まさはるくんの受難

奈知

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まさはるくんの受難

お泊まり

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本格的な夏がやって来た。


木々は青々と茂り、お馴染みの蝉がこれでもかと、煩いくらいに鳴き喚く。


この日俺は、何故か城門司の家に泊まることになった。


あの一方的な友情復活宣言を境に、とりあえず上辺だけの付き合いをしていた俺だったが、ここにきて知らない間に親密度が上がったのだろうか?


俺は奴の家に泊まるという偉業を成し遂げてしまったようだ。


インターホンを鳴らし、出てきた城門司に部屋へと通された。


城門司の家族からは、とても手厚いもてなしを受けた。優しい父親、気のつく母親、常識ある兄。


思わず俺は、城門司に僅かな敵意を抱いてしまう。


嗚呼、憎らしい、妬ましい。とどのつまりは羨ましい!


まぁ、それはさておき、食事を済ませ、俺たちは城門司の部屋に行く。


城「夏といえば怪談だよな!」


突然、城門司が目を輝かせて俺に詰め寄ってきた。


俺「えっ?か、怪談?」


正直、俺は幽霊とかは信じないタチだ。


だから、城門司の良くありがちな怪談話しを聞いても、大した恐怖は感じられなかった。


城「ちょっとは涼しくなっただろ?」


得意そうに城門司は言う。


俺「ああ、そうだな」


それに対して、俺は当たり障りないように相槌を打った。


程なくして、俺たちは床に就いた。


暫くすると、何かが弾く音が耳に聞こえてきた。


ピチョン・・ピチャン・・。


明らかに水の滴る音だ。


うっすらと瞼を開け、暗がりに目を凝らすと、そこには、程よく湿ったハンカチを持った城門司の姿が・・・。


「お前・・・・、ソレで俺をどうするつもりなんだ?」


そう言った次の瞬間、「チッ・・」と言う、舌打ちが・・聞こえたのは空耳だろうか?


そのまま、何事もなかったように城門司は寝床に戻り、俺一人だけが張り詰められた精神に苛まれた。


ある意味、スリリングかつ肝を冷やした夏の夜。


そしてこの日俺は、『城門司』の文字を深く脳裏に刻み込んだのだった・・・。
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