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195 代打、勇太

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風花が由乃を助けると決めた。

風花の相棒の純子も理解してくれた。

それはいいが、そのままで終われるほど世の中は甘くない。

まず音楽事務所、レコード会社との交渉。

これは早く解決した。『マカド』が率先して動いた。テレビ出演等の風花のキャンセルを代行してやってくれる。

テレビ局から色々と条件付き。条件というのは、各方面を巻き込んだ、今回のドキュメンタリー制作。

スポンサーは『マカド』がやる。

単にドナーになって下さいと訴えかける構成ではなく、実際にドナー側に起こるマイナスと照らし合わせる問題提起番組を作る。

これは病気のことを晒される間門由乃も同意してくれたから、話を進めることになった。

伊集院君サイドからギタリストも紹介されて、代役アリで大半の仕事には『純子&ギタリスト』として出ることになった。

風花は、いち早く伊集院君に今回のことを相談した。その結果だ。

ユニットとしての仕事には穴が空かず、風化も辛うじて復帰する場所はある。


問題は、個人で引き受けた6つのイベントなど。

12月17日には風花が以前から演奏させてもらっていたライブハウスの目玉として出演する予定だった。

リーフカフェの近くにある。

そこの仕事に穴を空けてしまう。風花にしてみれば、そこの経営者は恩がある大事な相手だ。

だから勇太が前に出るしかなかった。風花、純子と3人で謝罪したあと、勇太が申し出た。

自分が希少な男子だということを、モロに利用しようと思った瞬間だ。

渋い顔をしているライブハウスの店長に申し出た。

「あの、俺でよければ当日は純子と一緒にギターで何曲か演奏したり、ファンサービスを勤めさせてもらいたいですが・・」

店長の口からくわえていたタバコが落ちた。

「なに、勇太君が出てくれるの・・ホント?」

勇太は音楽的な実力に問題かと思ったが、これは店長からしたら願ったり叶ったり。

女神印の響く声を持つ勇太の生歌は、実はすごく付加価値があると業界内で知られている。

本当は出演依頼をしたい。

しかし勇太は、ただでさえ男子の上に人気もある。

過去にギターコードを押さえられるだけのハンサム男子にライブに出てもらった。かなりのギャラを要求された。

ペイできたが、大して儲からなかった上に警備で気を使わされた。


なので、勇太に出演してもらうとなると、警備も含めてお金が幾らかかるか分からない。

そんな裏事情で勇太に小さな仕事の出演依頼が来ない。

勇太は実力不足と思っていた。

価値がある勇太が、ここに出演しているメンバーの標準的なギャラさえいらないと言っている。

風花の穴埋めとして、お詫びに働くと言った。基本的に無欲だと聞いているが、店長はちょっと驚いている。

二つ返事で勇太の提案にOKした。

ライブハウス店長・小牧エツコ31歳。あと5歳若ければ、などと思っている。

そういう感じで、ショッピングモールのイベントなども勇太が代役をすることになった。

もしも風花が復活しても、一緒に出ると約束した。

各所で歓迎されている。風花のためだから、遠慮なく持てるもの使う。

そして、ライブハウスではルナ、カオル、梓、そして麗子も参加しないかと打診された。

公開放送にも出ているし、歌も少しうまくなっている。なにせパンの歌で知名度もある。

それをルナ達に言うと、ルナが乗り気だった。勇太が練習するギターに合わせて、キーボードを練習していてうまくなっている。

勇太が前世のパクりで作ったカオル、梓、ルナのテーマソング限定だけど、それなりに弾ける。

パラレル純子に歌の才能があるが、パラレルルナは顔は似ていなくても双子なのだ。

ルナも、続けてみたら音感がいい。そこは前世ルナと違い。芸術家肌の純子との双子設定が生きている。

女神様の介入を久々に疑った勇太だ。

勇太は大歓迎。なにげに最近はルナとの時間が減っていたことを気にしていた。

風花のためとはいえ、転生後初のクリスマスが別々になる可能性を恐れていた。

参加するクリスマスイベントは子供向けなので、現在8人の勇太ファミリーも呼べる。

伊集院君も、なぜかクリスマスだけはエントリー済みとLIMEがあった・・

梓とカオルも乗り気だが、梓は病み上がり。

麗子はパン屋、学校、家事で忙しい。

カオルは柔道がある。ライブハウスに茶薔薇学園の山田ツバキ部長がどこからともなく現れて、カオルを連行していった。

◆◆◆
2日して、精密な風花の血液検査の結果が出た。

その段階で風花からもらえる骨髄は由乃にとって最良の薬となることが分かった。

手術の日は12月9日に決まった。


12月4日、勇太はルナを伴って由乃を見舞いに行った。入院している部屋は、個室を無菌室にした特別な場所。

周囲は防菌加工のビニールで覆われていた。


すると風花がいた。

風花が小さな音でギターを弾いていた。

「・・すみません風花さん、私なんかのために」

「気にしなさんな。梓のお姉ちゃんを見捨てる訳ないよ」

「風花さんって、本当は私や梓ちゃんの・・」

風花はそれには答えない。

ビニール越しだから、由乃から表情も見えない。

ただ、語りかけるように優しい音色を奏でている。


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