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263 柔道と自己規制
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1月9日になって、勇太は柔道のスイッチが入った。
今日は体育館で畳を敷いてパラ高柔道部の練習。立ち技の練習ばかりしている。
寝技に関しては、寝技に持ちまれるのを避ける練習ばかりしている。
寝技で勝つことを捨てた理由はふたつ。ひとつは習得に時間がかかる。
もうひとつはコレ。
「タマミ、大丈夫か。しっかりしろ」
「ら、らいじょうぶれ~す」
何日が勇太との練習が空くと、5月から一緒に練習している長谷川三姉妹でさえも腰砕けになる。
今のは勇太の橫四方固めを食らった瞬間に、軽くナニかに昇天した。
タマミの頭を抱えて頬をさする勇太だが、見学者がざわざわしている。
「うわ、顔近い」
「逆効果だよアレ」
「耐性ある人でもあれか~」
一段とパワーアップしたフェロモンに耐えられるのがルナしかいなくなった。
そのルナも体力プチチートでフィジカル上がりっぱなしの勇太には、3セットつき合うのが限界。
そういう事情もあり、合気道の下地を生かせる立ち技の練習量を増やした。
ルナと組んでいる。
「うりゃっ」ルナが投げ技に入った。
「よっと」勇太は体の前面で受けた。
仕切り直しだけど、ルナが手を止めた。
「・・勇太、今の私の技を完全に止めたよね」
「まあね」
「そんだけ余裕あったら私の股の間に左手を入れて、裏投げにいけない?」
返し技で、プロレスのバックドロップのような投げ方だ。
この世界は、瞬間的なら下半身を持ってもいい。なので前世の令和なら反則とされる技も使える。
このルナの『股間』のセリフに余計な反応をした女子もいたが、他の子に注意されている。
最近は勇太とルナの真剣モードに水を差すことは、悪とされるのだ。
「う~ん、多分使える」
「なら使えば」
「使う訳にはいかないんだよな~。ルナ、ちっと型を見せるよ」
ルナが再び勇太に本気の右の背負い投げをかけた。
すると勇太がルナの背中を受けて、右手でルナの腰、左手で左太ももをつかんで持ち上げてしまった。
「きゃああ」
ふたりの身長差は15センチ。体重差も15キロあって、勇太は筋力自体も上がっている。
ルナは背筋がゾワッとした。思った以上に技が鋭くて、体が丸まったまま、体を高く持ち上げられた。
頭から畳に叩きつけられると思った。
部活のみんな、ギャラリーから悲鳴が上がった。
「よっと」
勇太がふっと、力を抜いた。ばたんっ、と派手な音がした。
ルナは冷や汗をかいたが、頭に衝撃は来なかった。
勇太があえて体をひねらず倒れ、持ち上げたルナの背中を自分の体の上に落とした。そして下敷きになっている。
あばら骨打撲、女神印の回復力で全治15分。常人なら安静3日間、全治2週間。
「けほっ、な、これって危ないんだ」
「・・思った以上に対応できなかった。それよりは勇太、胸は大丈夫?」
「ルナは俺がバカみたく頑丈なの知ってるだろ~」
笑う勇太に、ほっとするルナだ。
「内股をすかして、橫へのすくい投げはアリ。けど裏投げはルナに怪我させるから使えないだろ」
「・・勇太」
ギャラリーからも、安心した声が上がった。
ルナは勇太の気持ちが嬉しい反面、もったいないと思った。
勇太は確実に強くなっている。それには『格闘家として』の注釈がつく。
梓、葉子に聞いても勇太が合気道を習ったはずがないらしい。
だけど間違いなく、投げる技術、立ったままで相手の腕を極める技術が体に染み付いている。
スピードもあるし、ルール無用ならカオル相手でも健闘する気がしてきた。
勇太は女の子に優しい。柔道では、きっちり相手にも組ませてから正攻法の柔道技しか使わない。
「勇太、一度だけ新人戦で茶薔薇のツバキ部長から技有りを取ったときに使ったよね」
「あのときツバキ部長が反応して怪我しないでくれたけど、危険な技だと分かった。もう部活では使いたくないんだ」
あははと笑う勇太だ。
再開した練習では、キヨミに内股をすかされたり、マルミに押さえ込まれたり。
部員もみんな、イメージしていた男子との違いに驚いている。
男女比1対12で男子が甘やかされた世界。
少し強いからと過剰アピールする男子は多少なりとも見たことがある。
だけど勇太のように、本当の強さを封印する男子は初めて見る女子ばかりだ。
今日は体育館で畳を敷いてパラ高柔道部の練習。立ち技の練習ばかりしている。
寝技に関しては、寝技に持ちまれるのを避ける練習ばかりしている。
寝技で勝つことを捨てた理由はふたつ。ひとつは習得に時間がかかる。
もうひとつはコレ。
「タマミ、大丈夫か。しっかりしろ」
「ら、らいじょうぶれ~す」
何日が勇太との練習が空くと、5月から一緒に練習している長谷川三姉妹でさえも腰砕けになる。
今のは勇太の橫四方固めを食らった瞬間に、軽くナニかに昇天した。
タマミの頭を抱えて頬をさする勇太だが、見学者がざわざわしている。
「うわ、顔近い」
「逆効果だよアレ」
「耐性ある人でもあれか~」
一段とパワーアップしたフェロモンに耐えられるのがルナしかいなくなった。
そのルナも体力プチチートでフィジカル上がりっぱなしの勇太には、3セットつき合うのが限界。
そういう事情もあり、合気道の下地を生かせる立ち技の練習量を増やした。
ルナと組んでいる。
「うりゃっ」ルナが投げ技に入った。
「よっと」勇太は体の前面で受けた。
仕切り直しだけど、ルナが手を止めた。
「・・勇太、今の私の技を完全に止めたよね」
「まあね」
「そんだけ余裕あったら私の股の間に左手を入れて、裏投げにいけない?」
返し技で、プロレスのバックドロップのような投げ方だ。
この世界は、瞬間的なら下半身を持ってもいい。なので前世の令和なら反則とされる技も使える。
このルナの『股間』のセリフに余計な反応をした女子もいたが、他の子に注意されている。
最近は勇太とルナの真剣モードに水を差すことは、悪とされるのだ。
「う~ん、多分使える」
「なら使えば」
「使う訳にはいかないんだよな~。ルナ、ちっと型を見せるよ」
ルナが再び勇太に本気の右の背負い投げをかけた。
すると勇太がルナの背中を受けて、右手でルナの腰、左手で左太ももをつかんで持ち上げてしまった。
「きゃああ」
ふたりの身長差は15センチ。体重差も15キロあって、勇太は筋力自体も上がっている。
ルナは背筋がゾワッとした。思った以上に技が鋭くて、体が丸まったまま、体を高く持ち上げられた。
頭から畳に叩きつけられると思った。
部活のみんな、ギャラリーから悲鳴が上がった。
「よっと」
勇太がふっと、力を抜いた。ばたんっ、と派手な音がした。
ルナは冷や汗をかいたが、頭に衝撃は来なかった。
勇太があえて体をひねらず倒れ、持ち上げたルナの背中を自分の体の上に落とした。そして下敷きになっている。
あばら骨打撲、女神印の回復力で全治15分。常人なら安静3日間、全治2週間。
「けほっ、な、これって危ないんだ」
「・・思った以上に対応できなかった。それよりは勇太、胸は大丈夫?」
「ルナは俺がバカみたく頑丈なの知ってるだろ~」
笑う勇太に、ほっとするルナだ。
「内股をすかして、橫へのすくい投げはアリ。けど裏投げはルナに怪我させるから使えないだろ」
「・・勇太」
ギャラリーからも、安心した声が上がった。
ルナは勇太の気持ちが嬉しい反面、もったいないと思った。
勇太は確実に強くなっている。それには『格闘家として』の注釈がつく。
梓、葉子に聞いても勇太が合気道を習ったはずがないらしい。
だけど間違いなく、投げる技術、立ったままで相手の腕を極める技術が体に染み付いている。
スピードもあるし、ルール無用ならカオル相手でも健闘する気がしてきた。
勇太は女の子に優しい。柔道では、きっちり相手にも組ませてから正攻法の柔道技しか使わない。
「勇太、一度だけ新人戦で茶薔薇のツバキ部長から技有りを取ったときに使ったよね」
「あのときツバキ部長が反応して怪我しないでくれたけど、危険な技だと分かった。もう部活では使いたくないんだ」
あははと笑う勇太だ。
再開した練習では、キヨミに内股をすかされたり、マルミに押さえ込まれたり。
部員もみんな、イメージしていた男子との違いに驚いている。
男女比1対12で男子が甘やかされた世界。
少し強いからと過剰アピールする男子は多少なりとも見たことがある。
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