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人質
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次の日の昼、私達は船で出航する為港へと向かっていた。
昨日泣くだけ泣いた私はスッキリとしており、自分が出来る事をしようと前向きな気持ちになっていた。
最低限の荷物を乗せた荷馬車の中で揺られながら小一時間、潮の香りに気付き顔を上げれば水面がキラキラと光る美しい青い海が見えて来た。
「フローラ、海よ!」
私が嬉しそうに振り返ると、そうですねと微笑むフローラと、しかめっ面をしたミカエル様の顔が目に入った。
ミカエル様の顔を見て恥ずかしくなり俯いて座り直す。
そうだ。遊びでは無いのだ。
荷馬車が止まるとミカエル様は相変わらず不機嫌そうに荷物を運び始めた。
手伝おうとしたが、向こうに行けと言われたので邪魔にならないようにその場を離れた。
「んーー!!」
荷馬車の中で凝り固まった身体を伸ばすように伸びをし、辺りを見渡した。
雲1つない晴れ渡った空、そして清々しい海風が私を送り出すように優しく吹いてくる。
私の白銀の髪がサラサラとなびいた。
この髪色と薄紫の瞳をアルベルト様は気持ち悪がっていた。
私達の住む世界では白銀も薄紫の目も珍しいからだ。
「ナタリー様、大丈夫ですか?」
振り返ればフローラが心配そうな顔で追いかけて来ていた。私が1人で皆から離れる様に歩き始めたので、心配させてしまったようだ。
「ごめんなさい。ゆっくり海を眺めるのなんて久しぶりだったから。」
「そうですね。この前海を見たのはここへ逃げて来た時でしたからね。」
「えぇ。あの時は必死で景色どころではなかったわ。」
必死で逃げる私達にどこまでも続く海は不安をかき立てた。
「ナタリー嬢、フローラ嬢、そろそろ船へ。」
私達はその声に振り返ると、機嫌の悪そうな顔をしたミカエル様が立っていた。
淡い金の髪を短く刈り上げ、青く澄んだ瞳にスッと通った鼻筋、そして鍛え上げた身体。
平民でありながら彼が貴族の令嬢にとても人気があったのも頷ける。
ミカエル様は騎士の鎧を付け、戦にでも向かう面持ちをしていた。彼にとってはついこの間まで戦っていた魔物達が住む本拠地へと向かうのだ。当然と言えば当然である。
チッ、これだから令嬢は、、船に向き直り歩き出した彼から小さな呟きが聞こえた。
「ナタリー様、お気になさらぬよう、、。」
それに気付いたフローラがそう囁く。
「えぇ、分かっているはフローラ。これぐらいでめげていれば向こうではやっていけないわよ。私は大丈夫。」
「そうですか。」
ホッとした彼女の優しげな顔を見て私の胸はズキンと痛む。
フローラはとても美しい女性だ。男性にもとても人気があったのに、私に付いてくる事で彼女は普通の幸せを手に入れる事は出来くなるかもしれない。
「ナタリー様、言ったはずです。私にとってはあなたといる事が一番の幸せなのですから。それにここに残っても幸せとは限りません。これから人間同士の争いがきっと起こります。」
私の顔色で私の考えを読み取ったのだろう。幼い子供を諭すように彼女はそう言った。
「そうね、、これから権力者達の争いが起こるでしょう。バゼルハイド陛下が他国の権力者を抑え込めなければ簡単にトップは入れ替わるわ。」
そんな話しをしながら歩いていると、私達を送って来た兵士達がザワザワと騒ぎ始めた。不思議に思い前を向くと、マリアさんを膝の上に乗せたアルベルト様が馬に乗ってやって来る姿が見えた。
「ナタリー様、、」
フローラが心配そうな声で私を呼ぶ。
「私は大丈夫。そう言ったはずよ。」
私は姿勢を正し、胸を張って2人の元へ歩いて行った。
ワンピースの裾を持ち上げ美しい礼をする。
お風呂も入れない、着替えも出来ない日々が続き、貴族の令嬢達はドレスを捨て簡素な服を着るようになった。
しかしアルベルト様と一緒に馬に乗っているマリアの姿は、そのままお茶会に参加できるぐらい豪華なドレス姿だった。
「ナタリー、今から発つらしいな。」
アルベルト様は馬から降りずに私を見下すようにそう言った。
マリアさんはわざとらしく気遣わしげな目線を投げかけてくる。
「はい。今から乗船するところです。」
そう簡潔に述べ、再び礼をしその場を離れようとする私に、アルベルト様は舌打ちをした後また口を開いた。
「お前が発つ前に、言っておきたい事がある。」
私にはありません。そう言いたかったが、アルベルト様に向き直り顔を上げた。
「私はお前との婚約が嫌で嫌で仕方がなかったのだ。父上が決めた事だったので諦めていたが、お前の顔を見れば気持ちが悪くて生きた心地がしなかった。」
唐突になじられ、私は驚きで目を見開いた。マリアさんが扇子を広げ口元を急に隠したので、どうやらコソコソとと笑っているらしい。
「この様な戦乱の世になり、国を追われる事になったが、私はそのおかげで堂々とマリアと一緒にいれるようになった。魔物達に感謝したいぐらいだ。」
自分は想われる事は無かったが、私にとっては今でも愛しい人である。これ程までに嫌われていたのかと呆然とし、反論する気力が削がれた。
しかしアルベルト様は言ってはいけない事を口にした。
私はそれを聞いてしまったのだ。ここに残る人達の為にも今言わねばと口を開いた。
「アルベルト様、お言葉ですが、、私の事は何と言われても構いません。しかしあなたはハーベスター国の王子です。」
「今は違う!!」
「違いません!!今あなたが綺麗な服を着て馬に乗っているのはあなたが王子だからです。」
私の言っている意味が分からないのだろう、アルベルト様は鼻で笑った後に意味が分からんと言った。
「あなたは忘れたのですか?この大陸に渡る前、私達を船に乗せる為に多く者が命がけで魔物達の進行を食い止め、船には乗らずその場に残りました。」
「当たり前だ。私を誰だと思っている。」
「そうです。あなたはハーベスター国の王子、アルベルト様です。皆がお風呂にも入れず簡素な服を着、食べ物を探す為に歩き回っている時に、あなたは綺麗な服を着て私に嫌味を言う為だけに馬を走らせ、その上魔物達に感謝したいなどと、、恥を知りなさい!!!」
私は腹から声を出し、アルベルト様を叱りつけた。
「うるさい、うるさい!!うるさい!!!言い間違いだ!言葉の綾だ!それを鬼の首を取ったように言うお前の方が恥ずかしいわ!!!」
「今この戦乱の中、あなたの父君、バゼルハイド王様が皆を率いて行こうとしています。これから皆があなたに寄せる期待も大きくなるでしょう。あなたには言葉の綾など許されないのです。言葉一つ、動作一つ皆に注目されるのですから。」
「、、その様な事は分かっている。」
私の必死な訴えに、アルベルト様の声が徐々に小さくなっていく。
「マリアさん、あなたも同じです。アルベルト様と一緒になるというならば、これからあなはアルベルト様同様皆に期待される立場となります。学園では私の良からぬ噂を流し、罪を被せ、皆の心を上手く掴んだようですが、これからはそうはいきません。皆よりも努力し、血反吐を吐くような思いをし、その姿を見て皆が付いて来る事でしょう。」
私の言葉にマリアさん激昂し扇子を投げ付けてきた。
「黙りなさい!私はアルベルト様と結婚して王妃になるのです!マリアさんなどと馴れ馴れしい。あなたなんて今から魔物達の奴隷にでもされるのでしょう?せいぜい魔物達に可愛がって貰いなさいよ!」
マリアさんの嫌味にも私は屈したりしなかった。姿勢を正したまま微笑む。
「はい。皆の為に立派に努めを果たすつもりです。あなたもせいぜい頑張って下さい。」
私は美しい淑女の礼をすると、2人に踵を返し船へと歩き始めた。
「キャッ、アルベルト様!?」
しかしマリアさんの悲鳴が聞こえたので再度振り返る事になる。
私の目に入ったものは、馬から飛び降り剣を鞘から抜き取りこちらに構えたアルベルト様の姿だった。
「お前が16歳などと何かの間違いであろう!!」
斬りかかろうとしているアルベルト様が口にしたのは奇妙な言葉だった。
一体何を言いたいのかと私は首をひねる。
「私は、、私はお前のような幼児体型の女など妻にしたくなかったんだ!お前などせいぜい10歳ぐらいにしか見えないんだヨォォォォォオ!!!」
そこまで言い切るとアルベルト様は駆け出し剣を振りかぶった。
「10歳、、、。」
言われた事がショックで一瞬ひるんでしまったが、後ろでこちらに掛けてくる2人の足音が聞こえ我に返った。
フローラと、ミカエル様まで私を助けようと走ってくれている。
中々楽しい旅になるかもしれない。
そう思うと自然と笑みが零れた。
そして自分に切っ先が届きかけたその時、私は身体を沈めアルベルト様の懐に入り込み、そのまま彼の手首を持つと思いっ切り背負い投げをかましてやった。
バタァァァァァァンッ!!!
地面に転がったアルベルト様を手をはたきながら見下した。
後ろでは私を助けようと必死で走ってきた2人が固まっている。
「昔のあなたでしたら私は簡単に殺されていたでしょう。しかしあなたはマリアさんと出会ってから剣の稽古も王政の勉強も何もかも放り出し堕落しました。あなたにとって私が不気味な存在だったのは良く分かりました。確かに私もこのままではマズイと思っていました。」
突如訳の分からない事を言い出した私に皆が困惑した顔をする。
「カイエン出てきなさい!」
私がそう言うと私の肩に体長30㎝ほどの男が座った。
「「「!!!!」」」
声が出ない程驚愕した皆の顔を見て、私はコロコロと笑ったのだった。
昨日泣くだけ泣いた私はスッキリとしており、自分が出来る事をしようと前向きな気持ちになっていた。
最低限の荷物を乗せた荷馬車の中で揺られながら小一時間、潮の香りに気付き顔を上げれば水面がキラキラと光る美しい青い海が見えて来た。
「フローラ、海よ!」
私が嬉しそうに振り返ると、そうですねと微笑むフローラと、しかめっ面をしたミカエル様の顔が目に入った。
ミカエル様の顔を見て恥ずかしくなり俯いて座り直す。
そうだ。遊びでは無いのだ。
荷馬車が止まるとミカエル様は相変わらず不機嫌そうに荷物を運び始めた。
手伝おうとしたが、向こうに行けと言われたので邪魔にならないようにその場を離れた。
「んーー!!」
荷馬車の中で凝り固まった身体を伸ばすように伸びをし、辺りを見渡した。
雲1つない晴れ渡った空、そして清々しい海風が私を送り出すように優しく吹いてくる。
私の白銀の髪がサラサラとなびいた。
この髪色と薄紫の瞳をアルベルト様は気持ち悪がっていた。
私達の住む世界では白銀も薄紫の目も珍しいからだ。
「ナタリー様、大丈夫ですか?」
振り返ればフローラが心配そうな顔で追いかけて来ていた。私が1人で皆から離れる様に歩き始めたので、心配させてしまったようだ。
「ごめんなさい。ゆっくり海を眺めるのなんて久しぶりだったから。」
「そうですね。この前海を見たのはここへ逃げて来た時でしたからね。」
「えぇ。あの時は必死で景色どころではなかったわ。」
必死で逃げる私達にどこまでも続く海は不安をかき立てた。
「ナタリー嬢、フローラ嬢、そろそろ船へ。」
私達はその声に振り返ると、機嫌の悪そうな顔をしたミカエル様が立っていた。
淡い金の髪を短く刈り上げ、青く澄んだ瞳にスッと通った鼻筋、そして鍛え上げた身体。
平民でありながら彼が貴族の令嬢にとても人気があったのも頷ける。
ミカエル様は騎士の鎧を付け、戦にでも向かう面持ちをしていた。彼にとってはついこの間まで戦っていた魔物達が住む本拠地へと向かうのだ。当然と言えば当然である。
チッ、これだから令嬢は、、船に向き直り歩き出した彼から小さな呟きが聞こえた。
「ナタリー様、お気になさらぬよう、、。」
それに気付いたフローラがそう囁く。
「えぇ、分かっているはフローラ。これぐらいでめげていれば向こうではやっていけないわよ。私は大丈夫。」
「そうですか。」
ホッとした彼女の優しげな顔を見て私の胸はズキンと痛む。
フローラはとても美しい女性だ。男性にもとても人気があったのに、私に付いてくる事で彼女は普通の幸せを手に入れる事は出来くなるかもしれない。
「ナタリー様、言ったはずです。私にとってはあなたといる事が一番の幸せなのですから。それにここに残っても幸せとは限りません。これから人間同士の争いがきっと起こります。」
私の顔色で私の考えを読み取ったのだろう。幼い子供を諭すように彼女はそう言った。
「そうね、、これから権力者達の争いが起こるでしょう。バゼルハイド陛下が他国の権力者を抑え込めなければ簡単にトップは入れ替わるわ。」
そんな話しをしながら歩いていると、私達を送って来た兵士達がザワザワと騒ぎ始めた。不思議に思い前を向くと、マリアさんを膝の上に乗せたアルベルト様が馬に乗ってやって来る姿が見えた。
「ナタリー様、、」
フローラが心配そうな声で私を呼ぶ。
「私は大丈夫。そう言ったはずよ。」
私は姿勢を正し、胸を張って2人の元へ歩いて行った。
ワンピースの裾を持ち上げ美しい礼をする。
お風呂も入れない、着替えも出来ない日々が続き、貴族の令嬢達はドレスを捨て簡素な服を着るようになった。
しかしアルベルト様と一緒に馬に乗っているマリアの姿は、そのままお茶会に参加できるぐらい豪華なドレス姿だった。
「ナタリー、今から発つらしいな。」
アルベルト様は馬から降りずに私を見下すようにそう言った。
マリアさんはわざとらしく気遣わしげな目線を投げかけてくる。
「はい。今から乗船するところです。」
そう簡潔に述べ、再び礼をしその場を離れようとする私に、アルベルト様は舌打ちをした後また口を開いた。
「お前が発つ前に、言っておきたい事がある。」
私にはありません。そう言いたかったが、アルベルト様に向き直り顔を上げた。
「私はお前との婚約が嫌で嫌で仕方がなかったのだ。父上が決めた事だったので諦めていたが、お前の顔を見れば気持ちが悪くて生きた心地がしなかった。」
唐突になじられ、私は驚きで目を見開いた。マリアさんが扇子を広げ口元を急に隠したので、どうやらコソコソとと笑っているらしい。
「この様な戦乱の世になり、国を追われる事になったが、私はそのおかげで堂々とマリアと一緒にいれるようになった。魔物達に感謝したいぐらいだ。」
自分は想われる事は無かったが、私にとっては今でも愛しい人である。これ程までに嫌われていたのかと呆然とし、反論する気力が削がれた。
しかしアルベルト様は言ってはいけない事を口にした。
私はそれを聞いてしまったのだ。ここに残る人達の為にも今言わねばと口を開いた。
「アルベルト様、お言葉ですが、、私の事は何と言われても構いません。しかしあなたはハーベスター国の王子です。」
「今は違う!!」
「違いません!!今あなたが綺麗な服を着て馬に乗っているのはあなたが王子だからです。」
私の言っている意味が分からないのだろう、アルベルト様は鼻で笑った後に意味が分からんと言った。
「あなたは忘れたのですか?この大陸に渡る前、私達を船に乗せる為に多く者が命がけで魔物達の進行を食い止め、船には乗らずその場に残りました。」
「当たり前だ。私を誰だと思っている。」
「そうです。あなたはハーベスター国の王子、アルベルト様です。皆がお風呂にも入れず簡素な服を着、食べ物を探す為に歩き回っている時に、あなたは綺麗な服を着て私に嫌味を言う為だけに馬を走らせ、その上魔物達に感謝したいなどと、、恥を知りなさい!!!」
私は腹から声を出し、アルベルト様を叱りつけた。
「うるさい、うるさい!!うるさい!!!言い間違いだ!言葉の綾だ!それを鬼の首を取ったように言うお前の方が恥ずかしいわ!!!」
「今この戦乱の中、あなたの父君、バゼルハイド王様が皆を率いて行こうとしています。これから皆があなたに寄せる期待も大きくなるでしょう。あなたには言葉の綾など許されないのです。言葉一つ、動作一つ皆に注目されるのですから。」
「、、その様な事は分かっている。」
私の必死な訴えに、アルベルト様の声が徐々に小さくなっていく。
「マリアさん、あなたも同じです。アルベルト様と一緒になるというならば、これからあなはアルベルト様同様皆に期待される立場となります。学園では私の良からぬ噂を流し、罪を被せ、皆の心を上手く掴んだようですが、これからはそうはいきません。皆よりも努力し、血反吐を吐くような思いをし、その姿を見て皆が付いて来る事でしょう。」
私の言葉にマリアさん激昂し扇子を投げ付けてきた。
「黙りなさい!私はアルベルト様と結婚して王妃になるのです!マリアさんなどと馴れ馴れしい。あなたなんて今から魔物達の奴隷にでもされるのでしょう?せいぜい魔物達に可愛がって貰いなさいよ!」
マリアさんの嫌味にも私は屈したりしなかった。姿勢を正したまま微笑む。
「はい。皆の為に立派に努めを果たすつもりです。あなたもせいぜい頑張って下さい。」
私は美しい淑女の礼をすると、2人に踵を返し船へと歩き始めた。
「キャッ、アルベルト様!?」
しかしマリアさんの悲鳴が聞こえたので再度振り返る事になる。
私の目に入ったものは、馬から飛び降り剣を鞘から抜き取りこちらに構えたアルベルト様の姿だった。
「お前が16歳などと何かの間違いであろう!!」
斬りかかろうとしているアルベルト様が口にしたのは奇妙な言葉だった。
一体何を言いたいのかと私は首をひねる。
「私は、、私はお前のような幼児体型の女など妻にしたくなかったんだ!お前などせいぜい10歳ぐらいにしか見えないんだヨォォォォォオ!!!」
そこまで言い切るとアルベルト様は駆け出し剣を振りかぶった。
「10歳、、、。」
言われた事がショックで一瞬ひるんでしまったが、後ろでこちらに掛けてくる2人の足音が聞こえ我に返った。
フローラと、ミカエル様まで私を助けようと走ってくれている。
中々楽しい旅になるかもしれない。
そう思うと自然と笑みが零れた。
そして自分に切っ先が届きかけたその時、私は身体を沈めアルベルト様の懐に入り込み、そのまま彼の手首を持つと思いっ切り背負い投げをかましてやった。
バタァァァァァァンッ!!!
地面に転がったアルベルト様を手をはたきながら見下した。
後ろでは私を助けようと必死で走ってきた2人が固まっている。
「昔のあなたでしたら私は簡単に殺されていたでしょう。しかしあなたはマリアさんと出会ってから剣の稽古も王政の勉強も何もかも放り出し堕落しました。あなたにとって私が不気味な存在だったのは良く分かりました。確かに私もこのままではマズイと思っていました。」
突如訳の分からない事を言い出した私に皆が困惑した顔をする。
「カイエン出てきなさい!」
私がそう言うと私の肩に体長30㎝ほどの男が座った。
「「「!!!!」」」
声が出ない程驚愕した皆の顔を見て、私はコロコロと笑ったのだった。
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