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始まりは

3話

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馬車に揺られて数刻、無事にお父様の家に到着した。お父様の家は少し大きくて孤児院の二倍くらい大きかった。

「これからユリアスが住む家になる、しっかりとやるんだ」

「はい、ヒステリ様……」

お父様は私に家をくださった。でもその家はあまりいい場所とは言えなかった。

「ただいま帰った、アリア、ミナリー」

「おかえりなさい、あなた」

「おかえりなさい、お父様!お土産はありますか?」

アリア様とミナリー様と呼ばれる二人の女性がお父様を出迎えた。
アリア様はお父様の妻で私の義理の母になる人、ミナリー様お父様の娘で私の妹になる人のようだ。まだ仮なので家族と思っていいのかはわからないが……

「あら?どなたですか?」

「ああ、君の兄になる予定のユリアスくんだ。仲良くするんだよ」

「あなた、どういうことですか?私は何も聞いていないのですが……」

「ああ、孤児院で見つけてね。私の仕事につかえると思って養子にしたんだ」

「お父様、あんな気味が悪いのが兄だなんて認めたくないのですが……」

そういって、私の顔をにらんでくるアリア様とミナリー様を見て歓迎されていないことが分かった。家族になることはとても難しいかもしれないが頑張らなくてはと思って二人に向かって挨拶をする。

「初めまして、アリア様、ミナリー様。これからよろしくお願いします」

「誰があなたとよろしくするもんですか」

「お母様の言う通りよ!お父様、こんな奴なんて追い出しましょう!」

「二人ともそれくらいにしないか。この子を今、家族になれるか試しているんだ。だから、家でのことは二人がしっかりと監視して、私に報告してほしい。あまりにひどかったらお仕置きすればいいだろう?」

「あなたがそこまで言うのでした、わかりました」

「えー」

「ミナリー、頼まれてくれたら前に欲しいと言っていた宝石とドレスを買ってあげるから」

「……わかりました、お父様」

しぶしぶといった感じで二人は了承してくれた。でも、私はなんだか心に引っ掛かりと寒気を感じたがこれで家族になる一歩を踏み出せたという思うが勝った。

「ユリアスの部屋は最初は倉庫からになる。君がいい子で頑張ればいい部屋になるし、いい子じゃなければそのまんまだ。分ったかい?」

「はい……」

そういって案内されたのは孤児院でも経験したことなかったほどの酷い部屋だった。寝る場所もなく床で寝る用にと毛布が一つ置かれていて風は隙間から入ってくる。後は、ランプくらいしかなかった。

「今日は、もう休みなさい。おやすみ、ユリアス」

「は、い……」

絞り出すような声しか出なかった。
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