人質となった悪役令嬢は魔王の元で幸せになれるのか?

たま

文字の大きさ
上 下
64 / 78

最悪な再会

しおりを挟む
バゼルハイド王から、フローラの一族やゴロランド王の一族をあっさりと解放すると言われ、私は狐に摘まれた様な気持ちで部屋を出た。

「カイエン、、王様は解放して良いと言ったわよね?」

「あぁ、、そう言ったな。」

カイエンとしばらく見つめ合い首を捻る。何か企んでいるのだろうが、私を引き留めておく為の人質をアッサリと解放すると言った真意が分からない。

「ナタリー!お久しぶりですぅ!」

その時、この世で一番会いたくない人の声が聞こえた。
あからさまに嫌そうな顔でそちらを見れば、柔らか茶色の髪をフワリとさせながらこちらに小走りでやって来るマリアさんの姿が見えた。
前に見た時より簡素なドレスを着ているが、それでも可愛らしい薄ピンクのドレスは裾がフワリと広がる作りをしており、私が今着ている麻で出来た生成りのワンピースに比べれば高価な物である事がうかがえる。

「お久しぶりです。」

私がワンピースの裾をつまみ軽くお辞儀をすれば、マリアさんはフフンと鼻を鳴らしながらクルリと回った。

なぜ今回ったのかと突っ込みたかったが、彼女と衝突すればろくな事にならない。無視するのが一番だろう。

「マリア!!」

マリアさんの後ろからアルベルト様が焦ったように走って来ていた。
彼は彼女のお目付役なのだろう。アルベルト様の顔を見れば申し訳ないとその目が語っていた。

「アルベルト様!!」

彼がやって来ると、マリアさんが嬉しそうにピョコンと爪先立ちになり、アルベルト様を受け止める様に腕を広げた。

「マリア、勝手に行動するなと言っただろう!」

しかし彼女の腕には捕まらず、彼女と少し距離を開けて立ち小言を言った。

「もう!アルベルト様は怒ってばかりなのだから!」

マリアさんはほっぺをぷくりと膨らまし、彼の腕を捕まえ、身体を預けるようにしな垂れながらこちらを見てきた。
勝ち誇った顔をしているのは、私がまだアルベルト様を好きだと思っているからだろう。

「相変わらず頭の弱そうな女だな。」

黙ってそれを見ていたカイエンが不愉快そうにそう言った。

「なっ!?失礼ね!!」

マリアさんは手を腰に当て怒りを表しながらカイエンの元へやって来たが、カイエンに至近距離で睨まれると顔を真っ赤にして固まっていた。

「、、何、、カッコ良すぎ、、、」

不明瞭にブツブツとマリアさんは何か口にしていたが、そんな彼女をアルベルト様は嗜める様に自分の方へ引っ張った。

「アルベルト様、、」

今度はアルベルト様の顔を見ながらポーッとしている。忙しい人だ。

「ハァー、、マリアさん、それで何か用があるのですか?私は今から行かなければならない場所があるので、急ぎでないなら今度にして欲しいのですが。」

「ハッ!」

私がそう言えば、正気に戻ったマリアさんが私の顔を指差した。

「もちろん用がありますわ!チョット話しがしたいので、ツラを貸していただけますか?」

「ツラって、、、」

どうするべきかとカイエンの方を見れば、カイエンは心底嫌そうな顔をしていた。

「マリアさん、やはり今度に、、」

そこまで言おうとして、マリアさんは私の手首を掴んだ。驚く私にマリアさんは捲し立てる様に話し始めた。

「ナタリー、私がヴェルディス様と契約したのは知ってるのでしょう?」

「、、はい。」

「どうして契約出来たのか知りたいでしょう?知りたいわよね?フフフッ、仕方ないから教えてあげるわ!ほら、私の部屋に通してあげるから、早く歩きなさい!!」

「、、、、。」

彼女は私を呼び捨てにし、命令口調でグイグイと私の腕を引っ張って行く。
魔法で吹っ飛ばしてやろうかと一瞬殺意が芽生えたが、ヴェルディスの事を知りたい気持ちも確かにある。
私は諦めて彼女に引きずられる事にしたのだった。

「アルベルト、ナタリーに何かあればあの女を殺すぞ。」

「、、、分かっています。何かしようとすれば私が彼女を押さえ込む。」

後からついて来る男2人が物騒な取り決めをしている事は私達の耳には入らなかった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

処理中です...