上 下
249 / 254

249 中学生と初詣

しおりを挟む
1月3日は梓とのんびり過ごした。

梓の彼女のカオルはパラ体大の柔道合宿で2泊3日の缶詰め。

特に過ごし方は決めなかった。

勇太がコーヒーを淹れて、朝ごはんを作った。お昼は梓が作って、コンビニに出掛けたり、河川敷散歩と近所を散策。

勇太からすれば何気ない、1日。男女比1対12世界の女子からしたら貴重な時間を過ごした。

◆◆
1月4日。

梓や葉子をはじめとするリーフカフェのメンバー、プラス風花。そして勇太の異母妹メイちゃんのクラスメイトで、またも初詣。

カフェのバイト6人は、ガッツポーズ。全部で16人の顔ぶれの中に、男子が3人もいる。

勇太、冬木ゲンジ、ヤマモトタロウ。

参拝客はそこまで多くないけど、パラレル神社前で注目されている。

メイちゃんは普段のペース。

「勇太お兄さん、梓さん、明けましておめでとうございます」
「メイちゃん、今年もよろしくね」
「メイちゃん、パラ高で会えるの楽しみにしてるよ~」

ゲンジも挨拶をしたあと、ヤマモトタロウも勇太に挨拶した。

勇太が意外だったのは、タロウがきちんとした感じなこと。

メイちゃんから聞いていたイメージとは違う。

「坂元さん、俺もパラ高を考えてますから、そのときはよろしくお願いします」

ヤマモトタロウの彼女3人も頭を下げた。礼儀正しい。


ゲンジは気が重くなった。

メイちゃんを巡るライバルのヤマモトタロウがいる。

元から高かったタロウの男子力に磨きがかかっている。

それに、今日は会っていきなりタロウはメイちゃんに謝った。今までのことを。

『メイ、2学期は色々と余計なことを言ってスマンかった』
『あ、えと、気にしてないから・・。こちらこそ、気を使わせてごめんね』

和解していた。


ゲンジとメイちゃんは、まだ恋仲ではない。

勇太のところで歌ったあと、ゲンジとメイちゃんの仲は少し進展した。

だけどメイちゃんは勇太への気持ちの整理が完全に付いていない上に、難度が上がったパラ高を狙う受験生。

困惑状態になった。

ゲンジの方から、『受験が終るまでは、そっちに集中しよう。俺も自分を磨きたい』と言った。

そして一緒に勉強している。

相手のことを考える男になろうとしている。

焦る気持ちを抑えて我慢したゲンジだ。

視界が開けてくると、男子力でヤマモトに勝てないと思うようになっている。

男女比1対12だし、勝てないと思えば避ければいい。それでも今のゲンジのコミュ力があれば彼女は簡単にできる。

きついけど、逃げたらメイちゃんに好きになってもらえない。

その気持ちを持って接するゲンジに、メイちゃんが陥落寸前だと気付いていない。

気付いてないから焦る。

そして、周り女子のゲンジへの熱が上がっている。

ゲンジは、カフェで歌ってから人気も出ている。そして思いやりも出てきた。

正月は姉の友人なども家に来たけど、そこでもリクエストに応えて歌って一緒にお茶をした。

メイちゃん以外にもモテている。


勇太、ゲンジ、タロウに肉食女子が寄ってきて、ちょっと収集がつかなくなった。

特にゲンジはネットで話題になりつつあるのに、暫定彼女がメイちゃんだけとバレている。

重婚当たり前の世界。

乙女達からしたら、『彼女枠』が山ほど空いて見えるのである。

リーフカフェオーナー葉子の振る舞いで、色々と食べ物を持ってカフェで新年会でもするかと提案した。


そしてカフェ。

勇太、梓、メイちゃんで話している。

ゲンジとタロウは、カフェのお姉さまがたから猛チャージを食らって、中3女子が阻止しようとしている。

「メイちゃん、ヤマモト君っていいやつじゃん」

「そうですね。しばらく嫌なこと言って悪かったって、今日謝られました」

「良かったね」
「はい、元々は感じがいい人だったから良かったです」

「何があったんだろうね」
「何があったんでしょうね」

梓は、勇太とメイちゃんのやり取りを見て、タロウの変化はメイちゃんに気があるからだよと言いたい。

一目瞭然だろと。

けれど気付かないふたり。鈍い。

やっぱり、このふたりは血の繋がりがあるなと笑ってしまった。

その視線に勇太が気付いた。

「梓どうした?」
「何でもないよ」

少し考えた勇太は、ギターを持った。

「梓のために1曲歌うかな」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

処理中です...