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ハデス様に魔力を与えたのは私だ。そう2人に告げてから1時間、私はまだ2人からお叱りを受けていた。
なぜその時ハデス様を起こさなかっただ。
なぜ勝手に魔力を与えたのか。
そしてなぜ魔力を分け与えれる能力がある事を黙っていたのか。
急にハデス様がフローラを好きだと言い出した時に、魔力を与えた人間を勘違いしている可能性を考えなかったのか?
なぜなぜなぜなぜと攻撃され、その上その時の事も事細かに事情聴取された。
アホらしいと早々に居なくなった薄情なミカエル、そして最初こそ心配そうにしていたのだが、疲れが出たのか近くのベンチに座りコックリコックリと船を漕いでいるフローラ、私はそんな2人を心の中で恨みながらひたすら謝っていた。
(良い事をしたと思ったのに、何で怒られてるのー!!!)
そんな事を言えばさらに怒られそうなので、賢明にも口を閉ざし素直に怒られる。
「まぁ良いわ。とりあえず誤解を解きましょう。」
イアンのこの言葉が説教の終わりを告げる。私はホッと胸を撫で下ろすのだった。
「そうですね。しかし、ハデス様は見たものしか信じないタイプの方です。あれはナタリー様でしたと言っても信じないでしょうね。」
「そうねぇ、、その時にナタリーでは無くフローラちゃんがしたと思い込む事が起こったのよね。それをナタリーだったと思わすには、、良い案があるわ!ナタリー、あなたはとりあえずご飯食べておいでなさい。」
「、、はい。」
気付けば辺りはもう暗くなっていた。晩ご飯時だとお腹が鳴って気が付くのだった。
「それで、ご飯食べ終わったらハデス様の所へ行くのよ。」
「ハデス様の所へ?でも、見たものしか信じない方だって今、、」
「大丈夫。そこは任せておきなさい。ほら、サイレーイス、ハデス様の所に行くの付き合いなさいよ!」
イアンはサイレーイスの手を取り引っ張って行く。
「こら!離せオカマ!!お前と手など繋いで噂などされれば私は死んでしまう!!」
サイレーイスは怒りをあらわにしたのだが、どうやら力はイアンの方が強いらしい。そのまま引きずられて行った。
「ハァー、疲れた。」
残された私はフローラを起こすと、疲れて重くなった身体を引きずるようにして食堂へと向かったのだった。
サイレーイスとイアンは揃ってハデスの前に立っていた。
ハデスは各地の見回りを終えて帰って来たばかりで疲れの為か機嫌が悪い。
『何だ2人揃って、急用でなければ後にしてくれ。』
気怠そうにいつもの椅子に座り、凄みの効いた声と鋭い眼光で2人を睨め付ける。
イアンは身体を震わせながらも意を決して発言した。
『すぐに終わります!ハデス様はフローラちゃんに魔力を貰ったと思って好きになったんですよね?』
イアンの発言にハデスは目を丸くした。
『なぜお前がそれを知っている!?』
驚くハデスの様子を見て、イアンとサイレーイスは満足げに頷く。
『ハデス様、魔力を与えたのはフローラちゃんでは無いのです。』
『何!?そんなはずは無い!私はフローラ嬢がその扉でいるのを見たのだ!』
『確かにフローラちゃんはナタリーを探しにここへ来たそうです。しかし、部屋には入らなかったとそう言っておりました。』
『では、私に魔力をくれたのは、、』
『ナタリーです。』
ハデスは信じられないといった顔でイアンとサイレーイスを交互に見た。2人はハデスを信用させるように強く頷く。
ハデスはそれを見て困り果てたようにため息を吐き、天を仰いだ。
『お前達が嘘を付くとは思わん。思わんが、、そう思い込んだのだ。この気持ちはどうなる?違うかったと言われて、じゃぁナタリーが好きだとそうなる訳が無いだろ?そう簡単に、はいそうですかとはならん。』
『ハデス様、ナタリーがもうじきここへ参ります。どうかその時に、もう一度ここで寝ていてくれませんか?』
『何!?』
『ちょうどハデス様は各地を回り魔力を使い切る寸前の状態です。ナタリーの性格を考えれば何の迷いもなくまた魔力を分け与えるでしょう。』
『、、そんな騙すような事を私にしろと言うのか?』
ハデスはジロリとイアンを睨む。
しかし、イアンは臆する事なく頷いた。
『はい。ハデス様、ナタリーの気持ちを考えてみて下さい。こっそり魔力を分け与えた彼女にも非はありますが、勘違いで自分の行いを他人の手柄にされたのです。』
『手柄などと大げさでは無いか?』
『大げさなどではありません。ナタリーはこの国のアルベルトという王子とその恋人に酷い扱いを受けここへ来ています。頑張ったのに報われない。嫌という程経験してきているでしょう。』
『そうだったな。ナタリーが来る前に彼女の調査をした報告にあった事は嘘だったと、お前がそう教えてくれたのだったな。』
『はい。ですからハデス様、ちゃんと真実を確かめて下さい。あなたが見たものしか信じないのを良く分かっています。どうか今から来るナタリーを試して下さい。それはハデス様にもナタリーにも必要な事です!』
必死に訴えるイアンにハデスはやれやれと言いながら頷いた。
『分かった。どうせ本当に眠いんだ。チョット目を閉じて休む。敵が侵入しないか見回りは頼むぞ。』
『はい!あっ、でもハデス様、爆睡しないで下さいよ?また誰が魔力を与えたのか分からないといった事態にならないで下さいね!』
念押しするイアンにハデスは苦笑いしながら頷いた。
イアンとサイレーイスは抱き合って喜んだのだが、お互い我にかえると気まずそうな顔でよそよそしく部屋から出て行くのだった。
『ナタリーだったとはな。』
そう呟いたハデスは机に突っ伏して目を閉じた。今度は寝こけてしまわないように意識を保たせ各地見回った状況を頭の中で整理するのだった。
なぜその時ハデス様を起こさなかっただ。
なぜ勝手に魔力を与えたのか。
そしてなぜ魔力を分け与えれる能力がある事を黙っていたのか。
急にハデス様がフローラを好きだと言い出した時に、魔力を与えた人間を勘違いしている可能性を考えなかったのか?
なぜなぜなぜなぜと攻撃され、その上その時の事も事細かに事情聴取された。
アホらしいと早々に居なくなった薄情なミカエル、そして最初こそ心配そうにしていたのだが、疲れが出たのか近くのベンチに座りコックリコックリと船を漕いでいるフローラ、私はそんな2人を心の中で恨みながらひたすら謝っていた。
(良い事をしたと思ったのに、何で怒られてるのー!!!)
そんな事を言えばさらに怒られそうなので、賢明にも口を閉ざし素直に怒られる。
「まぁ良いわ。とりあえず誤解を解きましょう。」
イアンのこの言葉が説教の終わりを告げる。私はホッと胸を撫で下ろすのだった。
「そうですね。しかし、ハデス様は見たものしか信じないタイプの方です。あれはナタリー様でしたと言っても信じないでしょうね。」
「そうねぇ、、その時にナタリーでは無くフローラちゃんがしたと思い込む事が起こったのよね。それをナタリーだったと思わすには、、良い案があるわ!ナタリー、あなたはとりあえずご飯食べておいでなさい。」
「、、はい。」
気付けば辺りはもう暗くなっていた。晩ご飯時だとお腹が鳴って気が付くのだった。
「それで、ご飯食べ終わったらハデス様の所へ行くのよ。」
「ハデス様の所へ?でも、見たものしか信じない方だって今、、」
「大丈夫。そこは任せておきなさい。ほら、サイレーイス、ハデス様の所に行くの付き合いなさいよ!」
イアンはサイレーイスの手を取り引っ張って行く。
「こら!離せオカマ!!お前と手など繋いで噂などされれば私は死んでしまう!!」
サイレーイスは怒りをあらわにしたのだが、どうやら力はイアンの方が強いらしい。そのまま引きずられて行った。
「ハァー、疲れた。」
残された私はフローラを起こすと、疲れて重くなった身体を引きずるようにして食堂へと向かったのだった。
サイレーイスとイアンは揃ってハデスの前に立っていた。
ハデスは各地の見回りを終えて帰って来たばかりで疲れの為か機嫌が悪い。
『何だ2人揃って、急用でなければ後にしてくれ。』
気怠そうにいつもの椅子に座り、凄みの効いた声と鋭い眼光で2人を睨め付ける。
イアンは身体を震わせながらも意を決して発言した。
『すぐに終わります!ハデス様はフローラちゃんに魔力を貰ったと思って好きになったんですよね?』
イアンの発言にハデスは目を丸くした。
『なぜお前がそれを知っている!?』
驚くハデスの様子を見て、イアンとサイレーイスは満足げに頷く。
『ハデス様、魔力を与えたのはフローラちゃんでは無いのです。』
『何!?そんなはずは無い!私はフローラ嬢がその扉でいるのを見たのだ!』
『確かにフローラちゃんはナタリーを探しにここへ来たそうです。しかし、部屋には入らなかったとそう言っておりました。』
『では、私に魔力をくれたのは、、』
『ナタリーです。』
ハデスは信じられないといった顔でイアンとサイレーイスを交互に見た。2人はハデスを信用させるように強く頷く。
ハデスはそれを見て困り果てたようにため息を吐き、天を仰いだ。
『お前達が嘘を付くとは思わん。思わんが、、そう思い込んだのだ。この気持ちはどうなる?違うかったと言われて、じゃぁナタリーが好きだとそうなる訳が無いだろ?そう簡単に、はいそうですかとはならん。』
『ハデス様、ナタリーがもうじきここへ参ります。どうかその時に、もう一度ここで寝ていてくれませんか?』
『何!?』
『ちょうどハデス様は各地を回り魔力を使い切る寸前の状態です。ナタリーの性格を考えれば何の迷いもなくまた魔力を分け与えるでしょう。』
『、、そんな騙すような事を私にしろと言うのか?』
ハデスはジロリとイアンを睨む。
しかし、イアンは臆する事なく頷いた。
『はい。ハデス様、ナタリーの気持ちを考えてみて下さい。こっそり魔力を分け与えた彼女にも非はありますが、勘違いで自分の行いを他人の手柄にされたのです。』
『手柄などと大げさでは無いか?』
『大げさなどではありません。ナタリーはこの国のアルベルトという王子とその恋人に酷い扱いを受けここへ来ています。頑張ったのに報われない。嫌という程経験してきているでしょう。』
『そうだったな。ナタリーが来る前に彼女の調査をした報告にあった事は嘘だったと、お前がそう教えてくれたのだったな。』
『はい。ですからハデス様、ちゃんと真実を確かめて下さい。あなたが見たものしか信じないのを良く分かっています。どうか今から来るナタリーを試して下さい。それはハデス様にもナタリーにも必要な事です!』
必死に訴えるイアンにハデスはやれやれと言いながら頷いた。
『分かった。どうせ本当に眠いんだ。チョット目を閉じて休む。敵が侵入しないか見回りは頼むぞ。』
『はい!あっ、でもハデス様、爆睡しないで下さいよ?また誰が魔力を与えたのか分からないといった事態にならないで下さいね!』
念押しするイアンにハデスは苦笑いしながら頷いた。
イアンとサイレーイスは抱き合って喜んだのだが、お互い我にかえると気まずそうな顔でよそよそしく部屋から出て行くのだった。
『ナタリーだったとはな。』
そう呟いたハデスは机に突っ伏して目を閉じた。今度は寝こけてしまわないように意識を保たせ各地見回った状況を頭の中で整理するのだった。
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