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232 前回の続き◇今川薫の称号◇

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ところで、勇太前世の今川薫は硬派なのにロリコンと言われ続けてきた。

5歳離れた梓が美少女なせいだ。

現在は薫が21歳。梓は3月生まれだから15歳だけど、年上に見える高校1年生。勇太のことなどもあって一気に大人びている。

182センチでダイエットして80キロ、西郷隆盛像に少し似た薫。

梓は身長が160センチになって48キロ。早くも大人の体つき。すでに薫を押し倒して大人の階段も昇った。

女子高生と付き合う大学生は多少なりともいる。それに梓が美しく、大人っぽくなった。

街、大学構内を歩くふたりは『美女と野獣』と言われる。

薫は、この呼ばれ方をいたく気に入っている。


薫が梓から最初にアタックされたとき、薫は中3で梓は小4。恋というものに興味を持った、親友の可愛い妹として接してきた。

だけど次の年から状況が変わった。

勇太が病気に倒れた。そのあと、梓が本気だと薫は知った。

9月の終わり頃。薫は勇太の両親に、勇太は高校を卒業するまで身体が持たないだろうと聞かされた。

夏休みの入院は治療ではなく検査だったことも知った。

梓も一緒に聞いた。

梓に勇太が元気な姿を少しでも多く見せておこうと薫は頑張った。頑張りすぎた。

高校の文化祭でもエスコートする形となった。

薫は身体が大きな高1。梓は可愛い小5。

クラスメイトの手助けで、弱々しくも喫茶室に参加した勇太のところにいったあと。

悲しくなった梓が廊下で薫に抱きついてた。

すでに2人のデートシーンのようなものも見られていた。口が悪い同級生が、ロリコンと薫に言い出した。

美少女・梓は意味も考えずに言った。『ロリコンじゃない。ちゃんとした彼女だよ』

梓は火にガソリンを注いだ。


地元の大学に薫が入った頃、梓はもっとも気持ちが不安定だった。

年齢の影響プラス勇太の病気のことが主な原因だ。見ていて辛くなった薫は言った。

『梓、苦しくなったら、いつでも俺のことに来い』

薫は火にジェット燃料を注いだ。

梓は本当に来た。家ではない。家には前から入り浸っていた。

中2な梓なりの決断だ。

勇太が梓のウエディングドレス姿を見るまでは、頑張ると言った。

何を頑張るというのか。

勇太の本当の状態は知らされた。

病気の発症から3年。いつも勇太は梓に、いつか元気になるから心配するなと笑っていた。

だから梓も気恥ずかしいなんて言っていられなかった。残された時間が分からない。

薫のことが変わらず好きだ。だったら、勇太のために色んなことを前倒ししようと思った。


薫が通う大学に、大きなバスケットを持った155センチの美少女が制服のままやってきた。

『あの、お姉さん、柔道場はどっちでしょうか』
『どうしたのお嬢さん。中学生かな? お兄さんに会いに来たの?』
『中2です。婚約者におやつを持って来ました』

ええと、声が上がった。

偶然に梓の前を薫が歩いていた。

『薫ちゃーん』
『へっ、梓?』

『ほら行くよ』
『どこにだ』

『これから顔出すから、柔道の先輩方に挨拶しないと』

肉厚182センチ90キロのオッサン顔。かたや身長155センチ43キロ、ショートヘアの美少女。梓が薫に腕を組んでくっついた。

大学1年生と中学2年生。

危険な匂いがするカップル。そして薫は大学入学から1か月でロリコンの称号を手に入れた。

高校時代、小学生の梓と手を繋いで、手にした称号。

大学生になって称号をリリースしたつもりだった。わずか1か月で戻って来た。


その回想が薫の頭の中を巡っている。

12月20日、ふたりで勇太の墓参りに来て思い出した。

今になったら笑える。

梓は持ってきた花を供えるために準備している。

薫の腕を梓が取って歩いていると、以前はロリコンと思われるか、親子に間違えられた。

一度だけど職務質問も受けた。そのときは梓の方が警官に食ってかかりそうになって薫が押さえた。

それに比べれば、美女と野獣は高貴な響きに感じる。

「ははっ。勇太、梓って、本当に綺麗になった・・」

梓が戻ってきた。

「なにが綺麗になったって、カオルちゃん」

「お前だよ」

梓は少し照れた。そして口を開いた。

「カオルちゃんも格好よくなったよ」

「おい、ここで言うな。勇太が怒るぞ」

「ユウ兄ちゃんは喜んでくれるよ、きっと・・」


勇太がいない日常が少しずつ進んでいる。




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