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友情
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イアンに案内されたのは豪華な客室だった。
広い方が私とフローラ、その横にある少し小さい部屋がミカエルの部屋。
この部屋は国にとってとても重要な者が泊まる際使われていた部屋だったはず。私も入るのは初めてだった。
ミカエルと一度離れて各々荷物の片付けをし、18時に揃って食堂へ行く約束をした。
「あっ、言い忘れてたけど、日が沈んでからは城からは出ないでちょうだい。」
よいしょと私達の荷物を部屋に運びながらイアンはそう言った。
「どうして?」
「城の中はハデス様の結界が張ってあるのよ。邪悪な者は寄せ付けないし、結界内で揉め事があればハデス様に筒抜けになるの。私達も今色々あってね。」
イアンは少し苦しそうな顔でそう言った。
「色々って?」
「んー、ハデス様にはヴェルディス様という弟君がいらっしゃるんだけど。ヴェルディス様は先代魔王様の意思を継がなかったのよ。」
「先代魔王様の意思、、」
私はカイエンの話しを思い出してた。親父は人間を愛していたと。俺はその気持ちが分からず親父とは喧嘩ばかりだったとそう言っていた。
カイエンの弟でもあるヴェルディスも人間嫌いだったとすれば、魔王を継いだのがハデス様でなければ人間は滅ぼされていたかもしれない。
私は身震いした。
「今はハデス様が睨みを利かせて各地を見回っているから大丈夫なのだけど、ハデス様に何かあれば大変な事になるわ。」
「人間は全て殺される。」
私の発言にイアンは頷き、フローラは青い顔をして床にペタリと座り込んでしまった。私はフローラの後ろに回ると彼女の背中を優しく撫でる。
「人間どころじゃないのよ。ヴェルディス様は魔物にも偏見があってね。役立たずだと思っている弱い種族を魔王になれば皆殺しにするに決まってるわ。」
「仲間まで!?」
「そう。分かった?あなた達は日が沈む頃には城に戻っておく事。約束よ。あの可愛らしい坊やにも伝えておいて。」
「分かったわ。」
「じゃぁ、私は仕事に戻るから。何かあったら呼びなさい『イアン』魔族の言葉での発音はこれ。人間の言葉を話せる者は少ないから、ジェスチャーで何とかしなさいね。」
「あの、私、」
「じゃぁねぇ~。」
私は魔族の言葉を話せると言おうとして伝え損ねてしまう。隠すつもりでは無かったのだが。
イアンが帰り、片付けを再開したフローラは私の顔をチラチラと見てくる。
「どうしたのフローラ?」
私がそう尋ねると、フローラはおずおずと口を開いた。
「ナタリー様は、、こちらに来てから、、いえアルベルト様と別れてから、何だかとても生き生きしてますね?」
気まずそうに話すフローラの様子に、私は彼女の意図が分からずコテリと首を傾げる。
「そうかしら?」
「ナタリー様は、、王妃教育に、学園でも成績はトップ、それに体術に剣術、ずっと頑張っていたでは片付けられない程必死で努力されていたでしょう?」
「そうね、、」
私は少し前までの私を思い返した。数週間前の事なのに、何だか遠い昔のように感じた。
「あの努力が水の泡になってしまったのです。ナタリー様が立ち直れないのでは無いのかと思い、、、とても心配していました。」
「フローラ。」
私は彼女の言いたい事に気付くと微笑んだ。私が人質に選ばれてから、いやもっと前かもしれない。アルベルト様がマリアさんと親しくなった頃から、ずっとフローラは私の為に心を砕いてくれていたのだろう。
「ありがとう。心配をかけてしまいましたね。」
「いいえ、良いのです。私がナタリー様を心配するのは当たり前の事なのですから。」
「フフッ。そうね、本当は落ち込んだわ。でもね、王妃教育も学問に打ち込んだ事も、武術や剣術に励んだ事も、何もかも自分を裏切ったりしないわ。これから私が生きていく糧になる。そうでしょ?」
「ナタリー様、、そうですね。」
「それにね、、私、アルベルト様に秘密が増えていく事が恐ろしかったの。」
「秘密ですか?」
私の言葉に今度はフローラがコテリと首を傾げた。
「そう。生まれつき魔力が多かった事も彼に隠してた。カイエンと契約してからは魔力を吸い取って貰って生活に支障は無くなったけど、、。秘密は増えたわ。公爵家の令嬢が悪魔を使役しているなどと知れたら困るでしょ?」
本当を言えば困るどころではない。家は取り潰されるだろうし、もしかしたら私は極刑に処されるかもしれない。
「その上、マリアさんが現れてからは、彼女が魅了の魔法を使っているのに黙っていたわ。マリアさんが私に虐められていると嘘を言っていたのも、私の家の力を使えば無実は証明出来たのにも関わらずね。」
「そうです。ずっとそれが不思議でした。なぜだったのです?ナタリー様はなぜ無実を証明しなかったのですか?」
フローラの当然の問いに、私は答えを用意していなかった。なぜなのだろう。それは私もずっと考えていた事である。
「分からない。証明しても信じて貰えないかもしれないと思ったから。信じてくれてもマリアさんを庇うかもしれないと思ったから。理由を上げればキリがないのだけれど、どれもしっくり来ないの。」
そしてしばらく考えて私は口を開いた。
「私は、、王妃になどなりたく無かった。」
「えっ!?」
私の答えにフローラは心底驚いた顔をした。それはそうだろう。私が王妃になる為に血反吐を吐くような努力と、そして我慢をしていた事を知っているからだ。
そう、、、我慢。私は我慢していたのだ。
「私ね、馬で遠乗りするのが好きなの。ダンスはあまり得意ではないし、あぁ、あなたとお喋りしながら買い物へ行くのも好き。雨の日に傘もささずに駆け回ったり、お祭りに庶民の格好をしてお出かけするのも。」
「ナタリー様、、」
「私、王妃になりたく無かったんだわ。今分かったわ。アルベルト様を愛していた。確かにそうだったはずなのだけど、、。彼に秘密を打ち明けらない上に、全ての自由を奪う王妃の座が重荷だったのだわ。」
私は自嘲するように笑い、フローラを見た。
「軽蔑した?」
私の問いにフローラは瞳に涙を溜めて首を振る。
「軽蔑などしません!!そんなにも重荷だった王妃の座に就く為に、あなたがどれほどの努力をしていたか私は知っています!!ナタリー様、私はそんなあなたを尊敬します!!」
「フローラ、、。ありがとう、、ありがとうフローラ。」
私は彼女を抱きしめた。そして抱きしめたままイタズラに言う。
「友達だと言う割に、あなたはいつまで経っても他人行儀な話し方よね?いつになったらナタリーと呼んでくれるの?」
「へっ!?それは、、それは無理です!!ナタリー様は私にとって憧れの人なのですから!!」
「フフッ、まぁ良いわ。いつかね?」
私が嬉しそうに笑うと、フローラも釣られて笑った。
「それにしてもナタリー様、ハデス様を見て頬を染めていましたよね?」
「えっ!?」
私は予想だにしていなかった質問にうろたえる。
「あんなに恐ろしい見た目なのに、本当に好みのタイプだったのですか?」
「そ、そ、そ、そ、そんな訳ないじゃない!私達は人質なのよ?そんな能天気な事言ってる場合じゃないのよ?ハデス様がタイプなど、そんな訳無いじゃない!!」
私は真っ赤な顔で、手をブンブン振りながら否定した。フローラがそんな私を見て笑い出す。
「フフッ、ハハッ、ハハハッ、ナタリー様、嘘が下手過ぎます!そんなにタイプだったのですか?私など身体が震えて仕方なかったというのに。」
「もう!フローラ!違うって言っているのに、、そりゃぁ、少し顔は好みだったかもしれないわ。身体だって、あんなに鍛え上げられた身体を見たのは初めて。あんな人に抱きしめられたらどうなるのかしら?」
妄想が広がり要らぬ事を口走ってしまう。フローラがニヤニヤしながら私を見ているのに気が付いて慌てて首を振った。
「確かにチョットだけタイプだったわ。でもチョットだけよ?でも私はせいぜい12歳にしか見えないらしいじゃない。どうせ相手になど、、」
「ナタリー様、、。」
「そんな事よりフローラ。あなたこそミカエルの事好きなんでしょ?」
「へっ!?」
今度はフローラが真っ赤になる番だった。フローラは目を見開き口をパクパクさせている。
「バレていないと思ったの?彼を見るあなたの目は恋する乙女そのものよ?」
「そんな事ありません。もしそうだとしても、私など相手にされませんし。それに、、恋というものが私には良く分かりません。」
フローラはシュンとしてしまう。彼女は昔からモテるのに、なぜか自分に自信が無い困ったちゃんなのだ。それがフローラの可愛い所でもあるのだが。
「まぁ良いじゃない。これから大変な思いをするのは目に見えているわ。だからこそ好きな人が側でいるのはきっと心の支えになる。そうでしょ?」
そう言い、微笑みながらフローラを見つめると、フローラは諦めた様な笑顔を見せた。
「そうですね。では、私もナタリー様を応援します!」
「私の事は良いのよ。」
「私の事も良いのです!」
「「フフッ、、アハハハハハ。」」
人質生活が始まったとは思えない程の呑気な会話に、私達は堪らず笑い出してしまった。
フローラがここに居てくれる事を感謝し、私は心の底から笑った。
広い方が私とフローラ、その横にある少し小さい部屋がミカエルの部屋。
この部屋は国にとってとても重要な者が泊まる際使われていた部屋だったはず。私も入るのは初めてだった。
ミカエルと一度離れて各々荷物の片付けをし、18時に揃って食堂へ行く約束をした。
「あっ、言い忘れてたけど、日が沈んでからは城からは出ないでちょうだい。」
よいしょと私達の荷物を部屋に運びながらイアンはそう言った。
「どうして?」
「城の中はハデス様の結界が張ってあるのよ。邪悪な者は寄せ付けないし、結界内で揉め事があればハデス様に筒抜けになるの。私達も今色々あってね。」
イアンは少し苦しそうな顔でそう言った。
「色々って?」
「んー、ハデス様にはヴェルディス様という弟君がいらっしゃるんだけど。ヴェルディス様は先代魔王様の意思を継がなかったのよ。」
「先代魔王様の意思、、」
私はカイエンの話しを思い出してた。親父は人間を愛していたと。俺はその気持ちが分からず親父とは喧嘩ばかりだったとそう言っていた。
カイエンの弟でもあるヴェルディスも人間嫌いだったとすれば、魔王を継いだのがハデス様でなければ人間は滅ぼされていたかもしれない。
私は身震いした。
「今はハデス様が睨みを利かせて各地を見回っているから大丈夫なのだけど、ハデス様に何かあれば大変な事になるわ。」
「人間は全て殺される。」
私の発言にイアンは頷き、フローラは青い顔をして床にペタリと座り込んでしまった。私はフローラの後ろに回ると彼女の背中を優しく撫でる。
「人間どころじゃないのよ。ヴェルディス様は魔物にも偏見があってね。役立たずだと思っている弱い種族を魔王になれば皆殺しにするに決まってるわ。」
「仲間まで!?」
「そう。分かった?あなた達は日が沈む頃には城に戻っておく事。約束よ。あの可愛らしい坊やにも伝えておいて。」
「分かったわ。」
「じゃぁ、私は仕事に戻るから。何かあったら呼びなさい『イアン』魔族の言葉での発音はこれ。人間の言葉を話せる者は少ないから、ジェスチャーで何とかしなさいね。」
「あの、私、」
「じゃぁねぇ~。」
私は魔族の言葉を話せると言おうとして伝え損ねてしまう。隠すつもりでは無かったのだが。
イアンが帰り、片付けを再開したフローラは私の顔をチラチラと見てくる。
「どうしたのフローラ?」
私がそう尋ねると、フローラはおずおずと口を開いた。
「ナタリー様は、、こちらに来てから、、いえアルベルト様と別れてから、何だかとても生き生きしてますね?」
気まずそうに話すフローラの様子に、私は彼女の意図が分からずコテリと首を傾げる。
「そうかしら?」
「ナタリー様は、、王妃教育に、学園でも成績はトップ、それに体術に剣術、ずっと頑張っていたでは片付けられない程必死で努力されていたでしょう?」
「そうね、、」
私は少し前までの私を思い返した。数週間前の事なのに、何だか遠い昔のように感じた。
「あの努力が水の泡になってしまったのです。ナタリー様が立ち直れないのでは無いのかと思い、、、とても心配していました。」
「フローラ。」
私は彼女の言いたい事に気付くと微笑んだ。私が人質に選ばれてから、いやもっと前かもしれない。アルベルト様がマリアさんと親しくなった頃から、ずっとフローラは私の為に心を砕いてくれていたのだろう。
「ありがとう。心配をかけてしまいましたね。」
「いいえ、良いのです。私がナタリー様を心配するのは当たり前の事なのですから。」
「フフッ。そうね、本当は落ち込んだわ。でもね、王妃教育も学問に打ち込んだ事も、武術や剣術に励んだ事も、何もかも自分を裏切ったりしないわ。これから私が生きていく糧になる。そうでしょ?」
「ナタリー様、、そうですね。」
「それにね、、私、アルベルト様に秘密が増えていく事が恐ろしかったの。」
「秘密ですか?」
私の言葉に今度はフローラがコテリと首を傾げた。
「そう。生まれつき魔力が多かった事も彼に隠してた。カイエンと契約してからは魔力を吸い取って貰って生活に支障は無くなったけど、、。秘密は増えたわ。公爵家の令嬢が悪魔を使役しているなどと知れたら困るでしょ?」
本当を言えば困るどころではない。家は取り潰されるだろうし、もしかしたら私は極刑に処されるかもしれない。
「その上、マリアさんが現れてからは、彼女が魅了の魔法を使っているのに黙っていたわ。マリアさんが私に虐められていると嘘を言っていたのも、私の家の力を使えば無実は証明出来たのにも関わらずね。」
「そうです。ずっとそれが不思議でした。なぜだったのです?ナタリー様はなぜ無実を証明しなかったのですか?」
フローラの当然の問いに、私は答えを用意していなかった。なぜなのだろう。それは私もずっと考えていた事である。
「分からない。証明しても信じて貰えないかもしれないと思ったから。信じてくれてもマリアさんを庇うかもしれないと思ったから。理由を上げればキリがないのだけれど、どれもしっくり来ないの。」
そしてしばらく考えて私は口を開いた。
「私は、、王妃になどなりたく無かった。」
「えっ!?」
私の答えにフローラは心底驚いた顔をした。それはそうだろう。私が王妃になる為に血反吐を吐くような努力と、そして我慢をしていた事を知っているからだ。
そう、、、我慢。私は我慢していたのだ。
「私ね、馬で遠乗りするのが好きなの。ダンスはあまり得意ではないし、あぁ、あなたとお喋りしながら買い物へ行くのも好き。雨の日に傘もささずに駆け回ったり、お祭りに庶民の格好をしてお出かけするのも。」
「ナタリー様、、」
「私、王妃になりたく無かったんだわ。今分かったわ。アルベルト様を愛していた。確かにそうだったはずなのだけど、、。彼に秘密を打ち明けらない上に、全ての自由を奪う王妃の座が重荷だったのだわ。」
私は自嘲するように笑い、フローラを見た。
「軽蔑した?」
私の問いにフローラは瞳に涙を溜めて首を振る。
「軽蔑などしません!!そんなにも重荷だった王妃の座に就く為に、あなたがどれほどの努力をしていたか私は知っています!!ナタリー様、私はそんなあなたを尊敬します!!」
「フローラ、、。ありがとう、、ありがとうフローラ。」
私は彼女を抱きしめた。そして抱きしめたままイタズラに言う。
「友達だと言う割に、あなたはいつまで経っても他人行儀な話し方よね?いつになったらナタリーと呼んでくれるの?」
「へっ!?それは、、それは無理です!!ナタリー様は私にとって憧れの人なのですから!!」
「フフッ、まぁ良いわ。いつかね?」
私が嬉しそうに笑うと、フローラも釣られて笑った。
「それにしてもナタリー様、ハデス様を見て頬を染めていましたよね?」
「えっ!?」
私は予想だにしていなかった質問にうろたえる。
「あんなに恐ろしい見た目なのに、本当に好みのタイプだったのですか?」
「そ、そ、そ、そ、そんな訳ないじゃない!私達は人質なのよ?そんな能天気な事言ってる場合じゃないのよ?ハデス様がタイプなど、そんな訳無いじゃない!!」
私は真っ赤な顔で、手をブンブン振りながら否定した。フローラがそんな私を見て笑い出す。
「フフッ、ハハッ、ハハハッ、ナタリー様、嘘が下手過ぎます!そんなにタイプだったのですか?私など身体が震えて仕方なかったというのに。」
「もう!フローラ!違うって言っているのに、、そりゃぁ、少し顔は好みだったかもしれないわ。身体だって、あんなに鍛え上げられた身体を見たのは初めて。あんな人に抱きしめられたらどうなるのかしら?」
妄想が広がり要らぬ事を口走ってしまう。フローラがニヤニヤしながら私を見ているのに気が付いて慌てて首を振った。
「確かにチョットだけタイプだったわ。でもチョットだけよ?でも私はせいぜい12歳にしか見えないらしいじゃない。どうせ相手になど、、」
「ナタリー様、、。」
「そんな事よりフローラ。あなたこそミカエルの事好きなんでしょ?」
「へっ!?」
今度はフローラが真っ赤になる番だった。フローラは目を見開き口をパクパクさせている。
「バレていないと思ったの?彼を見るあなたの目は恋する乙女そのものよ?」
「そんな事ありません。もしそうだとしても、私など相手にされませんし。それに、、恋というものが私には良く分かりません。」
フローラはシュンとしてしまう。彼女は昔からモテるのに、なぜか自分に自信が無い困ったちゃんなのだ。それがフローラの可愛い所でもあるのだが。
「まぁ良いじゃない。これから大変な思いをするのは目に見えているわ。だからこそ好きな人が側でいるのはきっと心の支えになる。そうでしょ?」
そう言い、微笑みながらフローラを見つめると、フローラは諦めた様な笑顔を見せた。
「そうですね。では、私もナタリー様を応援します!」
「私の事は良いのよ。」
「私の事も良いのです!」
「「フフッ、、アハハハハハ。」」
人質生活が始まったとは思えない程の呑気な会話に、私達は堪らず笑い出してしまった。
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