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237 続き◇伊集院君と桜塚ハルネ◇

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勇太前世の伊集院君と桜塚ハルネは親しくなった。

モテている美形男子と野獣系女子。意外に周囲から色々と言われなかった。

7月になった。伊集院君は先輩女子に告白されて断った。

直後にハルネとコーヒーを飲んでいる。

「お疲れさん。断るのもエネルギーいるみたいだな。疲れた顔してるぞ」
「ハルネ、お前だけは分かってくれるか。ハッキリ言ったら、何か色々と言われたよ」

「どうせ、今はその気はないとかだろ」
「そ。そしたら考えもしないで断るとか冷たい、とか怒られた」

「きちんと断るのも、思いやりの一つと思うのにな・・。光輝、おめえって損してるな」
「ハルネ、どうした」

「下手に顔がいいばっかりに、勝手に誰にでも優しいとか思われてる。寄ってくる女はみんな外見ばっかり見てるよな」

「お前は?」
「光輝がハンサムなのは間違いない」

「それだけ?」
「それだけだ・・、あ、いや」

「なんかあったか」
「一緒に歩いてて、同性に見られたとき・・、ちっと自慢げに胸張ったことはある。それは許せ」

伊集院君は吹き出した。

「アタイはこんなだし、おめえも女として見ねえだろ。格闘男子が男の基準だから、おめえの顔にトキメカねえ」

「ふむ」

「だから、余計なモン抜きで、おめえっていいやつだと思うんだよ」

「本人に言うなよ。恥ずかしいな」

「坂元勇太と花木ルナ」

伊集院君が止まった。

「おめえって、あのふたりとの友情を大事にしてるんだな・・。ダチになったら、よく分かるよ」

伊集院君は、勇太とルナのことは高校生のとき、中学時代の知り合い女子に話したことがある。

すぐに三角関係とか、生臭い話に結びつけられた。

話したことを後悔した。


勇太の病気のことを噂で知っていたハルネにも、やはり聞かれた。

不治であることは明かさなかったが、2人に対する思いも含め、正直な気持ちを打ち明けた。

するとハルネは優しい目になった。

「うん、柔道繋がりで話した今川薫の言った通りだな。おめえって、打算抜きで人を大事にできる人間なんだな」

頭はボサボサでも、伊集院君はハルネを可愛いと思った。

「おめえ、あのふたりが本当に好きなんだな・・」

ハルネは勇太の病気が『まだ』治っていないと知った。本当のことはまだ、知らなかった。

柔らかな笑顔を見せていたルナは心の中で、苦しみを抱えていたんだなと思い出す。

ハルネは思わず涙をこぼした。

「光輝は、アイツらの話するとき、ホントに優しい目になるな・・」

伊集院君はハルネの言葉にドキンとした。

「その目、アタイでも吸い込まれそうだ。うん、好きな女ができたら、その目をしろや」

伊集院君は、女の子が近くにいても感じたことがなかった感情が沸いてきた。

それを確認することはない。恋愛には未熟だ。そして目の前のハルネとの会話が楽しい。

「ハルネって頭ボサボサだけど、そういうとこは見てくれてるんだな」

「ボサボサ言うなや」

「悪い。ま、意外と料理上手だし、人に親切だもんな」

「もっと褒めろや」

「あはは」
「くくく」

伊集院君は気付かないうちに、裏表がないハルネに惹かれた。

相変わらずハルネは外見的な女子力は低かったけど、節約しようやとご飯を作ってくれて一緒に食べた。

ハルネのアパートで定期的に晩ご飯をご馳走になっている。

お礼に伊集院君は服を買いに行くのに付き合ったりした。スカートをプレゼントしようとしたら、ズボンを選んだ。

ハルネはみるみるうちに格好よくなった。

髪も短い。

可愛いではない、格好いいだ。

大学構内を歩く機会も増えてきた。夏休みも帰省して会ったり、一緒にアルバイトもした。

180センチハンサムと、171センチのボーイッシュでガタイがいい女子。

ハルネは不思議だった。

いつも伊集院君と一緒にいる。同性からの熱視線はあるが、覚悟していた女子からの嫉妬の炎は浴びせられない。


その理由は10月終わり頃の夕方、判明した。

たまに同じ講義で会う女子ふたり組が近付いてきた。どちらも可愛い系。

「伊集院く~ん、桜塚く~ん、お願いがあるんだけど」

「なに? 俺達でできることかな」

「合コンに参加してくれない?」
「急で悪いけど、今日、ふたり揃って来て欲しいな」

伊集院君は即OKした。

ハルネは驚いた。

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