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240 続き◇ルナと古川リョウジ◇
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◇ルナ◇
勇太がいなくなって8ヶ月を過ぎた。
あの、終わりの日までの3年間は大学受験や学校、アルバイトもあって勇太に密に会ってた訳じゃない。
終わりが見えた自分に私を巻き込みたくない。将来を見据えて、しっかり過ごせと言われた。
従った。
気持ちが離れたことはない。奇跡が起きたとき全力で勇太を支えるために準備していた。
けれど終わりは来た。
自分だけでは悲しみは癒せなかった。
苦しい日々の生活を送るなかで、お互いを癒せるカンフル剤のような存在を得た。
古川リョウジさんと、舞ちゃんの親子だ。
3人でいると苦しさが和らぐ。ふたりも同じことを言ってくれた。
まるで勇太とリョウジさんの妻茜さんが、会わせてくれたような関係。
だけど独占欲が強いふたりは、私達の間に舞ちゃんを挟んだ。
リョウジさんと私の間に恋が芽生えにくいように細工した。
思惑通りに、私達は清らかな関係だ。
私達には、1番手が大きな存在として残っている。
私には勇太。リョウジさんには茜さん。
舞ちゃんに呼ばれて家に行く。遅くなることもあるけれど、舞ちゃんが眠った直後に、必ず家まで送ってくれる。
晩秋のある日、送ってもらう途中。
「ルナちゃん、俺達の関係って、なんて説明すればいいのかな。3人で歩いてるの会社のやつに見られて、聞かれて困った」
「友達・・確かに説明しにくいさですね。本当のことを言って、中途半端な同情買うのも嫌だし」
「3人でいると欠片を埋める、お互いを癒せる関係」
「私達ふたりだと?」
「傷を舐め合う・・いや、変な想像をするやつがいるな。申し訳ない」
「ははは、私がリョウジさんと血が繋がった姪って言うのが無難ですかね」
「そうか、次からそう言おう」
家まで車で15分だけど、たまに寄り道をする。
私と勇太が中学生のときに歩いた海岸。そしてその10年前には、リョウジさんと茜さんも歩いていた海岸。
もう真っ暗だ。
この時だけ、私達は手を繋ぐ。お互いの顔はよく見えない。それでいい。
お互いが、手の温もりだけを求める代用品だから。
寒い海辺を歩いているのに、私達は肩を寄せない。それ以上離れないように、それ以上近付かないために、手をしっかりと繋ぐ。
そして自分の本当のパートナーと歩いた砂浜を歩く。
月明かりもわずかな海岸で、お互いの最愛の人を思う。泣いても慰めたりしない。
知り合って半年。
この散歩は、海辺に人が寄り付かない秋になって始まった。
◆
ふたりで色々と例え話しをしている。私達もリョウジさんも言葉にはしないけど、同じ意見がある。
もしも先々、私達か、私達のような相手を見つけて結婚すればうまくいくかも知れない。
21歳の私は、結婚というものを具体的に考えたことがある。18歳で勇太と籍を入れようとした。
彼がいなくなるとしても、彼の妻であった事実が欲しかった。だけど勇太と、勇太の親に反対された。
気持ちだけで十分だと言われた。余計なバツを付けるなと笑って言われ、あきらめた。
自分の名前を記名した婚姻届は勇太に渡した。それは勇太の形見として葉子おばさんが持っていてくれる。
ただ、強引に押しきらなかったことを今になって後悔している。
リョウジさんには悪いけど、彼がうらやましい。
好きな人と法律的にも認められ、子供までいる。それは口に出すのは厳禁だ。
私とリョウジさんには、お互いの最愛がいる。
もしもお互いを想い合えるときは、心の中に新しい愛情の置き場を作れたとき。
勇太と茜さんが私達の心から消えることはない。
もう会えない相手が心に残ることをお互いが認め会えたら、私達に変化があるだろう。
流れが変わることを舞ちゃんに期待されている。
私も居心地がいい関係は続けたい。
最低でも、お互いを尊重し合える友人になれる気がする。
クリスマスも3人だけでパーティーをした。ある意味、世間を拒絶した形。
今の私達を続ける建前がある。舞ちゃんの笑顔を絶やさないため。
本当は私とリョウジさんが、舞ちゃんに癒されている。一度は壊れた大人2人を繋いでくれる、すごい子だ。
私と舞ちゃんは13歳差、私とリョウジさんは10歳差。
3人で外を歩くこともある。
親子には見えないけれど、家族には見えるらしい。
私とリョウジさんは、お互いの最愛を失った傷を舐め合ういびつな関係。
舞ちゃんが間にいてくれて正常に回り出す。
不思議な安定感。
勇太と関係が深かった私達は、彼が繋いだかのような新しい縁を得た。
12月30日、みんなと会った。
薫と梓は前倒しで婚約した。風太おじさんは節度を持って付き合えといった。けど葉子おばさんは、ニヤニヤしていた。
純子は、私達の高校で見た覚えがあるヤマモトタロウ君を連れてきた。
伊集院君と桜塚ハルネも変わらずラブラブだ。
勇太がいなくなって8ヶ月の世界で、私の時間も変化しながら過ぎてゆく。
※そろそろパラレルワールドに戻ります
勇太がいなくなって8ヶ月を過ぎた。
あの、終わりの日までの3年間は大学受験や学校、アルバイトもあって勇太に密に会ってた訳じゃない。
終わりが見えた自分に私を巻き込みたくない。将来を見据えて、しっかり過ごせと言われた。
従った。
気持ちが離れたことはない。奇跡が起きたとき全力で勇太を支えるために準備していた。
けれど終わりは来た。
自分だけでは悲しみは癒せなかった。
苦しい日々の生活を送るなかで、お互いを癒せるカンフル剤のような存在を得た。
古川リョウジさんと、舞ちゃんの親子だ。
3人でいると苦しさが和らぐ。ふたりも同じことを言ってくれた。
まるで勇太とリョウジさんの妻茜さんが、会わせてくれたような関係。
だけど独占欲が強いふたりは、私達の間に舞ちゃんを挟んだ。
リョウジさんと私の間に恋が芽生えにくいように細工した。
思惑通りに、私達は清らかな関係だ。
私達には、1番手が大きな存在として残っている。
私には勇太。リョウジさんには茜さん。
舞ちゃんに呼ばれて家に行く。遅くなることもあるけれど、舞ちゃんが眠った直後に、必ず家まで送ってくれる。
晩秋のある日、送ってもらう途中。
「ルナちゃん、俺達の関係って、なんて説明すればいいのかな。3人で歩いてるの会社のやつに見られて、聞かれて困った」
「友達・・確かに説明しにくいさですね。本当のことを言って、中途半端な同情買うのも嫌だし」
「3人でいると欠片を埋める、お互いを癒せる関係」
「私達ふたりだと?」
「傷を舐め合う・・いや、変な想像をするやつがいるな。申し訳ない」
「ははは、私がリョウジさんと血が繋がった姪って言うのが無難ですかね」
「そうか、次からそう言おう」
家まで車で15分だけど、たまに寄り道をする。
私と勇太が中学生のときに歩いた海岸。そしてその10年前には、リョウジさんと茜さんも歩いていた海岸。
もう真っ暗だ。
この時だけ、私達は手を繋ぐ。お互いの顔はよく見えない。それでいい。
お互いが、手の温もりだけを求める代用品だから。
寒い海辺を歩いているのに、私達は肩を寄せない。それ以上離れないように、それ以上近付かないために、手をしっかりと繋ぐ。
そして自分の本当のパートナーと歩いた砂浜を歩く。
月明かりもわずかな海岸で、お互いの最愛の人を思う。泣いても慰めたりしない。
知り合って半年。
この散歩は、海辺に人が寄り付かない秋になって始まった。
◆
ふたりで色々と例え話しをしている。私達もリョウジさんも言葉にはしないけど、同じ意見がある。
もしも先々、私達か、私達のような相手を見つけて結婚すればうまくいくかも知れない。
21歳の私は、結婚というものを具体的に考えたことがある。18歳で勇太と籍を入れようとした。
彼がいなくなるとしても、彼の妻であった事実が欲しかった。だけど勇太と、勇太の親に反対された。
気持ちだけで十分だと言われた。余計なバツを付けるなと笑って言われ、あきらめた。
自分の名前を記名した婚姻届は勇太に渡した。それは勇太の形見として葉子おばさんが持っていてくれる。
ただ、強引に押しきらなかったことを今になって後悔している。
リョウジさんには悪いけど、彼がうらやましい。
好きな人と法律的にも認められ、子供までいる。それは口に出すのは厳禁だ。
私とリョウジさんには、お互いの最愛がいる。
もしもお互いを想い合えるときは、心の中に新しい愛情の置き場を作れたとき。
勇太と茜さんが私達の心から消えることはない。
もう会えない相手が心に残ることをお互いが認め会えたら、私達に変化があるだろう。
流れが変わることを舞ちゃんに期待されている。
私も居心地がいい関係は続けたい。
最低でも、お互いを尊重し合える友人になれる気がする。
クリスマスも3人だけでパーティーをした。ある意味、世間を拒絶した形。
今の私達を続ける建前がある。舞ちゃんの笑顔を絶やさないため。
本当は私とリョウジさんが、舞ちゃんに癒されている。一度は壊れた大人2人を繋いでくれる、すごい子だ。
私と舞ちゃんは13歳差、私とリョウジさんは10歳差。
3人で外を歩くこともある。
親子には見えないけれど、家族には見えるらしい。
私とリョウジさんは、お互いの最愛を失った傷を舐め合ういびつな関係。
舞ちゃんが間にいてくれて正常に回り出す。
不思議な安定感。
勇太と関係が深かった私達は、彼が繋いだかのような新しい縁を得た。
12月30日、みんなと会った。
薫と梓は前倒しで婚約した。風太おじさんは節度を持って付き合えといった。けど葉子おばさんは、ニヤニヤしていた。
純子は、私達の高校で見た覚えがあるヤマモトタロウ君を連れてきた。
伊集院君と桜塚ハルネも変わらずラブラブだ。
勇太がいなくなって8ヶ月の世界で、私の時間も変化しながら過ぎてゆく。
※そろそろパラレルワールドに戻ります
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