上 下
218 / 254

218 ラブコメ禁止地帯で地雷を踏むカオル

しおりを挟む
12月26日の茶薔薇学園。冬休み中だが、カオルが柔道部に行くため校門をくぐった。

◇カオル◇

昨日は、他の嫁ズの好意で勇太とクリスマスデートをさしてもらった。

冬の選手権まで猛練習だけど、励みになったな。

それにしても楽しかった。えへへ。

アタイが男子と1対1でイルミネーションの中を歩く日が来るとは思ってなかったぞ。

食ったのは焼き肉だけど、パンケーキなんぞ食べるより数倍楽しかった。

やっぱ勇太は本当にこっちのことを考えてくれてんな。

イルミネーションの中で街角キスまで経験するたあ思わなんだ。

吉田真子のキスはサルサソース風味だったそうだけど、アタイのニンニク風味だ。

そのあとか? ライトアップされた川沿いまで行った。今度は思い切ってアタイからキスした。

あ、今度はアタイも勇太もミントガムたくさん噛んだあと。ミント味のキスだ。

キスのあとの方が緊張して漏らしそうだった。顔が真っ赤だったと思う、うん・・

周りがいちゃいちゃカップルだらけだっただろ。大胆になれた。さすがにスマホ撮影してるやつもいなかった。

家に帰って、姉妹や親に色々と聞かれた。
「イルミネーション見て、デザートのケーキ食った」って、一部をはしょって答えた。

やっぱアタイも女だ。


すげえ嬉しい。

なんだよアレ。イルミの中で男子とチューとかドラマだろ。部屋に帰って悶えたぞ、足バタバタして。姉妹は受け身の練習と思ったみてえだ。

布団に入れば1秒で寝落ちするのに、昨日は10分くらい眠れんかった。

今、自分でも分かるくらいにやにやしながら校内を歩いてると、ラグビー部の連中に会った。

「ようカオル、柔道部はこれからか」
「おっす。昨日、ネットで見たぞ、デートだったんだろ」
「カオルおはよ。幸せを分けろよ」

「お、おはよ。もう走ってるのか。ラグビー部は開始時間が早ええな」

いつものように右手を伸ばして拳はグー。ラグビー部の友人達といつものグータッチで挨拶しようとした。

なんだ? 今日は誰も応じてくれねえ。

「ん?どうした、こっちガン見して」

アタイの右手?みんな見てる?

「あ・・・」

勇太から嫁ズに贈られた恋人リング。梓やルナと一緒でアタイも右手の中指にはめたまんまだ。

「カオル、そりゃなんだ。噂のアレか?」

「ア、アタイだって女だぞ・・。嬉しいんだぞ・・」

「てめー、見損なったぞ!」
「なに見せびらかしてんだ」
「俺も嫁として勇太君に勧めろ」
「私には伊集院君の紹介だ!」

いや、アタイは悪くないよな。けど相手はヒートアップしてる。

「そろそろ時間だ。行かなきゃ」

フルダッシュで逃げて柔道場に駆け込んだ。

柔道場ならアタイを理解してくれる仲間ばかり。

「おはよ~っす」

「・・・」

誰も返事しねえ。

よく見ると部員が全員いる。なんでだ。

アタイは道場に入るのは早い方。先に来て掃除してる1年生が挨拶してきて、返事すんのが日常だ。

「みんな、早くから集まってどうした・・」


「カオル、昨日は楽しかった?」

部長のツバキが唐突に聞いてきた。

「ま、まあな」

「焼き肉のあとの外でチューは、なに味だったのかな」

「あ、あれ? 見てたのか? い、いや、川沿いで周りのカップルもキスとかしてたから、つい・・大胆になっちまって・・」

「え?」「え?」

「え?」

どうやら見られたのは、駅前イルミネーションの中でのチュー。

アタイは自分からやぶ蛇をつつきに行ったようだ。

「てめえ、あのあとまた、チューしたんかよ!」
「それになんだ、その右手の恋人リングは!」
「神聖なる道場に浮わついたモンを持ち込むなあ!」

言いがかりだ。


練習は白熱した。全国制覇を目指すアタイ達にはちょうどいい。

練習が終わる頃には、いつもの仲間に戻った。

ただし茶薔薇学園内では恋人リングは封印だ。パラ高の嫁ズみたく普段から着けてるのが危険なのは、よく分かった。

ここはラブコメ持ち込み禁止地帯だ。

練習が終わって、みんなに囲まれてツバキに聞かれた。

「ゆ、勇太君とは、もうシタの?」

「いや、いやいや、まだだぞ。アタイの誕生日に籍を入れるまでは清い体だ」

「くそ~余裕だな」
「ここまで来たら待てるか・・。カオルの誕生日って、3月3日だもんね」

「そうだけど、それがどうした」

「もうすぐやん」

「え?・・・あ」

アタイ、勇太と結婚の約束したのが8月2日。

アイツとセ●クスなんてできるのか、いまだに自信がねえ。

女子力不足の自覚もあるし。

あと半年くらい猶予があると思ってた・・

気付いたら残り70日を切ってる・・

「カオル、なに顔赤くしてんだよ」
「カオル先輩、妄想してますね~」
「わ、先輩かわいい~」


アタイのスケジュール。

来月は冬季大会の県予選。

勝てたら再来月は全国大会。

その翌月は・・

結婚。

意識したらドキドキしてきた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?

みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。 なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。 身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。 一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。 ……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ? ※他サイトでも掲載しています。 ※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。

処理中です...