まさはるくんの受難

奈知

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まさはるくんの受難

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妹「お兄ちゃん。朝だよ起きて。お兄ちゃんの為に朝ごはん作ったんだよ」


も時期夏が来ると知らせるが如く、明け方でも汗ばむ7月上旬の朝、俺は妹の舞に揺さぶり起こされた。


俺「う~ん・・・。今、なんじ・・・・・」


重い瞼を無理やり開けながら、俺は枕元の時計を見る。


只今の時刻、午前5時30分。


俺「5時・・・・・・」


うん。何かの間違いだ。そもそも舞が俺を起こしに来るなんて絶対に有り得ない。(常日頃から俺をバカにしているから)


ましてや、俺の為に朝食を作るなんて、人類が滅亡の危機を迎えても無いと言っていいだろう。(何故なら俺をバカにしているから)


「もぅ!お兄ちゃんてば!せっかく作ったんだから食べてよ」


耳に届く舞の声はリアルで、俺は半信半疑で目を開けた。


そこには、最近では見たことのない妹の笑顔が。


ちょっと感動してしまう俺。


俺は、妹の手料理を食すため、リビングに降りた。


リビングのテーブルの上には、世にも恐ろしい物体が煮立っていた。


こ、これは一体何色なんだ!?


黒・・イヤ、赤黒?違う。もっと的確な例えがある。


ドス黒い血の色だ。


「さあ!召し上がれ。お兄ちゃんの為に、一生懸命作ったのよ?」


満面の笑顔で、舞は物体Xを俺にすすめてくる。


(お前俺を抹殺する気だろう!)


そう思いながらも、小さい頃の妹の笑顔がチラついて、断ることが出来ない俺は、覚悟を決める。


「い・・ただき・・・ます・・・・」


恐る恐る口にする。


何とも言えない味覚が俺を襲った。辛い、苦い、酸っぱい、甘い。全てが入り混じった、世にも有り得ない味だ。


「おっ・・グゥッ・・・!お・・いしぃ・・・よ」


俺は、なけなしの意識でお礼を言った。


「やだもぅ!うふふ。ハッピーバースディお兄ちゃん。んじゃね!」


妹が嬉しげにリビングを後にする。


薄れゆく意識の中で、俺は祈る。


今度生まれ変わったら、親と妹を選ばせて欲しい。


神様。俺に、幸せと人権を下さい・・・・。
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