人質となった悪役令嬢は魔王の元で幸せになれるのか?

たま

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衝撃

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「はぁ!?」

これがお父様の話しを聞いた私の反応だった。

私達は今、お父様が暮らしている商店風の家で集まっている。
一階が八百屋でもしていたのかな?という作りをしており、2階が住まいになっている。その住まいの一室、狭いリビングに皆ギューギューになって座っているところだ。

ちなみに、私の膝の上ではカイエンがゴロゴロとくつろいでいる。
お父様が居るのにも関わらずヒョコッと出て来たので、私は目を剥いて驚いた。しかし、お父様もお母様もカイエンの存在を知っていたと聞かされ、さらに驚く事となる。

幼い頃にカイエンと契約したのだが、その直後私の魔力の暴走が無くなった事を不思議に思った両親が、私の後をつけ、カイエンといる姿を目撃したらしい。
今まで黙っていたのは、悪魔を使役しているという事がバレれば公爵家が取り潰されるだけでなく、私が極刑に処される可能性もあるからだ。
両親は自分達からも秘密が漏れないようにと見て見ぬ振りをし、その秘密がバレないようにと必死にフォローしてくれていたという。

しかし、私の「はぁ!?」はこれに対して出た言葉では無かった。
私のこの発言はバゼルハイド王の発言に対してだ。

「お父様、今何とおっしゃいましたか!?」

私は呆然としながらも怒りが抑えられず、世にも恐ろしい顔と声でそうお父様に聞き直した。

「あらまあまあ、ナタリー落ち着いて。」

お母様がおっとりした様子で皆に紅茶を淹れるのだが、今はその仕草でさえ鬱陶しく感じた。
紅茶など飲んでいる場合ではない。

「だからね、ナタリー、、お前に帰還命令がくだりそうなんだよ。」

娘に威圧される事となったお父様は、汗を拭きふきしながら同じ言葉を繰り返す。

「帰還命令って、私が帰るの!?何で!?そんなの向こうが勝手に決められる事じゃないでしょ!?だって私人質なのよ!!」

グイグイとお父様に詰め寄ると、居心地が悪くなったカイエンが私の膝から肩へと移動した。その際、私のこめかみにデコピンの要領で一発食らわしてくる。

「ナタリー落ち着けよ。おちおち昼寝も出来やしない。そんなに責め立てられれば父上だって何も話せないだろう。」

それで我に返った私は、恥ずかしそうに席に座り直した。
そんなこんなで中々話しが進まず、それに痺れを切らしたミカエルが焦れたように口を挟む。

「それで、コーベルハイド様、それは確かな情報なのですか?」

「あぁ、ミカエル殿、確かな情報だ。バゼルハイドの命でハデス様宛の書面が作られているところだ。」

「本当に、、」

ミカエルは何かを言い澱み、自分を落ち着けるように手を胸に置いた後、また口を開く。

「帰還する者はナタリーだけなのですか?」

ミカエルは元いた騎士団へ下っ端になっても良いから戻りたいと言っていた。彼にとってこの質問は今後の人生を決める大事な質問なのだ。

「ミカエル殿、申し訳ない。ちゃんと分かっているのはナタリーだけなのだ。そして、ナタリーの代わりにエルザ様が人質として送られると。」

「「「エルザ様が!!??」」」

一同の声が揃う。エルザ様とはバゼルハイド王の第1王妃であり、アルベルト様のお母様である。
バゼルハイド王はエルザ様を溺愛していると有名だったはずなのに、なぜ彼女を人質にしてまで私を帰らせたいのか。
嫌な予感しかしない状況に、私の顔が強張る。
そんな私の様子に気付いたお父様が、私の手を握り優しく語りかけてきた。

「ナタリー、向こうで何があったのかは調査中なのだがね。ハデス様は良き方だが、アルベルト殿が考えを入れ替えお前を妃にと連れ戻す事を決めたのなら、それも幸せなのではと思ったが、、。しかし、バゼルハイドは恐ろしい男だ。良からぬ事を考えているかもしれない。情けない話しだが、要するに私には判断し切れないのだよ。」

最後は自分で決めなさい。お父様はそう言いたいのだと理解し、私は強く頷いた。

「とりあえず、ハデス様がその事実を知るまでは私は何も申しません。いざという時にどうするか、ちゃんと考えておきます。」

「そうだね、何かあれば直ぐに相談するんだよ?」

「はい、お父様。」

お父様にはそう言ったが、私は一体どうすれば良いのか、、そしてそこまでして私を帰らそうとする思惑は一体。
戻るとなれば、バゼルハイド王とアルベルト様とまた向き合わねばならなくなる。
バゼルハイド王の顔を思い出すと自然と身体が強張り、アルベルト様を思い出すと心が暗くなる。
お父様はアルベルト様が考えを入れ替え私を妃にと考えたかもと言ったが、そうは到底思えなかった。

もし、ここに残るとなれば彼の側にこれからもいられる。私はハデス様を思い出し心が温かくなるのを感じた。

あぁ、私は魔王の側で人質で居られる方が幸せなのだ。
こんな事を思うなど考えもしなかった。
一体どうすれば、、
その答えはきっと私の中にしか無い。
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