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190 姉妹がたくさんいれば、適合するはず
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勇太がやがて嫁のひとりに迎える予定の間門嘉菜。その異母姉妹、由乃が倒れた。
放っておけば3ヶ月も持たない、急性で悪性の血の病気だ。
しかしこの世界、前世よりも有効な治療法がある。
骨髄移植の技術が進んでいる。誰でも適合する訳ではないけれど、見つかれば話は早い。
勇太の前世の知識では、移植に必要な『型』が適合するのは兄弟で25パーセントだから4人にひとり。親だと30人にひとりにだと知っていた。
こちらの世界でもドナー制度はあるけど、他人だと適合率が数百分の1以下に下がり、応じてくれないケースも多い。
「香里奈さん、もしも、治療するなら猶予はどれくらいあるんですか」
「進行度を調べてもらってるけれど、早期に発見できた可能性が高いわ。それでも2週間以内に移植手術を受けないと・・」
そこを越える可能性があるときは、放射線治療と強い薬で対処するそうだ。
きつくて治療が長引く上に、生存率も下がる。
勇太の直感だけど、放射線と薬物に関しては勇太の元の世界よりも進歩していない印象だ。
「じゃあ、姉妹の誰かと骨髄移植のドナー条件に適合すれば・・」
「ええ・・。これはドナーにも負担が大きい治療法です。誰かと合った上で、その人に体力と時間の余裕がないと・・」
香里奈は下を向いた。
「由乃・・」泣いている。
由乃は入院となった。
正式な結果が出るのは2日後。勇太は一旦は帰った。
そして香里奈は間門の家族に、勇太は梓と葉子に、由乃のことを話した。
「ユウ兄ちゃん、明日にでも検査に行くね」
「・・そうしてくれるか」
「うん。初めて話してから時間は経ってないけど、由乃さんも私のお姉ちゃんだもん」
「ありがとう。間門の姉妹でドナーになれる人がいれば、その子に頼むそうだ。けど、可能性は大きい方がいいよね」
葉子と勇太も検査をする。どちらも由乃とは血の繋がりはない。ドナー適合率は0・1パーセント以下でもやっておきたい。
『型』が合えば、こちらの世界では多様な血液製剤と合わせて有効な治療ができる。
次の日、本来は時間がかかる手続き、検査時間を短縮するために由乃を大きな個人病院に転送。
勇太と梓、葉子が病院に到着したとき、由乃を生んだ香里奈さん、他の間門の娘達が揃っていた。
間門陽介の娘は、同居と別居を合わせて26人。
ここには21人がいて、遠くに住んでいる残りの娘は、最寄りの融通がきく病院で検査するという。
勇太は、希望を持っている。
姉妹が25人いれば、誰が由乃のドナーになれるのではないかと思った。
なにせ適合率は兄弟なら25パーセント。前世と違って、数で戦える。
もちろん、間門陽介、香里奈の両親も調べた。
今は午前11時。結果が出るのは夕方で時間もある。
勇太は考える。もしも梓だけ由乃のドナーになれる場合のことだ。
骨髄移植はドナー側も負担が大きい。この世界では健康な状態で最低1週間の入院が必要とされている。
体が弱い女性が、妹を助けるためにドナーとなり2ヶ月も入院した例があるそうだ。
11日前に盲腸炎で開腹手術を受けたばかりの梓が耐えられるのか?
ここで梓に何かあるのかと頭の中を不安が巡るようになった。
とりあえず、大きな座敷を借りられる食事どころを探して全員で行った。
もちろん嘉菜にも浮わついた空気はなかった。
「誰か、ひとりでも由乃と適合してくれれば・・」
「嘉菜お姉ちゃん、大丈夫だよ。これだけ血縁者がいれば、誰かいるよ」
みんな、確率が低いような話をしている。
姉妹なら4人にひとりはドナー候補が見つかる。単純計算で4~5人は見つかるはずだ。
そのときLIMEが鳴った。パラレル父さんの風花からだ。
風花はCDデビュー前。今日は勇太が休んで、3つ離れた街のショッピングモールでのPR活動に同伴する予定だった。
朝イチで電話して詫びを入れていた。
風花『こっちは気にしないで。立ち入ったこと言うけど、検査結果を教えて』
勇太『ごめんね、近いうちに埋め合わせする。結果がでたらLIMEする』
ルナ、カオルからもLIMEが来た。
再び、病院に行って検査結果を聞いた。
「そ、そんな・・」
由乃を生んだ香里奈さんがよろけた。
なんとドナーになれる人はゼロ。
由乃の姉妹25人、両親、駆けつけてくれた他の母親や血縁者含めて全滅だった。
「え・・姉妹なら確率25パーセントだよね・・」
勇太は呟いてしまった。
放っておけば3ヶ月も持たない、急性で悪性の血の病気だ。
しかしこの世界、前世よりも有効な治療法がある。
骨髄移植の技術が進んでいる。誰でも適合する訳ではないけれど、見つかれば話は早い。
勇太の前世の知識では、移植に必要な『型』が適合するのは兄弟で25パーセントだから4人にひとり。親だと30人にひとりにだと知っていた。
こちらの世界でもドナー制度はあるけど、他人だと適合率が数百分の1以下に下がり、応じてくれないケースも多い。
「香里奈さん、もしも、治療するなら猶予はどれくらいあるんですか」
「進行度を調べてもらってるけれど、早期に発見できた可能性が高いわ。それでも2週間以内に移植手術を受けないと・・」
そこを越える可能性があるときは、放射線治療と強い薬で対処するそうだ。
きつくて治療が長引く上に、生存率も下がる。
勇太の直感だけど、放射線と薬物に関しては勇太の元の世界よりも進歩していない印象だ。
「じゃあ、姉妹の誰かと骨髄移植のドナー条件に適合すれば・・」
「ええ・・。これはドナーにも負担が大きい治療法です。誰かと合った上で、その人に体力と時間の余裕がないと・・」
香里奈は下を向いた。
「由乃・・」泣いている。
由乃は入院となった。
正式な結果が出るのは2日後。勇太は一旦は帰った。
そして香里奈は間門の家族に、勇太は梓と葉子に、由乃のことを話した。
「ユウ兄ちゃん、明日にでも検査に行くね」
「・・そうしてくれるか」
「うん。初めて話してから時間は経ってないけど、由乃さんも私のお姉ちゃんだもん」
「ありがとう。間門の姉妹でドナーになれる人がいれば、その子に頼むそうだ。けど、可能性は大きい方がいいよね」
葉子と勇太も検査をする。どちらも由乃とは血の繋がりはない。ドナー適合率は0・1パーセント以下でもやっておきたい。
『型』が合えば、こちらの世界では多様な血液製剤と合わせて有効な治療ができる。
次の日、本来は時間がかかる手続き、検査時間を短縮するために由乃を大きな個人病院に転送。
勇太と梓、葉子が病院に到着したとき、由乃を生んだ香里奈さん、他の間門の娘達が揃っていた。
間門陽介の娘は、同居と別居を合わせて26人。
ここには21人がいて、遠くに住んでいる残りの娘は、最寄りの融通がきく病院で検査するという。
勇太は、希望を持っている。
姉妹が25人いれば、誰が由乃のドナーになれるのではないかと思った。
なにせ適合率は兄弟なら25パーセント。前世と違って、数で戦える。
もちろん、間門陽介、香里奈の両親も調べた。
今は午前11時。結果が出るのは夕方で時間もある。
勇太は考える。もしも梓だけ由乃のドナーになれる場合のことだ。
骨髄移植はドナー側も負担が大きい。この世界では健康な状態で最低1週間の入院が必要とされている。
体が弱い女性が、妹を助けるためにドナーとなり2ヶ月も入院した例があるそうだ。
11日前に盲腸炎で開腹手術を受けたばかりの梓が耐えられるのか?
ここで梓に何かあるのかと頭の中を不安が巡るようになった。
とりあえず、大きな座敷を借りられる食事どころを探して全員で行った。
もちろん嘉菜にも浮わついた空気はなかった。
「誰か、ひとりでも由乃と適合してくれれば・・」
「嘉菜お姉ちゃん、大丈夫だよ。これだけ血縁者がいれば、誰かいるよ」
みんな、確率が低いような話をしている。
姉妹なら4人にひとりはドナー候補が見つかる。単純計算で4~5人は見つかるはずだ。
そのときLIMEが鳴った。パラレル父さんの風花からだ。
風花はCDデビュー前。今日は勇太が休んで、3つ離れた街のショッピングモールでのPR活動に同伴する予定だった。
朝イチで電話して詫びを入れていた。
風花『こっちは気にしないで。立ち入ったこと言うけど、検査結果を教えて』
勇太『ごめんね、近いうちに埋め合わせする。結果がでたらLIMEする』
ルナ、カオルからもLIMEが来た。
再び、病院に行って検査結果を聞いた。
「そ、そんな・・」
由乃を生んだ香里奈さんがよろけた。
なんとドナーになれる人はゼロ。
由乃の姉妹25人、両親、駆けつけてくれた他の母親や血縁者含めて全滅だった。
「え・・姉妹なら確率25パーセントだよね・・」
勇太は呟いてしまった。
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