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246 年が明けて

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元旦の夜2時になって梓と勇太は家に帰った。

梓が甘えてきて一緒に布団に入ったとたん、梓が寝落ちした。疲れていたようだ。

勇太も22時間のフル活動のあとだし疲れて眠った。

だけど体力だけは女神印。2時間で起きた。

「むにゅむにゅ、ユウ兄ちゃん・・」

勇太に頬むにむにをされた梓の寝言を聞きいたあと布団から出た。

そして台所に行って湯を沸かしながら、ようやく山のように届いたLIMEのチェック。

ファミリーの無事帰宅、各方面からのおめでとうメール。とりあえず返信した。朝4時だけど、3割くらい返事があった。

異母妹のメイちゃんからのメールはしっかり見た。

メイ『明けましておめでとうございます。4日の初詣だけど、私とゲンジ君以外にもクラスメイトの希望者が増えたの。いいかなお兄ちゃん』

希望者の名前を書いてあったけど、その中にヤマモトタロウという名前もあった。

ヤマモトとゲンジ&メイちゃんはアンチな関係のイメージ。けれど仲良しになれるなら越したことないと思い、OKした。


勇太は雑煮を作る。

みんなが起きたら4人でお正月。

義母葉子と彼女の風花が同棲している。そのパラレルな父母と梓を入れて、勇太的な前世の家族団欒だ。

おせちはデパ地下で頼んだやつ。雑煮は勇太の独断でイリコ出汁にする。

前世で最後に病院から一時帰宅したのは19歳の夏。その次から逝くまでの2回の正月は、帰宅許可が下りなかった。

18歳。最後の自宅でのお正月。雑煮の味はしっかり覚えている。

だから思い出の味を研究した。残念ながらパラレル葉子の出汁の取り方と違った。けれど作ってみたくなった。

午前8時。みんなが起きてきた。

葉子は梓と同じく11時からカフェで仕事。

風花もカフェに行ってBGM代わりにギターを弾く。


「明けましておめでとうございます」

まず勇太は雑煮を葉子に食べてもらった。

「おいしー勇太。すごくいい」

風花、梓もににこにこだった。

「梓、お年玉」「私達もあるよ」

「うれしいー、こんな素敵なお正月初めてかも」

「ありがとー勇太。久々に正月が楽しいよ」

おいしー、うれしー、ありがとーの三種の神器が心に刻み込まれる勇太だ。

◆◆
午後1時。

またもパラレル神社、柔道部で集まった。ルナとは早くも今年2度目の邂逅だ。

「時子先輩、田町先輩、クリスマスのとき会えなかったですね」
「あ、あんときはたまちゃんと東京行ってたから・・」

「最初に世話になった先輩方に、誕生日プレゼントです」
「え、私達?」

「はい、元旦生まれの田町先輩と、一緒にして悪いけど4月生まれで祝えなかった時子先輩にも」

「いや、むしろ嬉しいぞ。たまちゃんと一緒に祝ってもらえたら十分だ」

時子先輩と田町先輩はカップルだ。

リクエストされてハッピーバースデーを歌った。

オリジナルの『マコ』は田町先輩の名前の『リョウコ』に変えた。

勇太は田町先輩の名前が良子だと思い出した。

神社の境内から離れた場所で、いきなり勇太から部の引退した先輩ふたりにプレゼント。

喜ばれたけど、すごく目立ってしまっている。

マルミ、タマミ、キヨミの3人もはしゃいでいた。


「じゃあ、今年もよろしくねー」

お茶をして、かなり騒いだ。そして解散。

日が暮れてからは、久しぶりにルナと勇太のふたりだ。

梓はカフェのバイトが終わってから、カオルの家に泊まりに行く。

麗子と純子は、普通に麗子の家で母親ふたりと一緒に過ごしている。

吉田真子はマカドの社員である母親とともに、間門嘉菜の家に行く。

伊集院君は政略婚約者、パラ高婚約者と8人で初詣だそうだ。


勇太はルナと一緒に、市街地を離れて小高い山を切り崩した住宅街の間を歩いている。

夕日が綺麗とか、夜景が綺麗とか何もない。

ただ、勇太が行きたいと言った。ルナも行きたかったから手を繋いだ。

勇太は懐かしいけど、考えてみれば不思議な場所。

今、大きな街道を外れて、山の方に向かう近道の階段を上がっている。

「ルナ、きつくない?」
「大丈夫、一旦勇太と分かれたあとに、たっぷり寝たから」

勇太は笑う。ルナはゆうべ、カオルと話したばかりの不思議な場所に行くことになった。

勇太の前世と同じルートだけど、パラレル市は勇太が前世の住んでいた街とは違う。

前世の勇太が住んでいたのは海辺の街。原山良作さんと出会った隣県の街なのだ。

なのにその場所が、海に隣接していないパラレル市にある。


これに関しては、女神様の贈り物だと思っている。

ルナと出会わせてくれたあと、共感できる場所を用意してくれたと思っている。

女神様の真意は分からないけど感謝している。

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