最近流行りの長髪男子ですが、髪が性感帯の長髪男子はお好みですか?

綾巻湯香

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流風と天馬のお話。

流風と天馬のお勉強会

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※先に用語集を読むことをおすすめします。



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「これから~。勉強会を、始めまーす! はい藤和兄弟、拍手ー‼︎」
 いえーい、パチパチ…。あまりやる気のない拍手アンド声。ただいま、美佐川宅にて。お勉強会…らしい。今ここにいるのは藤和光と涼。と、俺と流風。ガラス製の机を四つの座り心地の良さそうな黒い椅子は囲んでいる。赤絨毯が敷かれていて、まるで応接室のようだ。俺ん家にこんな場所あったんだな。知らなかった。
 部屋を見回していると、流風がスマートフォンを取り出して、画面に長い睫毛を伏せながらダルそうに話し出す。
「えーと今日はねー、涼からラインが来たんだけどー」
「涼お前いつからそんな流風さんと友達になったんだよ、」
 間延びした流風の声に、光がぱくぱくあうあうー、と口を開閉している。そんな光を「まあ、どうでもいいじゃん?」と受け流す流風。嫌な予感がしているのか、涼は訝しげな表情を浮かべ白銀の髪をゆらゆらと揺らしていた。
「んでね、涼からこんな質問が来たんだけど。『あのっ……流風先輩、禁症…? って、っどうやって出せばいいんですか?』っていう」
 ……は? 禁断症状? この時期で? この年齢で? はえーわ。俺なんて十八だぞ。涼って確か十四ですよね? 負けた気がしないでもない。涼を見てみればブルブルと震え、顔は赤くなっていた。まあそりゃそうか、こういう相談事はあまり他人に公表したりしない。当然だろう。
「ってことで、今から実習付きでやるからね」
「流風さん⁉︎ な、なんでそんなことを今ここで、じ、自分でやってみなよってこの間、……ってか禁症は見せたりすんの駄目って、」
「お兄ちゃんに初めての禁症出してもらうっていうのもいいでしょ?」
「は? ちょっと待ってオレが涼のを出すの⁉︎」
「はいどうどう。天馬ー、こっち来て」
 涼は粒子でも出そうな綺麗な水色の発光した髪を少しだけ逆立たせながら反抗するも、流風は一切動じた様子を見せない。
 徐に今まで誰も座っていなかった椅子にどっかりと座り、こちらに向かって手招きをしてくる俺の兄。……実習付きってことは俺が流風に禁症を今から出されるのか。嫌という感情はあまりない。否定しても意味がないからだ。所詮は俺もこいつの弟、従わないといけない。
 しょうがなく流風の隣の椅子に腰掛ける。クッションのせいで体が沈みこんでバランスを崩しかけた。
 光と涼はといえば硬直してこちらを仲良く見つめていた。目を点にするとはまさにこのような表情だ。
 ……なんか緊張するな、そういえば他人の目の前で禁症を出すなんて初めてだ。なんて流風の隣に座ってもじもじとしていると。
「スペシャルサービスしたげるよ、俺がされる側で天馬がする側。おっけー?」
「ハアアアアア!?」
 こればかりは反射的に大声が出てしまった。てかえ、ってことは俺が流風の髪を触るの? そんなんしたことねえよ! いきなりかよ!? お前攻固定じゃなかったの!? 
 あまりにもな発言に、思考が空回りしてぱくぱくと口を動かしていると。流風の手が俺の手に添えられ、人差し指で甲をトントンしてくる。まるで「ほら、やらないの?」と俺を煽っているようだった。流風が普段つけている香水のモスクがふんわりと漂ってくる。
 流風を見ればずっとこちらを見ていたようで、にっこりと笑みを浮かべている。……駄目だ、流風の考えていることが分からない。
 左隣に立っている光と涼は「……あのぅ…?」とでも言いたげな表情でこちらを見ている。
「わ、分かったよやればいいんだろやれば! やるから、」
 半分自暴自棄になって荒々しく椅子から立ち上がると、流風の膝下まである紫髪を刺激しやすいように椅子に座る兄の足元に跪く。そして、弟の冬馬と同じ髪色の先端を、持つ。
「…………」
「…うふふー……」
 いや流風!? ニコニコ笑ってるがもうこっちまで先端の震えと熱伝わってくるし大丈夫なのかこいつ!?
 普段流風の髪を触ったことがなかったから気付かなかったが、いつも流風の髪はこんな感じなのだろうか。そりゃあ抑えるのも大変な訳だ。
 一応これは流風の言葉を借りると『実習』なのだ、光と涼に見せなければ意味がない。無言で手招きをして二人が流風の先端がよく見えるようにしてやる。
 どうせこの勉強会も思いつきでやったのだろう、早速流風の呆れと羞恥をごちゃ混ぜにしたような表情からは「やらなきゃよかった」という言葉がありありと浮かんでいる。
 取り敢えず恐る恐る、流風が以前俺によくやっていたように髪を舐めてみる。しかも敏感な先端の色が変わるところ…境目だ。と同時に、流風の肩がびくんっ、と揺れるのが分かった。同じように先端も生きているかのように脈動する。
「うわ、すげ、」
 感心するように光が流風の先端をじっと見つめながらぼそりと呟く。流風が恥ずかしそうに身じろぎしたのが分かった。
 涼も普段リスペクトしている人物が髪を触られることで感じている瞬間が珍しいのだろう、声には出さないものの、じっと食い入るように見つめている。
 何故か静まり返ってしまった部屋に、流風の少しだけ不規則になり始めた吐息が小さく吐き出される。それに耐えきれない俺、取り敢えず解説を始めることにした。
「……こ、こうやってその、舐めたり擦ったり、してみれば、……あのー……出るんじゃね、禁症」
 あまり喋らない光はともかく、涼とは普段腐男子トークで盛り上がっているのだが、こういう話題になると一転、非常に気まずくなってしまうのだ。完全にコミュ障のそれである。
 二人がどんな反応をしているか見る余裕も無いまま、足りない言葉を埋めるがごとく、流風の髪をさりさりと擦っていく。
 ……基本的に発症をした後に禁症が出ることが多いので、禁症を出すとなるとこのまま流風を発症させるコースになるのだが、まさか実際に発症するつもりはなかったのだろう。若干流風の先端が発症を堪えるように強ばっているのが分かった。
 ぐり、と先端を刺激してみたり、境目をちろちろと舌先で舐めてみたり。何だかここまで来ると楽しくなってきてしまう。
「……ちょ、ッ……天馬もう平気、あの、大丈夫だから」
「見せるんだろ、禁症」
 焦った様子で、不規則にぴくぴくと動く髪を手で抑え込む流風。それをやんわりと払いのける。
「抑えないで。やるんならちゃんと最後までレクチャーしないと」
「ッ……ん、待て、天馬待ってタンマ、」
 はっ、はっ、と短い呼吸の中流風が俺を引き止めた。
「……なに」
 口で流風の髪をひと房咥えながら上目遣いで尋ねる。流風の群青色の先端はすっかり発熱してしまっている。
「俺実習するとは言ったけど禁症実際に出すとは言ってないんだって、」
「は? そんなこと知らねえよ」
 と、若干食い気味に返答。すると、流風の髪に変化が見られた。少しずつ先端が丸まってきていて、ぎこちなく俺の指に絡まってきたのだ。……発症の前兆だ。
「……あの、天馬先輩、これぼく達見ない方がいいですか」
「見ねえと分かんないだろうが」
「そうですけど……み、見てる方もちょっと気まずくて、」
「……ッ、ん、見なくていい見なくていい、つかやり方は分かったでしょ、……もう、いいから」
 流風の顔は焦りの表情に変わっていた。俺の手元で髪が震える度に苦しそうな表情を浮かべている。基本的に発症直前は立てなくなるので、逃げることはない。椅子の腕置きに爪を立てている。
 流風の髪はふるふると淫魔の尻尾のようにいやらしく震えていた。
 藤和兄弟には刺激が強かったのか、恥ずかしそうに目を逸らしている。美佐川家はまず相手に弱みをあまり見せない。珍しいのだろう。
 俺としても兄である流風の髪をここまで間近で見たことが殆どないので、どうしたらいいか分からず取り敢えず父親と同じように攻めている次第だ。
「あのほんといいから、天馬、…や、やめて、」
 プライドが許さないのだろうか、弟に刺激されて発症するというのが。声が震えていた。更に境目をぐり、と親指の爪で刺激し、父親の見よう見まねで舌全体を使って一般人とは違って感覚のある髪を刺激する。
「……駄目。はやく」
「やだ、やだってば、……こんなとこで発症するかっての、……っぅ、……!」
 びくんと直線的に髪が痙攣すると、十センチほど伸びる。引き攣った吐息は激しく、手は赤くなった顔に。
 流風の発症に、しぃん、と静まり返る部屋。左隣の藤和兄弟が息をつめているのが分かる。流風が羞恥に滲んだ目を見開いて辺りを見回す。
「これが発症ね。分かった? 涼?」
「……あ、」
 顔が赤くなっている涼。まだ髪に感覚が生えてから間もない為、発症をしたことがないのだ。勿論これが性的快感を伴うものだということは雰囲気で分かっているのだろう。
「じゃあ次は禁症」
「え!? やだやだやだやだ! 待って、俺、そんな、」
 ばたばたと足を駄々をこねるように暴れさせる流風。発症直後はまともに立てる状態ではないのによく抵抗できたものだ。
 発症して更に敏感になってしまった髪。そこを刺激すれば一瞬だろう。……だが。
「っ……」
「あ、え、…?」
 禁症が誰も触っていないのに出た。髪が発熱している。晒された先端はぴくんぴくんと脈打っている。
「……流風先輩? あの、これは、」
「だあああっ! こ、これは、その、!」
 ……ああなるほど。発症直後に大声を出すと禁症が出やすくなってしまうというのが流風の面白いところだった。そうだった。
「……何これ…禁症ってこんななるんだ、」
 光が面白そうにじっと流風の先端を見つめて、「オレも流風さんの髪触っていいの?」とお伺いを立ててくる。珍しいのだろう、分かりやすく髪をはたはたと興味深げに揺らしていた。
 それは俺にとっては愚問だった。
「駄目。流風は俺のだから」
 そう呟くと、俺は跪く体勢から立ち上がり、みぞれを口に咥える。びくんと動く流風の肩。

「だよね? 流風?」

 これが、流風をリバ可能にしたきっかけ。

 
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