上 下
250 / 254

250 ゲンジのライバルはハイスペック

しおりを挟む
リーフカフェとメイちゃんのクラスメイトで、カフェでの新年会に移行した。

カフェには勇太と純子の置きギターがある。歌でも歌って盛り上げようかと思った。

勇太が言い出したのは、第一は梓のため。そして異母兄妹メイちゃんのため。

今日のメイちゃんの表情を見て安心したからだ。

彼女が自分に失恋したのは分かった。そこから笑顔を取り戻してくれるように接してきた。

今日、ゲンジと来たメイちゃんの表情は、異母兄妹とメイちゃんに教える前、すなわち恋する乙女の表情を取り戻していた。

「サンキューな、ゲンジ」
「なんのことですか?」

勇太はゲンジに歌わせればメイちゃんが喜ぶと思った。ところが待ったがかかった。

「坂元さん、まず俺に歌わせて下さい」

ヤマモトタロウが名乗り出た。

「へえ~積極的だね。いいよ」

カフェに来ていきなりヤマモトタロウにふたりで話がしたいと言われた。

初対面のヤマモトを警戒した勇太だったが、謝られた。何度かメイちゃんを傷付けたことに関して、ごまかさず。

そして勇太がメイちゃんを彼女や妻にする気があるか聞かれた。

『ない』ではなく『できない』と答えると、納得した顔になった。

なんとなく、名乗れない血縁関係が勇太とメイちゃんの間にあると察知しているようだ。

ネット上でも話題にならないが、かなりの勇太ファンがそう思っている。

戸籍に入っていない人工受精の血縁を認めると、女性同士の婚姻などに亀裂が入る。

だから取り締まりは厳しい。

ネットで憶測を書き込むだけで、最低でも警察に連れていかれて取り調べを受ける。

勇太はタロウに頭を下げられた。少し話したら勇太の中のタロウの印象が好転した。

素直にメイちゃんに好意を持っているとも言われた。そこには驚いた。

メイちゃんってモテるんだと感心した。

ツンデレを理解しない勇太は、大切なメイちゃんに今後は余計なことを言うなと言った。

タロウは素直にうなずいた。

そして、良かったらタロウと呼んでくれと頼まれた。

「タロウ君、でいいんだな。じゃあ俺も勇太でいいよ」

「勇太さん、俺は呼び捨てでお願いします」

「いきなり名乗り出たってことは、なんかリクエストあるの?」
「そこにいらっしゃる奥さんの梓さんのテーマソングを歌わせて下さい」

「あ~、俺が梓のために歌おうかと思ったのに~」

勇太はにやけてしまった。

「俺の彼女達も梓さんに憧れてるんです。なんで歌ってあげたいんです。・・じゃあ、一緒にお願いします!」

梓がびっくりしたあと、にんまり笑顔になった。

勇太は根が単純だから、梓をほめられて即OKした。

ゲンジは焦る。タロウは最近、人のハートをつかむのがうまくなっている。

♩♪♪♪♩♩♪♪

「♩♪♪♪あのこ~ろ♩♩♪♪」

そして声もしっかり出ている。

自分の彼女3人を招き寄せ、一緒に楽しんでいる。

横を見ると、メイちゃんが惜しみない拍手を送っている。

彼女以外のクラスメイトがうっとりしている。

勇太で男子の歌に耐性があるカフェのメンバーも喜んでいる。

早くもネットに上がった。反応は上々。

タロウより先にカフェに来て歌ったアドバンテージがなくなった気がした。

ゲンジは、メイちゃんに気持ちは伝えたが、付き合ってとは言っていない。

高校受験が終るまでは、絶対に何も言う気はない。


ただ焦る。


次は勇太が単独で歌った。梓が前から好きだった、こっちの世界のポップソング。

風花が伴奏してくれた。

「うわ、勇太さんの生歌ってすごい」
「響く~」
「タロウ君の歌も聞けたし、新年から得したよね」


次はゲンジが期待されている。

年末は尻込みした。

けれどゲンジは 時間はあまり経っていないけど、精神的に成長している。

歌がうまいふたりのあとで、一瞬は気後れした。

だけど一瞬だ。

「メイちゃん、俺も歌う。なんの曲がいい?」

「私は・・ゲンジ君にルナさんのテーマを歌って欲しいな」

「うん。俺は風花さんにギターをお願いしてみる」
「ふふっ、期待してるよ」

ゲンジは風花に伴奏をお願いした。


聞いて欲しい人がいる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...