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各々の働き
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ハデスは眠てしまったナタリーにそっとブランケットをかけた。そのわずかな衝撃に彼女は少し眉を寄せうめいたが、またスヤスヤと気持ちよさそうに眠ってしまった。
それを見たハデスは彼にしては考えられない程の甘い顔でフッと笑みをこぼしていた。
それと同時に彼は思う。この愛しい娘を守るために、今出来る事をせねばと。
彼は服を着ると、この小さな部屋に結界を張った後、彼女を起こさないようにそっとその部屋から出て行ったのだった。
目的の人物を探すべくそのまま大広間を出たハデスだったが、大広間を出て直ぐの所にその者を見つける。
『サイレーイス、丁度良かった。探しに行く所だったのだ。』
サイレーイスはわざとらしい程恭しくお辞儀をした後満面の笑みでハデスに尋ねた。
『それでハデス様、どうだったのですか?』
彼の目を見れば、暗にやったのかどうかを聞きたがっているのが分かる。
ハデスがため息を吐いた時、そんな卑猥な話しを嗅ぎ付けたのか、いそいそとこちらにやって来るイアンの姿も見えた。イアンの顔を見ても、サイレーイスと同じ様にハデスをからかうような雰囲気が見て取れる。
『お前らは、、私を何だと思っているんだ。いい加減にしろ。』
ぶっきらぼうに言い放ったハデスだったが、その頬は少し赤くなっていた。長年彼に仕えている2人は主人のそんな顔を見て首尾は上々だったのだと悟り、歓喜の声を上げた。
あまりにも喜ぶので、ハデスは居た堪れなくなり2人を怒鳴りつける。
『大げさだ!!良いか、この事誰にも言うな!他言無用だ!!』
側近2人は肩をビクッとさせた後、キョトンといった顔でハデスを見た。2人は皆に言い広め、2人の仲を確固たるものにし婚姻までおし進めていくつもりだったのだ。
何でですかと2人がゴネようとした時、サイレーイスとイアンの後ろから女性の声がした。
「何が他言無用なのだ?」
驚きそちらを見ると、フローラとミカエルが立っていた。
ミカエルは魔物の言葉を少しだけ理解している。ハデスの言った事の聞かれたく無い言葉だけ彼は聞き取っていた。
「先程からナタリー様の姿が見えないのです。皆様何か知りませんか?」
他言無用と言った事で、いつも穏やかな顔をしているフローラが珍しく険しい顔をしていた。
フローラの後ろに立っているミカエルが、フローラには見えないように手を合わせ謝る仕草をしている。
ハデスがナタリーを抱くかもしれない。
その時はまだ確定では無いこの話しを、フローラにするべきか悩んだミカエルは、結局彼女にそれを伝える事が出来なかった。
後ろめたい気持ちを抱えながら、ナタリーを探し回る彼女の護衛として彼は付き添っていた。
「ハァー、ちょうど良い。皆に話しておこう。サイレーイス、他に漏れる訳にはいけない話しだ。良い場所はあるか?」
「それならすぐそこの部屋が手狭で良いかと思います。結界を張り、話しが漏れないようにしておきましょう。」
サイレーイスはすぐそばにあった扉を開いた。
中は応接室なのだろう。立派なソファーはあるものの家具などは置かれておらず、確かに話すには丁度良さそうな部屋だった。
我が城では無いにも関わらず、全て把握していように振る舞うサイレーイスにハデスは今更ながら舌を巻く。
向かい合った大きいソファーに各々が腰掛けていく。
フローラはミカエルの横に座るかと思われたが、いそいそとイアンの横に腰掛けていた。
「ハデス様、それでナタリー様はどこに?」
痺れを切らしたフローラが先陣を切って話し始める。
彼女はハデスの事を恐ろしいと感じ、目も合わせられない程なのだが、ナタリーが失踪した事により彼女はそんな事忘れたかの様だった。
皆、彼女の変わりように驚きを隠せない。
「ナタリーなら、私のベッドで寝ている。」
ハデスは長い足を組みながら不敵に笑いそう言った。
一瞬意味が分からないといった顔でフローラはポカンとしたが、その意味に気付くと一気に全身を真っ赤にさせた。
「ナタリー様が、ハデス様と!?なぜ急にそんな事に、、婚約すらしていないのに、、そんな破廉恥な事を、、」
大パニックになるフローラの背中をイアンが優しく撫でた。
「フローラちゃん、魔族には婚姻してからじゃないとエッチはしないなんてしきたりは無いのよ。それに貴方達人間だって初夜まで貞操を守っている子なんて一握りなんじゃ無いかしら?」
「イアンさん、、。確かに、学園では遊んでいる子達もいました。でも、ナタリー様はそんな子達とは正反対の方なのです。」
瞳を潤ませ力説するフローラに、イアンは何も言えなくなりハデスに助け船を出して貰うべく彼を見つめた。
「ハァー、、フローラ嬢、とりあえず話しを聞いてくれ。皆もだ。今から話す内容を聞けば私がナタリーを抱いた事も理解して貰えるだろう。」
フローラはナタリー様に会わせろという言葉をとりあえず飲み込み頷いた。
ゴロランド王の最期を見に行ったナタリーに自分が付いて行ってさえいれば、こんな事にはならなかったかもしれない。
彼女はそう思うと強く出られなかった。
彼女は恐ろしかったのだ。魔物の手にかかり人が死ぬ所を見るのが、、それを見てしまえば、魔物達の側で暮らすのに支障が出ただろう。
彼女は元々魔物が恐ろしかったのだから無理からぬ事なのかもしれない。
「分かりました。」
フローラがそう答えると、ハデスは頷いた。
「まず、ナタリーとエルザを交換してくれと書簡が来たのは話したな。」
これに皆が頷く。
「私はこの話しを断るつもりだった。私がナタリーを愛しているからだけではなく、もしそうでなかったとしても王妃を人質に預かるのは面倒だからだ。」
サイレーイスが頷き言葉を引き継いだ。
「王妃ともなれば、使用人も沢山連れて来るだの言い出すでしょうし、こちらに来てからも無理難題を言いかねませんからね。ナタリー様の時だって、どんな高飛車な令嬢が来るのかと戦々恐々としたものです。あんな手のかからない娘が来るとは思いませんでしたが。」
フローラはナタリーを褒められ気を良くしたようだった。嬉々として話し出す。
「そうなのです。ナタリー様は公爵家の令嬢にも関わらず、気取らず皆に優しく、それはそれは聖女の様なお方です。私を助けてくれた時だって、、」
長々と話し始めそうなフローラをハデスはゴホンの咳払いをして止めた。今は思い出話しをしている場合では無い。
「しかしだ、ナタリーは交換に応じてくれと私に頼んでくるだろう。」
「「!!!!」」
フローラとイアンは目を丸くした。
「なぜですか!?ナタリー様はハデス様と愛し合っているのでしょう!?」
「そうよハデス様、今ナタリーを抱いたって言った所じゃないの!!」
「ハァー、だからとりあえず話しを聞け!!先に進まんだろうが!!」
口々に文句を言う2人をハデスが威圧するようにジロリと睨むと、2人は青い顔で黙りこくった。
「理由はゴロランド王の最期の言葉のせいだ。彼はナタリーに一族の行く末を見届けてくれと言った。彼女はそれを承諾し、亡骸を必ず届けると約束したんだ。全て覚悟の上でナタリーはゴロランド王を手にかけた。」
フローラだけはその話しを知らない。口を手で押さえ絶句している。
「彼女はそれをやり通すだろう。しかし、それには問題が山ほどある。」
「と言うと?」
ミカエルが真剣な顔でそう言った。彼はナタリーにゴロランド王の最期を引き取らせてしまった事を悔やんでいたのだ。2人の令嬢の護衛として付いて来た自分の役目だったのではと、、そう思っていた。
「まず、バゼルハイドがなぜナタリーを欲しているか理由が分からん。王妃を溺愛しているといった話しも聞いている。その王妃を手放してまでナタリーを欲する理由が分からん。」
「それは俺もずっと考えていました。バゼルハイド王の息子、アルベルト王子はマリアという男爵令嬢にご執心でした。しかしこちらに来る前に、マリアが彼にかけていた魅了の魔法をナタリーが解いたんです。そこで目が覚めたアルベルト王子がナタリーを欲したのではと思ったのですが、、」
その答えにハデスは首を振った。
「その為に現王妃を人質としてまで、バゼルハイド王が交換の申し出をする事はないだろう。」
「そうですね。王は冷酷な男です。息子の為にそんな事はしないでしょう。でもそうなれば理由が思い付きません。」
ミカエルはお手上げのポーズをしながらソファーの背もたれに深く座り込んだ。彼もこの間からずっと考えていたのだろう。
「ハッキリとした答えは分からんが、今回私の持つ軍からの報告で、我が弟ヴェルディスの行方がやはり分からないとそう言ってきた。ヴェルディスは私達同様魔力量の多く、そして絶大な力を持った男だ。隠れおおせると思えない。つまり、アイツは探していない場所に居ると結論づけることにした。」
「バゼルハイド王の居る大陸ですか。」
有能な側近サイレーイスがそう言った。
「あぁ。まず間違いないだろう。バゼルハイド王とヴェルディスがコンタクトを取っているかは分からんが、ナタリーを欲している事と関係があるかもしれない。」
「それは、ナタリー様とハデス様が愛し合っているのがバレたからですか?」
フローラが眉間にしわを寄せて聞いた。暗にお前のせいかと聞いているのだろう。
「嫌、それは無い。書簡が届いたのは少し前だからな。」
「それならカイエン様のせいかもしれません。」
ズブズブとソファーに埋もれていたミカエルが急に身体を起こし、閃いたとばかりに口を開いた。
「先程言ったアルベルト王子の魔法を解いた時に、ナタリーはカイエン様と契約しているのを皆にバラしました。ヴェルディスが貴方達兄弟をよく思っていないのなら、それが関係しているのかもしれません!」
「、、もしそれが正しいとすれば、ヴェルディスとバゼルハイドは一緒に居る可能性も高いな。クソッ、それはさらに厄介だ。」
ハデスは拳を握りしめると自分のももを強く叩いた。
「私、ナタリーと一緒に行きましょうか?」
そう提案したのはイアンだった。イアンはナタリーにあなたを守る為なら騎士に戻っても良いとまで言ったのだ。迷いは無かった。
「気持ちは有り難い。しかし、イアン、それは出来ない。」
「なぜですか!?」
「人質交換ということは、ナタリーは人間の世界に戻るのだ。魔族の護衛を付け
て帰れば、魔族にとって彼女は大切な人だと告白しているようなものだ。」
ハデスの言う事は最もだった。しかし、イアンは納得出来なかった。
「しかし、ハデス様、それでは危険な場所にナタリーを1人で放り込む事になります!!」
「落ち着け。ナタリーの護衛には兄さんを付ける。」
「カイエン様を!?」
「契約をしているのを皆が知っているのだ。兄さんが一緒に帰るのは自然だ。」
その答えに皆が頷く。そしてフローラが手を挙げながら言った。
「それなら私も!私もナタリー様のお側に!」
「それはダメだ。」
ハデスに静かに拒否され、フローラは絶望した顔をした。
「なぜですか!?」
「何があるか分からんのだ。フローラ嬢、あなたを人質にでもされれば、ナタリーは身動きが取れなくなる。悪いがあなたはここで留守番だ。」
「、、、。」
自分に戦闘能力が無いのは百も承知である。フローラは両手を握りしめただけで黙りこくった。しかし、何か思い出したように身体を震わせ始める。
「フローラちゃん?どうしたの?」
それに気付いたイアンは驚きながらフローラの背中を優しく撫でた。
「落ち着いて。一体どうしたの?」
「、、、、それなら、、私が行かなくても同じです、、、」
「どういう意味なの?」
「向こうには私の家族が残っています。ナタリー様の事です、私の家族を人質にされてもきっと無抵抗で従います、、」
フローラはそこまで言うと涙を零した。
「ハァー、、分からん事だらけだが、最悪の想像しか出来んな。それに、結局ナタリーを呼び寄せてバゼルハイドとヴェルディスが何をしたいのかが分からない。兄さんに嫌がらせする為にナタリーを呼んだか、、」
「しかし、それではバゼルハイド王が王妃を手放す理由にはなりません。」
サイレーイスは悩むハデスにそう告げた。
「そうだな。考えても分からない事は後回しだ。とりあえず出来る事をするしか無いな。」
そう言うとハデスは立ち上がった。
そしてまずイアンの方へ身体を向ける。
「イアン、お前は秘密裏にバゼルハイド達の居る大陸へと渡り、魔方陣を設置し、ここから移動出来るようにしろ。」
イアンは立ち上がると敬礼のポーズを取った。
「はい!ここと繋げる魔方陣となればかなりの時間を要します。明日にでも発てるよう準備します!」
「頼んだ。決して人間達に悟られるな。バレればあちらは大騒ぎとなるだろうからな。そして、、兄さんには私から話しておくとして、サイレーイス、最悪私はあちらに飛ぶぞ。」
「分かりました。最悪ですがこちらはお任せ下さい。」
「魔王城にいるジジイ連中は抑え込めるか?」
サイレーイスは苦笑いしながら頷いた。ジジイ連中とは言えども今でも現役で戦える者ばかりのゴツイジジイ達だ。
ハデスが人間の大陸に渡ったと聞けば、自分達も戦うと言って暴れ出すかも知れない。
ハデスは現魔王である。
魔族達は魔王の居る位置を把握するという能力を持っている。
今回はそれが厄介な方向に働いているのだが、元はと言えば魔王を命をかけてでも守るという魔族達の熱い気持ちが生み出した力なのだ。
「何とかします。人間のいる大陸へ行った理由は、ナタリー様を妻にすると報告しに行ったとでも言えばよろしいので?」
サイレーイスは悪戯な顔で笑った。
「あぁ。俺の子を宿しているかもしれない大切な娘だと言っておけ。」
その言葉にフローラは先程の抱いた理由はここに繋がってくるのに気付いた。そしてナタリー様が子を宿すかもしれないという事実は彼女の胸を熱くした。
「その娘がゴロランド王の最期を引き取った娘だと言えば、聖女扱いされるかもしれませんね。」
サイレーイスの良からぬ事を考える悪い笑い方にハデスは頭が痛むのを感じていた。
「良いか、この事はその時まで絶対に他言無用だ!情報が漏れれば、ナタリーを人質としバゼルハイドが何かこちら側に不利になる事を言ってくるかもしらないからな。そうなれば、ナタリーもお腹の子の命も危ぶまれる。」
「ハデス様、落ち着いて下さい。まださっき初めてしただけでしょう。さすがに初めてしただけですぐ妊娠とはならないかと。子がいる前提で話すのは、ナタリー様が懐妊してからにしましょう。」
「、、分かっている。」
ハデスはプンッと横を向いてしまった。
「しかし、ナタリーは大丈夫なのかしら!そんな過酷な中に妊娠した状態で行かなきゃならないかもしれないんでしょ?」
瞳を潤ませるイアンを見てサイレーイスは嘆息した。
「お前はお母さんか!魔族の赤子はたとえお腹の中でいようと強いのだ。それがハデス様の子ならば尚更。ナタリー様をお腹の中から守る事はあっても、足を引っ張る事にはならない。」
「、、そうだけど。」
「とまあ、そんな感じだ。皆これからバタバタするぞ。何せ王妃を迎えねばならぬのだからな、、その件についてはフローラ、お前が一番大変かも知れない。」
先に人質としてここにいたのだ。王妃はフローラを頼るだろう。高貴な方は位の低い者をぞんざいに扱う者が多いのだから、フローラがこれから苦労するのは目に見えていた。
「構いません。ナタリー様が頑張っていると思えば何でも耐えられます。」
「そうか。しかし、何があれば言え。こちらでも対応しよう。」
「ありがとうございます。」
2人のやりとりが終わると、今度はミカエルが立ち上がりハデスに申し出た。
「俺は!俺は何が出来る!俺もナタリーと共に行きたい!」
しかし残酷にもそれにハデスは首を振った。
「書簡に、エルザ様の護衛にミカエルを残せと書いていた。」
「ッ、、、。クソッ!あの狸親父、俺が戻らないように手を回しやがったんだな!!」
ミカエルは吐き捨てるように言ったあと、壁に向かいそのを思いっきり殴った。
ドカンッと大きな音がし、そこに穴がポカリと空いてしまう。
「ミカエル、ここに残るのならば、フローラ嬢の警護も頼んだ。人間は人間同士でも傷つけ合うのだろう?」
「、、分かりました。俺に出来る事をやります。」
ミカエルは納得出来ない気持ちを押し込めて頭を下げた。
「とにかくそのように動き始める。くれぐれも、私とナタリーの事が漏れないように頼む。」
「「「はい。」」」
今日の所はそれで解散となった。ハデスは足早に寝室へと戻ると、そこで寝ているナタリーの姿を見て安堵した。
自分の手をすり抜けて居なってしまいそうな女だとそう感じてしまう。
「んっ、、」
ナタリーは身動ぎすると、目をパチパチと開いた。状況が飲み込めないのだろう、キョロキョロした後、私と目が合うと真っ赤な顔になった。
「目が覚めたのか?」
私がそう聞くとコクリと頷いた。裸で寝て居た事に気付いたのだろう。恥ずかしそうにブランケットを引き上げている。
私はそんな彼女の姿に欲情し、ベットを揺らしながら彼女の元へとにじり寄った。
「ハデス?」
首を傾げる彼女からブランケットを剥ぎ取ると、そのままベットへ押し倒す。
「ハデス、今した所なのに!?」
そう訴える彼女の言葉を無視して、全身に口付けを落としていく。
「私を置いて行くなら、一生分愛されてから行け。」
そんな理不尽な言葉を吐き捨て、彼女の小さな抵抗を抑え込むとそのまま2度目の情事を開始したのだった。
それを見たハデスは彼にしては考えられない程の甘い顔でフッと笑みをこぼしていた。
それと同時に彼は思う。この愛しい娘を守るために、今出来る事をせねばと。
彼は服を着ると、この小さな部屋に結界を張った後、彼女を起こさないようにそっとその部屋から出て行ったのだった。
目的の人物を探すべくそのまま大広間を出たハデスだったが、大広間を出て直ぐの所にその者を見つける。
『サイレーイス、丁度良かった。探しに行く所だったのだ。』
サイレーイスはわざとらしい程恭しくお辞儀をした後満面の笑みでハデスに尋ねた。
『それでハデス様、どうだったのですか?』
彼の目を見れば、暗にやったのかどうかを聞きたがっているのが分かる。
ハデスがため息を吐いた時、そんな卑猥な話しを嗅ぎ付けたのか、いそいそとこちらにやって来るイアンの姿も見えた。イアンの顔を見ても、サイレーイスと同じ様にハデスをからかうような雰囲気が見て取れる。
『お前らは、、私を何だと思っているんだ。いい加減にしろ。』
ぶっきらぼうに言い放ったハデスだったが、その頬は少し赤くなっていた。長年彼に仕えている2人は主人のそんな顔を見て首尾は上々だったのだと悟り、歓喜の声を上げた。
あまりにも喜ぶので、ハデスは居た堪れなくなり2人を怒鳴りつける。
『大げさだ!!良いか、この事誰にも言うな!他言無用だ!!』
側近2人は肩をビクッとさせた後、キョトンといった顔でハデスを見た。2人は皆に言い広め、2人の仲を確固たるものにし婚姻までおし進めていくつもりだったのだ。
何でですかと2人がゴネようとした時、サイレーイスとイアンの後ろから女性の声がした。
「何が他言無用なのだ?」
驚きそちらを見ると、フローラとミカエルが立っていた。
ミカエルは魔物の言葉を少しだけ理解している。ハデスの言った事の聞かれたく無い言葉だけ彼は聞き取っていた。
「先程からナタリー様の姿が見えないのです。皆様何か知りませんか?」
他言無用と言った事で、いつも穏やかな顔をしているフローラが珍しく険しい顔をしていた。
フローラの後ろに立っているミカエルが、フローラには見えないように手を合わせ謝る仕草をしている。
ハデスがナタリーを抱くかもしれない。
その時はまだ確定では無いこの話しを、フローラにするべきか悩んだミカエルは、結局彼女にそれを伝える事が出来なかった。
後ろめたい気持ちを抱えながら、ナタリーを探し回る彼女の護衛として彼は付き添っていた。
「ハァー、ちょうど良い。皆に話しておこう。サイレーイス、他に漏れる訳にはいけない話しだ。良い場所はあるか?」
「それならすぐそこの部屋が手狭で良いかと思います。結界を張り、話しが漏れないようにしておきましょう。」
サイレーイスはすぐそばにあった扉を開いた。
中は応接室なのだろう。立派なソファーはあるものの家具などは置かれておらず、確かに話すには丁度良さそうな部屋だった。
我が城では無いにも関わらず、全て把握していように振る舞うサイレーイスにハデスは今更ながら舌を巻く。
向かい合った大きいソファーに各々が腰掛けていく。
フローラはミカエルの横に座るかと思われたが、いそいそとイアンの横に腰掛けていた。
「ハデス様、それでナタリー様はどこに?」
痺れを切らしたフローラが先陣を切って話し始める。
彼女はハデスの事を恐ろしいと感じ、目も合わせられない程なのだが、ナタリーが失踪した事により彼女はそんな事忘れたかの様だった。
皆、彼女の変わりように驚きを隠せない。
「ナタリーなら、私のベッドで寝ている。」
ハデスは長い足を組みながら不敵に笑いそう言った。
一瞬意味が分からないといった顔でフローラはポカンとしたが、その意味に気付くと一気に全身を真っ赤にさせた。
「ナタリー様が、ハデス様と!?なぜ急にそんな事に、、婚約すらしていないのに、、そんな破廉恥な事を、、」
大パニックになるフローラの背中をイアンが優しく撫でた。
「フローラちゃん、魔族には婚姻してからじゃないとエッチはしないなんてしきたりは無いのよ。それに貴方達人間だって初夜まで貞操を守っている子なんて一握りなんじゃ無いかしら?」
「イアンさん、、。確かに、学園では遊んでいる子達もいました。でも、ナタリー様はそんな子達とは正反対の方なのです。」
瞳を潤ませ力説するフローラに、イアンは何も言えなくなりハデスに助け船を出して貰うべく彼を見つめた。
「ハァー、、フローラ嬢、とりあえず話しを聞いてくれ。皆もだ。今から話す内容を聞けば私がナタリーを抱いた事も理解して貰えるだろう。」
フローラはナタリー様に会わせろという言葉をとりあえず飲み込み頷いた。
ゴロランド王の最期を見に行ったナタリーに自分が付いて行ってさえいれば、こんな事にはならなかったかもしれない。
彼女はそう思うと強く出られなかった。
彼女は恐ろしかったのだ。魔物の手にかかり人が死ぬ所を見るのが、、それを見てしまえば、魔物達の側で暮らすのに支障が出ただろう。
彼女は元々魔物が恐ろしかったのだから無理からぬ事なのかもしれない。
「分かりました。」
フローラがそう答えると、ハデスは頷いた。
「まず、ナタリーとエルザを交換してくれと書簡が来たのは話したな。」
これに皆が頷く。
「私はこの話しを断るつもりだった。私がナタリーを愛しているからだけではなく、もしそうでなかったとしても王妃を人質に預かるのは面倒だからだ。」
サイレーイスが頷き言葉を引き継いだ。
「王妃ともなれば、使用人も沢山連れて来るだの言い出すでしょうし、こちらに来てからも無理難題を言いかねませんからね。ナタリー様の時だって、どんな高飛車な令嬢が来るのかと戦々恐々としたものです。あんな手のかからない娘が来るとは思いませんでしたが。」
フローラはナタリーを褒められ気を良くしたようだった。嬉々として話し出す。
「そうなのです。ナタリー様は公爵家の令嬢にも関わらず、気取らず皆に優しく、それはそれは聖女の様なお方です。私を助けてくれた時だって、、」
長々と話し始めそうなフローラをハデスはゴホンの咳払いをして止めた。今は思い出話しをしている場合では無い。
「しかしだ、ナタリーは交換に応じてくれと私に頼んでくるだろう。」
「「!!!!」」
フローラとイアンは目を丸くした。
「なぜですか!?ナタリー様はハデス様と愛し合っているのでしょう!?」
「そうよハデス様、今ナタリーを抱いたって言った所じゃないの!!」
「ハァー、だからとりあえず話しを聞け!!先に進まんだろうが!!」
口々に文句を言う2人をハデスが威圧するようにジロリと睨むと、2人は青い顔で黙りこくった。
「理由はゴロランド王の最期の言葉のせいだ。彼はナタリーに一族の行く末を見届けてくれと言った。彼女はそれを承諾し、亡骸を必ず届けると約束したんだ。全て覚悟の上でナタリーはゴロランド王を手にかけた。」
フローラだけはその話しを知らない。口を手で押さえ絶句している。
「彼女はそれをやり通すだろう。しかし、それには問題が山ほどある。」
「と言うと?」
ミカエルが真剣な顔でそう言った。彼はナタリーにゴロランド王の最期を引き取らせてしまった事を悔やんでいたのだ。2人の令嬢の護衛として付いて来た自分の役目だったのではと、、そう思っていた。
「まず、バゼルハイドがなぜナタリーを欲しているか理由が分からん。王妃を溺愛しているといった話しも聞いている。その王妃を手放してまでナタリーを欲する理由が分からん。」
「それは俺もずっと考えていました。バゼルハイド王の息子、アルベルト王子はマリアという男爵令嬢にご執心でした。しかしこちらに来る前に、マリアが彼にかけていた魅了の魔法をナタリーが解いたんです。そこで目が覚めたアルベルト王子がナタリーを欲したのではと思ったのですが、、」
その答えにハデスは首を振った。
「その為に現王妃を人質としてまで、バゼルハイド王が交換の申し出をする事はないだろう。」
「そうですね。王は冷酷な男です。息子の為にそんな事はしないでしょう。でもそうなれば理由が思い付きません。」
ミカエルはお手上げのポーズをしながらソファーの背もたれに深く座り込んだ。彼もこの間からずっと考えていたのだろう。
「ハッキリとした答えは分からんが、今回私の持つ軍からの報告で、我が弟ヴェルディスの行方がやはり分からないとそう言ってきた。ヴェルディスは私達同様魔力量の多く、そして絶大な力を持った男だ。隠れおおせると思えない。つまり、アイツは探していない場所に居ると結論づけることにした。」
「バゼルハイド王の居る大陸ですか。」
有能な側近サイレーイスがそう言った。
「あぁ。まず間違いないだろう。バゼルハイド王とヴェルディスがコンタクトを取っているかは分からんが、ナタリーを欲している事と関係があるかもしれない。」
「それは、ナタリー様とハデス様が愛し合っているのがバレたからですか?」
フローラが眉間にしわを寄せて聞いた。暗にお前のせいかと聞いているのだろう。
「嫌、それは無い。書簡が届いたのは少し前だからな。」
「それならカイエン様のせいかもしれません。」
ズブズブとソファーに埋もれていたミカエルが急に身体を起こし、閃いたとばかりに口を開いた。
「先程言ったアルベルト王子の魔法を解いた時に、ナタリーはカイエン様と契約しているのを皆にバラしました。ヴェルディスが貴方達兄弟をよく思っていないのなら、それが関係しているのかもしれません!」
「、、もしそれが正しいとすれば、ヴェルディスとバゼルハイドは一緒に居る可能性も高いな。クソッ、それはさらに厄介だ。」
ハデスは拳を握りしめると自分のももを強く叩いた。
「私、ナタリーと一緒に行きましょうか?」
そう提案したのはイアンだった。イアンはナタリーにあなたを守る為なら騎士に戻っても良いとまで言ったのだ。迷いは無かった。
「気持ちは有り難い。しかし、イアン、それは出来ない。」
「なぜですか!?」
「人質交換ということは、ナタリーは人間の世界に戻るのだ。魔族の護衛を付け
て帰れば、魔族にとって彼女は大切な人だと告白しているようなものだ。」
ハデスの言う事は最もだった。しかし、イアンは納得出来なかった。
「しかし、ハデス様、それでは危険な場所にナタリーを1人で放り込む事になります!!」
「落ち着け。ナタリーの護衛には兄さんを付ける。」
「カイエン様を!?」
「契約をしているのを皆が知っているのだ。兄さんが一緒に帰るのは自然だ。」
その答えに皆が頷く。そしてフローラが手を挙げながら言った。
「それなら私も!私もナタリー様のお側に!」
「それはダメだ。」
ハデスに静かに拒否され、フローラは絶望した顔をした。
「なぜですか!?」
「何があるか分からんのだ。フローラ嬢、あなたを人質にでもされれば、ナタリーは身動きが取れなくなる。悪いがあなたはここで留守番だ。」
「、、、。」
自分に戦闘能力が無いのは百も承知である。フローラは両手を握りしめただけで黙りこくった。しかし、何か思い出したように身体を震わせ始める。
「フローラちゃん?どうしたの?」
それに気付いたイアンは驚きながらフローラの背中を優しく撫でた。
「落ち着いて。一体どうしたの?」
「、、、、それなら、、私が行かなくても同じです、、、」
「どういう意味なの?」
「向こうには私の家族が残っています。ナタリー様の事です、私の家族を人質にされてもきっと無抵抗で従います、、」
フローラはそこまで言うと涙を零した。
「ハァー、、分からん事だらけだが、最悪の想像しか出来んな。それに、結局ナタリーを呼び寄せてバゼルハイドとヴェルディスが何をしたいのかが分からない。兄さんに嫌がらせする為にナタリーを呼んだか、、」
「しかし、それではバゼルハイド王が王妃を手放す理由にはなりません。」
サイレーイスは悩むハデスにそう告げた。
「そうだな。考えても分からない事は後回しだ。とりあえず出来る事をするしか無いな。」
そう言うとハデスは立ち上がった。
そしてまずイアンの方へ身体を向ける。
「イアン、お前は秘密裏にバゼルハイド達の居る大陸へと渡り、魔方陣を設置し、ここから移動出来るようにしろ。」
イアンは立ち上がると敬礼のポーズを取った。
「はい!ここと繋げる魔方陣となればかなりの時間を要します。明日にでも発てるよう準備します!」
「頼んだ。決して人間達に悟られるな。バレればあちらは大騒ぎとなるだろうからな。そして、、兄さんには私から話しておくとして、サイレーイス、最悪私はあちらに飛ぶぞ。」
「分かりました。最悪ですがこちらはお任せ下さい。」
「魔王城にいるジジイ連中は抑え込めるか?」
サイレーイスは苦笑いしながら頷いた。ジジイ連中とは言えども今でも現役で戦える者ばかりのゴツイジジイ達だ。
ハデスが人間の大陸に渡ったと聞けば、自分達も戦うと言って暴れ出すかも知れない。
ハデスは現魔王である。
魔族達は魔王の居る位置を把握するという能力を持っている。
今回はそれが厄介な方向に働いているのだが、元はと言えば魔王を命をかけてでも守るという魔族達の熱い気持ちが生み出した力なのだ。
「何とかします。人間のいる大陸へ行った理由は、ナタリー様を妻にすると報告しに行ったとでも言えばよろしいので?」
サイレーイスは悪戯な顔で笑った。
「あぁ。俺の子を宿しているかもしれない大切な娘だと言っておけ。」
その言葉にフローラは先程の抱いた理由はここに繋がってくるのに気付いた。そしてナタリー様が子を宿すかもしれないという事実は彼女の胸を熱くした。
「その娘がゴロランド王の最期を引き取った娘だと言えば、聖女扱いされるかもしれませんね。」
サイレーイスの良からぬ事を考える悪い笑い方にハデスは頭が痛むのを感じていた。
「良いか、この事はその時まで絶対に他言無用だ!情報が漏れれば、ナタリーを人質としバゼルハイドが何かこちら側に不利になる事を言ってくるかもしらないからな。そうなれば、ナタリーもお腹の子の命も危ぶまれる。」
「ハデス様、落ち着いて下さい。まださっき初めてしただけでしょう。さすがに初めてしただけですぐ妊娠とはならないかと。子がいる前提で話すのは、ナタリー様が懐妊してからにしましょう。」
「、、分かっている。」
ハデスはプンッと横を向いてしまった。
「しかし、ナタリーは大丈夫なのかしら!そんな過酷な中に妊娠した状態で行かなきゃならないかもしれないんでしょ?」
瞳を潤ませるイアンを見てサイレーイスは嘆息した。
「お前はお母さんか!魔族の赤子はたとえお腹の中でいようと強いのだ。それがハデス様の子ならば尚更。ナタリー様をお腹の中から守る事はあっても、足を引っ張る事にはならない。」
「、、そうだけど。」
「とまあ、そんな感じだ。皆これからバタバタするぞ。何せ王妃を迎えねばならぬのだからな、、その件についてはフローラ、お前が一番大変かも知れない。」
先に人質としてここにいたのだ。王妃はフローラを頼るだろう。高貴な方は位の低い者をぞんざいに扱う者が多いのだから、フローラがこれから苦労するのは目に見えていた。
「構いません。ナタリー様が頑張っていると思えば何でも耐えられます。」
「そうか。しかし、何があれば言え。こちらでも対応しよう。」
「ありがとうございます。」
2人のやりとりが終わると、今度はミカエルが立ち上がりハデスに申し出た。
「俺は!俺は何が出来る!俺もナタリーと共に行きたい!」
しかし残酷にもそれにハデスは首を振った。
「書簡に、エルザ様の護衛にミカエルを残せと書いていた。」
「ッ、、、。クソッ!あの狸親父、俺が戻らないように手を回しやがったんだな!!」
ミカエルは吐き捨てるように言ったあと、壁に向かいそのを思いっきり殴った。
ドカンッと大きな音がし、そこに穴がポカリと空いてしまう。
「ミカエル、ここに残るのならば、フローラ嬢の警護も頼んだ。人間は人間同士でも傷つけ合うのだろう?」
「、、分かりました。俺に出来る事をやります。」
ミカエルは納得出来ない気持ちを押し込めて頭を下げた。
「とにかくそのように動き始める。くれぐれも、私とナタリーの事が漏れないように頼む。」
「「「はい。」」」
今日の所はそれで解散となった。ハデスは足早に寝室へと戻ると、そこで寝ているナタリーの姿を見て安堵した。
自分の手をすり抜けて居なってしまいそうな女だとそう感じてしまう。
「んっ、、」
ナタリーは身動ぎすると、目をパチパチと開いた。状況が飲み込めないのだろう、キョロキョロした後、私と目が合うと真っ赤な顔になった。
「目が覚めたのか?」
私がそう聞くとコクリと頷いた。裸で寝て居た事に気付いたのだろう。恥ずかしそうにブランケットを引き上げている。
私はそんな彼女の姿に欲情し、ベットを揺らしながら彼女の元へとにじり寄った。
「ハデス?」
首を傾げる彼女からブランケットを剥ぎ取ると、そのままベットへ押し倒す。
「ハデス、今した所なのに!?」
そう訴える彼女の言葉を無視して、全身に口付けを落としていく。
「私を置いて行くなら、一生分愛されてから行け。」
そんな理不尽な言葉を吐き捨て、彼女の小さな抵抗を抑え込むとそのまま2度目の情事を開始したのだった。
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