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本当の始まり

ペット

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あれから数日後、ヘンリーが謹慎処分になった事を知った。心身共に疲れていた彼を休ませる為のものだろうと周りは思ったが、当の本人は絶望しているかもしれない。
私は、彼に切られかかった事を誰にも言うつもりはなかったが、彼には護衛が付いている。あの日も影ながら見守っていたのだろう、陛下には最初から最後まであった事全てが語られたようだ。
私はやるせない気持ちで黄昏ていた。
新学期が始まってから、何だか忙しかった。
生徒会になり、挨拶でヘンリーが襲われ、校外学習でゴブリンと黒ずくめの男達の襲来、そして今回の夜会に始まる一連の騒ぎ、、。

そして、、、そしてこれだ。
私は今1人で屋上に来ている。理由は妙な気配がしたからだ。
私の手の平には、コウモリの羽を付け、鶏の足の様なものが生えた目玉がいる。
目玉から直接足と羽が生えたようなその動物は、目玉の大きさだけなら、私が掴んでぶん投げれるぐらいの大きさだ。
目玉は物凄い私を見つめてくる。

「はぁー、ようやく会えましたね。お待たせして申し訳ありませんでした主人。」

目玉は嬉しそうに羽をパタパタと動かした。

「主人、、?」

目玉は大きな目を更に見開く。目玉がこぼれ落ちそうだ。

「覚えておられないのですか?あぁ、だから人間になど生まれ変わるなとあれほど言ったのに、、。」

目玉はブツブツ言っている。口も無いのに一体どうやって話しているのだろうか。

「それならご挨拶からはじめましょう。はじめまして、私はあなたの魔界での右腕、ペペロにございます。以後お見知り置きを。」

「はぁ。私はクリスティーナ・バレンティアです。私、、皆に魔王になるかもって言われてるんだけど、あなたがここに来たのって、それと何か関係あるの?」

「???」

「あれ?言葉通じない?えぇっと、わたし みんなに まおうに、、」

私は身振り手振りを加えて話し始めた。

「いえいえ我が主人、ちゃんと言葉は通じております。」

目玉は正確には紫色のムニムニした球状の物に包まれている。それがパカッと真ん中で割れ、目玉が見えているのだが、閉まったり開いたりするので、魔物でも目が乾くのだろう。瞬きしている。
そして今はチョットだけ目が開いている状態になっている。人間でいうところの半眼状態だ。腹が立つ。

「聞こえてるなら返事してよ!通じないのかと思った。」

「それは主人が訳の分からない事を言うからです。」

「訳の分からない事?」

「そうです。魔王になるかもなどと、、フッ。あなたは立派な魔王です。姿形は人間ですが、そんなの私達には些細な事です。あなたの魂は魔王そのもの。そして体内に宿る魔剣。それこそが魔王の証。」

「私が?」

「そう。あなたが。」

「立派な魔王?」

「そうです。」

「今の私が?」

「そう。今のあなたが。」

「えっ、冗談でしょ?」

「状態ではありません。」

「だって、私何も変わってないよ?」

「魔王になったからといって、見た目が急に変わったりしません。」

「えっ?ムキムキに、、」

「なりません。」

「凄い毛深「なりません。」

「、、、、体臭が「なりません。」

「最後まで言わせてよ!!」

「主人は人間になり、えらく阿保になりましたね。まぁ、良いです。今のあなたの方が付き合いやすそうだ。人間の寿命は短いので、あなたが死ぬまでこちらで一緒におらせて頂きますね。」

「、、はぁ。」

私は全然頭が付いていけなかったが、押し切られるままに頷いてしまう。
よし、とりあえず家に帰ろう。自分1人で抱え込むのは良くない。
私は家に帰る事にした。

ペペロは手の平で居心地悪そうにした後、私の肩にとまり目を細めた。どうやら気に入ったようだ。喜んだのか羽をパタパタとさせ、私の顔にバチバチと当たる。

「チョッ、チョット。」

「あぁ、すみません。」

ペペロはそう言うと羽を消した。紫色の丸い物に鶏の足が生えた動物へと変わる。羽が生えたから可愛くなる訳ではないが、不気味だ。

「主人、あなたの心の声は私に届きます。不気味は傷付くのでやめて下さい。」

「えっ!?そうなの!?そっか、、ごめん。でも、、可愛くは無いよね。」

「ハッキリおっしゃいますね。まぁ、良いです。じきに見慣れますよ。長い付き合いになりますからね。フォッフォッフォッ。」

ペペロは不気味な声で笑った。
この日私はペットを手に入れたのだった。

「主人、私はペットではなく右腕ですよ!!」

訂正、私は口煩い右腕を手に入れた。
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