔の8歳の女の子。

「「ナタリー様!?」」

私に気付くと2人は驚いた顔をしたが、嬉しそうに駆け寄って来る。
2人を抱きとめると背をかがめてギューッと抱きしめた。

「コロン、、ステファニー、、」

涙で視界が霞んでいく。
それもそのはずだ。彼らは流行病で去年死んでしまったのだ。
自分にまとわりついて遊んでいた2人を思い出し、恐怖よりも先に温かい気持ちに包まれた。
2人にもそれが伝わったのか、嬉しそうに微笑んでいる。

「ナタリー様、、ナタリー様も死んでしまったの?」

しばらくして口を開いたのはコロンだった。ステファニーも心配そうな顔で私を見つめている。

「分からないの。私、、なぜここにいるのかしら?」

もう一度辺りを見渡してみる。コロンがナタリー様も死んだのかと聞いているのだから、ここは死んだ人の来る場所なのだろう。

「私、、大事な事を忘れている気がするわ、、。」

そんな私のおぼろげな記憶を思い出させたのは、遠くから叫ぶ男の声だった。

「、、ナタリー様!!ナタリー様!!」

遠くから私の名前を誰かが必死に呼んでいる。

「、、誰かしら?」

あまりにも必死に私の名前を呼ぶので、身体が強張り自然と眉間にシワが寄って行く。
子供達を背中に隠し身構えたが、近付いて来る人を見ればそれは見知った人だった。

「ピエール様!?」

私の名前を呼んでいたのは、バゼルハイド王の側近ピエール様だったのだ。
彼はやはり死んでいたのかと、、そう思った時に忘れていたら記憶が次々と蘇って来た。

「私、、死んだの、、」

最後の記憶、それはマリアさんがわたしを嘲笑う顔、そしてそんな私を心配そうに覗き込んだカイエンの顔だった。

「死んでいる場合では無いのに。」

痛いほど握りしめた拳をピエール様が包み込んだ。

「ナタリー様、あなたは死んでいません。」

「死んでいない?」

神経質に感じていたピエール様の顔が柔らかに微笑まれる。

「あなたに会わせたい人がいます。」

「会わせたい人?」

ピエール様の言葉を繰り返すばかりの私に優しく頷いた彼は、私の手を握るとこちらですとどこかへ連れて行こうとする。

「「ナタリー様バイバイ!!」」

その声に振り返ればコロンとステファニーが笑顔で手を振っていた。
彼らともう会えないのだと本能で感じた。
自然と溢れ落ちる涙を彼らに見せないように慌てて拭うと精一杯の笑顔で手を振った。

「コロン!!ステファニー!!あなた達の顔が見れて嬉しかった!!!」

その声に嬉しそうにニコッと笑うと、2人はキャーキャーとまた子供達と走り始めていた。

「、、ナタリー様、急がねば。」

「、、えぇ。」

いつまでも彼らを見つめる私の手をピエール様が引っ張る。

「分かっています。」

そう言った私の瞳はもう彼らを映してはいなかった。
今出来る事をしなければ、彼らのようにまた大切な人を私は失う事になる。

「行きましょう!!」

後悔をしない為に私は進む。
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