上 下
66 / 94
本当の始まり

新生徒会

しおりを挟む
その日の放課後、イザベルとマリアが加わった新生徒会の集まりがあったので、イザベルと共に生徒会室へと向かっていた。

「ティーナ、ヘンリー様があれから口を聞いて下さらないのよ。」

イザベルはとても悲しそうに言った。
先日イザベルとマリアが醜い罵り合いになった時に、ヘンリーがぶち切れるという事件が起こったらしい。

「どんな風に怒られたの?」

イザベルが言いにくそうにしている。よほど恐ろしいかったのかと思ったが、彼の怒り方はいたってシンプルだった。
お前らいい加減にしろ!!!である。

「???それ怖いの?」

もっと怒られたと思っていたので、私は拍子抜けした。

「違うのよ。それがヘンリー様じゃなければ怖くないのよ。だってティーナ、ヘンリ様が怒った姿を見た事がある?出会ってから初めて見たわ。いつも穏やかな人が怒ったら、それはそれは怖いのよ。」

その時のことを思い出したのか、イザベルはブルっと身震いした。

生徒会室に入ると、私達以外のメンバーがもう揃っていた。
サーキス君が私の元へ駆け寄ってくる。

「クリスティーナ様、お会いしたかった。あなたがいない学園はそれはつまらないものでした。」

彼は青白い手で私の手を掴み、頬ずりしてくる。

「サ、サーキス君落ち着いて。教室でも会ってたでしょ?」

私はササッと手を引こうとするが、ガシッと掴まれた。
彼が学園長先生の息子と知ってしまったので、雑な扱いが出来ない。
私は困ってヘンリーを見ると、彼は苦笑いして私に助け船を出してくれた。
会議の助手に任命してくれたので、ヘンリーの横にいそいそと並ぶ。
サーキス君はいかにも渋々といった顔で席へ戻った。
ホッとしてヘンリーにお礼を言う。
それにしても、彼から怒っている雰囲気を特に感じない。
もう怒ってないのでは、、?

今日の会議は5月中旬に行われる校外学習について話し合われる。
3年生から始まるこの校外学習は、学園の保有する山で行われる。
3泊4日滞在し、主に魔法学の実技をするのだが、乙女ゲームの中にもこの校外学習がある。
特に事件は無かったのだが、攻略対象者の好感度を上げるイベントは盛りだくさんなのだ。
一緒にご飯を作ったり、お風呂上がりのマリアを見て攻略対象者がドキッとしたり、雨に打たれた2人が雨宿りするといったものもあったな、、。

そんな事を思い出していると、ヘンリーに怒られる。

「コラッ、クリス今の事ちゃんと書いてよ!」

そうだった。私は出た意見をホワイトボードに書く係なのだ。
今は校外学習最終日のキャンプファイヤー、そして3年生限定タイマリス学園ミスコンテストについて話し合っている。

「去年は生徒会メンバーが盛り上がってミスコンテストを開催したらしいけど、、皆どう思いますか?どんな規模にするかにもよるけど、準備物が増えれば大変だと思うのですが。」

ヘンリーはミスコンを取りやめにしたいようだった。

ゴードンが発言する。

「俺はミスコンテストの楽しさは分からない。女子達は盛り上がるだろうけど、男子は楽しめるものなのか?」

サーキス君がすかさず言い返す。

「私はクリスティーナ様が出るなら楽しい。むしろそれだけを楽しみに校外学習を乗り切ります!」

、、あぁ、恥ずかしい、彼には黙っていて欲しい。
ヘンリーが女子の意見も聞きたいと言ったので、マリアが発言する。

「そうですね。私としては、自分が出るよりヘンリー様のお姿を拝見する方が幸せですし、ミスコンではなくミスターコンテストでも楽しいですわ。」

イザベルが鼻で笑う。

「ミスコンなら自分が出ると決まっているようにおっしゃいますが、何を根拠に。」

「あら、この学園で私より可愛らしい女子なんているのかしら?少なくともこの部屋には見当たらないわ。」

これに噛みついたのはイザベルではなく、サーキス君だった。

「貴様何を言うか!!クリスティーナ様よりお美しく愛らしい女などこの世にいるはずがない。ふざけた事を言うのも大概にしろ!!」

サーキス君が立ち上がったので、ゴードンが後ろから止めに入る。
マリアがバカにしたように笑った。

「クリスティーナ・バレンティアが私より美しくて可愛いって言うの!!まさかやめてよ!私を誰だと思ってるのよ!」

「何が私を誰だと思ってるのよ!よ。マリア・クレメンティー子爵令嬢でしょ?あんたこそティーナを誰だと思ってるの?公爵令嬢なのよ?」

今度はイザベルがバカにした。
あぁ、もうめちゃくちゃだ。
ヘンリーがまた切れるのではないかと、ハラハラする。
すると、マリアが立ち上がり、私の前までやってきた。
人差し指で私を指差しながら、

「クリスティーナ・バレンティア!私とミスコンテストで勝負しなさい!」

と言った。

「えっ、、、嫌「やるわ!もちろんやるでしょ、ティーナ!」

私が断ろうとすると、イザベルが勝手に勝負を引き受けた。

「、、、、いい加減にしろ!!」

今日切れのはヘンリーではなく私だった。
しかし、校外学習でミスコンテストが行われる事は決定してしまったのだ。
私は出ないぞ、、。
そう心に誓う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。

木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。 前世は日本という国に住む高校生だったのです。 現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。 いっそ、悪役として散ってみましょうか? 悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。 以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。 サクッと読んでいただける内容です。 マリア→マリアーナに変更しました。

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo
恋愛
 ほぅ……(溜息)  前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。     ですのに、どういうことでございましょう。  現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。    皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。    ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。    ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。    そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。    さあ始めますわよ。    婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。       ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     ヒロインサイドストーリー始めました  『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』  ↑ 統合しました

全ては望んだ結末の為に

皐月乃 彩月
恋愛
ループする世界で、何度も何度も悲惨な目に遭う悪役令嬢。 愛しの婚約者や仲の良かった弟や友人達に裏切られ、彼女は絶望して壊れてしまった。 何故、自分がこんな目に遇わなければならないのか。 「貴方が私を殺し続けるなら、私も貴方を殺し続ける事にするわ」 壊れてしまったが故に、悪役令嬢はヒロインを殺し続ける事にした。 全ては望んだ結末を迎える為に── ※主人公が闇落ち?してます。 ※カクヨムやなろうでも連載しています作:皐月乃 彩月 

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

処理中です...