72 / 78
聖女
しおりを挟む
到着したばかりのミカエルは攻撃を避ける事は出来なかった。
嫌、彼1人なら避けられたかもしれないが、ミカエルはフローラを背負っているのだ。
彼女を巻き添えにしない為に、草むらへ彼女を放り投げるので精一杯だった。
バァーーーン!!!という衝撃音の後に、ミカエルのグァッという叫び声がこだました。
魔力の塊はミカエルの脇腹に直撃したのだ。
ミシミシッと骨が砕ける音と共に、ミカエルの口から大量の血が吐き出された。
内臓を損傷したのだろう。
攻撃を受けた者の中で、間違い無くミカエルが1番重症だったが、皆も攻撃を受けた上に次の攻撃がいつ飛んでくるか分からない。
ミカエルを助けに行く余裕のある者は居なかった。
そんな中草むらへと投げられたフローラは、小枝が身体を引っ掻き血が流れているのも気付いていないように呆然としていた。
焦点が合わない瞳でフラフラと立ち上がるとミカエルの元へと足を運んだ。
「ミカエル?」
うつ伏せになった彼の周りは血の海と化していた。名前を呼んでも反応を示さず、フローラは真っ青になり両手で髪をグシャグシャとかき回すと声の無い悲鳴を上げた。
「、、、、、ッ!!!」
大きな赤い瞳からボロボロと涙が溢れ、フローラは血の海に膝をつくと彼の背中を揺さぶった。
「ミカエル、、お願い起きて。ミカエル!!ねぇ、、起きてよ!!」
強く揺さぶった事で彼の顔がほんの少しだけこちらに向く。彼の顔は口元が血で真っ赤に染まり、そして顔面は真っ白になっていた。
「、、、ミカエル、、そんな、、」
拳を握りしめ、フローラはガクリと肩を落とし彼の背中に顔を埋めで泣き叫んだ。
自分がついて来たばかりに彼を死なせてしまった。
光魔法も使えない自分の為に彼は、、
フローラの頭の中でグルグルとそんな言葉が巡っていた。
しかし、耳障りな笑い声でフローラは現実に連れ戻された。
涙で濡れそぼった顔を上げれば、遠くでバゼルハイドが腹を抱えて笑っているのがぼんやりと見えた。
「バゼルハイド、、王、、、」
彼は人が虫けらのように死んだと笑っているらしい。彼女の目の前は怒りで真っ赤に染まった。
「虫けら、、」
そして立ち上がるとゆっくりと歩き始める。
ハデス達が立ち上がった時にはフローラは彼らと同じ所までやって来ていた。
サイレーイスが慌ててフローラの腕を掴んだが、彼女は彼の顔を見ずにその手を振り払った。
「フローラ下がれ!ここは危ない!」
サイレーイスはもう一度フローラの手を取ったが、今度は彼の方を向いて首を振った。
彼女はミカエルの血で真っ赤に汚れており、その上髪も瞳も赤い彼女の姿は見る者を恐れさせる迫力があった。
「フローラ、、、」
サイレーイスはそれでも彼女の手を離さなかった。このまま離せば彼女が死んでしまうと思ったからだ。
その様子に気付いたバゼルハイドは愉快そうに笑った。
「小娘がこんな所に何しに来た?お前だけ特別に後でゆっくり嬲り殺してやろうか?」
ゾッとする声音で優しくそう囁いたバゼルハイドをフローラは静かに睨み付けた。そして、バゼルハイドが笑ったように彼女も微笑んだ。
「死ぬのは、、王様の方です。」
「あぁ?」
フローラの思わぬ言葉にバゼルハイドの機嫌は一気に急降下した。
元のドロリとした濁った目に戻ると、ヴェルディスに殺せと息巻いた。
ヴェルディスが再び両手を掲げた時、フローラも同じ様に天に両手を掲げた。
天から何かを授かろうと空を見上げたフローラの姿は神秘的で、誰もが目を奪われる。
「ナタリー様、、力を貸して、、」
親友の名を呼び、今度は何かを掴む様に両手を強く握りしめた。
「殺れ!!!」
「浄化!!!」
バゼルハイドとフローラが叫んだのはほぼ同時だった。
ヴェルディスの手から放たれた赤い塊が皆に飛んで行くと同時に、辺り一帯が真っ白な光に飲まれた。
「「「、、光魔法。」」」
皆がその奇跡に息を飲む。
忘れられた古代の魔法が発動した瞬間だった。
悪しき者は浄化され、傷を治し、皆を救う伝説の魔法だ。
「グアァァァァァァァア!!!!」
眩しい光の中でバゼルハイドの叫び声だけがハッキリと皆の耳に届いていた。
嫌、彼1人なら避けられたかもしれないが、ミカエルはフローラを背負っているのだ。
彼女を巻き添えにしない為に、草むらへ彼女を放り投げるので精一杯だった。
バァーーーン!!!という衝撃音の後に、ミカエルのグァッという叫び声がこだました。
魔力の塊はミカエルの脇腹に直撃したのだ。
ミシミシッと骨が砕ける音と共に、ミカエルの口から大量の血が吐き出された。
内臓を損傷したのだろう。
攻撃を受けた者の中で、間違い無くミカエルが1番重症だったが、皆も攻撃を受けた上に次の攻撃がいつ飛んでくるか分からない。
ミカエルを助けに行く余裕のある者は居なかった。
そんな中草むらへと投げられたフローラは、小枝が身体を引っ掻き血が流れているのも気付いていないように呆然としていた。
焦点が合わない瞳でフラフラと立ち上がるとミカエルの元へと足を運んだ。
「ミカエル?」
うつ伏せになった彼の周りは血の海と化していた。名前を呼んでも反応を示さず、フローラは真っ青になり両手で髪をグシャグシャとかき回すと声の無い悲鳴を上げた。
「、、、、、ッ!!!」
大きな赤い瞳からボロボロと涙が溢れ、フローラは血の海に膝をつくと彼の背中を揺さぶった。
「ミカエル、、お願い起きて。ミカエル!!ねぇ、、起きてよ!!」
強く揺さぶった事で彼の顔がほんの少しだけこちらに向く。彼の顔は口元が血で真っ赤に染まり、そして顔面は真っ白になっていた。
「、、、ミカエル、、そんな、、」
拳を握りしめ、フローラはガクリと肩を落とし彼の背中に顔を埋めで泣き叫んだ。
自分がついて来たばかりに彼を死なせてしまった。
光魔法も使えない自分の為に彼は、、
フローラの頭の中でグルグルとそんな言葉が巡っていた。
しかし、耳障りな笑い声でフローラは現実に連れ戻された。
涙で濡れそぼった顔を上げれば、遠くでバゼルハイドが腹を抱えて笑っているのがぼんやりと見えた。
「バゼルハイド、、王、、、」
彼は人が虫けらのように死んだと笑っているらしい。彼女の目の前は怒りで真っ赤に染まった。
「虫けら、、」
そして立ち上がるとゆっくりと歩き始める。
ハデス達が立ち上がった時にはフローラは彼らと同じ所までやって来ていた。
サイレーイスが慌ててフローラの腕を掴んだが、彼女は彼の顔を見ずにその手を振り払った。
「フローラ下がれ!ここは危ない!」
サイレーイスはもう一度フローラの手を取ったが、今度は彼の方を向いて首を振った。
彼女はミカエルの血で真っ赤に汚れており、その上髪も瞳も赤い彼女の姿は見る者を恐れさせる迫力があった。
「フローラ、、、」
サイレーイスはそれでも彼女の手を離さなかった。このまま離せば彼女が死んでしまうと思ったからだ。
その様子に気付いたバゼルハイドは愉快そうに笑った。
「小娘がこんな所に何しに来た?お前だけ特別に後でゆっくり嬲り殺してやろうか?」
ゾッとする声音で優しくそう囁いたバゼルハイドをフローラは静かに睨み付けた。そして、バゼルハイドが笑ったように彼女も微笑んだ。
「死ぬのは、、王様の方です。」
「あぁ?」
フローラの思わぬ言葉にバゼルハイドの機嫌は一気に急降下した。
元のドロリとした濁った目に戻ると、ヴェルディスに殺せと息巻いた。
ヴェルディスが再び両手を掲げた時、フローラも同じ様に天に両手を掲げた。
天から何かを授かろうと空を見上げたフローラの姿は神秘的で、誰もが目を奪われる。
「ナタリー様、、力を貸して、、」
親友の名を呼び、今度は何かを掴む様に両手を強く握りしめた。
「殺れ!!!」
「浄化!!!」
バゼルハイドとフローラが叫んだのはほぼ同時だった。
ヴェルディスの手から放たれた赤い塊が皆に飛んで行くと同時に、辺り一帯が真っ白な光に飲まれた。
「「「、、光魔法。」」」
皆がその奇跡に息を飲む。
忘れられた古代の魔法が発動した瞬間だった。
悪しき者は浄化され、傷を治し、皆を救う伝説の魔法だ。
「グアァァァァァァァア!!!!」
眩しい光の中でバゼルハイドの叫び声だけがハッキリと皆の耳に届いていた。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる