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教訓〜約束は、破るべからず〜
あり得ない出会い!?
しおりを挟むあれ?何だろう。暗い・・・・。
目を開けると、真っ暗な闇の中にオレはいた。
埃っぽくて、砂のような匂いがする。
体育用具室か?
目に布のようなものが巻きついている。どうやら、目隠しをされているらしい。
おまけに、後ろ手に縛られている。
どうしてこんなことになっているのか、全く把握できない。
「何か、誰かに怨み買うことしたかな?」
呟いて、自分の記憶を手繰り寄せるが、心当たりがありすぎて、どれがどれだか分からない。
ウ~ン、と一人で唸っていると、正面の方から、ガチャリと音がした。
どうやら、ドアが開けられたようだ。
布越しに薄く光が入ってきて、オレは目をしばたたかせた。
目を覆われていると言っても、暗い空間に目が慣れてしまっているのだから、少しの光でも眩しく感じるというものだ。
それよりも、誰かがこっちに向かってくる。
一体誰っ?
周りが見えない状況に不安になりながら、オレは僅かに身体を固くして、床に座り込んだままじっとしていた。
その『誰か』は、オレの傍までやってくると、オレの顎に手を添えて、クイッと顔を上向かせた。
「手荒な真似をしてすまない。申し訳ないが、君にはヤツを誘き出すための餌になってもらうよ」
低くて太い、艶のある声で、丁寧な口調でそいつは言った。
「えさ?」
・・って、オレ?ヤツって誰?
ヤベェな。マジで誰だ?!
う~ん、最近記憶にあるとしたら、こないだ背中に飛び蹴り喰らわした隣のクラスのアイツかな?いや、それとも中庭でヒモ張ってついでに砂に隠したバナナの皮で転ばした2年のあの先輩?いやいや大穴狙いで編み物好きだと弱みを握り、事あるごとに圧をかけている見た目ゴリラの体育教師の黒沢?は、流石にねぇか。
とりあえずはこの状況を説明してもらいたい。
「あの、さ。おれ、あんたに何かしたの?」
オレが訊ねると、そいつはちょっと困ったように息を吐いた。
「さっきも言ったけど、君はある男を誘きだすための餌だよ。木村 遊利くん」
「えっ?オレの名前知ってんの?いや、それよりあんたは誰なんだよ?あんたはオレの事知ってるみたいなのに、オレがあんたの事知らないのは何か釈然としないんだけど。それと、ヤツって誰なんだ?」
オレが当然の疑問を訊ねると、男はそれもそうだと言うように話し出した。
「まぁ、君の言うことにも一理あるよ、木村 遊利くん。俺の名前は・・・、そうだな『ひみつのアッ〇ちゃん』とでも名乗っておこうか」
「・・・・・・ハッ?」
耳を疑うような、すっとんきょうな答えに、聞き間違いかとオレは訊き返す。
「え・・っと?ひみつの~・・・なん?何だってっ?」
思わず耳に手を当ててズイと相手に前のめってしまう。
「だから、『ひみつのアッ〇ちゃん』だと・・」
「イーヤイヤイヤッ!待て待てっ!そぉじゃないだろうっ!あんたソレおかしいだろうっ?つうか、あんたアホ?」
もう一度ふざけた事を言おうとする男の言葉を、オレは大きく遮った。
つうか、あり得ないだろっ!
なんだよ?『ひみつのアッ〇ちゃん』って!アホ丸出しじゃん!笑わすんじゃねぇよ!
「気にすることはない。お茶目な冗談だ」
至って真面目な声で男は答える。
イヤイヤ、冗談で済ますのかっ?絶対おかしいって!
もしかしてオレ、変なのに捕まっちゃった?
まともな会話ができない、頭のおかしそうな相手に、遠退いていたはずの不安が再び蘇る。
しかし、待てよ?アレ?何だ?何か忘れてるような?
・・・ハッ!
「つうか、結局名乗る気ないんじゃねーかっ!」
フザけた会話で話の主旨をすり替えた男にオレは憤慨する。
「やっぱりダメか」
男はガッカリしたように声を潜める。
そしてそれは、更にオレの怒りを煽る結果となる。
「ダメに決まってんだろうっ!ふざけたことばっか言いやがって!何なんだよあんたっ。解けよコレ!こんなことされるいわれはねぇぞっ!」
あまりの怒りに、オレは噛みつくように声を荒げた。
「まぁまぁ、そうカッカしないで。かわいい顔が台無しだよ?木村 遊利くん」
ムカムカムカ~!!
「フルネームで呼ぶなっ!てめぇ、人をおちょくりやがってっ、何が目的なんだよっ!返答次第じゃどうなるっ、かっ・・・ぃっ、痛ぅっ!」
言い終わらないうちに、オレは男の迫力にのまれてしまった。
「大人しくしててくれないか?俺としても可愛い君に手荒なことはしたくない。言ったはずだよ?餌だって。君はただ黙って座ってればいいんだよ」
オレの髪をグッと掴み上げ、そいつは震え上がるような、低く、冷たい声で言った。
一瞬で大人しくなったオレに満足したのか、髪を掴んでいた手を離して、今度は痛みを和らげるように優しく撫でさすってくる。
「すまない。痛かっただろう?」
そう言って、オレの頭を両手で優しく包み込んで、そして・・・.そしてっ?
「ッ?!!!!」
髪に暖かい何かが触れた。
ソレが唇の暖かさだと気付くのに時間はかからなかった。
「なっなっ?!てめっ、今、何したっ?!」
ブンブンと思い切り頭を振り、男の手から急いで逃れたオレは、離れられる距離までザザザーッと慌てて後退さった。
身体を強張らせてビクつくオレに、男は楽しそうにクスッと笑うと、怪しい足取り(な気がする)で近づいてくる。
「よっ、寄るな変態っ!近寄るんじゃねぇっ!」
「酷いなぁ。そんな事言う悪い子は、お仕置きされても文句は言えないよね?」
「何バカ言ってんだ!寄るなっつってんだろっ・・・ヒッ」
男の手が、オレの頬に触れた。そのままツーッと指先が顎のラインを滑り落ちる。かなり危険な予感に、オレの身体は小刻みに震えた。
「クスッ。本当に可愛いね、君は。心配しなくても何もしやしないよ。今はね」
今はっ?今はってことは、後で何かされるってことかっ?
イヤだぁーーっっ!こんなとこで、こんな変態ホモヤローになんか犯られたくないよぉーーーっ!
オレが恐ろしい想像を巡らせていると、割れんばかりの勢いで、バンッ!と扉が開かれた。
どうやら、待ち人がおいでになったようだ。
「新藤てめぇっ!どういうつもりだっ!」
鼻息も荒く乗り込んできたそいつは、怒りを露にしている。
けど、何だろう?この声どっかで聞いたような・・・?
「ゆ、遊利・・っ。てっ、てめぇ・・っ、遊利に何て事を!許さねぇっ」
オレの姿を目にしたらしく、今にも殴りかからんとしている(ような気がする)コイツって・・・!
「もしかしてその声、光一かっ?ある男ってお前の事だったのか?」
どうやら、ある男とは、オレの友人、松井 光一だったようだ。けど一体、どういう事なんだ?
何でオレが、光一を誘きだすための餌なんだ?
訳が分からず、ぐるぐる考え込んでいるオレを無視して、二人は話し出した。
「やぁ。待ってたよ。今日こそハッキリさせようか?どちらが遊利に相応しい男か」
はい?オレが、何だって?つか、何故呼び捨て?
「ハッ!一目瞭然じゃねーか。遊利をこんな目にあわせるようなヤツが相応しいわけねぇだろ。遊利の事は俺が一番良く分かってんだ。お前は潔く身を引きな」
さっきっからオレに相応しいだの、身を引くだの、二人とも、何言ってんだ?
つうか、一体何の話し?
「君は、俺には勝てないよ?」
「フン!その自信はどっから来るんだ?負け惜しみにしか聞こえないぜ?」
何か、どうやら、事の発端はオレにあるみたいなんだけど。当の本人、預かり知らぬって感じなんですけど。(困)
まぁ、とにかく、二人の正体が分かったオレとしては、いつまでもこんな格好を強いられてるのは我慢ならないわけで。
「オイ!取り込み中悪いけど、
新藤とかいったか?もういいだろう。コレ解いてくんない?」
そう言うと、ああ、と気付いたように新藤はオレの傍らにしゃがみこんだ。
そこまでは良かった。戒めを解いてくれると思ったのに、あろうことか、新藤はオレの顔を両手でそっと包み込んで。
「うーん、俺としてはこの格好そそられるんだけど。どうしても解いて欲しい?」
なんてほざきやがったんだ。
「フザけんなっ!てめぇの趣味なんぞ知るかっ!さっさと解きやがれっ!」
激昂して怒鳴ると、新藤はヤレヤレというように、ため息をつき、頭の後ろの結び目に手を伸ばした。
やっと目の前が明るくなる。
と、思った瞬間、眩しくて目を瞑った俺の瞼に、暖かくて濡れたものがすかさず触れた。
気付いたときは既に遅く、オレの瞼は新藤の唇に覆われていた。
「新藤、貴様っ!」
光一の怒りが轟く。
「なっ、なっ、なぁ~~っ!!てンめぇっ、一度ならず二度までもっ!ブッ飛ば、すっ?」
視界が明るくなって、周りが見えてきたからか、オレは目の前にいる男を呆けた顔で、ポカンと見つめてしまった。
誰っ?この超絶美形の男前はっ?
目の前には、穏やかな雰囲気を纏って、規定の制服を大人っぽくビシッと着こなした、長身で眼鏡の超男前がオレの顔を覗いていた。
眼鏡の奥の、濃茶の瞳に、思わず吸い込まれそうになる。
ボォーとしていると、新藤が嬉しそうに笑顔になった。
うわっ、笑った。
と思った瞬間、息なり抱き締められた。
「ひぎゃぁっ!」
「全く。ホンッとに可愛いなぁ!そんな顔されたら苛めたくなるだろ?」
嬉しそうに言いながら、オレの身体をギュウギュウ抱き締める。
息なりの事で気が動転していたが、オレが今抱き締められてるのは男!いくら美人でも男だ!そしてオレも男だ!つうか、やっぱコイツは変態ホモヤローだぁーーーっ!!
現実を直視して、オレは顔面蒼白になる。
「はっ、離せぇっ!この変態っ!ホモっ!オレはそんな趣味はねぇっ!女だ女っ!俺は女がいいっ!」
一纏めのように『女』と言う単語を連呼する。
「女、女って・・。お前女なら何でもいいのか?」
光一が呆れるように言った。
「ウルサイッ!お前らみたいな変態よりゃマシだっ」
新藤に引っ付かれながら光一に反論した。
「つうか、新藤っ!てめぇ早く離れろっ!そしていい加減この紐解けっ!」
「遊利は口が悪いなぁ。あんなのと"お友達"なんてしてるからかなぁ。そんなんじゃモテないよ?ところで、紐解いてもいいけど、絶対殴らないって約束してくれる?」
「バカじゃねーのっ?殴るに決まってるだろーが!つうか誰が呼び捨てにしていいっつったんだよっ?!」
オレは新藤に襲いかからん勢いで怒鳴り散らした。
が、ふと考える。
そっか、オレが反論するから余計に絡んでくるんだ。なら、逆に大人しくした方が解放してくれるかも。
そんな事を考えて、オレは大きく息を吸い込んでゆっくり吐き出す。
そして、落ち着いた口調で言った。
「分かった。殴んないから解いてくれよ」
「本当に?」
「男に二言はない!」
「了解」
やっと承諾して、新藤は後ろ手に縛っていた紐を器用に解いた。
ようやく自由になった手を撫でさすり、オレは軽く床に手を付いてフワリと身体を浮かせて飛び、トンと立ち上がった。
「よっ!・・・っと。ふうっ、と言うわけで、オレ行くわ。後はお前らで話し合いでも決闘でも好きにしてくれ。じゃあな」
その場からスタスタと立ち去ろうとしたが、あれ?前に進まない。振り向くとオレの腕は、片方ずつ光一と新藤に捕まれていた。
「待てよ遊利、俺の気持ちもう分かってるんだろ?」
返事を訊かせてくれと言わんばかりに光一に答えを促されて、オレは思い切り眉を顰めた。
「何がだよっ?そんなの分かるわけないだろ?悪いけど、お前がオレをそういう目で見てるんだったら、オレはお前とは友達でいられない!」
吐き捨てるように言うと、一瞬傷ついた表情になって、オレの腕を掴む手を、力なくスルリと落とした。
あ、な、なんかちょっと、悪者の気分だな・・・。
「あ~、なんだ。その、何て言うか、お前の好意はありがたく受け取るけど、オレはさ、同性にその、そういう感情は持てないっつーか、なんつーか。えーっと、だから、ごめん」
だぁっ!何でオレが謝らにゃならんのだっ?!
「ていうか、お前も手ェ離せっ!」
もう片方のうでを掴んでいた新道の手を、オレは無理やり振り解いた。
奇妙な感情にイライラする。
しかし、逆に光一はパッと明るくなった。
な、何だよ。そんな嬉しそうにされたら、気が抜けるじゃん。
「とにかくだな。今までどおり普通にしてくれ。頼むから」
そう言うと、光一は嬉しそうにオレの手をギュッと握ってくる。
ひいぃっっ!
「うん。今までどおりな。やっぱお前サイコーだ!」
ガバッと首に抱きつかれた。
ぎぃぃやああぁぁっ!
「だぁっ!ヤメロ抱きつくな!普通にって言っただろっ!」
「何だよ~、こんなスキンシップいつもしてんじゃん」
「そ、そうだっけ?いやっ、何か違う!そうゆうんじゃなくて、何か不毛な気を感じるっ」
離れろ!と言おうとしたが、声になる前に忽然と光一が目の前から消えた。
「へっ?」
みると、光一は見事に壁際に吹っ飛んでいた。腰から下を強かに打ち付けたのか、痛そうに顔を歪ませている。
何事かと思っていたら、グイと何かに引き寄せられた。
そのまま身体ごと包まれる。
「人のモノに気安く触らないでもらいたいな。油断も隙もない」
頭上から冷ややかな声がした。ギョッとして見上げると、新藤の顔が間近にあった。
うおぅっ!美し・・・じゃなくてっ!ビビったぁ。
つーか、誰が誰のもんだってぇ?
言われた言葉に怒りが込み上がる。
「いつお前のモノになったんだ!てゆうか離れろ変態!」
「本当に遊利は口が悪いなぁ。うーん、ダメ。離さない」
新藤がオレを見下ろして、超男前な顔を綻ばせた。
うっ!やっぱ惚れ惚れするほどカッコイイ!
思わず、見とれてしまったオレは、敵に隙を与えてしまっていた。
気付いても、時既に遅し。
オレの可哀想な唇は、新藤にしっかり奪われていた。
「んぐーっ、んーっ!」
慌て離れようとしたが、しっかりと噛み付いて剥がれない。それどころか、キスは更に執拗に深く濃厚になっていく。
舌で口腔を思うままなぶられて、痺れるような感覚に襲われる。
「んんっ・・ん、ふぅっ」
あ・・、やば。力抜けそう。
角度を変えて、クチュクチュと舌を絡められるともう立っていられなかった。
熱っ!
もう、ダメだ。
膝がガクガクと震えて、崩れ落ちそうになったオレをしっかりと抱き支えた新藤は、トロンとした俺を見て、満足気に微笑んだ。
「可愛いなぁ、遊利は。そんなに気持ち良かった?」
訊かれて、ハッと我に返り、かぁっ、と顔が赤くなった。
「じょっ、冗談じゃねーっ!離せ!変態セクハラホモ野郎!」
ありったけの力を込めて新藤を突き飛ばしたオレは、一目散に体育用具室を後にした。
吹っ飛ばされた光一にいささか後ろ髪を引かれる思いをしたが、今は逃げたい一心だったのもあって、完全に無視した形になった。
「逃がさないよ」
飛び出す間際、そんな言葉が聞こえたような気がした。
自分の教室まで全速力で走り逃げながら、オレは消えない新藤の唇の感触を何度も思い返していた。そんな自分に気付いて、記憶を消そうと、オレはブンブンと頭を左右に振った。
あり得ない!お、男にキスされるなんて絶対あり得ないっ!ちくしょう!何なんだよ、あの野郎!
ちくしょーっ!ムカつく!ムカつく!スッゲー気持ち良かったっ!
うあーっ!ヤバイどうしようっ、忘れられないよぉーっ!
あの悪魔め~!今度あったらただじゃおかないっ!
キーンコーンカーンコーン。
本鈴チャイムが鳴る直前に教室に滑り込みセーフしたオレは、早鐘を打っている胸を、自分の席について落ち着かせた。
「はあ~・・・疲れた・・・」
ぐったりと、上半身を机に突っ伏していると、誰かに頭を小突かれた。
「あ?誰?」
見上げると、前の席の、関谷良平が心配そうな顔で見下ろしていた。
「どうした?ユウ。えらく疲れてるみたいじゃん」
「良平か。ん~、ちょっとさ、色々あって」
「色々って?」
訊き返されて、オレは言葉に詰まってしまう。
「う、う~ん、まぁ、色々だよ」
追求されたくないと匂わすと、伝わったのか、良平はそれ以上訊いては来なかった。
「ああ、それよりユウ。今度の日曜なんだけど、空いてるか?」
「日曜?うん。多分大丈夫だと思うけど。何?」
訊くと、良平は企んだようにニッとほくそ笑んだ。
「フッフッフッ」
「何だよ?気持ち悪いなぁ」
「喜べユウ!彼女ゲットのチャンス到来だぞっ?なんと、あの聖マリア女学院の子達と今度の日曜合コンすることになったんだ」
そのセリフを聞いたとたん、オレは嬉々として跳ね起きた。
「嘘っ、マジでかっ?聖マリアっつったら、可愛い子の宝庫じゃん!よく約束取り付けたな?」
「ふっ、ココの見せどころよ!コ、コ、の」
良平は自慢げに、自分の腕を叩いて見せた。
「なんてな。実はうちの遥がマグレにも入学してさぁ」
「マジで?遥ちゃんスゲェ!超難関をよくぞ!」
遥ちゃんとは、良平自慢の妹だ。良平の家には何度か遊びに行ってるからオレも一応面識はあった。
「そうなんだよ。んで、サクッと頼んでみたら、即OKだったんだ。相手は4人。こっちは俺とユウと、あと光一にも声かけて」
光一という名前が出たとたん、オレはスウッと血の気が引いていくのを感じた。
「あ、いや~、アイツは合コンとかあんま興味ないんじゃないかな~」
今は可能なかぎり光一と顔を合わせたくないオレとしては、かなり必死だ。
「そうか~?男ならこんなチャンス見逃さないと思うけどなぁ」
そんなことはないだろうと良平は否定する。
イヤ、あるんだって!だってアイツ男のオレの事が好きだから!
よりにもよって友達に告るようなヤツが合コンなんて行くわけがない。
…と、思っていたのに。
昼休みが終わった頃、良平が足取りも軽くオレの所に来て自慢げにVサインをよこした。
「ホレ見ろ!光一OKだったぞ?なー?可愛い子達と合コンなんて飛び付くに決まってる!」
勝ち誇った様にふんぞり返る良平に、オレはカッと目を見開いて叫んだ。
「嘘っ?」
じゃあ、あれは一体なんだったんだ?
もしかして、からかわれただけ?
イヤ、あの時のアイツの態度は嘘には見えなかった。
はっ!まさかアイツ両刀?女も男もOKってヤツ?
頬に汗をタラリと流しながら百面相をするオレを、良平はいぶかしげに見ながら、オレの目の前で手のひらをササッと振った。
「どした、ユウ?」
「ああっ!イヤ別に。そうか、うん。そぉだよなぁ?やっぱ彼女の方がいいに決まってるよな!うん」
そう言って、オレはムリヤリ光一を自分の中で、アブノーマルからノーマルに戻し、納得したのだった。
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