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彼女の頭の中
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コポコポコポコポ、マリアがティーポットを傾け紅茶を注いだ。通常より高い位置から注がれる紅茶は吸い込まれるようにカップに落ちていく。
私達を連れて来たのは、彼女が今使っている部屋だった。元は執事が使っていたのだろうか、小さなキッチンの付いたその部屋はとても使い勝手の良さそうで、応接セットまで備えられていた。
向かい合ったソファーに私とカイエン、そして向かい側にアルベルト様とマリアさんが座る。
「召し上がれ。」
満足そうにマリアさんが言うと、各々カップを手に取った。
毒が入っている可能性も考えられたが、さすがにここで事を起こすことはないだろう。私は紅茶を口に含んだ。
元々毒に耐性の強い魔族のカイエンは迷わずグビグビと飲み干す。
人心地着いたところで、私は口を開いた。彼女に確認しておかねばならない事がある。
「マリアさん、あなたヴェルディス様に私を供物にと進言なさったそうですね。」
チラリとマリアさんの方を見れば、気まずそうにするどころかコロリと笑いながらこちらを意地悪い顔で見つめてきた。
「何だバレてるのね。フフッ、でもあなたをどうしてもと勧めたわけではないのよ。魔力の多い乙女と言われて思い出したのがあなただっただけで。」
「、、、。」
マリアさんの馴れ馴れしい話し方、そして悪気の無い素振りに私は絶句した。
「それにね、アルベルト様に魔王を殺せば人間は破滅するって言われて、それはまずいわって思い直したの。だから、ヴェルディス様に魔王を殺すのはやめてねって後からお願いしたのよ。」
聞いてもいない事をペラペラ話しつつ、マリアさんは嬉しそうにアルベルト様の腕にしなだれた。
横に座るカイエンも不愉快なのだろう、黒いオーラを横から感じる。彼は足を組み換え不機嫌そうにマリアさんに聞いた。
「お前、ヴェルディスとどうやって知り合ったんだ?しかも契約を果たすとは、、そんな魔力がお前にあるように感じないのだが。」
「それは、、私のお母様から悪魔召喚の魔法陣を教わったのですわ。確かに私はそんなに魔力量は多くありません。その代わりヴェルディス様に面白い提案をしたのです?」
わざとらしく身体を震わせながらマリアさんはオドオドと答えた。しかし、その目はどこか獲物を狙うような恐ろしさも感じる。
「面白い提案?」
私が聞き返せばマリアさんは見るからにガッカリした顔をした。その顔はカイエンともっと話したかったと雄弁に語っている。
アルベルト様が横にいるというのに何と強欲な、、私は呆るしかなかった。
「はぁー、そうよ。面白い提案。他から魔力を取ってきて自分の力にして、それを相手を倒す力にするっていう魔法をお母様から聞いていたの。それを教えるかわりに私と契約を結んでってお願いしたわけ。」
「、、あなた何で私にだけその話し方
、、まぁ良いわ。あなたのお母様ってどんなお方なのですか?」
マリアさんは問いに対してコトリと首を傾げた。
「ピエール様にあらかた話を聞いたのではないの?」
「、、えぇ。確かに聞いたけど、、」
そう答えながら私はアルベルト様の顔を見た。彼がマリアさんにどこまで話しているか分からないが、彼女が全て知っているのなら、彼女はヴェルディスと契約しているのだ。ピエール様が消えたのは、私達が繋がっている事が彼女から漏れたからだと決定付けれる。
「マリア、、お前、、」
アルベルト様の顔は驚愕で引きつっていた。彼の表情を見る限りマリアさんには何も教えていなかったのだろう。
アルベルト様の驚く顔を見て、マリアさんは慌てて話し始めた。
「あら、アルベルト様、私は何にも知らなかったのですよ?たまたま話しが聞こえてしまっただけで、もちろんヴェルディス様には何にも言ってませんわ!信用して下さい!!」
マリアさんはアルベルト様の右手を両手で握りしめると瞳を潤ませて彼を見つめた。
いつの間に涙を溜めたのだろう、彼女の演技には脱帽する。
「マリア、、私は君の事を信用出来ない。」
マリアさんの手を振り払うとアルベルト様は気まずそうに目を逸らしてそう呟いた。マリアさんは傷付いた顔をしたが、ピエール様が消えた以上、彼女の罪は大きい。涙を流したところで到底許されるものではない。
結局新たに分かった事は少なかったが、アルベルト様がマリアさんの事を信用していないという事実がハッキリしたのは良かったと思う。
但し彼がマリアさんの事を切れるとは思わない。彼を見ればマリアさんをまだ愛しているのは一目瞭然だった。
「無駄な時間だったわ。」
マリアさんの部屋を出た私はカイエンにボヤいた。
全くだと頷く彼を見れば幾分か心が穏やかになる。
「それで今からどうするんだ?」
「そうよ!とにかくフローラの家族を逃しましょう!それをしない事には、何も動く事は出来ないわ!」
私はカイエンの手を取ると駆け出した。バゼルハイド王から言質を取ったのだ。一刻も早くフローラの家族をハデス様達の元へ送り、ゴロランド王の一族の解放をしなければならない。
嫌な予感はまだ強く感じているが、それでも前進したような晴れやかな気持ちで城の外へ飛び出したのだった。
私達を連れて来たのは、彼女が今使っている部屋だった。元は執事が使っていたのだろうか、小さなキッチンの付いたその部屋はとても使い勝手の良さそうで、応接セットまで備えられていた。
向かい合ったソファーに私とカイエン、そして向かい側にアルベルト様とマリアさんが座る。
「召し上がれ。」
満足そうにマリアさんが言うと、各々カップを手に取った。
毒が入っている可能性も考えられたが、さすがにここで事を起こすことはないだろう。私は紅茶を口に含んだ。
元々毒に耐性の強い魔族のカイエンは迷わずグビグビと飲み干す。
人心地着いたところで、私は口を開いた。彼女に確認しておかねばならない事がある。
「マリアさん、あなたヴェルディス様に私を供物にと進言なさったそうですね。」
チラリとマリアさんの方を見れば、気まずそうにするどころかコロリと笑いながらこちらを意地悪い顔で見つめてきた。
「何だバレてるのね。フフッ、でもあなたをどうしてもと勧めたわけではないのよ。魔力の多い乙女と言われて思い出したのがあなただっただけで。」
「、、、。」
マリアさんの馴れ馴れしい話し方、そして悪気の無い素振りに私は絶句した。
「それにね、アルベルト様に魔王を殺せば人間は破滅するって言われて、それはまずいわって思い直したの。だから、ヴェルディス様に魔王を殺すのはやめてねって後からお願いしたのよ。」
聞いてもいない事をペラペラ話しつつ、マリアさんは嬉しそうにアルベルト様の腕にしなだれた。
横に座るカイエンも不愉快なのだろう、黒いオーラを横から感じる。彼は足を組み換え不機嫌そうにマリアさんに聞いた。
「お前、ヴェルディスとどうやって知り合ったんだ?しかも契約を果たすとは、、そんな魔力がお前にあるように感じないのだが。」
「それは、、私のお母様から悪魔召喚の魔法陣を教わったのですわ。確かに私はそんなに魔力量は多くありません。その代わりヴェルディス様に面白い提案をしたのです?」
わざとらしく身体を震わせながらマリアさんはオドオドと答えた。しかし、その目はどこか獲物を狙うような恐ろしさも感じる。
「面白い提案?」
私が聞き返せばマリアさんは見るからにガッカリした顔をした。その顔はカイエンともっと話したかったと雄弁に語っている。
アルベルト様が横にいるというのに何と強欲な、、私は呆るしかなかった。
「はぁー、そうよ。面白い提案。他から魔力を取ってきて自分の力にして、それを相手を倒す力にするっていう魔法をお母様から聞いていたの。それを教えるかわりに私と契約を結んでってお願いしたわけ。」
「、、あなた何で私にだけその話し方
、、まぁ良いわ。あなたのお母様ってどんなお方なのですか?」
マリアさんは問いに対してコトリと首を傾げた。
「ピエール様にあらかた話を聞いたのではないの?」
「、、えぇ。確かに聞いたけど、、」
そう答えながら私はアルベルト様の顔を見た。彼がマリアさんにどこまで話しているか分からないが、彼女が全て知っているのなら、彼女はヴェルディスと契約しているのだ。ピエール様が消えたのは、私達が繋がっている事が彼女から漏れたからだと決定付けれる。
「マリア、、お前、、」
アルベルト様の顔は驚愕で引きつっていた。彼の表情を見る限りマリアさんには何も教えていなかったのだろう。
アルベルト様の驚く顔を見て、マリアさんは慌てて話し始めた。
「あら、アルベルト様、私は何にも知らなかったのですよ?たまたま話しが聞こえてしまっただけで、もちろんヴェルディス様には何にも言ってませんわ!信用して下さい!!」
マリアさんはアルベルト様の右手を両手で握りしめると瞳を潤ませて彼を見つめた。
いつの間に涙を溜めたのだろう、彼女の演技には脱帽する。
「マリア、、私は君の事を信用出来ない。」
マリアさんの手を振り払うとアルベルト様は気まずそうに目を逸らしてそう呟いた。マリアさんは傷付いた顔をしたが、ピエール様が消えた以上、彼女の罪は大きい。涙を流したところで到底許されるものではない。
結局新たに分かった事は少なかったが、アルベルト様がマリアさんの事を信用していないという事実がハッキリしたのは良かったと思う。
但し彼がマリアさんの事を切れるとは思わない。彼を見ればマリアさんをまだ愛しているのは一目瞭然だった。
「無駄な時間だったわ。」
マリアさんの部屋を出た私はカイエンにボヤいた。
全くだと頷く彼を見れば幾分か心が穏やかになる。
「それで今からどうするんだ?」
「そうよ!とにかくフローラの家族を逃しましょう!それをしない事には、何も動く事は出来ないわ!」
私はカイエンの手を取ると駆け出した。バゼルハイド王から言質を取ったのだ。一刻も早くフローラの家族をハデス様達の元へ送り、ゴロランド王の一族の解放をしなければならない。
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