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側近2人はハデスにフローラの話しをしようとしたのだが、結局出来ないまま1週間が過ぎていた。
イアンからそれを聞いた私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
私がハデス様を好きな気持ちはバレてはいけない。恋をしてすぐに失恋などごめんだ。
私の悩みといえばそれぐらいで、日々平和に過ごしていた。
平和だ。平和なのだが、、。
「マズいわ、フローラ。」
滞在している私達の部屋の中で私はボヤいた。品の良い調度品に囲まれた私達の部屋は、ピンクを基調にした可愛らしい雰囲気の部屋だ。
真ん中に馬鹿みたいに大きい天蓋付きのベッドが置かれており、そこで私は抱き枕を抱えてゴロゴロと転がっている。
「ナタリー様どうしたのですか?」
フローラは自分の赤い髪を器用に編み込み、うなじが見えるように頭の高い位置でまとめていく。
その後ろ姿を見ながら、イアンの巻貝の様な髪型を思い出していた。
「ねぇ、その髪型流行ってるの?」
「えっ?」
「嫌、良いの。ごめんなさい。そうじゃなくて、私あれから外に出られていないでしょ?」
「狼に襲われかけてからですよね?ハデス様も心配して下さっているみたいですし、当然じゃありませんか?」
「うっ、そうね。分かっているのよ。でも、このままではカイエンの魔力が枯渇してしまうわ。1週間も離れた事など今まで一度も無いのよ。」
そうなのだ。レッドウルフに襲われかける前にカイエンが私の漏れ出した魔力を吸収したのが最後、それから彼に魔力を与えていない。
カイエンは魔力が無くなると小さい身体を元の大きさに戻す事が出来ない。小さい身体では腕力など無く、もちろん魔力が無ければ魔法も使えない。要するに戦うすべが皆無なのだ。
「もう言ってしまったらどうですか?ハデス様のお兄様を飼育していると。」
「ブーッ!!飼育ってフローラ!!あなた可愛い顔してキツイ事言うわね!」
涙を流しながら笑う私にフローラは真っ赤な顔で手を振りながら訂正した。
「違うんです!!言い間違えただけです!!どう言ったら良いのでしょうか?奴隷でも無いし、契約?使役!?使役ですか!!??」
「フフフッ、そうね私もどう説明したら良いのか分からないわ。ワガママで乱暴で、昔は大嫌いだったのに、長く一緒に居過ぎたのね。彼はそうね、家族。その言葉が一番しっくりくるわね。」
「、、家族ですか。」
フローラがしんみりと呟いた。あまりに頼りなくそう彼女が呟いたので、私は彼女の顔を見るために身体を起こした。
「フローラ?あなた泣いているの?」
鏡ごしに見た彼女の瞳は潤んでいるように見える。私は慌てて立ち上がり彼女の側まで行くと椅子に座るフローラの横に片膝をついた。
「ナタリー様、服が汚れます!」
それを見たフローラが慌てて私を立ち上がらせようとしたが、私は首を振った。フローラは情け無い顔でオロオロしている。
「何で泣いたのフローラ?」
私は出来るだけ優しい声音で聞いた。フローラは私の顔をチラチラと見ながら、頬を染めて話し出した。
「カイエン様に嫉妬したのです。」
「カイエンに?何であんな男に嫉妬するの?」
「ナタリー様がカイエン様の事を家族と言ったからです。私はナタリー様の事が大好きなのに家族にはなれません。」
そう言いながらフローラは溜めていた涙をポロリと零した。
(あぁ、私は何でこの子に嫉妬なんかしたのだろう。私を大切に想ってくれるこの子を、私のくだらない感情で傷付けるところだった。)
私はそう思いながら人差し指でフローラの涙を拭った。
「フローラ、あなたは私の親友でしょう?」
「親友?」
「親友はこの世でたった1人唯一無二の存在よ。そうでしょ?」
「ナタリー様。」
フローラの涙腺は決壊し、先程より大量の涙が溢れ出した。
「あらあら、嬉しくても泣くなんて忙しい人ね?ほら、泣かないで?」
私は持っていたハンカチを取り出しフローラにそっと渡した。
彼女の頭を撫でながら、もう二度とこんな心の綺麗なフローラに馬鹿な考えを持つのはやめよう。そう彼女の涙に誓おうと思ったが、、やめた。
私はそんなに強くない。これからも馬鹿な考えをいっぱいするだろう。
それならば全てフローラに打ち明けよう。私が馬鹿なところも彼女に知って貰おう。
「ナタリー様、それでどうなさるのですか?」
泣き止んだフローラは話しを本題に戻してくれた。
「お父様が密偵を出してバゼルハイド王の事を探っているらしいのだけど、そろそろその報告が来てるのじゃないかと思うの。それも聞きたいから、カイエンを探しがてら両親に会いに行こうかと。でもハデス様には馬鹿正直にこんな話し言えないし。そうね、両親に会いに行きたいとそう素直に訴えてみるわ。」
「さすがヘンリー様ですね。この状況でも密偵を出せるなんて。」
ヘンリーとはてっぷりとお腹の出た可愛い私のお父様の事だ。
「ハデス様も向こうの人間達を探っているはずだから、隠しても仕方ないとは思うのだけれど、、。でも報告の内容が聞かれれば立場が危うくなるようなものだったのなら、真相がちゃんと分かるまで彼に知られたくないわ。」
「それはそうですね。こちらが先に情報を手にしたならば、下手に知られるより、ある程度手立てを考えてから知られる方が良いですね。」
「そうね。とりあえずハデス様の所へ行ってくるわ!とにかく彼を説得出来ないことには話しにならなくてよ。」
カイエンが死んでしまう前に!そんな言葉を飲み込んで私はハデス様の元へ向かった。
イアンからそれを聞いた私はホッと胸を撫で下ろしたのだった。
私がハデス様を好きな気持ちはバレてはいけない。恋をしてすぐに失恋などごめんだ。
私の悩みといえばそれぐらいで、日々平和に過ごしていた。
平和だ。平和なのだが、、。
「マズいわ、フローラ。」
滞在している私達の部屋の中で私はボヤいた。品の良い調度品に囲まれた私達の部屋は、ピンクを基調にした可愛らしい雰囲気の部屋だ。
真ん中に馬鹿みたいに大きい天蓋付きのベッドが置かれており、そこで私は抱き枕を抱えてゴロゴロと転がっている。
「ナタリー様どうしたのですか?」
フローラは自分の赤い髪を器用に編み込み、うなじが見えるように頭の高い位置でまとめていく。
その後ろ姿を見ながら、イアンの巻貝の様な髪型を思い出していた。
「ねぇ、その髪型流行ってるの?」
「えっ?」
「嫌、良いの。ごめんなさい。そうじゃなくて、私あれから外に出られていないでしょ?」
「狼に襲われかけてからですよね?ハデス様も心配して下さっているみたいですし、当然じゃありませんか?」
「うっ、そうね。分かっているのよ。でも、このままではカイエンの魔力が枯渇してしまうわ。1週間も離れた事など今まで一度も無いのよ。」
そうなのだ。レッドウルフに襲われかける前にカイエンが私の漏れ出した魔力を吸収したのが最後、それから彼に魔力を与えていない。
カイエンは魔力が無くなると小さい身体を元の大きさに戻す事が出来ない。小さい身体では腕力など無く、もちろん魔力が無ければ魔法も使えない。要するに戦うすべが皆無なのだ。
「もう言ってしまったらどうですか?ハデス様のお兄様を飼育していると。」
「ブーッ!!飼育ってフローラ!!あなた可愛い顔してキツイ事言うわね!」
涙を流しながら笑う私にフローラは真っ赤な顔で手を振りながら訂正した。
「違うんです!!言い間違えただけです!!どう言ったら良いのでしょうか?奴隷でも無いし、契約?使役!?使役ですか!!??」
「フフフッ、そうね私もどう説明したら良いのか分からないわ。ワガママで乱暴で、昔は大嫌いだったのに、長く一緒に居過ぎたのね。彼はそうね、家族。その言葉が一番しっくりくるわね。」
「、、家族ですか。」
フローラがしんみりと呟いた。あまりに頼りなくそう彼女が呟いたので、私は彼女の顔を見るために身体を起こした。
「フローラ?あなた泣いているの?」
鏡ごしに見た彼女の瞳は潤んでいるように見える。私は慌てて立ち上がり彼女の側まで行くと椅子に座るフローラの横に片膝をついた。
「ナタリー様、服が汚れます!」
それを見たフローラが慌てて私を立ち上がらせようとしたが、私は首を振った。フローラは情け無い顔でオロオロしている。
「何で泣いたのフローラ?」
私は出来るだけ優しい声音で聞いた。フローラは私の顔をチラチラと見ながら、頬を染めて話し出した。
「カイエン様に嫉妬したのです。」
「カイエンに?何であんな男に嫉妬するの?」
「ナタリー様がカイエン様の事を家族と言ったからです。私はナタリー様の事が大好きなのに家族にはなれません。」
そう言いながらフローラは溜めていた涙をポロリと零した。
(あぁ、私は何でこの子に嫉妬なんかしたのだろう。私を大切に想ってくれるこの子を、私のくだらない感情で傷付けるところだった。)
私はそう思いながら人差し指でフローラの涙を拭った。
「フローラ、あなたは私の親友でしょう?」
「親友?」
「親友はこの世でたった1人唯一無二の存在よ。そうでしょ?」
「ナタリー様。」
フローラの涙腺は決壊し、先程より大量の涙が溢れ出した。
「あらあら、嬉しくても泣くなんて忙しい人ね?ほら、泣かないで?」
私は持っていたハンカチを取り出しフローラにそっと渡した。
彼女の頭を撫でながら、もう二度とこんな心の綺麗なフローラに馬鹿な考えを持つのはやめよう。そう彼女の涙に誓おうと思ったが、、やめた。
私はそんなに強くない。これからも馬鹿な考えをいっぱいするだろう。
それならば全てフローラに打ち明けよう。私が馬鹿なところも彼女に知って貰おう。
「ナタリー様、それでどうなさるのですか?」
泣き止んだフローラは話しを本題に戻してくれた。
「お父様が密偵を出してバゼルハイド王の事を探っているらしいのだけど、そろそろその報告が来てるのじゃないかと思うの。それも聞きたいから、カイエンを探しがてら両親に会いに行こうかと。でもハデス様には馬鹿正直にこんな話し言えないし。そうね、両親に会いに行きたいとそう素直に訴えてみるわ。」
「さすがヘンリー様ですね。この状況でも密偵を出せるなんて。」
ヘンリーとはてっぷりとお腹の出た可愛い私のお父様の事だ。
「ハデス様も向こうの人間達を探っているはずだから、隠しても仕方ないとは思うのだけれど、、。でも報告の内容が聞かれれば立場が危うくなるようなものだったのなら、真相がちゃんと分かるまで彼に知られたくないわ。」
「それはそうですね。こちらが先に情報を手にしたならば、下手に知られるより、ある程度手立てを考えてから知られる方が良いですね。」
「そうね。とりあえずハデス様の所へ行ってくるわ!とにかく彼を説得出来ないことには話しにならなくてよ。」
カイエンが死んでしまう前に!そんな言葉を飲み込んで私はハデス様の元へ向かった。
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