69 / 78
魔法陣
しおりを挟む
「ねぇ、いつになったらこの女死ぬの?」
その場に似つかわしく無い緊張感の無い声でマリアさんのボヤく声が聞こえた。
「、、威力を上げるか」
次に王の声が聞こえ、私はビクりと肩を震わせた。
魔法陣の中に閉じ込められた私は、体内から魔力が失われていくのを感じていた。
立っていられなくなり膝立ちになりながらも、意識を失うまいと王を睨み付ける。
王はドロリと濁った目を私に向けるばかりで、その目からは何の感情も読み取れなかった。
「、、ンンッ、、クゥッ、、」
私の呻き声が漏れる。
威力を上げると言って直ぐに魔法陣から立ち上がる赤い光が色濃くなった。
それと同時にごっそりと魔力を取られ視界が霞んでいく。
そんな私の変化に気付いたマリアさんが手を叩きながらピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいた。
「見て!あの女苦しそう!フフッ良いきみだわ。ねぇ、早く死んでよ!早く早く~」
そんな声が聞こえてきたが腹を立てる気力も無く、ガクリと仰向けに倒れ込んだ。その目には無機質な天井が写る。
「、、ハデス様」
ここに居ない彼の事を思い、瞳から一筋の涙が溢れた。
結局私はマリアさんに学園に居た頃も、魔物達から逃げた先の生活でも、そして今も、、手の中で転がされ彼女に勝つ事は叶わなかったのかったのか。
悔しくて、悲しくて、そして情けなかった。
「、、皆、ごめんなさい。」
そう呟いて目を閉じようとした時、魔法陣の威力に耐え切れなくなった古城がガラガラと音を立てて崩れ始めた。
マリアさん達は慌てふためいてこの場を離れて行き、上の階からはいくつもの悲鳴が上がっていた。
威力を上げた事で、魔法陣の光の輪の中に入っていた上の階の人達も巻き込まれてしまったのだろう。
瓦礫が光の中に消えていくのと一緒に、何人もの人達が霧の様に消えて行く姿が見えた。
その恐ろしい光景を見つめながら、私もこんな風に消えてしまうのだろうとなぜたか冷静な自分がいる。
手を空に向けて上げ見てみれば、空が透けて見えていた。
「ナタリー!!!!!」
目を閉じようとしたその時、聞き慣れたカイエンの悲鳴のような叫び声が聞こえた。
顔だけ動かして彼を探せば、少し上の方で彼の顔が見えた。
城は跡形もなく消えていき、魔法陣の外側には瓦礫が積まれていた。
地面より一段低い所に自分がいる事が分かり、あぁ地下に連れて来られていたんだなと呑気に思った。
「ナタリー!!!今助けるからしっかりしろッ!!!」
カイエンが魔法陣に手をかけようとしているのが見えたが、多くの人々の魔力を吸い込んだ魔法陣はカイエンの力を持ってでも打ち壊す事は出来ないようだ。
触れた途端彼は弾かれた様に飛ばされてしまった。
「、、カイ、、エン、、」
彼が心配だったが身体を起こす事も出来ない今、彼の姿を確認する事は出来ない。
「ダメ、、もう何も、、考えられない、、」
目を必死で開けようとしたが、どうやら限界のようだ。
視界が暗くなるのを感じながら私は意識を手放した。
その場に似つかわしく無い緊張感の無い声でマリアさんのボヤく声が聞こえた。
「、、威力を上げるか」
次に王の声が聞こえ、私はビクりと肩を震わせた。
魔法陣の中に閉じ込められた私は、体内から魔力が失われていくのを感じていた。
立っていられなくなり膝立ちになりながらも、意識を失うまいと王を睨み付ける。
王はドロリと濁った目を私に向けるばかりで、その目からは何の感情も読み取れなかった。
「、、ンンッ、、クゥッ、、」
私の呻き声が漏れる。
威力を上げると言って直ぐに魔法陣から立ち上がる赤い光が色濃くなった。
それと同時にごっそりと魔力を取られ視界が霞んでいく。
そんな私の変化に気付いたマリアさんが手を叩きながらピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいた。
「見て!あの女苦しそう!フフッ良いきみだわ。ねぇ、早く死んでよ!早く早く~」
そんな声が聞こえてきたが腹を立てる気力も無く、ガクリと仰向けに倒れ込んだ。その目には無機質な天井が写る。
「、、ハデス様」
ここに居ない彼の事を思い、瞳から一筋の涙が溢れた。
結局私はマリアさんに学園に居た頃も、魔物達から逃げた先の生活でも、そして今も、、手の中で転がされ彼女に勝つ事は叶わなかったのかったのか。
悔しくて、悲しくて、そして情けなかった。
「、、皆、ごめんなさい。」
そう呟いて目を閉じようとした時、魔法陣の威力に耐え切れなくなった古城がガラガラと音を立てて崩れ始めた。
マリアさん達は慌てふためいてこの場を離れて行き、上の階からはいくつもの悲鳴が上がっていた。
威力を上げた事で、魔法陣の光の輪の中に入っていた上の階の人達も巻き込まれてしまったのだろう。
瓦礫が光の中に消えていくのと一緒に、何人もの人達が霧の様に消えて行く姿が見えた。
その恐ろしい光景を見つめながら、私もこんな風に消えてしまうのだろうとなぜたか冷静な自分がいる。
手を空に向けて上げ見てみれば、空が透けて見えていた。
「ナタリー!!!!!」
目を閉じようとしたその時、聞き慣れたカイエンの悲鳴のような叫び声が聞こえた。
顔だけ動かして彼を探せば、少し上の方で彼の顔が見えた。
城は跡形もなく消えていき、魔法陣の外側には瓦礫が積まれていた。
地面より一段低い所に自分がいる事が分かり、あぁ地下に連れて来られていたんだなと呑気に思った。
「ナタリー!!!今助けるからしっかりしろッ!!!」
カイエンが魔法陣に手をかけようとしているのが見えたが、多くの人々の魔力を吸い込んだ魔法陣はカイエンの力を持ってでも打ち壊す事は出来ないようだ。
触れた途端彼は弾かれた様に飛ばされてしまった。
「、、カイ、、エン、、」
彼が心配だったが身体を起こす事も出来ない今、彼の姿を確認する事は出来ない。
「ダメ、、もう何も、、考えられない、、」
目を必死で開けようとしたが、どうやら限界のようだ。
視界が暗くなるのを感じながら私は意識を手放した。
0
お気に入りに追加
199
あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる