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デスクに置いてあるメモ用紙にアカウントのIDとパスワード、USBメモリに入っているファイルのパスワードを書いて手渡すと、黒髪の男はそれをポケットにしまった。


さて、証拠のデータは全て男達に渡したし私はもう帰ってもいいだろうか。

正直ってめっちゃ眠い。
早く家へ帰って今日会ったことはすべて忘れてふかふかのベットで寝たい。この際だから今日はもうタクシーで家まで帰る。今日くらいいいでしょう。


「あのー……、持っていたものはそれで全部なんでもう帰ってもいいですか?愛他も仕事なんで早く帰って寝たいなぁ、なんて?」


お疲れ気味の黒髪の男に遠慮がちに声をかけると、男はにっこりと微笑んだ。


「おまえさん、この状況で明日も仕事ができると思うか?」

「……やっぱり、無理ですよねぇ」

「無理だなぁ」


私の答えによくできました、というように頷いた男の仕草は、小さい子にするようなそれで少しむっとした。


わかってますよ。できないであろうことはわかってたんだよ。むしろ私だってこの状況で明日も仕事なんて死んでも嫌だよ。社長は雲隠れだし上司はきっとこれからこの怖いお兄さん達に連行されるんだろうし、そもそも明日の商談ってさっき確認してもらった書類にある会社だし。

え、よかったこの人達が今日ここにきて!
私、下手したら一緒になんかやらかしたことになってたかもしれないいいてことじゃん。



本当にナイスタイミングだけど、私は非常に眠い。早く帰って寝たい。
明日休みになるなら、猶更早く帰って寝たい。
久々の何も仕事のこと気にしないでいい休日を満喫したい。


「じゃあ、もう夜も遅いんで家に帰ってもいいですか?正直めっちゃ眠いんで家に帰って早く寝たいです」

「おいブス、この状況で俺らが返すと思うか?」


私の漏らした本音に、黒髪の男ではなくいつの間にか電話を終えていた銀髪の男がこちらを睨みながら答えた。


「そうしてくれるととっても嬉しいです。正直、私はその書類は作ったけどいまいち状況の把握してないんで!」

「無理だなぁ」


ですよね。でもさ、もしかしたらってことはあるじゃん。私、ちゃんと証拠全部渡したし、お話とかなら後日でもいいじゃん。後日、この2人とまた会うのは正直なところ控えたいけど。


銀髪の男の言葉に笑顔で返すと今度は黒髪の男が、さっきと同様に小さい子に言って聞かせるような感じでにっこり笑いながら答えた。

銀髪の男は銀髪の男で何故か私を奇妙なものを見るような視線を投げかけてきた。


私は小さくため息をつくと近くにあったデスクチェアへと腰を下ろした。
そんな私の態度に黒髪の男は何とも言えないような視線をよこしてくる。

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