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最悪な再会
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バゼルハイド王から、フローラの一族やゴロランド王の一族をあっさりと解放すると言われ、私は狐に摘まれた様な気持ちで部屋を出た。
「カイエン、、王様は解放して良いと言ったわよね?」
「あぁ、、そう言ったな。」
カイエンとしばらく見つめ合い首を捻る。何か企んでいるのだろうが、私を引き留めておく為の人質をアッサリと解放すると言った真意が分からない。
「ナタリー!お久しぶりですぅ!」
その時、この世で一番会いたくない人の声が聞こえた。
あからさまに嫌そうな顔でそちらを見れば、柔らか茶色の髪をフワリとさせながらこちらに小走りでやって来るマリアさんの姿が見えた。
前に見た時より簡素なドレスを着ているが、それでも可愛らしい薄ピンクのドレスは裾がフワリと広がる作りをしており、私が今着ている麻で出来た生成りのワンピースに比べれば高価な物である事がうかがえる。
「お久しぶりです。」
私がワンピースの裾をつまみ軽くお辞儀をすれば、マリアさんはフフンと鼻を鳴らしながらクルリと回った。
なぜ今回ったのかと突っ込みたかったが、彼女と衝突すればろくな事にならない。無視するのが一番だろう。
「マリア!!」
マリアさんの後ろからアルベルト様が焦ったように走って来ていた。
彼は彼女のお目付役なのだろう。アルベルト様の顔を見れば申し訳ないとその目が語っていた。
「アルベルト様!!」
彼がやって来ると、マリアさんが嬉しそうにピョコンと爪先立ちになり、アルベルト様を受け止める様に腕を広げた。
「マリア、勝手に行動するなと言っただろう!」
しかし彼女の腕には捕まらず、彼女と少し距離を開けて立ち小言を言った。
「もう!アルベルト様は怒ってばかりなのだから!」
マリアさんはほっぺをぷくりと膨らまし、彼の腕を捕まえ、身体を預けるようにしな垂れながらこちらを見てきた。
勝ち誇った顔をしているのは、私がまだアルベルト様を好きだと思っているからだろう。
「相変わらず頭の弱そうな女だな。」
黙ってそれを見ていたカイエンが不愉快そうにそう言った。
「なっ!?失礼ね!!」
マリアさんは手を腰に当て怒りを表しながらカイエンの元へやって来たが、カイエンに至近距離で睨まれると顔を真っ赤にして固まっていた。
「、、何、、カッコ良すぎ、、、」
不明瞭にブツブツとマリアさんは何か口にしていたが、そんな彼女をアルベルト様は嗜める様に自分の方へ引っ張った。
「アルベルト様、、」
今度はアルベルト様の顔を見ながらポーッとしている。忙しい人だ。
「ハァー、、マリアさん、それで何か用があるのですか?私は今から行かなければならない場所があるので、急ぎでないなら今度にして欲しいのですが。」
「ハッ!」
私がそう言えば、正気に戻ったマリアさんが私の顔を指差した。
「もちろん用がありますわ!チョット話しがしたいので、ツラを貸していただけますか?」
「ツラって、、、」
どうするべきかとカイエンの方を見れば、カイエンは心底嫌そうな顔をしていた。
「マリアさん、やはり今度に、、」
そこまで言おうとして、マリアさんは私の手首を掴んだ。驚く私にマリアさんは捲し立てる様に話し始めた。
「ナタリー、私がヴェルディス様と契約したのは知ってるのでしょう?」
「、、はい。」
「どうして契約出来たのか知りたいでしょう?知りたいわよね?フフフッ、仕方ないから教えてあげるわ!ほら、私の部屋に通してあげるから、早く歩きなさい!!」
「、、、、。」
彼女は私を呼び捨てにし、命令口調でグイグイと私の腕を引っ張って行く。
魔法で吹っ飛ばしてやろうかと一瞬殺意が芽生えたが、ヴェルディスの事を知りたい気持ちも確かにある。
私は諦めて彼女に引きずられる事にしたのだった。
「アルベルト、ナタリーに何かあればあの女を殺すぞ。」
「、、、分かっています。何かしようとすれば私が彼女を押さえ込む。」
後からついて来る男2人が物騒な取り決めをしている事は私達の耳には入らなかった。
「カイエン、、王様は解放して良いと言ったわよね?」
「あぁ、、そう言ったな。」
カイエンとしばらく見つめ合い首を捻る。何か企んでいるのだろうが、私を引き留めておく為の人質をアッサリと解放すると言った真意が分からない。
「ナタリー!お久しぶりですぅ!」
その時、この世で一番会いたくない人の声が聞こえた。
あからさまに嫌そうな顔でそちらを見れば、柔らか茶色の髪をフワリとさせながらこちらに小走りでやって来るマリアさんの姿が見えた。
前に見た時より簡素なドレスを着ているが、それでも可愛らしい薄ピンクのドレスは裾がフワリと広がる作りをしており、私が今着ている麻で出来た生成りのワンピースに比べれば高価な物である事がうかがえる。
「お久しぶりです。」
私がワンピースの裾をつまみ軽くお辞儀をすれば、マリアさんはフフンと鼻を鳴らしながらクルリと回った。
なぜ今回ったのかと突っ込みたかったが、彼女と衝突すればろくな事にならない。無視するのが一番だろう。
「マリア!!」
マリアさんの後ろからアルベルト様が焦ったように走って来ていた。
彼は彼女のお目付役なのだろう。アルベルト様の顔を見れば申し訳ないとその目が語っていた。
「アルベルト様!!」
彼がやって来ると、マリアさんが嬉しそうにピョコンと爪先立ちになり、アルベルト様を受け止める様に腕を広げた。
「マリア、勝手に行動するなと言っただろう!」
しかし彼女の腕には捕まらず、彼女と少し距離を開けて立ち小言を言った。
「もう!アルベルト様は怒ってばかりなのだから!」
マリアさんはほっぺをぷくりと膨らまし、彼の腕を捕まえ、身体を預けるようにしな垂れながらこちらを見てきた。
勝ち誇った顔をしているのは、私がまだアルベルト様を好きだと思っているからだろう。
「相変わらず頭の弱そうな女だな。」
黙ってそれを見ていたカイエンが不愉快そうにそう言った。
「なっ!?失礼ね!!」
マリアさんは手を腰に当て怒りを表しながらカイエンの元へやって来たが、カイエンに至近距離で睨まれると顔を真っ赤にして固まっていた。
「、、何、、カッコ良すぎ、、、」
不明瞭にブツブツとマリアさんは何か口にしていたが、そんな彼女をアルベルト様は嗜める様に自分の方へ引っ張った。
「アルベルト様、、」
今度はアルベルト様の顔を見ながらポーッとしている。忙しい人だ。
「ハァー、、マリアさん、それで何か用があるのですか?私は今から行かなければならない場所があるので、急ぎでないなら今度にして欲しいのですが。」
「ハッ!」
私がそう言えば、正気に戻ったマリアさんが私の顔を指差した。
「もちろん用がありますわ!チョット話しがしたいので、ツラを貸していただけますか?」
「ツラって、、、」
どうするべきかとカイエンの方を見れば、カイエンは心底嫌そうな顔をしていた。
「マリアさん、やはり今度に、、」
そこまで言おうとして、マリアさんは私の手首を掴んだ。驚く私にマリアさんは捲し立てる様に話し始めた。
「ナタリー、私がヴェルディス様と契約したのは知ってるのでしょう?」
「、、はい。」
「どうして契約出来たのか知りたいでしょう?知りたいわよね?フフフッ、仕方ないから教えてあげるわ!ほら、私の部屋に通してあげるから、早く歩きなさい!!」
「、、、、。」
彼女は私を呼び捨てにし、命令口調でグイグイと私の腕を引っ張って行く。
魔法で吹っ飛ばしてやろうかと一瞬殺意が芽生えたが、ヴェルディスの事を知りたい気持ちも確かにある。
私は諦めて彼女に引きずられる事にしたのだった。
「アルベルト、ナタリーに何かあればあの女を殺すぞ。」
「、、、分かっています。何かしようとすれば私が彼女を押さえ込む。」
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