【完結】アイツとオレ

奈知

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教訓〜約束は、破るべからず〜

一時休戦?そして、奪還へ!

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昼休みのチャイムと共に良平に忠告を受けた。


「とりあえず俺も気を付けとくけど、ユウもあんまり一人になるなよ?お前今日は特にフェロモン垂れ流してんだから」


「フェロモン言うな!」


良平の意地の悪い言葉に抗議する。


「分かったよ」


忠告に素直に頷いたオレだったが、数分後には綺麗サッパリ忘れ去っていた。


今朝、朝食を抜いたからか、無性に腹が減ってしょうがなかったオレは、購買に足を運んだ。


「うわっ、もう行列が・・。食堂行くか?いや、でもパンも捨てがたい」


う~ん、と唸っていると、誰かにぶつかった。


「痛てっ」


「あ、悪い。てあれ?遊利?」


「あ?何だ、光一か。お前もパン?ってなんだぁ?その量、そんな食って腹壊さねぇ?」


見ると、光一の抱えた袋の中には、何種類もの菓子パンやら調理パンが詰まっていた。


「四限目体育だったから腹減っちゃってさ。う~ん、でも正直ちょっと買いすぎかな。そうだ、遊利良かったら一緒に食うか?」


「いいのか?」


「ああ、遠慮すんな」


ラッキー!この行列の中わざわざもみくちゃにされて買いに行かなくていいとは有難い!


「サンキュー、光一」


オレは満面笑顔で礼を言った。


そうすると、光一も嬉しそうに笑った。


天気が良くて暖かそうだったから、オレ達は外で食べることにした。


「何食う?」


袋の中には、カツサンドに焼きそばパン、ミックスサンド、クリームパンetcとバラエティーに富んでいる。


「んじゃカツサンドと、おっ、銀チョコもーらい。いっただきまーっす」


オレは速攻でカツサンドにかぶりついた。


「ん~、うま~い!奢りってとこが美味さを際立たせるよな」


口いっぱいに頬張りながら、空腹が満たされていく幸せを噛み締める。


「プッ、遊利はげんきんだなぁ」


あははと光一が笑った。何だよ~、んな笑う事ねーじゃん!


そう思いながら自分も笑ってしまう。


こないだのイザコザが嘘のように自然に付き合えている。


やっぱ一緒に過ごした年数は嘘つかないんだな。


どんなに気まずくなったって元に戻れるのがその証拠だ。


「ふぃーっ、食った食った。ご馳走さまっ」


満腹になって満足したオレはそのままゴロンと寝転がった。


「食ってすぐ寝ると太るぞ?」


「ぜぇ~んぜん気にしな~い。ふわぁ~、ねむ。昨夜アイツのせいであんま寝られなかったからなぁ」


口にして、また再び昨夜の記憶がフラッシュバックして頬が少し熱くなった。


恥ずかしさを誤魔化す為に、オレは即座に目を瞑った。


「アイツって良平か?」


訊かれて、うつらうつらしながら答えた。


「ん~、いや新藤がな」


「新藤だってっ?昨夜新藤と一緒だったのか?一晩中ッ?」


強い口調で喋る光一の声を遠くに感じながら、眠りに落ちそうになった次の瞬間、身体を大きく揺すられた。


「おい、起きろ遊利!」


「わっ!何だよ?大きな声出して。まだ昼休みあんだから寝かせてくれよ」


煩そうに光一に背を向けるが、激し口調で引き戻される。


「おっまえ、寝かすかバカ!どういう事だよ?」


「何だよ?何怒ってんだよ?」


睡眠を邪魔されて不機嫌に光一を見据えると、光一も真剣な表情で俺を見据えてくる。


何だ光一のヤツ。オレ何か悪い事言ったか?


「俺昨日言ったよな?新藤には近づくなって」


そのセリフにハッと意識がハッキリした。


やっべ~、オレ今、蒼の名前言っちまったのか。


しかもアイツの事めちゃくちゃ嫌ってる光一の前で・・・。


何か適当な理由をつけないと。


オレは身体を起こして光一に向かい合う。


「えーっとだな、それはその・・、色々事情があってな?」


頼む光一!理由は訊かないでくれ!


「何だよ事情って?」


だから訊くなってば~!
心の中で叫びながら、オレは冷や汗をダラダラ流す。


「えぇ~っと、つまり、だな」


「昨夜は遊利のおばさんに是非にと言われて泊まったんだよ」


オレが口ごもっていると、後ろから響きの良い声がした。


振り向くと、蒼が立っていた。


「あおーー、新藤!?」


げっ!いつからいたんだ?


つーか、バカヤロー!光一の前でなんという危険なセリフを!


「遊利とは幼なじみだから家族ぐるみの付き合いがあって当然だろう?」


綺麗な顔を綻ばせて、蒼は当たり前のように言う。


「ね?遊利」


だあぁっ!笑顔でオレに振るんじゃねぇ~!


「ああ、まぁ。うん」


しどろもどろ答えるオレの横から光一が低い声で言った。


「新藤てめえッ、遊利に妙な事してねぇだろうな?」


光一の言う妙な事って、やっぱアレだよなぁ。


うおぉぉっ!言えねぇッ、言えねぇよッ!もう既にされちゃったなんて!しかも同意の上なんて!


「君に答える義理はないな。ご想像におまかせするよ」


バカァーーッ!煽ってどぉすんだよ!


ギリッと歯噛みして光一が蒼を睨んでいる。


マズイな~、光一のヤツ今にも殴りかかりそうだ。


ここはとりあえず退散するか。


その時タイミングよく昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


やた!天の助け!


「あ、ホラ!もう授業が始まる。その話はまた今度な。光一、パンご馳走さん」


オレは立ち上がると、即座に光一の腕を掴んで引っ張っていった。


「遊利!アイツと昔馴染みって本当だったのか」


「だから言ったろ?幼稚園一緒だったって」


「でも、例えそうでも、俺は認めない!遊利は俺がアイツから守ってやるからな!」


違う、そうじゃない。蒼はそんなんじゃない。オレも蒼の事が好きだと言えればどんなに楽か。


オレはチラリと光一を見やっただけで、言葉を返すことはなかった。


授業が始まる事を理由に、この話しは後日するということに至った。


席につくと、ドッと疲れが襲ってきて、デッカイため息が出てくる。


はあぁぁ~。


光一は完全にオレが蒼の事嫌ってるって思い込んでるし、蒼は蒼で光一を敵視してるし。


オレにとって光一は大事な友人だし、蒼も恋人として愛しいし失いたくない存在だ。


あの二人が仲良くなることは、一生無理なんだろうか?


友人と恋人。


どっちも失いたくない。
何か今のオレ、板挟み状態じゃん。


あ。そういえばさっき蒼の事無視して戻ってきちまった。


ヤバイな~、アイツ誤解してなきゃいいけど。


あーッ、もう!考える事多すぎ!


基本的に単純にしか物事を考えられないオレは、今にも爆発寸前だ。


悩み事は尽きないまま、時間は過ぎていった。


放課後になると、良平がカバンを肩に引っ提げながら俺のそばまでやってきた。


「ユウ、時間あるなら何か食って帰らねぇ?」


「あ~、悪い。何か今日疲れたから先帰るわ」


良平の誘いを断り、帰る準備を済ませたオレは、昨夜の寝不足と腰のダルさに悩み事まで追加されて、重い足取りで教室を後にした。


正面玄関を出ようとしたときだった!誰かに後ろから口を塞がれて羽交い締めにされた。


うそだろっ!またコレかよーーッ!


「んんーー~ッ!」


手足をバタつかせて暴れた次の瞬間、首の後ろに強い衝撃が走った。


クラリと目の前が歪んで、オレはそのまま意識を手放してしまった。


気が付くと、目の前は真っ暗だった。おまけに手首は縛られている。


このシチュエーション、前にもあったよなぁ。


オレってそんな隙だらけなんだろうか?


ここまで何度も同じ目に遭うと、もう自分に隙があるとしか思えない。


オレ、こないだからこんなんばっか・・。


こんなことなら良平の誘い断るんじゃなかった。


「随分大人しいな」


声と共に、靴の近づく音がする。


誰だコイツ?


「お前、誰だ?オレに何か用かよ?」


「拘束されてるわりに態度でかいな君」


「まあな、これが初めてでもないんでね。んで、こんなことして、オレをどうしようって?」


冷静に答えると、男はクスリと愉しげに笑った。




「いいね、その態度。益々気に入った。僕はね、君をずっと見てたんだ。でも、もう見てるだけじゃ我慢出来なくなったんだよ」


男の指先がオレの頬を撫でる。


何か、今回はまじでヤバいかも…。


以前とは全く違う恐怖感がオレを襲った。


頬を撫でていた指が首筋を伝ってシャツの襟元で止まると、そのまま凄い勢いでボタンが引きちぎられた!


ぎゃあぁぁっ!シャツ破りやがったッ!


まじ犯される!!


「ああ、やっぱり思った通り。奇麗な肌だ」


男の指が鎖骨の辺りをツッと滑る。


「・・・ッーー」


「キメも細かい。吸い付いてくる」


「あッ・・ぅっ、んッ」


見えない事で余計に身体が敏感に反応する。


「いい反応だ。じゃあ、ここはどうかな?」


そのまま胸の突起を弄りだした。


「ヒァッ!んぅッ・・あぁっ、ん」


嫌だ!嫌だっ!


蒼以外のヤツにこんな!


「気持ちいいんだろ?」


「ばっ、か言えッ!ハッ・・んなわけ・・・ねっ、だろがッ!」


「今にそんなこと言えなくなるさ。お前ら、やれ」


男の命令と共に複数の足音が近づいてくる。


なっ!他にも仲間がいたのかっ?


オレは床に座らせられたまま両側から足を固定されて、ズボンのベルトを抜かれた。


「やッ、やめろっ!分かってんのかっ?これは犯罪だぞっ!」


「関係ないね。僕は君を手に入れられればそれでいい。君が僕のものになる証拠も、ちゃぁんと撮ってあるしね」


まさか!コイツらビデオ撮ってんのかっ?


ギョッとするまもなくズボンのファスナーを下ろされて、下着ごと乱暴に引き摺り下ろされた。


「ギャー!やめろバカ!」


「うるさいね君。もう少し色っぽい声を聞かせてもらおうかな?ほら、これなら可愛く鳴けるだろ?」


男がオレの股間のモノを上下に扱き出す。


初めは反応を示さなかったが、触られている内に段々と熱を持ち、頭をもたげてくる。


「アッ!やぁッ・・ぅっ、はあぁっ!ん、いやぁぁッ!!」


「いい声だ。堪らないな。もっと鳴かせたくなる」


「あっ・・・んんんっ」


嫌だっ!ヤダよ!助けてッ!


「蒼っ!助けてッ!!」


嫌悪と、生理的に与えられる刺激の感覚とがぐちゃぐちゃに入り交じって、犯される恐怖に、オレは愛しい恋人の名を叫んでいた。


「遊利!!」


叫び声とほぼ同時に、バァンッ!と物凄い音をさせてドアが開けられた。


来て・・・くれた?


「ギャッ!」


「ぐあっ!」


側で男たちが、うめきながら倒れる音がする。


目隠しされてるから見えないが、状況は何となく分かった。


その証拠に、オレの足を掴んでいた手は無くなっている。


助かったと思い安堵の息を吐くと、それまで張りつめていた緊張の糸が切れたのか、手や足がガクガクと震えだした。


訳の分からない変態ヤローに、身体中を触られたおぞましい感覚が残っていて、震えが止まらない。


カタカタと震えていると、肩にフワリと暖かいものがかけられた。


「遊利、大丈夫か?」


耳に響く甘い心地よい声。


目隠しを外されると、目の前に愛しい恋人の顔があった。


ああ・・・、やっぱり蒼だ。


助けに来てくれた嬉しさと安堵で、気が緩んで涙がポロポロと流れ落ちた。


自由にしてもらった両手で蒼にしがみつく。


「大丈夫じゃない。遅ぇよバカッッ!」


文句を言うと、蒼はギュッとオレを抱き締めて、優しく背中を撫でてくれる。


「ごめん。もう大丈夫だから。遊利、こっち向いて」


言われて、頭一つ分高い蒼を見上げると、優しく涙を指で拭ってから、甘い口づけをくれた。


「っ・・・ンッ」


触れるだけのキスが、オレの心を甘く溶かしていく。


蒼の温もりを感じていると、段々と震えが治まってくる。


ホッと息を吐くと、蒼の背中の先の視線にぶつかった。


その視線の主を見て、思わず息を飲んだ。


ななななっ、何で光一がっ?


蒼にしっかりと抱き着いているオレを、光一が呆然と見ていた。


ヤバいって!こんなの言い逃れできねぇよ!


今のは誰がどう見たって恋人同士のやり取りにしか見えねえよ。


とりあえずオレは蒼の抱擁から半ば無理矢理離れて、そそくさと身なりを整えた。


蒼のかけてくれた制服の上着に腕を通して前ボタンをきっちり止めた。


背が高く、肩の広い蒼の上着は、オレの身体をスッポリと包む。


完全に制服にオレが着られているといった状態だ。


「遊利?」


「ん、もう平気だから」


心配そうに覗き込む蒼から少し離れて、オレはチラと光一を見る。


光一の方は、言葉を失ったように立ち尽くしている。


ああぁぁ・・・、光一のヤツに何て説明すればっ!


オレが内心戸惑いを隠せないでいると、蒼が思いだしたように光一を振り返った。


「ああ、そうだ。彼が一緒に遊利をさがしてくれたんだ」


「えっ?」


そうだったんだ。


「えっと、ありがとな光一。助かったよ」


とりあえず礼を言うと、ハッとしたような顔で返事が返ってきた。


「えっ?あ、ああ、いや・・。えっと、遊利、その・・・」


光一が言いにくそうに口ごもる。


これはもう、覚悟を決めるしかないかも。


もし、これで光一と気まずくなったとしても、それでも、オレにはもう、蒼の手を放すことなんて出来ない。


オレは光一の側まで近づいて向かい合った。


そして意を決して光一に打ち明けることを決めた。


「ーーだから・・、お前にはああ言われたけど、気付いたらもう、どうしようもなくて・・・」


自分の今の気持ちを正直に伝えると、光一は一つ息を吐いて、落ち着いた口調で話し始めた。


「あー、いや、うん。いいよもう。薄々そんな気はしてたから」


「え?」


「あの合コンの時から遊利、アイツの事気になってしょうがないって顔してたし」


ウソ?オレそんなつもりなかったんだけどッ!


「あーッ、チキショーッ!やっぱ失恋かぁ!」


何かを振り払うように、光一がヤケクソ気味に叫んだ。


失恋・・?って、まさか、こないだの?

光一、オレの事、マジだったんだ・・・。


この時、初めて光一の俺への気持ちが本気だった事を知ったのだった。


つまりオレは、光一を振ってしまったわけで・・。


「あー・・、ごめん」


「謝んなって、分かってるから。俺はちゃんと身を引くよ。後、遊利が嫌じゃなければ、これからも友達でいてくれるか?」


何かスッキリしたような表情で言う光一にホッとする。


光一からのこの申し出は、オレとしては有難いし嬉しい限りだ。


「当たり前だろ?てゆうか、それ言うのはオレの方だろ?」


光一の優しさに、鼻の奥がツンとして少し瞳が潤んだ。


「あ~でも、失恋の思い出にキスくらい貰おうかな?」


ニッと笑ってからかうように言う光一に、思わず眉がピクリとつり上がる。


「こぉいちぃ~っ、調子にのるなバカッ!」


拳を振り上げると、屈託なく笑ってヒョイと避ける。


~ったくもう!


子供みたいな光一にプッと吹き出してオレも笑ってしまう。


クスクスと笑っていると、後ろから肩をポンと叩かれた。


振り向くと、蒼が穏やかに微笑んでいる。


「さ、そろそろ帰ろうか。遊利も早く帰って着替えないと」


「そうだな。・・っと、アレ、どうすんだ?てゆうか、お前らちょっと、やりすぎじゃねぇ?」


オレの肩を抱いて、部屋をでようとする蒼に、オレ達の背後で思いっきり伸びている男たちをチラリと見て言った。


一目見ただけで分かるほど、ボロボロにヤられている。ビデオカメラは完全に壊されているし、データチップも、これでもかというくらいにバキバキにわられていた。


「ん?放っといていいだろ」


「そうそう。あんな奴ら遊利が心配してやる必要無し!」


「や、でも後から仕返しとかあったら」


オレがそう言うと、蒼と光一は二人で顔を見合わせてニッと笑う。


うっ、何か嫌な予感。


「コレ」


蒼がズボンのポケットから何かを取り出した。


それを見た途端にため息が溢れた。


予感的中…。


取り出したのは掌サイズのデジカメ。


アイツらがオレを襲っている様がバッチリ撮られている。顔も横顔だが本人としっかり分かる。


しかも、オレのあられもない姿は上手く隠して撮ってある。


「コレ、学校内のパソコンに一斉送信したら、どうなると思う?」


ニヤニヤと悪い笑みを浮かべている。


その笑みに、背筋がゾッとした。


「マジ・・?」


これが教師の目に触れれば、間違いなく警察沙汰。最悪退学だ。でもなんか、コイツならやりそう。


「俺らの遊利をこんな目にあわせたんだ。これくらい当然だって」


光一が横から画像を見ながら言う。


それに蒼が大きく頷いた。


「同感だ」


コイツら、鬼だな・・・。


多少気にはなるが、オレ達はその場を離れた。


しっかし、コイツら結託すると何すっかわかんねぇな。


「今回は礼を言っておく。遊利の事探してくれてありがとう」


「別に、お前に礼を言われる覚えはないね。俺の、大事な遊利を助けるのは当然だ」


「んん?今のは聞き違いかな?遊利は俺のだよ?」


「いくら遊利の恋人になったからって決めつけんじゃねえよ。ま、せいぜい振られないように気を付けるこった」


オレを間に挟んで、蒼と光一が話し始めた。


だけど二人とも表情と会話が噛み合ってねぇよ。


顔は笑顔なのに、言葉の端々にトゲがある。


二人でオレを助けてくれた時は、ちょっとは仲良くなったのかと思ったけど、やっぱ仲悪いみたいだ。


笑顔でケンカごしの二人を、オレは仕方なく止めにはいる。


「いい加減にしろって!ったく、もうちょっと仲良くできねぇの?」


「いくら遊利のお願いでもそれはムリ!」


ニコリと笑顔で光一が語尾を強くする。


断言かよ!


「右に同じだ」


うわっ、コイツら可愛くねぇ~!


その後、光一と別れるまで、険悪な会話が繰り広げられ、オレ一人だけが始終困惑しただけだった。


「あ、そう言えばさ、何でオレがアイツらに捕まってるって分かったんだ?」


蒼と二人きりになってから疑問に思っていたことを尋ねた。


「・・・・知りたい?」


ちょっと間を置いて訊かれる。


何だ?今の間は。


違和感を感じながらもオレは答えた。


「そりゃ、まあ」


「う~ん、ま、愛の奇跡ってヤツだよ」


あっ!コイツ、何か隠してやがる!


言いながら、ギュッと抱き締めてくる。


「こんな往来で抱き付くなっ!何が愛の奇跡だ!騙されねーぞ?何か隠してるだろっ!」


「遊利に隠し事なんてあるわけないだろ?それだけ俺と遊利は想いあってるってことだよ」


蒼は男前の顔を綻ばせてオレを見つめる。


ぜっったい隠してる!


でも・・、クッソォ、笑顔が完璧すぎて何考えてるか全然わかんねぇ!


「本当か?」


「もちろん」


いつか吐かせてやるっ!


恋人の嘘をいつか暴いてやると、オレはこの時心に誓ったのだった。

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