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212 エロ可愛いを封印してサポートなのだ
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とうとう12月24日のクリスマスイブの昼前。
こちらの世界でもクリスマスイブ、クリスマスはある。なんなら26日もクリスマスだと主張する人もいる。
ハロウイン、バレンタインデーもある。
バレンタインは聖人の名前だから、当たり前に存在するのだけど、なぜか2月14日に告白大会が前世と共通している。
お菓子はチョコではない。お菓子をあげて愛を伝える。相手も即返答、肉欲まみれな告白大会となる。
ホワイトデーはない。愛の告白の返事を1ヶ月も待つほど、パラレル世界の肉食乙女は気が長くない。
今日はパラレル公会堂で子供を招いたチャリティーコンサート。
まだ開演前。
「みんなー、今日は頑張ろうね」
準備も終わり、頼まれて伊集院君が音頭を取った。
売れてる売れてないに関係なく、8組のバンドが参加。サポートメンバーは40人で交通費だけでギャラはない。
なのでサポートメンバーには、伊集院君と勇太からクリスマスプレゼントを用意した。
彼女らは、男子2人がエントリーする前にボランティアを申し込んだ女性ばかり。本当の善意を持った人だ。
こういう人達に気遣えるのも伊集院君。勇太は惜しくも、伊集院君に言われるまで気が付かなかった。
反省。
バンド演奏のメンバー、サポートの一部がサンタクロースに扮装している。
普通は女子がやる。
こちらの世界にもサンタはいる。パラレル世界では、サンタの元になった人は西暦300年くらいに生まれた聖人。
男女比が狂う、かなり前の人だ。
真っ白くて顔を覆うくらいのひげ。これもパラレル世界も同じ。赤い服のコスプレも1900年くらいにできていて、どうもパラレルな西欧の商人が考えたそうだ。
このあたりまで設定が、勇太のおぼろげな前世の記憶と近い気がする。
パラレル世界で違うと思ったのは、サンタの格好を作った動機。
男女比1対12の世界。
どうせクリスマスプレゼントをもらうなら男子からがいい。
という理由でサンタクロースを男装女子にしたそうだ。なのでサンタはおじいさんもいるけど、若い男性もいる。
で、今は勇太と伊集院君が、サンタクロースのコスプレをしている。
一抱えくらいある白ひげを付けて、おじいさんに扮装している。
「おう! 伊集院君似合うね~。あはははは」
「くくく、勇太君も板についてるよ」
2人でハイタッチだ。
ルナや勇太関係で来てくれた13人は笑ってくれる。嫁、嫁候補達がふたりを囲んで微笑んでいる。
が、運営スタッフなどの女性陣は、ぐぬぬという感じ。
『せっかくの伊集院君の顔が隠れてる~』
『エロカワ君も厚着だよ!』
『なんで貴重な若い男子が、爺さんのコスプレするんだ』
小さな声で悲鳴を上げているけど、今日は子供のためのイベント。
エロ、悪目立ちは自重である。
純子&風花も4組目で参加している。
けれどギタリスト風花は、ドナー手術をして2日前に退院したばかり。
出番では椅子に座って、代役ギタリストさんのサポート付きで音を鳴らすだけ。
代役ギタリストの中戸明日香23歳は、このチャンスを狙っていた。
風花以上の音色を醸し出して、風花より目立つ。そして純子&風花の一年契約が終わったあと、『純子&明日香』に取り変わってやろうと。
純子は妻・麗子とともに、勇太の嫁に加わるのは確定事項らしい。すなわち確実に売れる勇太の楽曲を提供され続ける。
『純子&?』の『?』 になりたいと望むギタリストが山ほどいる。
悪意ではない。売れるまでが厳しい世界でチャンスをつかもうとする人間の、真っ当な気持ちである。
音合わせで、明日香は技術は自分の方が上だと感じた。
風花が骨髄ドナーとなって練習不足なのを差し引いても自分の方がうまい。
勝てると思った。
だけど、出番が来る前に勝負にならないと思った。子供から拍手をもらったのは純子と自分。
少ししかギターを弾けず、風花が目立たなかったのにだ。
思う。
勇太の歌を弾くことに限定すると、聴く人を感動させられるのは風花だ。
リハのあと風花のテーマソングをじかに聴いた。
『ひとりじゃない』
代役が決まった直後、配信されていたものを聞いたときよりグッときた。
楽器でプロを目指す人間は、確かな技術の上に『音色』を乗せられる。
自分も、自分の色を持っている。曲にさえ恵まれればとも思う。
だから風花の後釜を狙った。
風花が、あらかじめ勇太が作った曲を弾いていると思ったけど、風花のアドリブなギターを聴いてみて分かった。
勇太が風花の気持ちを引き出せる曲を用意したのだ。
風花は純子のおまけではなかった。
勇太の家に出入りする女では、ひとりだけ勇太の嫁ではない。勇太の義母の彼女だという。
風花の退院後は、義母と同居している。要するに勇太と風花は一緒に住んでいる。
なのに、男女の甘い関係を感じないのに、精神的に深い繋がりを感じる。
そんな2人を繋ぐ曲。風花の音色から、風花の中にある寂しさ、希望を感じる。
それは今回のドナーで色々なものを失ってまで人を助けたことで、深みを増したのかも知れない。
明日香は、純子&風花&勇太の中に割り込めないと感じた。
そして今、演奏が終わった。
拍手をたくさんもらったのに、明日香には充足感がない。
こちらの世界でもクリスマスイブ、クリスマスはある。なんなら26日もクリスマスだと主張する人もいる。
ハロウイン、バレンタインデーもある。
バレンタインは聖人の名前だから、当たり前に存在するのだけど、なぜか2月14日に告白大会が前世と共通している。
お菓子はチョコではない。お菓子をあげて愛を伝える。相手も即返答、肉欲まみれな告白大会となる。
ホワイトデーはない。愛の告白の返事を1ヶ月も待つほど、パラレル世界の肉食乙女は気が長くない。
今日はパラレル公会堂で子供を招いたチャリティーコンサート。
まだ開演前。
「みんなー、今日は頑張ろうね」
準備も終わり、頼まれて伊集院君が音頭を取った。
売れてる売れてないに関係なく、8組のバンドが参加。サポートメンバーは40人で交通費だけでギャラはない。
なのでサポートメンバーには、伊集院君と勇太からクリスマスプレゼントを用意した。
彼女らは、男子2人がエントリーする前にボランティアを申し込んだ女性ばかり。本当の善意を持った人だ。
こういう人達に気遣えるのも伊集院君。勇太は惜しくも、伊集院君に言われるまで気が付かなかった。
反省。
バンド演奏のメンバー、サポートの一部がサンタクロースに扮装している。
普通は女子がやる。
こちらの世界にもサンタはいる。パラレル世界では、サンタの元になった人は西暦300年くらいに生まれた聖人。
男女比が狂う、かなり前の人だ。
真っ白くて顔を覆うくらいのひげ。これもパラレル世界も同じ。赤い服のコスプレも1900年くらいにできていて、どうもパラレルな西欧の商人が考えたそうだ。
このあたりまで設定が、勇太のおぼろげな前世の記憶と近い気がする。
パラレル世界で違うと思ったのは、サンタの格好を作った動機。
男女比1対12の世界。
どうせクリスマスプレゼントをもらうなら男子からがいい。
という理由でサンタクロースを男装女子にしたそうだ。なのでサンタはおじいさんもいるけど、若い男性もいる。
で、今は勇太と伊集院君が、サンタクロースのコスプレをしている。
一抱えくらいある白ひげを付けて、おじいさんに扮装している。
「おう! 伊集院君似合うね~。あはははは」
「くくく、勇太君も板についてるよ」
2人でハイタッチだ。
ルナや勇太関係で来てくれた13人は笑ってくれる。嫁、嫁候補達がふたりを囲んで微笑んでいる。
が、運営スタッフなどの女性陣は、ぐぬぬという感じ。
『せっかくの伊集院君の顔が隠れてる~』
『エロカワ君も厚着だよ!』
『なんで貴重な若い男子が、爺さんのコスプレするんだ』
小さな声で悲鳴を上げているけど、今日は子供のためのイベント。
エロ、悪目立ちは自重である。
純子&風花も4組目で参加している。
けれどギタリスト風花は、ドナー手術をして2日前に退院したばかり。
出番では椅子に座って、代役ギタリストさんのサポート付きで音を鳴らすだけ。
代役ギタリストの中戸明日香23歳は、このチャンスを狙っていた。
風花以上の音色を醸し出して、風花より目立つ。そして純子&風花の一年契約が終わったあと、『純子&明日香』に取り変わってやろうと。
純子は妻・麗子とともに、勇太の嫁に加わるのは確定事項らしい。すなわち確実に売れる勇太の楽曲を提供され続ける。
『純子&?』の『?』 になりたいと望むギタリストが山ほどいる。
悪意ではない。売れるまでが厳しい世界でチャンスをつかもうとする人間の、真っ当な気持ちである。
音合わせで、明日香は技術は自分の方が上だと感じた。
風花が骨髄ドナーとなって練習不足なのを差し引いても自分の方がうまい。
勝てると思った。
だけど、出番が来る前に勝負にならないと思った。子供から拍手をもらったのは純子と自分。
少ししかギターを弾けず、風花が目立たなかったのにだ。
思う。
勇太の歌を弾くことに限定すると、聴く人を感動させられるのは風花だ。
リハのあと風花のテーマソングをじかに聴いた。
『ひとりじゃない』
代役が決まった直後、配信されていたものを聞いたときよりグッときた。
楽器でプロを目指す人間は、確かな技術の上に『音色』を乗せられる。
自分も、自分の色を持っている。曲にさえ恵まれればとも思う。
だから風花の後釜を狙った。
風花が、あらかじめ勇太が作った曲を弾いていると思ったけど、風花のアドリブなギターを聴いてみて分かった。
勇太が風花の気持ちを引き出せる曲を用意したのだ。
風花は純子のおまけではなかった。
勇太の家に出入りする女では、ひとりだけ勇太の嫁ではない。勇太の義母の彼女だという。
風花の退院後は、義母と同居している。要するに勇太と風花は一緒に住んでいる。
なのに、男女の甘い関係を感じないのに、精神的に深い繋がりを感じる。
そんな2人を繋ぐ曲。風花の音色から、風花の中にある寂しさ、希望を感じる。
それは今回のドナーで色々なものを失ってまで人を助けたことで、深みを増したのかも知れない。
明日香は、純子&風花&勇太の中に割り込めないと感じた。
そして今、演奏が終わった。
拍手をたくさんもらったのに、明日香には充足感がない。
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