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出会い編

お茶会の始まり

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あの舞踏会からすぐに、フロランティエ公爵のクリスティアから手紙が届いた。
思いの外大物の手紙に、メルヴィス家の一同は大慌てだった。
しかもこちらに訪問したいという旨が書かれていた為、尚更混乱した。

「お前!!公爵様の娘に変な事を吹き込んでないんだろうな!!!」

お父様が私を怒鳴り付けて来た。
私の嫁入りを変な事と捉えているのならば、少しぐらいこの人に良心が残っていたのだろうか?
そんな事が一瞬頭の中を掠めたが、先日の一件を思い出して心が冷めた。

「…変な事とはどんな事でしょうか?」

分かっているにもかかわらず、素知らぬ顔でそう返した。

「ッ!?…グヌヌヌヌ。」

お父様もさすがに変態爺さんの嫁に嫁がせる事だとは答えれなかったようだった。
いつもは青白い不健康な顔が、怒りで真っ赤に染め上がってしまっている。

「もう良い!!もうすぐ来るはずだからちゃんともてなせ!!一族の顔に泥を塗るような事をすれば分かっているだろうな!!!」

「はい。お父様。では失礼致します。」

まだ起怒り足りなそうなお父様を残し、そそくさと部屋を出た。
長居しても良い事はない。
強い味方を付けた私に、今日はお母様もお兄様も寄って来なかった。
公爵家の令嬢が来るというのに挨拶もしないのかと思ったが、馬車が到着した途端、お父様とお母様が私を押し退けて外へと飛び出した。

「これはこれはクリスティア嬢、こんな場所へお越し頂きありがとうございます!」

少し遠くでお父様がペコペコしているのが見えた。
お母様はいつもと変わらない偉そうな態度で、お兄様は顔を赤らめ明らかに鼻の下が伸びていた。

「お招きありがとうございます。あっ、フローラ!」

こちらに気付いたクリスティアが笑顔で手を振って来た。
まだ色々と話したそうにしていたお父様があからさまに顔をしかめたが、私は気にせず笑顔で手を振りかえした。

「クリスティア様、お手紙下さってありがとうございます。」

丁寧にお辞儀をし御礼を言ったが、起き上がった時に見えたものは仏頂面のクリスティアだった。

「???」

「フローラ!私はティアと呼んでと言ったはずよ!それに敬語だなんて水臭いわ。ねぇフローラ、2人きりで話しましょ?」

まだ皆がいる場でクリスティアがこのような話し方をしてきた事に驚いて、私はすぐに返事が出来なかった。
しかし私にしか見えない位置でクリスティアがウィンクしたのを見て、彼女の意図に気が付いた。
フロランティエ公爵の娘と知り合い程度の仲ではなく、親友のような間柄だという事を私の家族に見せつけてくれてのだろう。
現にお父様の顔色が悪い様に見えるのは気のせいではないはずだ。

「はい。ティア。中庭にお茶の準備をしてるので一緒に行きましょう?」

「えぇ。」

私の提案にティアは笑顔で応えてくれた。
家族をその場に置き去りにし、私達は中庭へと進んで行く。
お母様の意殺すような視線を感じたが、もう恐ろしいとは思わなかった。
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