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216 色気が足りないクリスマスデート

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12月25日。

茶薔薇学園でパラ高との合同練習をしたあと、勇太はカオルとデートだ。

勇太はルナ、梓も入れて4人で出かけるつもりだったが、梓とルナから怒られた。

なんだかんだいって、勇太とカオルの1対1デートの回数が少ない。

柔道の練習、ランニング、その他のイベントやトラブル時も一緒。だけど相変わらず婚約者の中では友達感覚が抜けないのだ。

それにカオルは高校柔道・冬季選手権を控えている。大会は団体戦のみ。1月に県予選をやって2月の13、14日の日程で東京決戦となる。

全国Vを目指すカオルは、ここから先は元旦だけがオフであとは練習。

勇太が何度も茶薔薇学園に出向く予定だけど、デートとなると今日しかない。

梓とルナはリーフカフェ。クリスマス関連の仕事がなくなった純子&風花が、カフェとパラ横商店街で歌を披露する。

純子の体も万全ではないし、2人はサポート係。

風花のドナー問題で迷惑をこうむったことになる純子だけど、風花を励ましている。

「風花さん、もう謝るの禁止。今までが順調すぎたんだよ。ここから頑張ろ」

「サンキュ純子。これからもよろしく」

勇太が手伝えば刺激物になれる。だけど2人が実力を示していくには、時として邪魔になる。伊集院君的なシビアな言い方をすれば、それが正解。

本当の純子&風花は、ここから始動する。


さて、カオルは茶薔薇学園に荷物を置いて、少しおしゃれな格好。パンツスタイルにセーター、上からコートだだ。

選んだのは梓だ。カオルに選ばせるとジャージ一択になる。

「ゆ、勇太、さっきぶり」

勇太もリーフカフェに行って着替えた。今日はベージュが基調で薄いシャツにジャケット。相変わらずの薄着だ。

寒さのピークを迎えようとしているのに、寒さを感じない。

勇太は女神様が、転生させるときに体を寒冷地仕様にしたのではないかと考えている。

「カオル、なに緊張してんだよ」

ここはパラレル駅前。クリスマスだけあって、ハーレムグループも普段より多い。視界に入るだけで6組いる。

けれど、やっぱり勇太カップルが目立っている。有名になってきた上に男女1対1は勇太とカオルだけだ。

「やっぱ、デートって言葉にされると、意識すんだよな・・」

「さっきまで、体を密着させてたのに、今更だろ」

見ていた女子らがざわっとした。勇太は柔道の練習のことをイタズラっぽく言った。

だけどギャラリーには勇太が下、カオルが上、そして裸、そう脳内変換されている。

「だから、その言い方!」
「ははは、まあまあ」

「それよか、これ、ありがとな」

カオルが右手を差しだした。中指には勇太からもらった恋人リングがはまっている。

勇太も右手を出した。

こちらの世界には恋人の段階で指輪を贈る習慣は普通に広まっていない。
だから、周囲が再び注目している。

『ええー、勇太君からのプレゼントなんだ』
『なんだかんだいって、愛されてるー』

人が多い駅前、カオルの右手、勇太の右手が、ゆっくり近付いていった。
見つめ合う勇太とカオル。


そしてグータッチ。

おい、違うだろ! の突っ込みがあちらこちらから上がった。

『なんじゃ、そりや!』

これはこれで、ネット上で大いなる疑問を呼んだ。


「さ、行くか。駅ビル8階のパンケーキだな」

「おう、けど、9階の焼き肉食べ放題も捨てがいたぞ」

見ている人は、なんだそれと声を大きくしている。貴重な男子とのクリスマスデートだろ、パンケーキ一択だろと。

「そっちもいいなー、俺も小腹がすいてきたし」

「行ってから考えようぜ」

状況に慣れてきたカオルは、ただでさえ少ない女子力がなおさら減っている。

勇太の前世親友のパラレル体。変な部分で波長が合うのだ。

それに勇太もカオルを楽しませたい。ガチガチになってパンケーキを食べさせるより、笑顔でご飯を食べてほしい。

ただ、ギャラリーは2人に、突っ込みだらけだ。

結局、パンケーキ屋、焼き肉食べ放題を2人で交互に見比べた結果・・


どっちにするのかを、せーの、で決めた。

「焼き肉!」「焼き肉!」

満場一致。

やはり周囲に聞いている人がいて、体育会系な女子高生同士の会話だろと思った。

実際には、これは男子をゲットしたい女子には参考にならない。大半の女子も気付いてきた。

これは、勇太とカオルだけの独特な夫婦関係だと。


しかし分かっていない人がいる。

遠く離れた北海道札幌市。

「カオルが勇太君をつかまえた秘訣は焼き肉なのね!」

ネットで見ながら、間違った情報をインプットする柔道アイドル不知火マイコだった。



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