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彼に会う為に

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私とパオロは魔竜と対峙していた。
青い炎を撒き散らかされては終わりだ。
私はさっさと結界を張ることにする。

「捕縛型結界発動!!」

魔竜を捉えた。
漆黒の竜はヌラヌラと輝いている。美しさのかけらもないその姿はただただ禍々しい。
大きな口からは無造作に生えた鋭い歯が幾重にも重なって生えている。そして何と言っても全身に無数にある目が気持ち悪さに拍車をかけていた。
仲間の目を全て取り込んだ結果か、、。

狭い結界に閉じ込められた魔竜は、青い炎を放った。
凄まじい威力に、私の皮膚が粟立つ。
青い炎は消える事はない。
魔竜は青い炎で見えなくなる。

「パオロ、土魔法を使え。」

私は命令した。
パオロは素直に返事をし、岩を降らせた。

魔竜の雄叫びが響き渡る。
その時、もう一度青い炎を放った。
結界の中に留まった青い炎が色を濃くしていく。

「何度も放たれては困るな。魔竜が死んでも炎は消えない。」

早く光魔法の使い手が来なければ。
魔力を消費し、幾分私は落ち着いて来ていた。

「パオロ、中が見えない。ちょっと行ってこい。」

パオロは焦った。見たが最後青い炎に焼かれて死ぬだけだ。
慌てた姿を見て私は笑った。

「どうにかしなければな。」

私は透視を使う。
先程まで鮮明に出来なかったはずの透視が鮮明な映像で見える。
これもアルの薬の効果か。
魔竜の炎の中を、、どうやら魔竜は蚊ほどのダメージも受けていないようだ。
青い炎で魔竜は焼かれないと言う事か。

私は魔力の蔦を魔竜目がけて振りかざした。

「絞め殺してやる!!」

私は高笑いしている。

「何やってんの!!」

後ろから誰かの怒った声がする。その声に聞き覚えがあった。
振り返ると、茶色い柔らかな髪に、パッチリした茶色の瞳の可愛らしい少年が立っていた。

「、、、アル?」

「そうだよ。何暴走してるの?バカなの?ほらこれ飲んで。」

アルは小さな小瓶を出した。
彼は私の口に無理やりそれを入れた。

高ぶった気持ちが落ち着き、私は私に戻っていく。
泣きそうになった所で、アルが真剣な顔で言う。

「落ち着いて!!今結界解けたらここら一体無くなるよ?しっかりしてね!」

アルはポンポンと私の頭を優しくたたく。
私は冷静になった状態で魔竜を見た。

「オェッ、、気持ち悪い。見た目が、、見た目がグロい、、。」

パオロはいつもの私に戻ったのを見てホッとしていた。
そして頭を下げてきた。

「謝っても許して貰えないのは分かってる。これが終わったら、ちゃんと罪も償う。だから僕も最後まで戦わせて。」

私は頷いた。
何かよく分からないが、私が散々イザベルに言われた事と関係するなら、私も何か悪いんだろうと何となく思った。
ぼんやりした話しだが、結局パオロという人間を嫌いになれないという話しだ。
思い出されるのは、先程の恐ろしい彼では無く、優しい先輩としての彼の姿だった。

アルは首を傾げていた。
が、それどころじゃないなと真剣な顔になる。

「サークルの先輩が魔力回復薬を大量に持って来るから、それまで頑張って結界張っててよ!」

そしてアルは大声を出した。

「クリスが結界を張っている間に、魔法を使える者でバンバン倒すって事で!!」

アルは最後に、それで良いですかぁー??と言った。
振り向けば、学園の先輩達、騎士団の人、魔法省の人まで集まって、 人だかりが出来ていた。

300人はいるだろうか、皆がの声が、
「「「オォー!!!」」」
と揃った。

何と頼もしい。
この中に光魔法の使い手はいるのだろうか?
って、イサキオスは?
彼ならいつも真っ先に現れるのに。

私はその後アルの先輩方に魔力回復薬を飲まされながら、ただただ結界を張っていた。

その間に皆が魔法を乱れ打つので、花火状態だ。
学園祭の終わりに向け花火が上がっていると、一般の人が遠くから眺める始末。

あんなにシリアスな展開だったのに。

あぁ、お腹がチャプチャプだ。

結局私は締まらない女だな。

意外と呆気なく魔竜は息絶えた。

残されたのは青い炎。

光魔法の使い手はあまり居ないものだったんだなぁ。
イサキオスはダンスパーティーの会場でいるんだろうか?
私も早く行きたいな。
って、もうパーティー終わるんでは!?
あぁ、吐きそう、誰か何とかしてくれぇー!!!!

その時だ、一般客の中から、光魔法が使えると手を挙げた者がいた。
その人は静かに近づいて来た。

私は振り返り息を飲んだ。

彼女は、彼女こそは、マジカルプリンスあなたに夢中のヒロイン、マリア・クレメンティーだ。

「光魔法祈り」

淡いピンクの髪、パッチリしたピンク色の瞳、色白で小さな顔、華奢な身体、可愛らしく美しく、そして光魔法に照らされた彼女は聖女の様に気高く気品に溢れたいた。

あぁ、ヒロインとはこんなにも違うものか。
私はチャプンチャプンのお腹を押さえながら悲しくなった。

そして魔竜騒動はようやく終結した。

この功績が認められ、マリアの学園入学が決まったのは、ほんの少し先の話し。

後からやって来た、マグリットとイザベル、そしてヘンリーに私は抱きしめられた。

「クリスティーナ。」

マグリットに呼ばれる。
私はビクッとした。

「ラストダンスまであと少しだ。急いで行け。イサキオスが待ってる。」

マグリットは拳を出していた。
変わらぬ友情の証。
私は涙が溢れていた。
ヘンリーもアルも拳を出してくる。
4人は円になり、コツンと拳を合わせた。

パオロがヘンリーに自分のした事を話す為にやって来た。
しかし、彼が話す前に私が先に彼へ語りかける。

「私はあなたを咎める気は無い。私の実力を考えれば、あれは防げれた。お父様に話せばきっと逆に怒られるわ。」

私が言い終わると、後ろからお父様に抱きしめられた。

「その通りだ。このアホ娘。傷は治っているようだが血だらけではないか。本当にお前は迂闊だな!これからも騎士団の訓練に通いなさい!!」

やはり怒られた。
お父様はさらに、

「そこの君、安心しなさい。君が気に病むことはない、君は利用されたんだよ。」

お父様はパオロさんの首の後ろに手を当てて呪文を唱えた。

「これは呪いの類だ。だがそうだな、、気持ちが無ければ働かない魔法だ。君が願った事を増長させる。だから、君が気に病むのも致し方ないかぁ、、。」

そこでお父様は悩んだふりをする。きっと彼の処分はとっくに決めているはずだ。

「そうだな、、君は4月から5年生だね?1年間私の助手をして、将来は私の元で働かないか?もちろん学園生活は今まで通り通ってくれて良い。空いている時間に手伝ってくれれば。どうかな?」

パオロは嬉しそうに泣きながら頷いた。

しかし私は哀れに思った。お父様の下で働くのは並大抵の根性では無理だ。
彼は何かしら罰を受けた方がきっと幸せだった、、。
ファイト!!とエールをこっそり送る。

一件落着と思っていたら、イザベルが横に来ていた。

「それにしてもそのカッコで行くの?」

私は自分の姿が想像は着いたが、顔までは分からない。

「そんなに酷い?」

そう聞くと、イザベルは説明してくれた。
頭から血が出ていたので、顔は赤黒い血の跡があるし、髪はボザボサ、身体の傷は治っているが身体にも血が残っている。
そして、ドレスもボロボロな上に、スカート部分を破ってしまっているので、太ももまで露わになっている。
しかも裸足。
これでダンスパーティーへ行けば捕まるレベルだと。

ラストダンスまだはあと10分も無い。
途方に暮れていると、リサの声がした。

「クリスティーナ様ぁぁぁぁぁ!!」

リサが大量のタオル、アンリがバケツを持って走ってくる。後から来たトマスが靴を持って来てくれた。
リサにゴシゴシと血を拭かれている間に、アンリが髪を直す。
そして靴を履いた。
ドレスは破れたままだが、ミニのドレスと思えば見れなくもない。多分。

私はリサとアンリとトマスを抱きしめ感謝した。
そして走り出す。
彼に会う為に。

時間は8時40分ラストダンスは45分から、急げばきっと間に合う!!
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