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EP.1 さよなら世界、こんにちは異世界

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Side:M





グェーグェーという、何ともいえない音にふっと意識が浮上する。


重い瞼を押し開けるとそこにはなんと、すんっごいイケメンの寝顔がありました。


スッと通った鼻筋と薄めの唇に長いまつげ、黒い前髪が長めな色白さん。
イケメンなんだけどどっちかっていうと、寝顔は美人よりなイケメンさん?
瞳の色は何色をしてるんだろう?黒でもいいけど、青空のような蒼とか夕焼けのような赤も似合いそうだなぁ。


「グェ~、グェッグェ~~~!!」

「うるさい!!って、でかっ!?つか、ぶさいく!?」


音の方に視線を向けると、そこには大きな鳥がいた。

しかも不細工。何とも形容りがたい不細工。顔?と鳴き声がすごくマッチしていて違和感ゼロなのがまた何とも言えない。


「グェー!!!!」

「ちょっ、いたい!!!!」


私の不細工という言葉に怒ったのか、不細工な鳥に頭をつつかれた。

いや、真面目に痛いんだけど。人間の言葉わかるのかよこの鳥。
てか、なんか身体の力が抜けてくるんだけどなんで??


「グェグェー」


ふんっと私を見下ろしながら何か得意げな顔をしている鳥は、自身の片足を差し出してまた鳴いた。
差し出された足を見てみると何やら紐で紙が括り付けられている。

え、ナニコレ、手紙?
めっちゃ原始的じゃん。流石異世界!

鳥の態度よりも原始的な手紙の配達にすごく興味をひかれた私は、差し出されている片足に手を伸ばした。


「は?ちょっとまって」


手を伸ばしたけれど、その手を見てフリーズする。

いや、なんかすっごく可愛いお手てになってるんだけ?
え、なにこれちっちゃい。
すっごくちっちゃい。

じっと自分の両手らしいものを見つめてグーパーさせる。
その手を自身の頬に持っていくともっちりしたまぁるい頬があった。
そして、そっと自身の胸元に目やると……断崖絶壁でした。


「は?わたしのむねどこいった……いや、まじありえないんだけど」


ぺたぺたと自身の胸を触るも本当に断崖絶壁つるぺた幼女のお胸。

私の自慢の胸だったんだけど?
ふざけんなよ、あのショタ。


「グェーー!!」


絶望感に打ちひしがれていると、しびれを切らしたのだろう鳥がグイっと片足を押し付けてきた。

この鳥も、そりゃでっかく見えるよね。
なんせ、今の私は幼女……え、幼女だよね?

そっと自分に本来ついていないものがついていないか確認したのは私とこの鳥だけの秘密ってことで。







気を取り直して、足を差し出したままの鳥を見る。

この鳥がこんなにデカいのも私が幼女だったからなら納得だわ。

早く取れよのろま、といったように見下ろしてくる鳥に若干のイラつきを覚えるも、差し出されている足から手紙を受け取る。
くるくると丸められている手紙を開くと予想通りショタ神様からの手紙だった。


《お姉サンお兄サンへ
 やっほー、お姉サンお兄サン!さっきぶりだね!その姿は気に入ってくれたかな?二人の姿はお姉サンの記憶をのぞかせてもらって好きそうな見た目にしたからお姉サンは気に入ってくれているんじゃないかな?
 説明し忘れていたことがあるからここに少し書いておくね。
 まず、ステータスって唱えるとキミたちのステータスが見えるようにしているよ。そこにスキルとかいろいろな説明はあるから見てみてね。
 それからキミたちの現在地だけど、キミたちは今中立都市【ジャンマルク】の近くにある森だよ。いきなり街の中にキミたちを転生させるといろいろ大変そうだったから、そこにしたんだけど魔物とかたくさんいるとこだから気を付けてね!キミたちなら大丈夫だと思うけど。
 とりあえず、ジャンマルクに行って情報収集してかこれからの身の振り方を考えればいいんじゃないかな?
 二人で、魔王を倒して英雄になるもいいし魔王の仲間になって聖女たちの邪魔するもよし、我関せずでスローライフを楽しむもよし!
キミたちの好きなように第二の人生を楽しんでね≫


いや、うん。
言いたいことはいろいろあるけど!
このビジュアルは、私の記憶のせいか!
てか、幼女って私のどの記憶だよ?

幼女……あ、昨日やったソシャゲのサブキャラがドワーフの幼女だわ!
え、てことはメインキャラ使ってたらぼんきゅぼんな美人エルフ仕様だったわけ?

じゃあ、この隣で寝ているドストライクなビジュアルの男の人はオーナーってことだよね?
ちょっと前にやった乙女ゲーのラスボス様にどことなく似ているわけだし。

そこはショタ神様ぐっじょぶだわ!
幼女にされたのはちょっと物申したいけど、オーナーに関してはまじでよくやった。


じーっと、オーナーだろう隣のイケメンの寝顔を眺める。

泣く子も黙る極悪人顔だったオーナーが美人よりなイケメンに……違和感しかないわ。


「グェー!!」

「いったぁ……ちょっ、なに?」


飽きずにオーナーの顔を眺めていると、鳥に頭をつつかれる。
頭をつついてきた鳥は、そこじゃないだろって顔で手紙をちょいちょいとつつく。


「ああ、すてーたす!」


ふすんっと鼻息をだしてそれだよそれって顔で見てくる鳥にイラっとしながらブンっという電子音とともに目の前に現れた半透明の画面に目を向ける。

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