【完結】アイツとオレ

奈知

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《番外編》アイツとオレ〜2人の誓い〜

異国の地へ

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「蒼は年末どうすんだ?」


情事の後の気だるい余韻に、心地よく疲れた身体を愛しい恋人の胸に預けて、俺はその端正に整った横顔にふと問いかけた。


俺、木村 遊利と隣にいる超絶美形の男前、新藤 蒼は恋人同士である。


言わずもがなではあるが、俺達は正真正銘、男同士だ。(言いたいことは山程あるだろうが敢えてソコは突っ込むんじゃねぇ!)


長年に渡って俺を想い続けていたという蒼の熱烈なアタック(半分脅し?)に、つい最近俺は身も心も堕とされたのだ。


何度もされた不意討ちのキスにメロメロになり、幼い頃に交わした『約束』を盾に取り、想いのたけの全てをぶつけてきた蒼に少しずつほだされ、その完璧な美貌と甘い声に翻弄され、あれよという間に身体を繋ぎ、名実共に俺は蒼の恋人となったのだ。


毎回なし崩しにエッチな展開に持ち込まれ、恥ずかしい事の数々を覚えさせられ、最近では肌を重ねることにも少し慣れてきた。(慣れって恐ろしい・・・)


蒼のもくろみ通り、俺の身体はもはや蒼なしではいられないほど、フシダラに成長してしまっている。


まあ、それもこれも、好きだから出来る行為なんだけど。


そんな絶賛恋愛中の俺達も、もうすぐ高3。


こんな事にばかり現(ウツツ)をぬかしている場合ではないのだが・・・(特に俺は)。


今日も勉強という名目で蒼の家にやってきたのに、巧みな言葉で言いくるめられ、いつの間にかエッチな行為に持ち込まれ、今に至る訳だ。



蒼の俺を求める激しさは、日々増していくばかりのようだ。


そこまで想われてるのは嬉しいけど、正直最近ちょっと鬱陶しい。


 「うーん、年末年始は毎年海外でじいさん主催のちょっとした食事会があるから何かと気忙しいな」


腕枕した手で俺の髪を優しく透きながら、蒼は面倒臭そうにぼやいた。


海外で食事会となっ!
う~ん、さすがは上流階級の人々だ。俺には一生縁なさそう。


 「そっか、大変だなぁ」


まあでも、蒼が忙しいなら俺も年末年始は家でゆっくりしようかな。


毎日のように蒼と一緒にいて、少し自分の時間が欲しいと思ってたんだよな。
良平や光一とも久しぶりに出かけたりしたいし。


蒼と付き合い始めてからかれこれ3ヶ月近くたったけど、その間登下校も一緒、休日も何かとお互いの家を行ったり来たり(もちろんエッチ有り)。


ここの所、自分一人の時間は皆無に等しかった。


冬休みにも入ったし、少しくらい蒼と離れて、ゆっくり過ごすのも悪くないよな。


~なんて思っていたのに、お正月をゆっくり過ごそう計画は意とも簡単に崩れ去ってしまった。


 「何他人事みたいに言ってるんだ?遊利も俺と一緒に出席するんだよ?もうパスポートも用意してあるし」


はい・・・?


今・・・、何か幻聴が聞こえたような?


つうか、今何て言った!?


一緒に出席ッ?!


何処にッ?!ーーーーって!!


 「えッッ・・・ええぇぇッ!?ななな、何言ってンだよっ!んなの出来るわけないじゃん!つか、パスポートって、お前勝手に何してくれちゃってんのっ?」


あまりに突拍子もないことを言い出した蒼に驚いて、俺は思わずガバッと跳ね起きた。


 「そんなに驚くことないだろう?遊利は俺の生涯のパートナーなんだから同席するのは当然だろう」


そう言って蒼は男前の顔をニコリと綻ばした。


相変わらず惚れ惚れするほどカッコいいけど、そんな笑顔で誰がごまかされるかってんだッ!


 「俺に一言の相談も断りもなく勝手に決めやがって!何考えてンだッ!!」


人の意見も聞かず、勝手なことをされたことに俺の怒りは込み上がるばかりだ。


 「何って、俺はいつも遊利の事しか考えてないよ?心配しなくてもちゃんとおばさんからは許可を得てるよ」


 「母さんじゃなくて俺の許可がいるだろうがよっ」


信じらんねえっ、コイツの思考回路どうなってんだよ!普通こんなこと本人無視して進めるか?


 「いい機会だから、ちゃんと家族に遊利を紹介したいと思ってね。幸いチャペルも近くにあるし、二人きりで簡単な挙式するのも悪くないだろ?」


当たり前のように蒼が言う。


きょっ!挙式だぁ~ッ?


言われた言葉に、顔がかぁ~っと熱くなる。


コノヤロウ!完っ全に恋人として連れてく気満々じゃねぇかよっ!


つか、本気で結婚なんて考えてんじゃねえだろうな?


男同士で結婚出来るわけねえだろが!


目ぇ開けたまま夢見てんじゃねえのかコイツはっ?


 「寝言は寝て言えッ!大体、何て説明するつもりだっ?男と付き合ってますとでも言うつもりかよっ?」


 「バカだなぁ遊利は。つもりも何も、実際俺と遊利は恋人同士だろ?恋人の事を恋人と紹介しないで何て紹介するんだ?」


甚だ疑問だと言うように蒼が問いかけてくる。


ゲッ!何コイツ、マジでカミングアウトするつもりなのか?


 「とッッ、とにかく俺は行かないからなッ!」


友人だって紹介されるならまだしも、恋人としてなんて、そんなの周りの顰蹙買いにいくようなもんじゃねえかッ!


 「無理だよ。もう遊利の荷物も送っちゃったし、明日の8時の便で出発だよ?」


 「うそだろぉッ?聞いてねえよ!」


「今言っただろ?」


 「そおいうのは言った内に入らないんだよっ!」


 「まあまあ。そんなに眉間にシワ寄せてばかりじゃ、可愛い顔が台無しだよ?まあ、旅行くらいに思ってればいいから。せっかくの休み、フルに使わなきゃ損だろ?」


クスクスと笑いながら俺の眉間を指の先で弾く。次にチュッと素早くキスされた。


 「ンッ・・・・旅行ぉ~?」

 「そ、海外旅行。あと紹介も、今回は友人てことにしておいてあげる。ならいいだろ?」


 「ん~、それなら、まあ・・・」


何となく上手く丸め込まれた気もしたのだが、とりあえず蒼の出した条件にホッとして、俺は半ば仕方なく了承してやった。


ーー早朝、蒼に揺り動かされて目が覚めた。


母さんの了解を得たこともあり、昨夜は蒼の部屋にそのまま泊まった。


 「遊利、コレに着替えて」


まだ眠たい目を擦りながらボォ~としていると、目の前に薄紫色の高そうなスーツを一式ポンと渡された。


 「コレに・・って。何で?普段通りじゃダメなのか?」


 「向こうに着いたら直ぐに会場入りするから、ゆっくり着替えする間はないんだ」


 「でも俺、こうゆうカッチリした服って苦手なんだよなぁ。窮屈な感じして」


渡されたシャツに腕を通す。
あ。でもコレ、凄い袖通りがいいかも。


「学校の制服と大して変わらないだろ?ほらこっち向いて」


言われた通りに振り向くと、清潔感溢れる真っ白なスーツをカッコ良くビシッと決めた蒼が立っていた。
その姿に思わず見とれてしまう。


すっげえカッコいい・・。
惚れ直しそう。


呆けて着替える手を止めてしまった俺の代わりに、慣れた手付きで身なりを整えていく。


ハッ!いつの間にか着替えさせられてるッ。


 「てか、俺はお前とは育ちが違うのッ。一般の中流家庭の高校生には、こんな高級スーツ縁のない代物なんだよっ」


 「そうなのか?はい。おわり」


着替えを終えた俺を360度ぐるりと見て、蒼は満足そうに頷いた。


 「うん、似合ってる。サイズもピッタリだな。可愛いよ遊利」


確かに、あつらえたようにピッタリで着心地も申し分なかった。


つか、まぁ~たそおいう事をサラッと臆面もなく言う~~。


可愛いというセリフに、かぁ~と頬が淡く染まる。


しかも、絶世の男前が使うからか、そのセリフが特別な言葉に聞こえてくるから不思議だ。


その後、俺達は迎えの車に乗り込み、空港に向かった。


――機内の座席に座ると、急に不安に駆られる。


随分前に行った家族旅行以来、海外に行くのも飛行機に乗るのも久しぶりの俺は、飛び立つ前から色んな事を想像してしまう。


 「なあ、最近飛行機事故って多いよな?落ちたりとかしねえかな?」


 「平気だよ。心配性だなぁ遊利は。万が一落ちたとしても遊利と一緒なら本望だよ」


うっ。だから、そんな事笑って言うなってば!ホントに落ちたらシャレになんねぇよ。


そんなやり取りをしながら、約9時間の長旅を終え、俺達はここ、イギリス・ロンドンの街に降り立った。

 
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