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EP.1 さよなら世界、こんにちは異世界
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「篠宮社長ー!もう、ここのお魚どれも新鮮ぷりぷりでとっても美味しいです!!」
「真白は相変わらず幸せそうに食べるよなぁ」
「いや、本当に美味しいもの食べれて幸せですし!そしてこれから美味しいお酒も飲めるんだからテンション上がりまくりですよ~」
「お前の場合、カップラーメンでも幸せそうに食うだろ」
「いやいや、これはね篠宮社長が食べさせてくれる高級なご飯だから美味しいし幸せなんです~!」
「流石、No.1キャバ嬢は口がうまいなぁ」
「お褒めに預かり光栄でーす!まぁ、私は自分が思ったことしか口にしてないですけどね。あ、社長!そろそろ行かないと私遅刻になっちゃうんで行きましょー!」
腕に着けているお気に入りのBVLGARIの腕時計に視線を落とすと、出勤時間の30分前になっていた。
ここからタクシーを使ってお店まで20分。
今出るとジャストな時間にお店に着けると思い、最後の一口になっていたサザエのなめろうとお猪口に一口分だけ残っていた日本酒を流し込む。
「お、もうそんな時間か。そろそろ出るか」
「は~い!篠宮社長、ご馳走様でした!今日もとっても美味しかったです。ありがとうございました」
私の言葉に篠宮社長も自分の腕時計を確認すると呼び鈴を鳴らしてお会計の合図を店員さんに送る。
私はそんな篠宮社長の目を見てきちんとお礼を伝えてお化粧直しに席を立つ。
今日は、私の一番のお客さんである篠宮社長おすすめのお魚料理と日本酒がおいしいお店に連れてきてもらった。
篠宮社長は、一番付き合いが長いお客さまだ。
まだ私がこの店に入って間もないど素人な上に世間知らずな大学生だった頃にお席について、指名をしてもらえるようになった。
付き合いが長いから、割と素に近い感じはせれるし美味しいご飯を食べさせてもらえるし、変にお触りとかなく楽しく話して飲んでできるから大好きなお客さんだ。
中にはクッソ面倒くさいお客さんもいるんだけど、どうやってその人たちを自分にとっていいお客さんにするかって言うところが、なんか乙女ゲームとみたいで楽しかったりする。
あと、この仕事をしていてよかったなって思えるのはこうして普通に働いていたら来ることはないであろう高級なお店に連れてきてもらって、他人様のお金で美味しいものを食べ飲みできることだと思う。
おかげさまで食費は浮くし!
お手洗いの大きな鏡を見ながら透明感のある赤いリップグロスを唇に塗る。
「よしっと……いやー、それにしても食べ過ぎたわ。お腹苦し……ドレス入るかなぁ」
食べ過ぎて少し出たお腹をさすりながら、外で待っているだろう篠宮社長のもとへ急ぐ。
外に出てみると、いいタイミングでタクシーが来ていた。
「社長ー、お待たせしました!」
「おう、はよ乗れ遅刻するぞ」
社長に言われ、社長に続いてタクシーへと乗り込むとお店の場所を伝える。
「あ、そういえば、社長!私、明日から一週間くらいお店休みまーす!新作のゲーム出たんで」
「本当にお前は相変わらずだな」
「待ちに待った新作なんで!」
「それにしても店長がよく許したなぁ。No.1が一週間も休むと店も大変だろ」
「貯金もそれなりに貯まったんで、休ませてくれないと店辞めてやるって脅しましたー」
「お前なぁ、もうちょっとあいつのこと労わってやれよ」
「えー、店長も人使い荒いんですよ?いつも大変なお客様に私を付けるんですから」
「それだけお前のことを信頼してるってことだろ。お、着いたぞ」
腕時計を確認すると出勤時間の5分前。
ちょうどいい時間に到着した。
先にタクシーを降りてタクシーの料金を払っている社長を待つ。
降りてきた社長と腕を組み、お店の扉のへと行く。
扉を開けるとカランっと軽やかにドアベルが鳴る。
ちょうど扉の近くにいたらしい店長がドアベルの音に振り返ると、私をみて安堵の溜息を吐き、すぐにいつものにこやかな営業スマイルで篠宮社長に挨拶をする。
そんな店長とお店の雰囲気がいつもと違うことに首をかしげる。
「篠宮社長、いらっしゃいませ!お待ちしておりました」
「おう、今日もよろしく頼む……にしても、何かあったのか?」
「ええ……実は急遽オーナーがいらっしゃることになりまして」
「おお、今日はあいつも来るのか!」
「はい、なので今日は途中で真白をお借りします。申し訳ありません」
「おう、好きに連れてけ連れてけ。俺もオーナーには挨拶に行くと伝えておいてくれ」
「かしこまりました。ではお席へご案内しますね。真白は突っ立てないで早く着替えてこいよ」
私のことはお構いなしに二人で話して席へと行ってしまった社長と店長。
そういうことか、この店の空気。
オーナーが来るという事でみんないつもよりピリピリしている。
とりあえず、私も早く着替えてしまおう。
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