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209 本当は兄妹ですが、なにか?
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パラレル市から少し離れた街、日も暮れた駅前。
大きくない駅だけど、今日は12月23日。クリスマスのイルミネーションが光って周囲は明るい。
共に人工授精生まれの勇太、メイちゃんの、公的には認められない異母兄妹が向かい合って立っている。
有名になってきた勇太の次の嫁だと、同じ中学の生徒達は思っている。
雰囲気が夏からガラリと変わっている。
勇太と変わらぬ交流がある。
だから、まさかメイちゃんの変化の原因が勇太に失恋したからだと思っていない。
友人すらも。
優しくなった。
人のために、誰かに意見を言うようになった。
モブ顔は変わらないのに、笑顔が綺麗になった。
最近、メイちゃんが気になるけどアプローチに失敗している、同級生のヤマモトタロウ。彼が偶然に通りかかってメイちゃんを見ている。
タロウは彼女3人と肉体関係にある。女は声をかけたら1歩、キスしたら2歩、ヤッたら5歩という感じで勝手に距離を詰めてくる。
けれど、メイちゃんが纏う雰囲気はその子らと違う。
声をかけても喜ばない。ディスっても怒らず、ただ目をじっと見てくる。
もうひとりのクラスメイト男子、根が暗い冬木ゲンジには笑いかける。
モテる自分が声をかけているのに、熱を感じない。
駅前のメイちゃんは、なにか自分より先を行っている気がする。
勇太とメイちゃんが向かい合ったままだ。
ヤマモトタロウは見ていて、なんだか嫉妬心のようなものが沸いてくる。
それくらい絵になっている。どっちもモブ顔のくせに・・
寒さの中、イルミネーションに照らされながら弾んだ笑い声の2人。
メイちゃんが口を開いた。
「勇太お兄さん、ネットで見たんだけど、私もマフラーもらえるの?」
「うん」
「え~、やっぱり。まずいな~」
「ダメだった?」
「いえ、嬉しいけど、わ、私のプレゼントも・・」
お互いに用意したのはマフラーだった。
そしてメイちゃんのやつは手編みだった。
「初めてトライして、下手くそで恥ずかしい・・」
メイちゃんが恥ずかしそうに笑う。
勇太は目を細めた。
妹マフラーは前世にももらった。15歳の梓から。
編み目は不揃いでも、嬉しかった。すでに病気が進行していた勇太だったけど首に巻いてもらって優しい感触を堪能した。
今世でも妹マフラーをもらえる。
「メイちゃん、リクエストしていい?」
「な、なんでしょう」
「首に巻いて欲しいな」
「・・うん!」
大注目の中、メイちゃんが勇太の首に手編みのマフラーを巻いた。
勇太は目を閉じて、嬉しそうにしている。
「暖かいよ、ありがとう。メイちゃんも、ほら」
お返しに、勇太も用意したマフラーをメイちゃんの首に巻いた。ついでに頬をむにむにした。
「くすぐったい。・・ゆうた・・お兄ちゃん」
「ふたりのときは、お兄ちゃんって呼ばれると嬉しいな。ほれほれ。暖まったか?」
「むにゅにゅ、もうっ、お兄ちゃん」
メイちゃんは、勇太に失恋して悲しい時期を乗り越えつつある。大事にされているから、純粋に本物の妹枠を楽しもうと思えてきた。
勇太妹枠の大先輩・長谷川キヨミのように。
「メイちゃん、ご飯は?」
「お兄ちゃんが奢ってくれるってLIMEくれたから、お腹すかせて来ちゃった」
「行きたいお店は?」
「中学生の知ってるとこなんて、あまりないって。そこのパスタ屋さん、入ってみたかったの・・ダメ?」
上目遣いのメイちゃんに勇太が手を差し出した。メイちゃんも自然に手をつかんだ。
吉田真子の時のようなガチガチ感もなく自然だ。
「いこう。お兄ちゃん」
「よし、食うぞ~」
まるで兄妹のようだと、ギャラリーは感じている。
メイちゃんから、中3なら十分にあるはずの肉食女子らしさがにじみ出ていない。
もう15歳。結婚も可能である。
勇太という御馳走が目の前にぶら下がって、女子260人にひとりという、男子と駅前プレゼント交換までやっている。
その上に、ご飯まで一緒となる。花木ルナ&勇太の例から考えて、メイちゃんのデザートは勇太しかないでしょ、と。
そう考えるのが、この男女比1対12世界の一般的な肉食乙女だ。
「メイちゃんは、ピザ、パスタ、どっちが好き」
「う~ん、どっちも!」
「じゃあ、色々と頼もう」
「あはは」
パスタの店に入る前の笑顔はネットに上がった。勇太はメイちゃんの笑顔が綺麗になってきたと感じた。
それは、離れた場所から美人3人を侍らせながら見ていたヤマモトタロウも同じ。
伊集院君と勇太効果で偏差値が上がったパラ高を狙う受験生。そして、妹として勇太ファミリーとの付き合い方を考えるメイちゃん。
男女比1対12の世界で、モブの自分が男子に好意を寄せられることは2度とないと思っている。
だから周りを気にせず、自分ができることを続けている。
大きくない駅だけど、今日は12月23日。クリスマスのイルミネーションが光って周囲は明るい。
共に人工授精生まれの勇太、メイちゃんの、公的には認められない異母兄妹が向かい合って立っている。
有名になってきた勇太の次の嫁だと、同じ中学の生徒達は思っている。
雰囲気が夏からガラリと変わっている。
勇太と変わらぬ交流がある。
だから、まさかメイちゃんの変化の原因が勇太に失恋したからだと思っていない。
友人すらも。
優しくなった。
人のために、誰かに意見を言うようになった。
モブ顔は変わらないのに、笑顔が綺麗になった。
最近、メイちゃんが気になるけどアプローチに失敗している、同級生のヤマモトタロウ。彼が偶然に通りかかってメイちゃんを見ている。
タロウは彼女3人と肉体関係にある。女は声をかけたら1歩、キスしたら2歩、ヤッたら5歩という感じで勝手に距離を詰めてくる。
けれど、メイちゃんが纏う雰囲気はその子らと違う。
声をかけても喜ばない。ディスっても怒らず、ただ目をじっと見てくる。
もうひとりのクラスメイト男子、根が暗い冬木ゲンジには笑いかける。
モテる自分が声をかけているのに、熱を感じない。
駅前のメイちゃんは、なにか自分より先を行っている気がする。
勇太とメイちゃんが向かい合ったままだ。
ヤマモトタロウは見ていて、なんだか嫉妬心のようなものが沸いてくる。
それくらい絵になっている。どっちもモブ顔のくせに・・
寒さの中、イルミネーションに照らされながら弾んだ笑い声の2人。
メイちゃんが口を開いた。
「勇太お兄さん、ネットで見たんだけど、私もマフラーもらえるの?」
「うん」
「え~、やっぱり。まずいな~」
「ダメだった?」
「いえ、嬉しいけど、わ、私のプレゼントも・・」
お互いに用意したのはマフラーだった。
そしてメイちゃんのやつは手編みだった。
「初めてトライして、下手くそで恥ずかしい・・」
メイちゃんが恥ずかしそうに笑う。
勇太は目を細めた。
妹マフラーは前世にももらった。15歳の梓から。
編み目は不揃いでも、嬉しかった。すでに病気が進行していた勇太だったけど首に巻いてもらって優しい感触を堪能した。
今世でも妹マフラーをもらえる。
「メイちゃん、リクエストしていい?」
「な、なんでしょう」
「首に巻いて欲しいな」
「・・うん!」
大注目の中、メイちゃんが勇太の首に手編みのマフラーを巻いた。
勇太は目を閉じて、嬉しそうにしている。
「暖かいよ、ありがとう。メイちゃんも、ほら」
お返しに、勇太も用意したマフラーをメイちゃんの首に巻いた。ついでに頬をむにむにした。
「くすぐったい。・・ゆうた・・お兄ちゃん」
「ふたりのときは、お兄ちゃんって呼ばれると嬉しいな。ほれほれ。暖まったか?」
「むにゅにゅ、もうっ、お兄ちゃん」
メイちゃんは、勇太に失恋して悲しい時期を乗り越えつつある。大事にされているから、純粋に本物の妹枠を楽しもうと思えてきた。
勇太妹枠の大先輩・長谷川キヨミのように。
「メイちゃん、ご飯は?」
「お兄ちゃんが奢ってくれるってLIMEくれたから、お腹すかせて来ちゃった」
「行きたいお店は?」
「中学生の知ってるとこなんて、あまりないって。そこのパスタ屋さん、入ってみたかったの・・ダメ?」
上目遣いのメイちゃんに勇太が手を差し出した。メイちゃんも自然に手をつかんだ。
吉田真子の時のようなガチガチ感もなく自然だ。
「いこう。お兄ちゃん」
「よし、食うぞ~」
まるで兄妹のようだと、ギャラリーは感じている。
メイちゃんから、中3なら十分にあるはずの肉食女子らしさがにじみ出ていない。
もう15歳。結婚も可能である。
勇太という御馳走が目の前にぶら下がって、女子260人にひとりという、男子と駅前プレゼント交換までやっている。
その上に、ご飯まで一緒となる。花木ルナ&勇太の例から考えて、メイちゃんのデザートは勇太しかないでしょ、と。
そう考えるのが、この男女比1対12世界の一般的な肉食乙女だ。
「メイちゃんは、ピザ、パスタ、どっちが好き」
「う~ん、どっちも!」
「じゃあ、色々と頼もう」
「あはは」
パスタの店に入る前の笑顔はネットに上がった。勇太はメイちゃんの笑顔が綺麗になってきたと感じた。
それは、離れた場所から美人3人を侍らせながら見ていたヤマモトタロウも同じ。
伊集院君と勇太効果で偏差値が上がったパラ高を狙う受験生。そして、妹として勇太ファミリーとの付き合い方を考えるメイちゃん。
男女比1対12の世界で、モブの自分が男子に好意を寄せられることは2度とないと思っている。
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