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285 因縁の対決、ルナVSイズミヤエコ

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パラ高の敗戦は決まったが、大将戦のルナVSイズミヤエコが残っている。

一番新しい公式戦、新人戦決勝ではルナが勝った。

だけど、中学生のときから何度も対戦して、ルナが勝ったのは、その1回。

勝因は絶妙なトーナメントが作用した。ルナは誰よりも楽な勝ち上がり。ヤエコは激戦続きで疲労困憊で戦った。

なので体調万全な両者では、ルナが不利。

「ルナ、頑張ってこい!」
「ありがと、頑張る!」

頬を乱暴にスリスリされ、勇太の背中パンパンで送り出されたルナ。

初見のギャラリーも多い今回、1回戦、2回戦と同じく、きゃ~の声が上がる。もう、歓声までがお約束だ。

「始め!」

ルナは速攻をかけようと思って仕掛けた。しかし、読まれていた。

いきなり勢いを利用されて、背負い投げを食らった。

「技あり!」

辛うじて不利になる寝技から逃れたが、開始10秒で窮地に立たされた。

「やっぱ、ヤエコは強い」

けれどルナは前進あるのみ。

勇太とカオルの試合を見た。ふたりのパフォーマンスに、初めてカオルに嫉妬心が沸いた。

自分ではあの勇太は引き出せない。

幸いに、それから3試合分の時間があった。だから考え直せた。

勇太が好きになってくれた自分を出せばいいんだと。

柔道で強くなれたがカオルの足元にも及ばない。

学力では麗子と好勝負で、真子と嘉奈がはるか上。

さらに嘉奈は、『マカド』の次期社長候補で、それにふさわしい努力もしている。

歌では純子が圧倒的。なんせプロで学業を犠牲にして励んでいる。

美貌では、梓、麗子、純子、嘉奈と比べようもない。

ファミリーの中で、一番になれるものがない。


けれど勇太が愛してくれる。

だったら普段の自分に徹しよう。

器用でないから、本当に使える柔道の技は3つしかない。

まず背負い。

「うりゃあ」
「ふんっ、甘いよ」

簡単に潰された。寝技からの逃げ方も、パワーがある勇太と訓練してるから逃れられた。

ヤエコの立ち技は潰した。普段から勇太の内股、払い腰の練習に付き合っていて、受けは強い。

得意技その2、小内刈れ。

これは論外というか、警戒されている。普段から茶薔薇で合同練習しているから、タイミングも知られている。

受けが強いのはヤエコも同じ。カオル、ハラダ、ツバキ部長の全国区レベルの技を普段から受けている。

両者、次のポイントがないまま4分半が過ぎた。

ヤエコはある程度は予想していた。ルナは勇太と恋仲になってからフィジカルが強くなっている。

「一緒に練習、一緒にランニング、一緒に●ックスの効果かよ!」

ひとつ余計だけど、ヤエコはパワーは付いているのは認めている。

しかし本当に踏み込んだ場合、技の切れはヤエコが格段に上。

それでもルナは真っ直ぐ組みに行く。

もう勝敗とか考えなくなった。ただ、全力を勇太にみて欲しい。

組み手はヤエコが有利な位置を取った。ルナが少し揺さぶられ、ヤエコが仕掛けた。

内股だ。

だからルナは3つ目の技を出した。

勇太相手に散々付き合った型になった。

横移動からのすくい投げ。ヤエコの右足に合わせて左足を踏ん張り、ヤエコを回した。

足元が不完全でも強引に行った。

どーんとふたり揃って倒れた。

「技あり!」

ルナがポイントで並んだ。

「やった」
「くそうう!」

そこから寝技の攻防に決め手がないまま試合終了。

引き分けた。

試合終了の礼をしてしまえば、友好関係に戻るパラ高と茶薔薇の柔道部。

「ルナ、強くなったよな」
「ヤエコがポイントを守る態勢に入ってたら、手の打ちようがなかったね」

「ま、それが分かってるか」
カオルと勇太も試合の感想を言いながら、ルナとヤエコの会話に入ってきた。

今日はこれが最終戦。伊集院君の招待で打ち上げがある。

けれど茶薔薇柔道部は、明日も試合がある。

茶薔薇のメンバーは、軽くだけど伊集院君プロデュースの打ち上げに参加する。

やはり、そこは男女比1対12の世界で譲れない部分のようだ。
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