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カイエンの気持ち
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ハデス様が魔族の言葉をどうして話せるのかと追及してきたが、その後直ぐに他の大陸にいる魔物達が暴動を起こしたと報告があり、彼は現地へと飛んで行ったのだった。
『帰ったら話そう。』
そう私に言い残して。
「フフフッ、ナタリー様おめでとうございます。」
イアンにからかわれるのが嫌で、急いで部屋に戻った私を出迎えたフローラが嬉しそうに微笑みながそう言った。
「えっ?」
驚く私に、フローラは見ていたのかと思うような事を口にする。
「ハデス様と上手くいったのでしょう?本当に良かったですね!」
「な、何でそれを!?」
「フフッ、顔に書いていますわ。真っ赤になって可愛らしいです。」
「可愛らしいッ!」
ボンッと私の頭から湯気が上がる。この様なからかいを受ける事に慣れていないのだ。
「まぁ、良いわ。イアンに会わなかっただけマシだと思いましょう。」
そう自分に言い聞かせるように言ったが、次の瞬間私は凍り付いた。
「誰が居なくてマシだって?」
部屋の奥にある天蓋付きベッドの中で、イアンが寝転びながらこちらを見ていた。
「ひょえっ!?えっ、イアン!?何でそこで寝ているの!?」
声が裏返る私を面白そうに見やりながら、イアンはヨイショと起き上がった。
「だって、気になって仕事が手に付かないし、このままじゃ眠る事すら出来ないわ!ほら早く何があったか気かせなさいよ!」
目を輝かしながらこちらを見るイアンをやり過ごす術を思い付かない私は、先程あった事を話し始めた。
「いやぁ~ん、ハデス様ったら情熱的ぃ~!!!」
「本当ですね!ナタリー様、羨ましいです!良いなぁ~、私も強引に唇を奪われてみたいです!!」
途中そんなチャチャを入れられ、私は赤くなったり青くなったりしながら話しを進めるのだった。
学園生活で経験できなかった友達とのたわいも無い時間を取り戻した。そんな気持ちが湧き上がり、鼻の奥がツンと痛んで涙が溢れた。
「どうしたのナタリー!?」
「ナタリー様!?」
止まらなくなった涙をどうして良いか分からずにただただ流していると、2人が取り乱し私の背中をさすり始める。
「分かったわ、襲われると思って怖かったのね?そうね、、初めては誰でも怖いわ。」
「イアン様、私も経験が無いのです。そんなに怖いものなのですか?」
勘違いした2人が閨事の話しを始めたので、私は居たたまれなくなるが、興奮した2人を止めれそうにもなかった。
「怖い事なんて何も無いわよ。それは素晴らしいものよ。2人とも初めてなんだったら相手に任せていれば良いのよ。」
「でも、ナタリー様は身体が小さい方なのです。ハデス様とは体格差があまりにも大きいかと思うのですが、ナタリー様はハデス様に抱かれて問題無いのでしょうか?」
段々要らぬところにまで話しが飛び火していく。さすがに2人の話しを止めようとするが、イアンに殺気をまとった視線で威圧されそれは叶わなかった。
その目は楽しい所を邪魔するなと雄弁に語っている。
「そうね、確かにハデス様は身体も大きい分、アレも大きいと思うのよねぇ。でも、きっと慣らしてくれるだろうし大丈夫よ。性急に求められたら確かに色々問題がありそうだけど、もししばらく起き上がれない程酷使されたなら私が看病してあげるわよ。」
「そうですね、ナタリー様、私も看病致しますからね!」
そう2人に同情するような目で見られ、私はさすがに切れた。いや、これで切れない方がおかしい。
「もう2人ともいい加減にしなさぁぁぁい!!!」
「で、私がそれで2人に説教したわけよ。」
日にちは変わり次の日の朝、私は昨日あった事をカイエンに話していた。
ハデス様に魔族の言葉をどうやって知ったのかと聞かれたので、カイエンの話しをいずれしなければならないだろう。
その許可をカイエンに取るため、まだ夜も明けぬ薄暗い中、気配を消しながら城を抜け出し少し離れた森でカイエンを呼び出していた。
「ねぇ、聞いてる?」
しかし、カイエンは機嫌が悪いのか私の話しに返事もしない。
元の大きさに戻って木にもたれかかり、うつむき加減で腕を組んでいる。
「もしかして寝てるの!?」
そう言って近付いた私の腕をカイエンはガシリと掴んだ。
「痛っ、何!?何するの!?」
あまりの痛みに顔をしかめた私を気遣う素ぶりも無く、カイエンはさらに手に力を込め、そのまま私を引き寄せた。
そしてようやく顔を上げたかと思うと、世にも恐ろしい顔で私を睨む。
「アイツにはやらない。」
「えっ!?」
「お前は俺の女だ!!アイツだけには絶対やらない!!」
そう言って強く私を抱きしめる。
「なっ!?何!?誰が誰の女って!?チョット離して、カイエン痛い!!」
そう訴える私の言葉など聞こえないようにさらに締め付けるように抱きしめるカイエンの身体は少し震えていた。
「カイエン?」
「ナタリー、愛してるんだ。もうずっと、、」
彼はそう言うと噛み付くようなキスをしてきた。
「嫌、、んっ、、やめてカイエン!」
その瞬間、急にカイエンの身体が光に包まれた。
抱きしめられながら呆然と輝く彼の事を見ていると、カイエンは私を見て破顔した。
「やっとだ。」
そう言ったかと思うとその光は辺りを包むほど広がり、そうかと思えば急速に縮んでいってカイエンの身体の中へと収まってしまった。
「カイエン、、今のは?」
心配する私を他所にカイエンは満足そうに笑った。
「ハッハッハッハッ、ナタリー良いぞ!」
「えっ!?」
「ハデスに俺の話しをしても。いや、これから一緒に行こう!」
「えっ!?えっ!?」
「魔力が戻った!」
「えぇぇ!?」
「お前のおかげだナタリー。愛している。心から。」
「えぇぇぇぇぇぇえ!?」
私は驚く事しか出来ず、引きずられるようにして歩かされた。
今から修羅場が始まる。そんな予感を胸に自分の顔が青ざめていくのが分かったのだった。
『帰ったら話そう。』
そう私に言い残して。
「フフフッ、ナタリー様おめでとうございます。」
イアンにからかわれるのが嫌で、急いで部屋に戻った私を出迎えたフローラが嬉しそうに微笑みながそう言った。
「えっ?」
驚く私に、フローラは見ていたのかと思うような事を口にする。
「ハデス様と上手くいったのでしょう?本当に良かったですね!」
「な、何でそれを!?」
「フフッ、顔に書いていますわ。真っ赤になって可愛らしいです。」
「可愛らしいッ!」
ボンッと私の頭から湯気が上がる。この様なからかいを受ける事に慣れていないのだ。
「まぁ、良いわ。イアンに会わなかっただけマシだと思いましょう。」
そう自分に言い聞かせるように言ったが、次の瞬間私は凍り付いた。
「誰が居なくてマシだって?」
部屋の奥にある天蓋付きベッドの中で、イアンが寝転びながらこちらを見ていた。
「ひょえっ!?えっ、イアン!?何でそこで寝ているの!?」
声が裏返る私を面白そうに見やりながら、イアンはヨイショと起き上がった。
「だって、気になって仕事が手に付かないし、このままじゃ眠る事すら出来ないわ!ほら早く何があったか気かせなさいよ!」
目を輝かしながらこちらを見るイアンをやり過ごす術を思い付かない私は、先程あった事を話し始めた。
「いやぁ~ん、ハデス様ったら情熱的ぃ~!!!」
「本当ですね!ナタリー様、羨ましいです!良いなぁ~、私も強引に唇を奪われてみたいです!!」
途中そんなチャチャを入れられ、私は赤くなったり青くなったりしながら話しを進めるのだった。
学園生活で経験できなかった友達とのたわいも無い時間を取り戻した。そんな気持ちが湧き上がり、鼻の奥がツンと痛んで涙が溢れた。
「どうしたのナタリー!?」
「ナタリー様!?」
止まらなくなった涙をどうして良いか分からずにただただ流していると、2人が取り乱し私の背中をさすり始める。
「分かったわ、襲われると思って怖かったのね?そうね、、初めては誰でも怖いわ。」
「イアン様、私も経験が無いのです。そんなに怖いものなのですか?」
勘違いした2人が閨事の話しを始めたので、私は居たたまれなくなるが、興奮した2人を止めれそうにもなかった。
「怖い事なんて何も無いわよ。それは素晴らしいものよ。2人とも初めてなんだったら相手に任せていれば良いのよ。」
「でも、ナタリー様は身体が小さい方なのです。ハデス様とは体格差があまりにも大きいかと思うのですが、ナタリー様はハデス様に抱かれて問題無いのでしょうか?」
段々要らぬところにまで話しが飛び火していく。さすがに2人の話しを止めようとするが、イアンに殺気をまとった視線で威圧されそれは叶わなかった。
その目は楽しい所を邪魔するなと雄弁に語っている。
「そうね、確かにハデス様は身体も大きい分、アレも大きいと思うのよねぇ。でも、きっと慣らしてくれるだろうし大丈夫よ。性急に求められたら確かに色々問題がありそうだけど、もししばらく起き上がれない程酷使されたなら私が看病してあげるわよ。」
「そうですね、ナタリー様、私も看病致しますからね!」
そう2人に同情するような目で見られ、私はさすがに切れた。いや、これで切れない方がおかしい。
「もう2人ともいい加減にしなさぁぁぁい!!!」
「で、私がそれで2人に説教したわけよ。」
日にちは変わり次の日の朝、私は昨日あった事をカイエンに話していた。
ハデス様に魔族の言葉をどうやって知ったのかと聞かれたので、カイエンの話しをいずれしなければならないだろう。
その許可をカイエンに取るため、まだ夜も明けぬ薄暗い中、気配を消しながら城を抜け出し少し離れた森でカイエンを呼び出していた。
「ねぇ、聞いてる?」
しかし、カイエンは機嫌が悪いのか私の話しに返事もしない。
元の大きさに戻って木にもたれかかり、うつむき加減で腕を組んでいる。
「もしかして寝てるの!?」
そう言って近付いた私の腕をカイエンはガシリと掴んだ。
「痛っ、何!?何するの!?」
あまりの痛みに顔をしかめた私を気遣う素ぶりも無く、カイエンはさらに手に力を込め、そのまま私を引き寄せた。
そしてようやく顔を上げたかと思うと、世にも恐ろしい顔で私を睨む。
「アイツにはやらない。」
「えっ!?」
「お前は俺の女だ!!アイツだけには絶対やらない!!」
そう言って強く私を抱きしめる。
「なっ!?何!?誰が誰の女って!?チョット離して、カイエン痛い!!」
そう訴える私の言葉など聞こえないようにさらに締め付けるように抱きしめるカイエンの身体は少し震えていた。
「カイエン?」
「ナタリー、愛してるんだ。もうずっと、、」
彼はそう言うと噛み付くようなキスをしてきた。
「嫌、、んっ、、やめてカイエン!」
その瞬間、急にカイエンの身体が光に包まれた。
抱きしめられながら呆然と輝く彼の事を見ていると、カイエンは私を見て破顔した。
「やっとだ。」
そう言ったかと思うとその光は辺りを包むほど広がり、そうかと思えば急速に縮んでいってカイエンの身体の中へと収まってしまった。
「カイエン、、今のは?」
心配する私を他所にカイエンは満足そうに笑った。
「ハッハッハッハッ、ナタリー良いぞ!」
「えっ!?」
「ハデスに俺の話しをしても。いや、これから一緒に行こう!」
「えっ!?えっ!?」
「魔力が戻った!」
「えぇぇ!?」
「お前のおかげだナタリー。愛している。心から。」
「えぇぇぇぇぇぇえ!?」
私は驚く事しか出来ず、引きずられるようにして歩かされた。
今から修羅場が始まる。そんな予感を胸に自分の顔が青ざめていくのが分かったのだった。
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