人質となった悪役令嬢は魔王の元で幸せになれるのか?

たま

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魔法陣

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「ねぇ、いつになったらこの女死ぬの?」

その場に似つかわしく無い緊張感の無い声でマリアさんのボヤく声が聞こえた。

「、、威力を上げるか」

次に王の声が聞こえ、私はビクりと肩を震わせた。
魔法陣の中に閉じ込められた私は、体内から魔力が失われていくのを感じていた。
立っていられなくなり膝立ちになりながらも、意識を失うまいと王を睨み付ける。

王はドロリと濁った目を私に向けるばかりで、その目からは何の感情も読み取れなかった。

「、、ンンッ、、クゥッ、、」

私の呻き声が漏れる。
威力を上げると言って直ぐに魔法陣から立ち上がる赤い光が色濃くなった。
それと同時にごっそりと魔力を取られ視界が霞んでいく。
そんな私の変化に気付いたマリアさんが手を叩きながらピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいた。

「見て!あの女苦しそう!フフッ良いきみだわ。ねぇ、早く死んでよ!早く早く~」

そんな声が聞こえてきたが腹を立てる気力も無く、ガクリと仰向けに倒れ込んだ。その目には無機質な天井が写る。

「、、ハデス様」

ここに居ない彼の事を思い、瞳から一筋の涙が溢れた。
結局私はマリアさんに学園に居た頃も、魔物達から逃げた先の生活でも、そして今も、、手の中で転がされ彼女に勝つ事は叶わなかったのかったのか。
悔しくて、悲しくて、そして情けなかった。

「、、皆、ごめんなさい。」

そう呟いて目を閉じようとした時、魔法陣の威力に耐え切れなくなった古城がガラガラと音を立てて崩れ始めた。
マリアさん達は慌てふためいてこの場を離れて行き、上の階からはいくつもの悲鳴が上がっていた。
威力を上げた事で、魔法陣の光の輪の中に入っていた上の階の人達も巻き込まれてしまったのだろう。
瓦礫が光の中に消えていくのと一緒に、何人もの人達が霧の様に消えて行く姿が見えた。

その恐ろしい光景を見つめながら、私もこんな風に消えてしまうのだろうとなぜたか冷静な自分がいる。
手を空に向けて上げ見てみれば、空が透けて見えていた。

「ナタリー!!!!!」

目を閉じようとしたその時、聞き慣れたカイエンの悲鳴のような叫び声が聞こえた。
顔だけ動かして彼を探せば、少し上の方で彼の顔が見えた。

城は跡形もなく消えていき、魔法陣の外側には瓦礫が積まれていた。
地面より一段低い所に自分がいる事が分かり、あぁ地下に連れて来られていたんだなと呑気に思った。

「ナタリー!!!今助けるからしっかりしろッ!!!」

カイエンが魔法陣に手をかけようとしているのが見えたが、多くの人々の魔力を吸い込んだ魔法陣はカイエンの力を持ってでも打ち壊す事は出来ないようだ。
触れた途端彼は弾かれた様に飛ばされてしまった。

「、、カイ、、エン、、」

彼が心配だったが身体を起こす事も出来ない今、彼の姿を確認する事は出来ない。

「ダメ、、もう何も、、考えられない、、」

目を必死で開けようとしたが、どうやら限界のようだ。
視界が暗くなるのを感じながら私は意識を手放した。
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