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勇太は、嘉菜のために用意していた前世パクり曲を歌い出した。
ロープウェーの発着場だけど、嘉菜に求められたタイミングだから場所なんて気にしない。
ざわっとするのを構わず、歌い出した。
♩♪♪♪♩♩♪♪
「♩♪♩戦場で傷付いた仲間を♪♩♪」
『哀しき戦士』という古い歌。
戦場から撤退する兵士達がモチーフ。
指揮官が、多くの部下を助けるために傷付いた仲間を見捨てる話。
結果として助かった部下の視点で、見捨てた部下の家族に責められたりする指揮官の哀しみを綴っていく。
明るいテンポの歌なのに、泣きたい気持ちが表現されていた。
これから『マカド』という企業を率いていくために辛い決断を迫られるかも知れない嘉菜。勇太が彼女を思うとき、この歌が浮かんだ。
「♩♪♩泣いているように見えた背中を♪♩♪♪」
新曲に、若い子を中心に拍手してくれた。
「いいな~、新曲プレゼントか」
「ファミリーの人って、テーマソングあるのがカッコいいよね」
「羨まし~」
「私にもワンチャンないかな」
そして思い切り配信されている。
「どうかな嘉菜さん」
「ありがとうございます、勇太さん」
嘉菜は勇太の目を見ている。
「勇太さん、私は仕事で冷徹な決断を強いられるかも知れません」
「うん・・」
「そんなときも、勇太さんとファミリーのみんなはきっと、私を慰めてくれて、励ましてくれて・・そして」
「そして、みんなで嘉菜さんを愛してると思うよ。誰が敵になってもファミリーは嘉菜さんの味方になるからね」
嘉菜は目が潤んでいる。
間門の家の人間も味方。だけど立場が重すぎて、家では迂闊なことが言えなくなった。
自分は感情表現が下手だと思う。けれど、勇太が作ってくれたテーマソングは、今の気持ちを肯定してくれる。
今日は、嬉しいサプライズだらけだ。
そして勇太ファンの頃から憧れたことを次から次にやってもらっている。
「嘉菜さん」
「・・はい」
「この歌をプレゼントするけど、悲しい内容も入ってる。だから、嘉菜さんの立場が変わったりしたら、また新しい歌を作るよ」
なんて嬉しい追い討ちだろう。嘉菜は思う。
「じゃあ、わがままを言って、真子ちゃんとセットのテーマソングが欲しいです」
「ああ、いいアイデアだよね。嘉菜&真子の次は、梓&カオルのセット曲だね」
「カオルさん絡みだと、腹ペコソングになりますよ」
「あちゃ、カオルの顔を思い浮かべたら、歌詞が焼き肉、トンカツ、唐揚げしか思い浮かばない」
「あははは」
嘉菜は気付いていない。
このロープウェー乗り場で、本当に笑えている。
今では真子の前で、たまに見せられるようになった笑顔。
クールな普段とのギャップもあり、嘉菜を知っている人ほど、このリアルタイム配信を見てドキッとしている。
嘉菜は年末に純情乙女の姿を見せてから、女の子にモテている。
女子の同性婚が多い世界。真子だけしか彼女がいないなら、嘉菜と遊んでみたいという子が急増中。
嘉菜も彼女の真子も、ファミリーの女子とも結婚するし、彼女を増やす気はない。
けれど、どちらも秘かにモテている。
嘉菜が、真子&純子で仲良くなって少し嫉妬したように、真子も嘉菜がモテて焦りだしている。
街中に戻って暖かいものを飲みに行くまで、嘉菜はずっと勇太にプレゼントされた歌を口ずさんでいた。
「ふふふ。私だけの歌ですね」
街中を一緒に歩いていると、リーフカフェの常連さんとも会った。
その度に勇太は「嘉菜さんを独り占めしてデートで~す」と言ってくれた。
その言葉を聞くたびに胸が暖かくなった。
嘉菜は勇太にリクエストして、雑貨屋でゴブ神キーホルダーをお揃いで買ってもらった。
その直後、嘉菜は仕事の取引先の人間とばったり会った。
仕事メンタルに切り替えてクールに対応しようとしたけれど・・
にまにました顔が直らず、相手に笑われてしまった。
ロープウェーの発着場だけど、嘉菜に求められたタイミングだから場所なんて気にしない。
ざわっとするのを構わず、歌い出した。
♩♪♪♪♩♩♪♪
「♩♪♩戦場で傷付いた仲間を♪♩♪」
『哀しき戦士』という古い歌。
戦場から撤退する兵士達がモチーフ。
指揮官が、多くの部下を助けるために傷付いた仲間を見捨てる話。
結果として助かった部下の視点で、見捨てた部下の家族に責められたりする指揮官の哀しみを綴っていく。
明るいテンポの歌なのに、泣きたい気持ちが表現されていた。
これから『マカド』という企業を率いていくために辛い決断を迫られるかも知れない嘉菜。勇太が彼女を思うとき、この歌が浮かんだ。
「♩♪♩泣いているように見えた背中を♪♩♪♪」
新曲に、若い子を中心に拍手してくれた。
「いいな~、新曲プレゼントか」
「ファミリーの人って、テーマソングあるのがカッコいいよね」
「羨まし~」
「私にもワンチャンないかな」
そして思い切り配信されている。
「どうかな嘉菜さん」
「ありがとうございます、勇太さん」
嘉菜は勇太の目を見ている。
「勇太さん、私は仕事で冷徹な決断を強いられるかも知れません」
「うん・・」
「そんなときも、勇太さんとファミリーのみんなはきっと、私を慰めてくれて、励ましてくれて・・そして」
「そして、みんなで嘉菜さんを愛してると思うよ。誰が敵になってもファミリーは嘉菜さんの味方になるからね」
嘉菜は目が潤んでいる。
間門の家の人間も味方。だけど立場が重すぎて、家では迂闊なことが言えなくなった。
自分は感情表現が下手だと思う。けれど、勇太が作ってくれたテーマソングは、今の気持ちを肯定してくれる。
今日は、嬉しいサプライズだらけだ。
そして勇太ファンの頃から憧れたことを次から次にやってもらっている。
「嘉菜さん」
「・・はい」
「この歌をプレゼントするけど、悲しい内容も入ってる。だから、嘉菜さんの立場が変わったりしたら、また新しい歌を作るよ」
なんて嬉しい追い討ちだろう。嘉菜は思う。
「じゃあ、わがままを言って、真子ちゃんとセットのテーマソングが欲しいです」
「ああ、いいアイデアだよね。嘉菜&真子の次は、梓&カオルのセット曲だね」
「カオルさん絡みだと、腹ペコソングになりますよ」
「あちゃ、カオルの顔を思い浮かべたら、歌詞が焼き肉、トンカツ、唐揚げしか思い浮かばない」
「あははは」
嘉菜は気付いていない。
このロープウェー乗り場で、本当に笑えている。
今では真子の前で、たまに見せられるようになった笑顔。
クールな普段とのギャップもあり、嘉菜を知っている人ほど、このリアルタイム配信を見てドキッとしている。
嘉菜は年末に純情乙女の姿を見せてから、女の子にモテている。
女子の同性婚が多い世界。真子だけしか彼女がいないなら、嘉菜と遊んでみたいという子が急増中。
嘉菜も彼女の真子も、ファミリーの女子とも結婚するし、彼女を増やす気はない。
けれど、どちらも秘かにモテている。
嘉菜が、真子&純子で仲良くなって少し嫉妬したように、真子も嘉菜がモテて焦りだしている。
街中に戻って暖かいものを飲みに行くまで、嘉菜はずっと勇太にプレゼントされた歌を口ずさんでいた。
「ふふふ。私だけの歌ですね」
街中を一緒に歩いていると、リーフカフェの常連さんとも会った。
その度に勇太は「嘉菜さんを独り占めしてデートで~す」と言ってくれた。
その言葉を聞くたびに胸が暖かくなった。
嘉菜は勇太にリクエストして、雑貨屋でゴブ神キーホルダーをお揃いで買ってもらった。
その直後、嘉菜は仕事の取引先の人間とばったり会った。
仕事メンタルに切り替えてクールに対応しようとしたけれど・・
にまにました顔が直らず、相手に笑われてしまった。
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