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7 嘘つきなのに嫉妬する女◇サクラ◇
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私は、ますますリュウが好きになってる。
逆にリュウは最初から距離感が近いけど、そこをキープしたまんま。精神的にも物理的にも、踏み込んでこない。
まるで意識してやってるようだ。
私は、今ごろになって肝心なことに気づいた。アホだ。
リュウには美少女の幼馴染み彼女がいた。そして噂で聞いた話では、中学のときには男女の関係になってたとか。
彼女がフランスに行って破局したって話だけど、リュウは女の子との接し方がうまい。
だったら女を見る目も肥えている可能性が大きい。
そもそもちょっと見てくれがいい程度の私は、リュウのお眼鏡に叶ってるんだろうか。
嘘コクとはいえ、私の方から告白した。なのにクラスでは、私はリュウに頼まれて陰キャ脱出の指南役をしてることになっている。
この辺の図式作ったのはリュウ。
一見すると私に都合がいいけど、私から踏み込みにくい立ち位置になっている。
もしかしたらリュウは、私が彼女として合格ラインに達してないから、保留の形を取ったのだろうか。
その割には、面倒見が良くて優しい。
いやいや、単なる元カノの代わりかも知れない。
リュウは間違いなく人間がいいから、そういう自分を申し訳ないと思って、私から切りやすいようにしたのかも・・
私はそんな考えを巡らせて、悲しくなった。
そんで、嘘コクでイタズラしようとした女の身勝手さを自分の中に見た。
「私・・最低だ」
意識して陽キャ寄りのキャラを作ってる私はリュウをグイグイと引っ張るけど、男女としての進展には奥手のままだ。
◆
楽しく過ごして、6月8日の金曜日。
リュウに誘われて、パンケーキを食べに行くことになった。メグミ、アンリも誘われた。
「アタイらまで悪いなリュウ」
「むしろ、今まで2人を誘わなくて悪かったよ。クラスメイトと仲良くなれたのって3人のお陰なのに」
「いやあ、そりゃお互い様だろ」
リュウ、アルバイトで貯めたお金、そんなに一気に吐き出して大丈夫なのって、心配になってきた。
私、リュウと一緒なら公園で缶ジュースでもいいのに・・
下駄箱まで来たら、雨が振りだした。私、メグミとアンリは傘を持ってた。
リュウは教室に傘を置いたまんまだと思い出して、戻っていった。
リュウを待ってると、リュウの中学からのツレ、マキとダイチが下駄箱に向かって歩いてきた。
2人はカップルらしい。
「よっ、マキ」
「あ、メグミさん達も今、帰り」
「おう、リュウ待ってる。今から4人で出掛けるんだ」
「そうなんだ。ふふっ」
そう、マキは傷心だった頃のリュウをよく知ってるからか、私達とリュウの付き合いを歓迎してくれる。
アンリがマキに、思い出したように聞いた。
「マキ、持ってたら『冬美』の写真見せてくれよ」
「え・・・なんで」
すごく声が固い。
「サクラさ、本気でリュウと付き合いたいんだよ。こっちとしたら親友のライバルの顔くらい知りたいと思ってな」
「・・秋庭さん、それって真剣なんだよね」
話を突然振られて戸惑ってるけど照れてる場合じゃない。現状維持だと、リュウと友達以上になれないと感じている。
私は頷いた。
「そんな風に思ってくれるなら・・。ちょっと待って」
マキはなぜか、絶対に自分が見せたって言わないでくれって念を押した。
「え!」「あれ?」
「・・この写真が冬美なんだよね」
そこには、クリスマスイルミネーションの前に立つ、私に似た女の子が写っていた。
「もういい?この写真、転送したりしないよ。これきりでお願い」
マキが見せてくれた写真の女の子は、私を幼くした感じ。顔は似てるけど表情が違った。
あんな笑顔、私はしたことがない。
きっとこの笑顔は普段から、リュウに向けていて出来上がった極上品。胸がちくっとした。
「こんな子がライバルか・・」
この私の呟きにマキが応じてくれた。
「ライバル・・だね。リュウの中にまだ冬美が大きな存在として残ってる。全部なくしてくれって言えない。だけど、リュウを癒してほしい」
少し涙目になったマキに、強い語調でお願いされた。
マキ達が帰ったあと、リュウが戻ってきた。4人で楽しく過ごしたけれど、私はどこかぎこちなかったと思う。
リュウは、すごく明るい。6月1日に一緒に水族館に行ったあたりから、拍車がかかった。
そして私に、前以上によくしてくれるようになった。
相変わらずクラスの誰とでも喋る。おそらく、最低でも2人に好意を持たれていることも分かっている。
だとしたら、リュウは私の気持ちの変化にも気付いている。
なのに、踏み込ませてくれない。
だけどまだ同じクラスになって3ヶ月目。
焦る必要もないのに、急ごうとしている自分がいる。
リュウの元カノ冬美がフランスから日本に戻って来るのは、聞いてた通りなら秋。
私はリュウと冬美が元サヤに収まるのを恐れている。
初めて異性を好きになるってことが分かった。
手が届く距離にいる男の子の心が離れていくことを想像するだけで、冷静じゃいられない。
けど、リュウはタイミングをくれない。のらりくらりと私に肝心なことを言わせないまま、時間が流れた。
そして6月12日、水曜日の昼休み。
ショックを受けた。
逆にリュウは最初から距離感が近いけど、そこをキープしたまんま。精神的にも物理的にも、踏み込んでこない。
まるで意識してやってるようだ。
私は、今ごろになって肝心なことに気づいた。アホだ。
リュウには美少女の幼馴染み彼女がいた。そして噂で聞いた話では、中学のときには男女の関係になってたとか。
彼女がフランスに行って破局したって話だけど、リュウは女の子との接し方がうまい。
だったら女を見る目も肥えている可能性が大きい。
そもそもちょっと見てくれがいい程度の私は、リュウのお眼鏡に叶ってるんだろうか。
嘘コクとはいえ、私の方から告白した。なのにクラスでは、私はリュウに頼まれて陰キャ脱出の指南役をしてることになっている。
この辺の図式作ったのはリュウ。
一見すると私に都合がいいけど、私から踏み込みにくい立ち位置になっている。
もしかしたらリュウは、私が彼女として合格ラインに達してないから、保留の形を取ったのだろうか。
その割には、面倒見が良くて優しい。
いやいや、単なる元カノの代わりかも知れない。
リュウは間違いなく人間がいいから、そういう自分を申し訳ないと思って、私から切りやすいようにしたのかも・・
私はそんな考えを巡らせて、悲しくなった。
そんで、嘘コクでイタズラしようとした女の身勝手さを自分の中に見た。
「私・・最低だ」
意識して陽キャ寄りのキャラを作ってる私はリュウをグイグイと引っ張るけど、男女としての進展には奥手のままだ。
◆
楽しく過ごして、6月8日の金曜日。
リュウに誘われて、パンケーキを食べに行くことになった。メグミ、アンリも誘われた。
「アタイらまで悪いなリュウ」
「むしろ、今まで2人を誘わなくて悪かったよ。クラスメイトと仲良くなれたのって3人のお陰なのに」
「いやあ、そりゃお互い様だろ」
リュウ、アルバイトで貯めたお金、そんなに一気に吐き出して大丈夫なのって、心配になってきた。
私、リュウと一緒なら公園で缶ジュースでもいいのに・・
下駄箱まで来たら、雨が振りだした。私、メグミとアンリは傘を持ってた。
リュウは教室に傘を置いたまんまだと思い出して、戻っていった。
リュウを待ってると、リュウの中学からのツレ、マキとダイチが下駄箱に向かって歩いてきた。
2人はカップルらしい。
「よっ、マキ」
「あ、メグミさん達も今、帰り」
「おう、リュウ待ってる。今から4人で出掛けるんだ」
「そうなんだ。ふふっ」
そう、マキは傷心だった頃のリュウをよく知ってるからか、私達とリュウの付き合いを歓迎してくれる。
アンリがマキに、思い出したように聞いた。
「マキ、持ってたら『冬美』の写真見せてくれよ」
「え・・・なんで」
すごく声が固い。
「サクラさ、本気でリュウと付き合いたいんだよ。こっちとしたら親友のライバルの顔くらい知りたいと思ってな」
「・・秋庭さん、それって真剣なんだよね」
話を突然振られて戸惑ってるけど照れてる場合じゃない。現状維持だと、リュウと友達以上になれないと感じている。
私は頷いた。
「そんな風に思ってくれるなら・・。ちょっと待って」
マキはなぜか、絶対に自分が見せたって言わないでくれって念を押した。
「え!」「あれ?」
「・・この写真が冬美なんだよね」
そこには、クリスマスイルミネーションの前に立つ、私に似た女の子が写っていた。
「もういい?この写真、転送したりしないよ。これきりでお願い」
マキが見せてくれた写真の女の子は、私を幼くした感じ。顔は似てるけど表情が違った。
あんな笑顔、私はしたことがない。
きっとこの笑顔は普段から、リュウに向けていて出来上がった極上品。胸がちくっとした。
「こんな子がライバルか・・」
この私の呟きにマキが応じてくれた。
「ライバル・・だね。リュウの中にまだ冬美が大きな存在として残ってる。全部なくしてくれって言えない。だけど、リュウを癒してほしい」
少し涙目になったマキに、強い語調でお願いされた。
マキ達が帰ったあと、リュウが戻ってきた。4人で楽しく過ごしたけれど、私はどこかぎこちなかったと思う。
リュウは、すごく明るい。6月1日に一緒に水族館に行ったあたりから、拍車がかかった。
そして私に、前以上によくしてくれるようになった。
相変わらずクラスの誰とでも喋る。おそらく、最低でも2人に好意を持たれていることも分かっている。
だとしたら、リュウは私の気持ちの変化にも気付いている。
なのに、踏み込ませてくれない。
だけどまだ同じクラスになって3ヶ月目。
焦る必要もないのに、急ごうとしている自分がいる。
リュウの元カノ冬美がフランスから日本に戻って来るのは、聞いてた通りなら秋。
私はリュウと冬美が元サヤに収まるのを恐れている。
初めて異性を好きになるってことが分かった。
手が届く距離にいる男の子の心が離れていくことを想像するだけで、冷静じゃいられない。
けど、リュウはタイミングをくれない。のらりくらりと私に肝心なことを言わせないまま、時間が流れた。
そして6月12日、水曜日の昼休み。
ショックを受けた。
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